自然豊かな田舎で、パソコンに熱中した学生時代
私は日本で最も人口が少ない地方の出身です。なんの変哲もない田舎で、なんの変哲もない幸せな共働き家庭に育ちました。
普通と違う点といえば、実家が神社の家系で、父が兼業の神主だったことぐらいでしょうか。父は普段は市役所で公務員として働き、休日には時たま神主の格好で出かけていく人でした。映画や音楽が大好きで、自室には膨大な映像・音楽ライブラリや楽器を所有していました。
彼の部屋には、他にも面白いものが幾つかありました。ひとつは科学雑誌「ニュートン」、もうひとつはパソコンです。Windows95が出る前から家にパソコンがあり、父が使っていました。市役所勤めには必要ないはずなので、主に趣味だったと思います。私も中学生のときにパソコンを買ってもらい、自然豊かな神社の息子でありながら、パソコンに熱中する学生時代を過ごしました。
よって、大学に進学するタイミングで上京し、情報工学系を専攻したのは自分にとってごく自然な流れでした。東京大学で修士課程まで終了したのち、有名であることと、なんとなく大きな仕事ができそうだと思い、NTT研究所に就職。インターネットに関わるインフラの研究開発に携わることとなりました。
大企業で感じた、物足りなさと違和感
NTT研究所での仕事はわりと楽しかったです。日本最大級のネットワークインフラの形を考えるというのは当然大きな仕事している感もありましたし、東日本大震災後には「よりレジリエンスの高いネットワークとは」といった研究も行い、充実感を感じていました。
当時の職場の研究開発センター
しかし4年ほど働く中で、少しずつ自分のやりたいことと仕事とのズレを感じはじめました。自分がやった仕事の成果が世に出るまでに時間がかかり、(大きなネットワーク、インフラとは大体そういうものなのですが、)若い自分にはもっとスピード感がほしかったわけです。
また、当時は初就職だったので特に違和感を感じなかったものの、今振り返るとちょっとどうなの…?と思うようなこともありました。
- 研究職なのに、入社後いきなりフレッツ光の営業をやらされる(しかも全然関係ない兵庫県で)
- 楽しかったし、グループ内別会社の同期と知り合えたのはよかったが、よく考えるとなかなか重い。
- パソコン1台買うのに、ものすごく多くの人の決裁が必要(大企業あるある)
- 取引先からすごくチヤホヤされる
- 部署の年間予算が◯十億ある部署だったので、私のような入社したての実力のない人にも取引先からの営業努力が凄くて、これはずっとこの環境にいると勘違いしてしまう…と危機感を抱いたのを覚えてます
- 「有害な振る舞い」をする人がけっこういる
- なんの仕事しているの…?っていう人がけっこういる
大手から一転、ホスピタリティ業界のベンチャーへ
その後、転職活動を経て、ホテルやレストラン、結婚式、宴会などのホスピタリティ業界のベンチャー企業であるPlan・Do・See Inc.にDX担当のポジションで入社を決めました。ここに決めた理由は大きく3つあります。
- ポジションのユニーク性
当時はITの担当者が数人しかおらず、IT専門家はゼロでした。総合職の新卒採用に強く、私のように専門家として入社する人はとても少ない。超特殊な人材として、早いうちに社内でプレゼンスを発揮できるだろうと思いました。実際、入社して2年半でマネージャクラスに昇進しました。(私より後に入社してマネージャになっている人はいなかった) - キャリアとしてのユニーク性
特に日本では、ホテルやレストランに限らずホスピタリティ産業のIT化が非常に遅れています。だからこそ、チャンスも多く、特殊な経験を積めるのではないかと考えました。これは概ね当たっていたのですが、後から考えるとジェネラルなスキルを身に着けにくいというデメリットもありました。何も考えずに仕事していると、その業界(最悪の場合、その会社)にしかポジションがなくなってしまう問題です。 - 人のよさ
私を推してくれた当時のCIOの強い思いと人柄です。彼は本当に素晴らしいリーダーでした。会社にまだ馴染めない私をいつも気にかけてくれ、引き立ててくれ、励ましてくれました。それでいてマイクロマネジメントはせず、要点を抑えることにも長けていました。彼に限らずPlan・Do・Seeは前向きで素晴らしい人が多いです。ソフトスキルお化けみたいな人が多く、前職とは真逆だと当時思いました。
DXからSaaSの開発、外販まで多岐にわたる業務
Plan・Do・Seeでは、かなり多岐に渡る仕事をしました。DX領域では、G Suite(旧称)といった各種クラウドサービスの導入やITインフラの刷新、当時雑誌広告から徐々にデジタル化していた流れを汲み、デジタル広告の導入を行いました。
さらに、一番力を入れたのは「クラウドサービスを作る」ことです。最初は社内の婚礼宴会向けに業務システムを作ったのですが、それが予想以上に活用されたため、競合他社にそのシステムを外販していきました。日本ではそれをやらない会社が多いのですが、業界全体のために積極的にやろうという会社だったため、子会社を作り、独立したSaaSとしてリリースしました。
ブライダル業界の製品展示会に出展
そのサービスをスタートする時点から、プロダクトマネージャーという仕事を意識せず始めることとなりました。業務を分解し、仕様を作り、画面を設計し、どんなアプリケーションを作っていくかを主導するという役割です。
このように少しずつシフトしながら様々な仕事をする中で、とくにプロダクトマネージャーの仕事にやりがいを感じ、また自分にあっていると思いました。社内ITやコンサルの方面に進むのか、あるいはプロダクトマネジメント・プロダクト作りの方の専門家になるのかを自問自答し、後者にチャレンジすることにしました。
LINEに入社し、体系的なプロダクトマネジメントを経験
そこで、プロダクトマネジメントの仕事をちゃんと定義して募集している会社を探した結果、LINE株式会社に転職。とある金融サービスのプロダクトマネジメントを担当することになりました。そこで初めて、今まで自己流でやっていた開発のマネジメントや、仕様策定の意思決定の流れ、各部署との連携を体系的に(正解ではないにしろ、動いているひとつの姿)学ぶことができました。
一方、巨大プロダクトであるLINEの、ごく一部のサービスでさえ100 人単位の人間が動く中で、自分を非代替的なものと思えない瞬間が多々ありました。要するに自分のポジショニングがうまくできなかったのだと思います。また、金融サービスというプロダクト自体をそこまで愛しきれませんでした。自分が積極的に使うタイプのプロダクトではなく、想定されているユーザーにも十分に共感できなかった。
LINE社やチームメンバーには一切責任はなく、むしろモチベーションの下がった自分とかなり向き合ってくれましたが、働き始めてすぐコロナの影響でリモートワークになってしまったこともあって、後述するSANUの魅力に抗えず、1年とちょっとで転職することになりました。
SANUとの出会い、「Live with nature.」への強い共感
話は前後しますが、LINEに入って半年ぐらいした頃、SANUとの出会いがありました。自分が自然豊かな地域の、しかも神社で育ったというバックグラウンドから、本間と福島の「Live with nature. / 自然と共に生きる。」というビジョンを、とても素直に理解することができました。また、彼らが持っている課題意識や、それに対するソリューションにも、強く共感しました。
ちょうど彼らもSANU 2nd Home のアプリを作れる人材を求めていたため、最初は副業として彼らを手伝うこととなりました。それから数ヶ月後、SANUへの転職を決意することとなります。理由としては、下記の3点に集約されます。
- サービス・理念への共感
これはさきほども挙げましたがやはり最も大きな理由の一つです。 - 自分のユニークさを発揮できる
LINEでの「代わりがいくらでもいる」という感覚ではなく、「自分しかやれる人がいない」という感覚がありました。NTTでのネットワークインフラの経験や、Plan・Do・Seeでの宿泊業含むDXの経験、LINEでのプロダクトマネジメントの経験がすべて活かせる。Plan・Do・Seeへの転職のときも感じたキャリアのユニークさがここで生きるのではないかと思いました。 - 人のよさ
代表の2人をはじめ、SANUの社員や関係者は、みなプロフェッショナルでとても働きやすい人々です。社員はほとんどみんな大企業を経験されてますが、ちゃんとした感と、スタートアップのフレキシブルなところを活かしたちょうどよいコミュニケーションを取れる人たちです。
私がSANUでやっていること
1. WEBアプリの開発
SANUのようなリアルサービスでは、施設そのものの魅力がもちろん重要ですが、施設を利用するための導線であるWEBアプリ上のUXも同じく重要です。現状、サブスク登録から宿泊予約、宿泊施設へのチェックイン・チェックアウト、決済までの全てを独自のWEBアプリ上で完結させています。
我々のようなスタートアップは、コードを書くよりも課題発見とUXに集中したほうが良いと考えています。そのため、ノーコード開発プラットフォームを積極的に利用し、エンジニアと非エンジニアの垣根が非常に低い体制で開発を続けています。 (ノーコード開発についての記事を書きました。)
2. 宿泊施設へのIoT機器の導入
自然立地のSANU CABINの中でも問題なく高速Wi-Fiが使える、というユーザーの満足度に直結するものから、スマートロックの活用によって予約と連携して暗証番号をセットし、無人チェックインやキーの解錠を可能にするといった運用面にまで、多岐にわたります。(プレスリリースを出しました)
SANUキャビンの仕様は統一されていますが、IoT機器類は今後も後方互換性を意識しながら新しいものを導入していきたいと考えています。
3. 会社業務のDX
サービスを支える多様な仕事をデジタル化し、効率化していくコーポレートITチームとしての役割です。サービスサイドとコーポレートサイドの開発部署は分離されている会社も多いですが、SANUは一体です。なぜなら、すべての仕事がサービスと直結しているからです。
例えば、宿泊施設内の有料備品について考えると、
1. どの有料備品が利用されたのかを把握する
2. 有料備品の利用状況に応じてユーザーに課金する
3. 有料備品のストックが無くなった場合に発注する
といった3つの仕事があります。1と3は清掃・備品発注というオペレーションサイドの仕事で、2はアプリ上での課金というサービスサイドの話になりますが、すべて共通のデータを用い、連動してイベントが発生するため、別々のシステムを作るよりは一体でやったほうが効率的です。
サービス(カスタマー)とそれ以外(社員・パートナー企業)といった区分をせず、我々がつくるものを使う、すべてのユーザーに価値を提供していきたいと考えています。
これらの仕事をいまのところ私一人でほとんどやっていますが、いずれもかなりチャレンジングで面白い課題が山積みです。
紆余曲折を経て、いま思うこと
大企業からキャリアを始め、ベンチャーに転職、また大企業にいって、すぐにスタートアップへ。そんな紆余曲折を経ていろいろと感じることがあります。
あえて、誰も行かないところに行ったときに道が開ける、ということ。
そこで得たユニークな経験が、後から役に立ったこと。
なんでも興味を持ってやってみることがユニークさに繋がったこと。
誰かと同じであることの価値は今後ますます小さくなります。ユニークなキャリアを選ぶことは怖いかもしれませんが、それに見合った価値があると思います。
現在、積極採用中!
上記のような仕事やSANU自体に興味があるエンジニア出身の方、あるいはプロダクトマネジメントが得意な方、ぜひお声がけください。
SANUのオフィスに直接来られる場所に住んでいなくても構いません。より良い働き方を一緒に考えましょう。(実際、私も入社以来ほとんど出社せずリモートで仕事をしています)
SANUでの仕事は誰にとってもユニークなキャリアとなりえます。あなたのご応募ををお待ちしています。