1970年代、日本の造船業界が世界をリードしていた時代に、日本初の50万トン級タンカーの配置配管設計としてキャリアをスタート。その後、国内外の大型プラント設計やJVによる国家備蓄計画を手掛けてきたHさん。
40年以上にわたり設計の第一線で活躍し続ける背景には、機器設計への深い愛情があります。
今回は、Hさんにこれまでの歩みと、磨き上げた技術力、そして「機器設計」という仕事への想いを伺いました。TPSの技術力を感じていただけるインタビュー、ぜひご覧ください。
▼Interviewee:機器設計Hさん
1970年代、日本初の50万トン級タンカー設計に携わり、上甲板の配置配管設計からキャリアをスタート。その後プラント業務へ転じ、1992年には東洋エンジニアリングで機器設計を担当し、国内外の大型プラントでは主に静機器の詳細設計を手掛けました。
2016年にTPSへ参画し、化学プラントの設計を担当。
2021年には検査品質Gr.の立ち上げを担い、現在も第一線で国内プラントの機器設計に取り組んでいます。
挑戦が磨いた技術力、TPSで生きる設計思想
TPS流の機器設計――“図面を描くだけじゃない”設計の本質
機器設計の仕事は、単なる図面作成ではありません。現場の課題を解決し、時には新しい技術に挑戦する――それがTPS流の設計です。
現在、Hさんが担当しているのは、機能性化学品を扱うプラント建設プロジェクト。タワー、ベントスタックやタワー内部品の設計を担い、仕様書作成から見積査定、発注、詳細設計打合せ(KOM)、図面チェック、社内調整、PIM、立会検査まで、一気通貫で関わっています。
「設計は“紙の上の仕事”ではなく、現場を動かす力になるもの。だからこそ、過去の経験を活かしながら、最適解を探し続けています。」
挑戦が育てた設計思想
Hさんのキャリアには、数々の挑戦がありました。
あるプラントでは稼働中に重大なトラブルが発生し、設備をまるごと入れ替えるという緊急対応を経験しました。設計だけでなく、現場での判断力やチーム連携が問われる場面で、幅広いスキルを磨くことができました。
さらに、東洋エンジニアリング時代には、省エネルギー型蒸留システムをゼロから構築するプロジェクトに携わったこともあります。
これは当時、日本のプラント業界にとって大きな挑戦であり、設計者としても未知の領域でした。難しさを感じながらも、技術革新の最前線に立てたことは大きな誇りです。
こうした経験の根底には、Hさんの揺るぎない信念があります。
どのような仕事でも、まずは断らない。何でも聞き入れてから考えることをモットーにしています。改造工事などでは、法律に従いながら、いかに要領よく、アイデアを出して進めるか――そこに設計の面白さがあります。
技術を未来へつなぐ――TPSという“学び合う場”
ネットで調べるのもいいですが、経験則は現場でしか学べないと思っています。同じ仕事を一緒にやりながら、要点だけ伝える。間違ってもいいので、まずは経験してほしい。
技術継承では、7:3の割合で経験を積ませ、こちらから指示を出しすぎないようにしています。間違ってもいいので、まずはやってみる。その中で要点だけを伝え、考える力を育てたいと思っています。
若手の成長は、現場作業やジョブ経験を通じて支援する――それがHさんの教育哲学です。
TPSの組織風土も、この考え方を後押しします。
情報伝達や回答が迅速で、質問や議論を歓迎する文化。社内勉強会なども活用しながら、個々の技術力向上と経験の差を埋める取り組みを続けています。
TPSには多様なバックグラウンドを持つエンジニアがいますが、その力を最大限に発揮するためには、若手の成長とベテランの知見を融合させることが重要です。私は経験のサポート役として、若手へのアドバイスを重視し、顧客に『TPSなら安心だ』と思っていただける技術集団をつくっていきたい。
Hさんはそう語ります。
技術者としての価値観、そしてこれからの役割
設計対象や要求が定まっている中で、いかに安全面・コスト・軽量化を実現するか――そこに設計の工夫があります。改造工事や新設工事で、自分のアイデアが採用され、実際に形になる瞬間は、この仕事ならではの充実感です。
TPS社内では、現場に出て若手育成や検査にも積極的に取り組んでいます。特に工事検査は、設計の品質を守るために欠かせない重要な工程。
図面通りに製作されているか、法規や安全基準を満たしているか――工場で確認することが、顧客の信頼につながります。
そして、Hさんにとって「機器設計」という仕事は――
元々、子供のころから絵を描くことが好きなので、大袈裟ですが“唯一無二”の仕事かな。
50年以上続けてきた理由は、設計の奥深さと、アイデアを形にする楽しさにあります。今後も、若手技術者の経験と成長を支え、TPS全体の技術力向上に寄与したい――それがHさんの次の挑戦です。
お客様に『TPSなら安心だ』と思っていただける技術集団をつくるために、私の経験を可能な限り伝えていきたい。