シャープが描く未来構想に不可欠な"IT人材"を、迎え育てる人材強化の最前線 | PEOPLE×WORKS
企業にとって、"IT・AIの活用"が経営に大きく影響する時代。シャープでは本社直轄組織として「IT戦略統轄部(以下IT戦略)」を置き、全社のDX化を強力に推し進めています。最大のテーマは、原動力...
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家電製品メーカーから“AIを活用したサービスを提供する企業”へと、大きな転換期を迎えたシャープ。成功のカギを握るのが、全社のDX化を推し進める「IT戦略統轄部」です。2025年1月、部門のトップに新たに就任した統轄部長の重田さんに、思い描くビジョンを聞きました。
“面白い会社やな”。学生時代に「インターネットでチン♪」というシャープのCMを見た時、私はそう感じました。1999年、ちょうど就活を控えていた頃の話です。「この会社に入ったら、好きなことをやらせてもらえるんじゃないか」と思ったのが、入社のきっかけでしたね。
実際、Androidスマートフォンの開発部門 で、“おサイフケータイ”の開発に携わった時は面白かった。まだ世の中にないものを生み出す魅力にハマりました。その後、ヘルシオ やロボホンなどがしゃべる「音声対話システム」の基盤づくりを担い、その流れでIoT家電のクラウドサービスを手掛け、これまでAIoT(AI×IoT)」 の領域で様々なプロジェクトを動かしてきました。
2025年1月、新たに任された「IT戦略統轄部(以下IT戦略)」は本社直轄の組織で、基幹システムの統合や データセンターの完全自動化など、シャープ全社のDX化を推し進めている部門です。これまで私は社内システムを“使う側”にいたのですが、正直“つくる側”のことがあまり見えていませんでした。IT戦略が取り組んでいることが何なのか、私たち“使う側”に何を求めているか、なかなか伝わってこなかった。就任の打診を受けた際、「なぜ伝わりづらいのか」ということに単純に興味が湧きましたね。そして、それを変えたいと思いました。
IT戦略と各事業部がさらに強くつながれば、きっとDX化への挑戦はグッと前に進むはずです。これまで取り組んできたIT改革を次のフェーズに進めるためにも、自分がやるべきことは数多くあると感じています。
シャープは、長年掲げてきた経営信条「誠意と創意」に基づき、新たなコーポレートスローガンとなる「ひとの願いの、半歩先。」を策定しました。人びとの日常を見つめることで気づく課題に対し、スピーディーに、着実に、「半歩先」の解決策を実現していく。そのためにも、シャープは今、従来の家電製品メーカーから“AIを活用したサービスを提供する企業”への転換を図っています。SHARPブランドをグローバルに拡大していくために、「AIoT家電の強化」や、暮らし全体を支える独自サービスの展開、また働く環境に目線を向け、ビジネス向けの事業として当社のサービスを通して顧客のDXを支援する取り組みにシフトしていこうとしています。 この4月には、会社として対外的に“デジタル化を推進していく”という方針が出されました。当然、様々な経営判断の場面においても、データを使うこととなるでしょう。そこで必要となるのが、私たちIT戦略の力。ビジネスをしっかりと支えるための仕組みづくり、経営判断のためのデジタル化に、本気で挑んでいきたいと思います。
同時に、社内へ向けての情報発信もしっかりと行っていく考えです。まず取り掛かったのが、従業員エンゲージメントサーベイの分析。ITシステムに関して、社員一人ひとりがどう感じているのかを知ることから始め、今は見えてきた課題の解決(たとえば、ネットワークシステムの改善など)に取り組んでいる真っ最中です。今後はさらに、各事業部との相互理解を深めていきたいですね。
私たちに求められているのは、「どんなデータをどう使って、何を成し得ていくのか」をきちんとデザインすることです。それができれば、ビジネスをいかにデジタル化するかが見えてくるはずですから。具体的には、各事業部がもっているデータを、いかに集約していくかが、大きなポイントになります。
たとえば、A事業部とB事業部の2つの事業部があったとします。それぞれの部門には、これまでの事業活動や付随するデータが蓄積されています。各部門が保有するデータを、システムを介して相互にかけ合わせることができたなら、より全体像を見渡した解像度の高い分析ができるようになると思うのです。
シャープが今後、生成AI対応の家電や、ITと通信技術を融合したBtoBのソリューション事業に力を入れていく中で、「セキュリティ」は非常に大きなテーマになります。特に、個人情報を多く収集するスマート家電や、顧客情報を扱うビジネス分野に関してはものすごく重要。ここが脆弱だと、今後伸ばしていきたい“ブランド”そのものを壊しかねません。IT戦略としても、セキュリティを高い水準まで引き上げられるよう力を入れていきます。
私自身、事業部でAndroidのセキュリティ対策に長年携わってきた経験があるので、自分の知見も活かしたいですね。とはいえいくら力を入れていくといっても、セキュリティ対策は強化しようと思えば際限がないもの。的確にリスクを判断しながら、対策を練る必要があります。その点において、これまでの経験が活かせるのではと感じています。
IT戦略は 、自分たちで事業を生み出すことはできません。けれど、シャープ全社の事業スピードを速めることができる部署です。つまり、会社がどういう方向に向かっているのかを知り、これがないからできないではなく、前に進もうとしているスピードを落とさないようにすること。 これは、部門を率いる私自身のミッションだと考えています。私たちの取り組みを経営陣に理解してもらうことも大切ですし、経営判断に必要な情報をしっかりと提供していくことも必要でしょう。
“率いる”と言いましたが、IT戦略各部門の采配については私が直接介入はぜず、それぞれのマネージャーに完全に任せています。そこは心配していません。私の役割は、全体のベクトルがずれないようにすることと、新しい提案やチャレンジがきちんとカタチになるよう、道筋をつくることですね。
DXなどの IT改革を進める原動力は、いうまでもなく一人ひとりのエンジニアです。その点シャープは、エンジニアが仕事を楽しめる会社。私自身、25年間ここで仕事を続けているのも、そこが一番大きいように感じます。
たとえば、「こうした方がもっと良くなる」と提案すれば、「ええやん、やってみようや」と返ってくる。最初から否定されることはなく、まずは一回やってみよう!という風土が根付いているのです。もちろん私も、若手エンジニアから何か提案されたら、迷わずそう言っちゃいますね。
私の立場から言うと、そうやって提案してくれる、提案しやすい環境づくりが課題です。たとえば、目の前の仕事が忙しすぎて“考える時間”がつくれなければ、提案しようにもできない。そこは、やるべきことの選択ができるようにしたいと意識しています。「今やらなくてもいい仕事」は止めて、業務に余裕を持たせることも必要だと思っています。
ITエンジニアにとって最も大切なことは、ブレることのない「目的意識」ではないでしょうか。どうしても私たちは、“自分のつくるシステムがどう使われているのか”が見えにくい位置にいる。すると、何のためにつくるのかという「目的」ではなく、どう作るかという「手段」に目が行きがちです。
そうではなく、最終的にこのシステムを使うことで、どういう効果が得られるのかをきちんと意識することが大切。それができれば、今何をすべきか、あるいはどんな能力を身につけるべきかがハッキリと見えてくるように思います。必ずその先に、「こうしたらいいかも」という新しいアイディアが生まれてくるはずです。
もうひとつ、実は私は、出来る限り「手を掛けずに仕事をする」ことを心掛けています。言い換えれば、パフォーマンス良く仕事をこなして、余白をつくる。そうすると、空いた時間に自分の知らないことを調べられる。新しいことをインプットできる。これが非常に、エンジニアにとっては重要かなと思います。
ぜひ「外の世界」を知りましょう。ITの仕事をしていると、目の前のことに集中してしまいがち。世の中で何が起こっているのかを見過ごしてしまうのは、エンジニアとしてとてももったいないことです。たとえば他の会社ではどんなツールを使っているのか、次に来る技術はどんなものなのか。自分から情報を取りに行ってください。少しでも気になったら自分で調べて試してみる。そういう人はきっと大きく成長できますよ。できれば、それをこの場所で!私たちと一緒にIT改革に挑みながら、成長してほしいと思います。
※記事内の部門名、役職名、内容はインタビュー当時ならびに掲載当時のものです。