※こちらの投稿は実際にあったエピソードを耽美的・ポエティックに書いたものです。
雨粒がまだ残る朝。
服の袖に、昨日の焦りが滲んでいる気がした。
デスクの上には、使い込まれた名簿と冷めた缶コーヒー。
電話をかけるたびに、心のどこかが削れていく。
「今は忙しいので、後日にしてもらえますか?」
――またか。そう思いながらも、受話器を離せなかった。
「では、30秒だけ。要点だけお伝えさせてください。」
その瞬間、何かが切り替わった。
理想の採用像、支援後の企業の変化、内定承諾率を上げた具体策。
全部を詰め込むように、短刀のように、言葉を研いで差し込んだ。
相手の呼吸が変わるのがわかった。
「……その資料、もらえますか?来週30分、空けます。」
受信音が、胸の奥で跳ねた。
たった5分の会話が、こんなにも世界を変えるなんて。
冷めきっていた缶コーヒーが、急に甘く感じた。
あの一言を引き出すために、また次の番号を回す。
――次に鳴る受話器の音の先には、どんな“未来”が待っているのだろう。
…後半に続く。