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デジタルの力で結婚の文化を“守り、育てる”。顧客貢献にこだわる行動家、DX推進室での新たな挑戦

煩雑化する紙による顧客管理や資料作成、手間を要するFAX経由の受発注や電卓を使った見積もり計算。もしも、こうした作業をデジタルに置き換えたなら?長くアナログが主流だったウエディングの現場の手間やコストが削減されたなら、そこから生じる“余裕”は、きっと結婚式を挙げるカップルへの新たな価値提案につながっていく。結婚式の可能性は、今以上に、どんどん拓けていくかもしれない。

そんな未来を想像させ、創造するは、株式会社ウエディングパークのDX推進室。同部署はウエディング業界のDX支援強化を目的に、2020年5月に新設された。

急速なデジタルツールの発達と普及、新型コロナウイルスによる生活様式の変化などから、デジタル化への転換がますます叫ばれている2021年。DX推進室の新室長に就任した小笠真也は、組織の目指すところとして「デジタルの力で結婚の文化を守り、育てたい」と話す。

“変革”の印象が強いデジタルを活用し、長年築かれた結婚の文化をどう守るのか? 「顧客貢献」を第一に躍進してきた小笠の経歴を振り返るとともに、DX推進室の展望を尋ねた。

■プロフィール
株式会社ウエディングパーク
DX推進室 室長
小笠 真也(おがさ しんや)

2013年ウエディングパークに新卒入社。入社後、アカウントプランナーとして主に関西エリアのクライアントのインターネット集客を支援。2016年に大阪営業所長を経験した後、同年7月より設立されたアドテク本部(現デジタルマーケティング本部)の営業責任者に着任。2021年よりDX推進室 室長を兼任、現在に至る。

危機感を忘れるな。父の教えと家族愛が導いたウエディング業界

ー小笠さんは、2013年に新卒でウエディングパークに入社しましたね。そもそも、ウエディング業界を志望した理由は?

就活当時、世の中がガラケーからスマホに変わり、FacebookやTwitterなどのSNSが台頭し始め、ITやベンチャー企業が盛り上がっていました。先進的な業界なだけに、会社の上下関係を気にすることなく、積極的にチャレンジできそうな雰囲気に惹かれたんですよね。

特に先鋭的な「ネット広告」と、長年の文化や伝統が息づく「ウエディング」をかけ合わせた事業は、市場としての可能性を秘め、世の中的にも価値の高い事業なのではないかなと。この分野なら、自ら挑戦し成長する機会がより得られるのではと予感したんです。

ー 自己成長を叶えられる環境を求めていたんですね。

そうですね。とにかく成長角度の高い環境を重視していました。今思うと、父親の影響があったのかもしれません。父は超がつく理系で無口なんですが、私の上京前日、初めてふたりで飲みに行ったときに「危機感を忘れるな」と言われました。これまで育ってきた環境や生活は当たり前じゃない。「自分の力で道を切り拓く、自立した人間になる大切さ」は、昔から伝えてくれていた気がします。

その点、ウエディングパーク社は、“インターネットの黎明期”と呼ばれる創業1999年から「デジタル」×「ウエディング」に取り組み、その分野において業界を牽引する存在になると豪語していた。強気な姿勢に惹かれたんです。

何年も前の父親の言葉を覚えているのも、その言葉にどこか重なる部分があるウエディングパーク社に入社したのも、「家族愛」が強い方なのかもしれません。それゆえに、この業界にたどり着いたような気もしています。

自己成長から顧客貢献への転換。社内のトッププレイヤーに

ー 入社後、思い描いていたような自己成長は叶えられたのでしょうか?

それが、入社してから2年間は「自己成長」へのこだわりが逆に足枷となってしまって。営業に配属されたのち、早く結果を出したい一心で、広告の勉強やロールプレイングも意欲的に取り組んできました。万全の準備で提案に臨み、知識やスキルも身についてきたはずなのに、一向に売上を伸ばせずにいたんです。直接経営者にお会いするも、提案終わりに「時間の無駄だね」と言われたことも。ただ、自分では何が悪いのか分からなかった。

そんな折、当時の上司であり、現担当役員の房から「小笠の結果はもういいから、顧客貢献に向き合いなさい」と言われたんです。ハッと目が覚めましたね。これまでの営業は起点が常に「自分」にあったけれど、本来は「お客様」にあるべきなんだと反省しました。

ー 上司からの「顧客貢献」という言葉を、小笠さんはどのように捉えたのですか?

入社以来つけている営業日記を見返すと、自分が考える顧客貢献は「お客様の利益を上げ、業績に貢献すること」だと書いていました。お客様の売上を上げるためには、まずお客様の売っているものを理解することが不可欠。そう結論づけ、お客様が保有する式場の特徴や、現場で働いている人のことなどを徹底的にリサーチするようになりました。経営者に会える営業の特権を活かし、直接質問したり、改めて式場見学に伺ったりもしましたね。

とにかくお客様と直接話すことを大切にしていたので、当時のアポ獲得件数は社内トップクラスだったと記憶しています。アポの時間の使い方も見直すようになり、当初は自分が話すばかりだったのを、お客様に質問したり、話してもらう時間を多く取るように。

提案資料も「ペライチ(紙1枚)」に変更しました。事前にお客様のニーズを理解し、課題の認識が揃っていれば、膨大な資料は不要だと気づいたんです。結果、営業のスタイルを大きく変えた2015年に、社内で営業部門のベストプレイヤー賞を受賞しました。

アドテクの可能性を信じ、新部署の立ち上げから全国行脚でセミナーを開催

ー その後、関西エリアの営業所長を経て、2016年にアドテクノロジーの活用を提案する「アドテク本部」(現デジタルマーケティング本部)を先輩と二人三脚で立ち上げたとか。創設の経緯が気になります。

当時は、現デジタルマーケティング本部長を務める大竹とアポに行く機会が多く、ウエディング業界におけるネット広告の必要性や可能性についてよく話をしていました。大竹は前職でもネット広告の営業マネージャーや本部長を担当してきた分、説得力もあって。私自身、最初はアドテクへの理解が乏しかったものの、学ぶにつれその可能性を感じ、お客様とお話をするなかでも必要性を感じるようになりました。

それまでウエディング業界における広告は出稿する雑誌の種類や面、大きさなど「どこに出すか」が重要でしたが、テクノロジーによって「誰に出すか」…つまり個人のニーズに合わせた広告出稿を展開できるようになってきた。

ー 巨額の費用をかけて不特定多数の人に広告を打っていたのが、アドテクの進化によってより効率的に、効果的な訴求が可能になってきたと。

その通りです。この変化に対応しないと、広告費用だけがどんどん高くなってしまう。とはいえ、結婚式場は日々の営業に精一杯で、自分たちだけでアドテクに関する実情や市場の変化をキャッチアップし、対応する余裕はないはず。当時はクライアントの間でのニーズが高かったわけではありませんが、今後必ず必要になってくるだろうと確信し、大竹と「アドテク本部」の立ち上げを会社に直談判したんです。

結果、無事に「アドテク本部」の立ち上げに成功。最初は部署メンバー3名、営業担当は私ひとりのミニマムスタートを切りました。

ー 立ち上げ後はどのような滑り出しだったのでしょうか?

当時は業界におけるアドテクの認知も低く、事例も少なかったため、その重要性を理解してもらうのに苦労しましたね。啓蒙活動としてパートナー企業の担当者と全国行脚でセミナーを実施したんです。アドテクを活用して先進的な取り組みをしている結婚式場にも登壇いただき、事例を紹介してもらいました。登壇企業からみれば、競合に手の内をさらけ出すようなもので、参加するメリットはゼロに等しかったはずですが、テクノロジーを活用して業界全体を盛り上げたい私たちの思いに共感し協力をしてくださりました。自分の限界を部署の限界にするのではなく、社内外問わず、協力してくださる方を巻き込んで市場を開拓していきましたね。当時協力してくださった方々にはとても感謝しています。

ー そうしたアプローチを通じて、クライアントの反応は変わってきましたか?

時代の流れもあるかとは思いますが、大きな変化を感じました。アドテクの認知にとどまらず、お客様のほうから「リスティング広告における御社の強みは何ですか?」と、具体的な商材名もあがるようになりました。「アドテクって何?」から「どこにアドテクを活用した広告を発注しようか」のフェーズに移り変わってきたなと。

また、根気よく啓蒙活動を続けたり、お客様が必要とするならアドテク以外のことも相談に乗ったりしていたことで、お客様からの信頼度が増したように感じます。「一旦年間数百万円を小笠くんに預けるから」と、人柄を見込んで発注いただくこともありましたね。

デジタルで結婚の体験価値を高め、競争力の高い業界へ

ー アドテク本部でデジタル活用の知見と経験を貯め、2021年より「DX推進室」の室長に就任。改めて、同部署の役割を教えてください。

DX推進室は、アナログが主流なウエディング業界における現場のストレス…具体的には時間やコスト、働く人たちの精神的な負荷を、デジタルによって解消することを提案します。これまでの経験から、顧客管理や議事録を紙で管理している企業も多く、事務所に膨大な紙の資料が積み上げられている場面を目の当たりにしたこともありました。それ自体が悪だとは思いませんが、管理するのに手一杯で、有効活用まで手が回らない課題もあるはずです。

私たちが提供するサービスのなかにはAIを活用したものもあります。AIの活用幅が広がれば、お客様との打ち合わせ内容を書き起こしたり、手書きメモを瞬時にスキャンしてまとめたり…といったことも可能になるでしょう。

ー 顧客管理や見積もり計算など、これまでアナログで行われ煩雑化していたものも、大幅な効率化が見込めそうですね。デジタルによって現場に変革がもたらされる。

「デジタル」と言うと「変革」のイメージが強いかもしれませんが、私たちは「今が悪いから変えたい」と思っているわけではありません。あくまでDX推進室の意義は「デジタルによって結婚の文化を守り、育てる」ことにあります。赤の他人同士が理解し合い、一緒に家族として生活していくという結婚の文化は、長年築かれた伝統あるもの。それを“変える”と言うのはおこがましいなと思うんです。

一方、2048年には「日本の人口が1億人を割る※」と言われ、ウエディング業界の人材難は加速の一途をたどっています。人が起点となるサービス業としては大打撃です。長年築かれた結婚の文化を守り続けるためにも、DX推進室はデジタルの力で現場をサポートしたいです。

ー 具体的に結婚の文化をどう「守り、育てていく」のでしょう?

まずは、市場の競争力を高めることが重要だと思っています。結婚式は単価が高い分「これだけのお金をかけるなら」と、車や家具、家電など他の商品に目移りされやすい。そんな条件下でも選ばれるためには、結婚式 、ひいてはウエディング全般の体験価値を上げる必要があります。デジタルの力で現場のストレスが軽減すれば、現場の人たちがこれまで以上にカップルに向き合え、提案内容やコミュニケーションの充実から結婚式の体験価値も上がるはずです。

ー ウエディングの現場で働く人たちがカップルに向き合う時間を無理なく増やし、顧客体験の価値を上げることで、業界全体の市場力を高めていくと。

その実現に向け、DX推進室は開発力・技術力を武器に、支援内容や提供サービスの充実を図っていくつもりです。20年以上前にインターネットが出てきてから、インターネットがある社会が当たり前になったように、これからAIをはじめとするデジタル技術が業界問わず、大きな影響を与えると考えています。

特にAIの活用は、ウエディングパーク社が業界内でもいち早く目をつけ、注力している領域になります。2016年に創設した「Wedding Park AI Lab」という研究室にて貯めてきた知見と、創業してからの20年間で培ってきた経験を総動員し、業界全体の市場力を高められるようウエディング企業の皆さまと一緒にインパクトのある挑戦をしていき、競争力の高い業界へと盛り上げていきたいです。


※内閣府「平成24年版 高齢社会白書

(取材・文 なかがわあすか)

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