※こちらは2025/01/24にnoteで公開した記事の転載です※
こんにちは、医療と介護をつなぐドクターメイト プロダクト開発の榎本です!
ドクターメイトの基幹サービスのひとつである夜間オンコール代行は、日々オンコール対応をする看護師たちによって支えられています。
私たちプロダクト開発グループは、夜間のコール対応をする自社の看護師の業務を効率化することで、契約施設へより良いサービスをご提供するために業務システム「DD」を開発しました。
今回は、2024年12月11日のプレスリリースではお伝えできなかった開発の裏側を、実際に開発をリードした小松さんと福島さんにインタビューする形で深掘りしていきたいと思います!
登場メンバー
小松さん:写真左
夜間オンコール開発の業務システムを担うチームのリーダー。エンジニアとしてのキャリアは10年以上。
福島さん:写真中央(モニター)
看護師。病院や訪問看護で10年以上勤務。ドクターメイトではオンコールナース(=夜間オンコール代行サービスを支える看護師)として約3年ほど勤務したのち、正社員に転換。現在はオンコールナースの教育やフォローを担当しつつ、オンコールのシフトにも入っている。
榎本:写真右
プロダクト開発グループのゼネラルマネージャー。西武ライオンズファンとキックボクシングをこよなく愛する人。最近は生成AIを使った開発効率化に夢中。今まではインタビューを受ける側だったが、今回は初のインタビュアー役に挑戦!
オンコール業務システム「DD」の開発に至った背景
複数のツールを行き来する業務負担を軽減したい!
榎本:始めにDDの開発に至った経緯から聞きたいと思います。
福島:はい。私達はオンコール業務でいろんなITツールを使っています。
そこでのナースたちの負担感とか、待機中のプレッシャーが結構大きいというのが以前から課題でした。
それを解消するために、プロダクト開発の方々と協力しながら、負担を軽減できるツールが作れないかと考えたのが開発に至った経緯です。
小松:そうですね。課題感は先ほどお話が出た通り、Chatworkやkintoneなど、それぞれのタスクを処理するツールが分散していて、頻繁にツールを行き来して操作をしなきゃいけないっていうところがかなり肝でした。
そこを新たなシステムに統合することで、1ヶ所を見れば全ての業務ができるようにしたいっていうところが開発の目的ですね。
技術的なところで言えば、元々使っていたChatworkなどのツールを基本にすると、どうしても独自のシステムを開発しづらい状況でした。CTI※を導入したことによって、そのSDK(ソフトウエア開発キット※)を使って開発できるようになったことが一番大きいかなとは思います。
榎本:確かに、いろんな周辺のツールをAPIで呼び出すことができるようになったというのが、開発のきっかけのひとつになったかなと思っています。
技術的な話題はこのくらいにして、今回深掘りしていきたいのが、開発にあたっての社内連携というか「共創」の部分なので、その点にフォーカスしていきたいと思います。
実際の取り組みについて、お二人それぞれの視点から話してもらえますか?
※CTI(Computer Telephony Integration):コンピューターと電話を連携させる技術。CTIを使うことでPCを見ながら受電ができるので業務の効率化や顧客対応の向上が実現できる。
※SDK(ソフトウエア開発キット):特定のシステムやサービス向けのアプリを開発するためのツールのセット。SDKを使うことで開発者は効率よく機能を実装できる
社内だからできるエンジニアとナースの協力体制
ユーザー理解は現場を知るところから
小松:開発するにあたって、現場を理解するために、オンコールナースが受ける研修をゼロから受講しました。研修を受ける前も、オンコールナースの業務フローはおおまかに理解していましたが、具体的にどのような操作をしているのか、どこに課題を感じているのかは見えていませんでした。
実際に研修を受けて、レポート作成までの一連の流れを体験したことで、オンコールナースの業務を深く理解することができました。
榎本:オンコールナースの研修に参加して得た気づきはありますか?
小松:オンコールナースの中には、PC操作にあまり慣れていない方もいるため、ツールの操作でつまずくポイントがあることがわかりました。
また、システムのどの部分がオンコールナースにとって使いづらいのか、どのように改善すればより使いやすくなるのかといった点も、実際に現場の方々の声を聞くことで理解が深まりました。
榎本:なるほど。実際にDDを利用するオンコールナース、つまりユーザーの解像度が上がったのですね!それを開発にどのように活かしていますか?
小松:オンコールナースの方々にDS(デイリースクラム※)に参加してもらい、そこで開発の進捗を見てもらいながら、改善点のフィードバックをもらっています。
エンジニアとしてはこう思っていたけれど、実際に使う側の視点ではこうした方が良いといった意見は、実際に使う人に聞かないとわからないことが多いです。そういったフィードバックをすぐに開発に取り入れられるようにしています。
榎本:これは社内にユーザーがいるからこそできることでもありますよね!
※DS(デイリースクラム):スクラム開発における日次の短いミーティングのこと。効率的な開発を促進するために、昨日までの進捗や今日取り組むこと、また、課題や障害について共有する場。
エンジニアとナースの感覚の違い
榎本:では、福島さんから見て、オンコールシステムの開発におけるエンジニアとナースの視点の違いはありますか?
福島:システムの操作性に関して、エンジニアとナースでは感覚の違いを感じることがあります。
例えば、入力フォームでエンターキーを押して次に進むといった操作は、エンジニアにとっては一般的でも、ナースにとっては直感的ではないことがあります。そういった細かい部分での違いはありましたね。
ただ、こういったやりとりを通じて、お互いが質問や相談をしやすい関係性ができてきたと思っています。
以前はバーチャルオフィスにいても、オンコールナースに気軽に話しかけてくれる人は少なかったのですが、今は小松さんや他の開発メンバーがよく来て、「これはこういうことですか?」と確認してくれます。
私たちナースの方からも、エンジニアのミーティングに参加して質問したりするようになりました。お互いの理解を深めるためのコミュニケーションが活発になってきていると思います。
ナースが開発現場に参加するメリット
福島: 社内というメリットを活かして、頭の中で考えているよりも、直接話して聞いた方が早いと思うときにはエンジニアの開発現場に積極的に参加するようにしています。
テキストコミュニケーションではなく、実際に会って、またはオンラインで画面共有しながら話たりしていて、特にDD開発にあたっては、頻繁にお邪魔していました。
榎本:ナースの福島さんから見て、エンジニアが開発している現場の画面共有などを見るとどんな感想を抱くものでしょうか?
福島: そうですね…DSでも、時々エンジニアの方々がコードの話をすることがありますが、私はコードについては全然わかっていません。
でも、画面を見ながら「ここをこう変えたらいいんじゃないですか」といった提案をすることはあります。
私が要望を伝えると、小松さんなどのエンジニアの方々がどう実現するか話し合って、「こんな感じですね」と確認してくれます。
小松: スクラムイベントであるスプリントレビューのときに初めて成果物を見せて、そこでフィードバックをもらうフローにすると、どうしても余計な工数や手間が発生し、時間がかかってしまうというデメリットがあります。
福島さんがDSに参加して、そこで意見をもらえれば、その分修正に早く取りかかれるので、開発がしやすくなったと思います。
コミュニケーション頻度を高めることで、開発速度も上がったと感じています。
要望の背景や操作性の感覚まで理解
福島: 以前は週に1回程度のミーティングで、こうしてほしいと要望を伝えても、意図が正しく伝わっていないことがありました。でも今は、小さなことでも密に確認できるので、とてもいいと思っています。
以前のことを考えると、私たちも要望を伝えるときに、背景までしっかり説明できていなかったんだなと気がつきました。
直接話をすることで、細かいところまで伝えられるようになったのは良かったです。
榎本:具体的にどのようなエピソードがありましたか?
福島: 例えば、画面の右上と下の方にボタンがあるのですが、実際に使ってみると、右上の方が操作の流れとしてスムーズだと気づきました。そういった気づきを伝えられたのは良かったです。
意外と私たち自身も、使ってみて初めて気づくことがあるので、そういった改善要望を伝えられるのは大きいですね。
小松:確かに、そういうちょっとした違和感ってありますよね。例えば、バイタルサインを入力する順番について、ナースの方々がかなりこだわりを持っていることに少し驚きました。
一般的なルールはないそうですが、介護施設で慣習的に決まっている順番があって、それがナースの間でも共有されているようです。例えば、みんな体温から入力し始めるといったことです。
現場から遠い開発者だと「なぜそんな順番にこだわるのか」と思いがちですが、そういった背景が伝わってきたのは良い経験でした。
開発後のユーザーアンケートから得た手応え
操作性のために細部までこだわった開発
榎本:小松さんと福島さんが、DD開発で特に注力したポイントは何ですか?
小松:ナースがマニュアルを見ながら他の作業をしやすいように、表示サイズを調整したことです。
電話応対中にマニュアルを参照しつつ、同時にレポート作成などを行う際のレイアウトを最適化するため、ナースの意見を取り入れながら細かく調整を重ねました。
榎本:開発後にアンケートも実施しましたが、そこで、ナースの方々から最も多かった意見は何でしたか?
小松:アンケートでナースから最も多かった声は、着信時間がオンコールレポートに自動反映されるようになったことへの評価でした。
これは私たちエンジニアにとっては比較的簡単な改善点だったのですが、実際のユーザーにとっては非常に大きな改善だったようです。
ナースの方々の意外な反応に驚くとともに、現場の声に耳を傾けることの重要性を再認識しました。
福島:私自身もオンコール業務に携わっているので、DDが使いやすくなっているという自信はありました。
実際にナースからも、業務がスムーズになったという声が多数寄せられ、嬉しく思っています。特に、着信時間の自動記録など、細かな改善の積み重ねが評価されているのを感じました。
榎本:DDの導入により、福島さん自身の業務はどのように変化しましたか?
福島:以前は、電話を取った後に別のツールを開いてレポートを作成する必要があり、その都度画面を切り替える手間がありました。しかし、DDではその必要がなくなり、業務の効率が大幅に改善されたことを実感しています。
DD開発を通して変化した関係性
オンラインツールも活用しつつ直接コミュニケーションを
榎本:小松さん自身、今回の開発を経て、福島さんや他のナースの方々との関係性はどのように変化しましたか?
小松: 以前は主にカスタマーサクセス部門を通じてナースとコミュニケーションを取っていましたが、今回のDDの開発を機に、直接やり取りすることが増えました。
疑問や相談があれば、すぐに聞きに行ける関係性が築けたことが大きな変化だと感じています。
榎本:福島さんにとって、エンジニアと直接コミュニケーションを取れるようになったメリットは何ですか?
福島:エンジニアの方々はITに関する知識が豊富なので、ナースが抱えるパソコン周りの問題についてもアドバイスをもらえるようになりました。
わからないことがあれば気軽に相談できる環境は、私たちにとって非常にありがたいです。
DDの開発を通じて、このような関係性を築けたことは大きな収穫だと思います。
榎本:小松さんと福島さんは、物理的には離れた場所で働いていますが、コミュニケーションの面で工夫していることはありますか?
小松:福島さんは沖縄、私は東京と、物理的には離れていますが、オンラインツールを活用することで、まるですぐ隣で一緒に働いているような感覚でコミュニケーションを取っています。距離を感じさせないように、頻繁に連絡を取り合うことを心がけています。
気兼ねなく相談できるけど目的意識を忘れない距離感で
榎本:良好な関係性が築けている一方で、仕事を進める上で気をつけていることはありますか?
福島:お互いに良好な関係性を築けていることは嬉しいのですが、あくまでも仕事が目的であることを忘れないようにしています。プロジェクトを円滑に進めるために、適度な距離感を保ちながらコミュニケーションを取ることを心がけています。
例えば、ちょっとした要望だと、小松さんをはじめとする開発メンバーは「すぐできますよって」言ってくれるのですが、それに甘えずに、私達の中で優先順位をつけながら伝えていくよう気をつけています。
榎本:その点、小松さんは改善要望などをどう整理しているんですか?
小松:改善要望などは整理はしているんですけど、どうしても実際に使う人が一番何が困っているかわかっていると思うので、そこは相談しつつ優先順位を決めた上で、高いものから対応していくようにしています。
榎本:お二人のやり取りを聞いて、お互いに優先順位を付けて納得しながら進めているというのは、とても大事なことだと思います。ここをちゃんと話せる関係性ができているというのは、すごくいいことだと感じました。
今後にむけて
さらなる付加価値の向上や利便性を求めて、まだまだ開発は続きます
榎本:DDの今後の開発計画を教えてください。
小松:今後は、新たにビデオ通話をできるようにしたいと考えています。
実際にサービスを使うナースさんたちと一緒に、どういう形で実装すると使いやすいとか業務効率が上がるのかを考えつつ進めていきたいと思っています。
今まではオンコールナースの業務を中心に見ていましたが、今後は介護施設側の開発も視野に入れているので、実際の施設に行って業務フローや現場を学ぶことも重要だと考えています。
福島:今回、私たちが密にコミュニケーションを取りながら開発を進めたことで、使いづらかったシステムが使いやすくなりました。これによって、契約している介護施設に提供できるサービスの質の向上にも繋がったと考えています。
今後もエンジニアとナースが一緒になって協力しながら良いものを作っていけたら、とてもうれしく思っています。
榎本:エンジニアとナースが、それぞれの専門性を活かしながら共創したからこそ、より実用的で使いやすいDDを開発することができたんだなあと、改めて実感しました。
今後も異なる視点を持つメンバーの協力体制をさらに強化することで、より質の高いサービスを提供し、顧客の満足度向上に繋げていきましょう!
本日はインタビューにご協力いただき、ありがとうございました!