彼の仕事は、聴くことから始まる。 クライアントが本当に向き合うべき課題。言葉の裏に隠された、本当の願い。
HRソリューションズ事業部のプロデューサー・藤原悠兵は、その類まれなる傾聴力で、人と組織の可能性を拓いてきた。
しかし、今、彼が耳を澄ましているのは、クライアントの声だけではない。
「資格は取ったが、どうすればいいか分からない」
そう嘆く、多くのコーチたちの“声なき声”だ。
自らもコーチングに救われた経験を持つ彼が、その恩返しとして人生をかけて成し遂げたいこととは何か。 彼の静かな語り口の中に宿る、どこまでも熱い想いが、ここにある。
ー以前のチームインタビューで、小林さんから『耳のソムリエ』と絶賛されていました。その卓越した傾聴力の原点はどこにあるのでしょうか?
実は、私の傾聴力は、もともと持っていた才能ではありません。むしろ、幼少期は人の話をあまり聞けていなかった、という原体験が原点なんです。
転機は35歳の時でした。自分なりに自己投資はしてきたものの、どこか成長に限界を感じ、周りに合わせてしまうもどかしさがあった。自分の内なる声に、耳を傾けられていなかったんです。
その時、半信半疑で門を叩いたのが『コーチング』の世界でした。決して安くない投資でしたが、一年かけて妻にも説明し、覚悟を決めて学び始めました。
半年ほど経つと、不思議と周りが変わり始めたんです。お客様から『またお願いね』と言われる回数が増え、プライベートでも家族から『雰囲気が柔らかくなったね』と言われるようになった。人の声に深く耳を傾けることで、世界はこんなにも変わるのかと。あの時の“気づき”が、今の私の全ての土台になっています。
ーお客様とこまめに定例会を実施し、絶大な信頼を得ていると伺いました。その“こまめな接点”を大切にし続けるのはなぜですか?
『一方的にしない』ということを、何よりも大切にしているからです。 私の仕事の根底には、常に『共創』、つまり“共に創る”という考え方があります。もちろん、プロとして提案すべきことは伝えますが、基本は常にお客様と対話を重ね、想いや方向性を分かち合いながら、一緒に作り上げていく。そのプロセスこそが、面白いんです。
定例会も、元々は担当者の方がメールで長文の相談をくださるのが大変だろうと、効率化のために始めたことでした。でも、結果的にそれが、お互いの考えを深く理解し、信頼関係を育むための、最高の『共創の場』になったんです。
ー藤原さんを惹きつける『コーチング』の魅力とは、何でしょうか?
コーチとして、人の可能性が拓く瞬間に立ち会えること、これに尽きますね。 クライアントは、ある課題を持ってセッションに来られます。しかし、対話を深め、ご自身を俯瞰していく中で、『本当に向き合うべき課題は、実はそこではなかった』と、自ら気づかれる瞬間が訪れる。
私が何かをしたわけではないんです。ただ、横並びで、対等なパートナーとして、その自己解決の場に立ち会わせていただく。その方の人生が、より良い方向に動き出すきっかけに貢献できたと感じられる瞬間が、コーチとして最大の喜びです。だからこそ、私はクライアントとの『共創』の関係性を、何よりも大切にしています。
ープロの『ビジネスコーチ』である一方、プライベートでは『少年野球のコーチ』も務められています。大人と子ども、二人の“コーチ”として、どんな違いや共通点がありますか?
共通点は『承認』ですね。人は誰でも、できていないところに目が行きがちです。だからこそ、できたことは、どんなに小さなことでも見逃さず、しっかりと承認し、言葉にして伝えてあげる。それは、大人も子どもも同じだと感じています。
逆に、子どもたちから教えられたのは、『私たちは、グループではなくチームなんだ』ということです。 子たちは、学年関係なく、お互いを呼び捨てで呼び、励まし合うんです。ミスを責めず、『次どうするか』を対等に話し合う。その姿を見て、『果たして自分は、職場でこれができているだろうか』と、ハッとさせられました。
ー藤原さんは冷静沈着な印象ですが、思わず我を忘れて“熱狂”してしまうものは何ですか?
熱狂、と言えるかは分かりませんが…今こうして話していて気づきました。やっぱり『コーチング』そのものかもしれません。
実は、週末にボランティアで、コーチングを普及させるための国際コーチング連盟の運営委員としても活動しているんです。もちろん、家で寝ていたいなと思う日もあります(笑)。でも、そこを割いてまで時間を投じているということは、仕事を超えて、コーチングを広めたいという強い想いが、自分の中にあるんだなと。
自分の子どもたちの世代が大人になる頃には、指導者がコーチング的な関わり方をするのが当たり前になっていて、誰もが肩の力を抜き、個性を発揮できる。そんな社会を創る一助になれたら、と願っています。
ー最近、思わず『やっちまった!』と心の中で叫んだ、失敗談があればこっそり教えてください。
野球チームの親御さんたちとの飲み会ですね(笑)。 私はコンディションを大事にしたいので、普段は深酒はしないんです。でも、その日は盛り上がってしまい、気づけば朝まで…。翌日は、息子と約束していた野球の練習に行けず、家族から大ブーイングでした。『やっちまったな…』と、心から反省しました。
ー藤原さんが、これからの人生で成し遂げたい“野望”を教えてください。
私の野望は、『コーチという職業が、当たり前に成り立つ世界を創る』ことです。
今、コーチングの世界には、高いお金を払って資格を取ったにも関わらず、それを活かす場がなく、まるで“放り出された”ような状態になっている仲間がたくさんいます。私自身も、その“もどかしさ”を強く感じてきました。
この状況を、何としても変えたい。 そのためには、まず法人の、それも社会に影響力のある大企業からコーチングのニーズを創出し、『あの会社がやっているなら、うちも』という流れを作ることが不可欠だと考えています。
ビジネスコーチグループが掲げる『あなたに、一人の、ビジネスコーチ』の世界が実現できた時、きっと世の中は、今よりもっと活気に満ちているはずです。朝の通勤電車で、疲れ切った顔ではなく、目が輝いている人で溢れている。そんな未来を、この手で創り上げたいんです。
ー最後に、未来の仲間へ。『耳のソムリエ』である藤原さんから、アドバイスをいただけますか?
うまく話せなくても、全く問題ありません。私もうまく話せる方ではないので。 大切なのは、話を聴く中で感じた、ちょっとした違和感や、『これ、聞いてみたいな』という好奇心を、ポロッと口に出してみることです。
私たちの会社には、心理的安全性が担保された、話しやすい場があります。たとえネガティブなことであっても、誰かが必ず拾ってくれる。特に私が所属する1課は、本音を吐き出しやすい雰囲気だと感じています。
ぜひ一度、会社見学に来て、その雰囲気を体感しに来てください。雑談を交わしながら、色々とお話しできることを楽しみにしています。