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2020年に始まった「Wantedly VISIT」のデザインリノベーションプロジェクト。ユーザーが操作するプロフィールやメッセージ画面を根本から刷新したこのプロジェクトにおいて、その中心的役割を担ったのは、当時新卒入社1~2年目の若手メンバーでした。
今回は、そんな活躍中の若手メンバーより、新卒入社3年目のプロダクトデザイナー・田中悠一を取材。Wantedlyの魅力や今後のビジョンについて語りました。
<編集・写真:後藤あゆみ / 執筆:藤田マリ子>
デジタルなモノづくりへの扉を開いた『サマーウォーズ』
ーー田中さんがデザインに興味を持たれたのはいつ頃だったのでしょうか?
田中:物心ついたときから、モノづくり好きでした。母は美大卒、父はディスプレイなどの設計士と、両親ともデザイン関連の仕事をしていたので、その影響を受けていたのだと思います。
その後デジタルなモノづくりに興味を持ち始めたのは、中学2年生のとき。映画『サマーウォーズ』を観たときに、作中で描かれる仮想世界「OZ」の世界観に衝撃を受け、Illustratorなどを使って、グラフィックデザインにも取り組むようになりました。こういう世界観を、自分も表現できるようになりたいと。
ーーその後はどのようにデザインの勉強を?
田中:母には「産みの苦しみは大変だから、美大には行かないほうがいいんじゃない」と言われていて。それならアプリ開発ができそうなところに行こうと、大学では情報工学科に進学しました。大学ではバックエンド処理、サーバー構築といったプログラミングの技術などを学びながら、アプリの企画から実装までをすべて自分でやっていたのですが、あるとき“UIデザイナー”という職種があることを知って。「UIデザインだけをやれる仕事があるんだ!」と衝撃を受け、自分もUIデザイナーを目指そうと、独学で勉強を始めました。
ーー独学で勉強されていたんですね。就職活動の際は、どのような軸で企業を探していましたか?
田中:まず「事業会社である」こと。その上で、「複数サービスを展開している」こと。この2つを条件に、就職先を探しました。
制作会社ではなく事業会社に行きたいと思ったのは、「とことん追求したい」という思いがあったから。制作会社の場合、納期やクライアントの意向によって、自分の納得いくところまでつくりきれないままデザインが世に出てしまうこともあると思うんですが、事業会社であれば、改善を重ねながら、自分のいいと思えるデザインを追求できると思ったんです。
一方で、1つのものに固執してしまうと、クリエイティブの幅が狭まってしまうと感じたため、さまざまな知見や視点を得るためにも、複数サービスを展開している事業会社がよいなと思っていました。
ーーWantedlyには、どのようにして出会われたんですか?
田中:インターン先を探すのに、Wantedlyを利用していて。その中でも、実務に携われるインターンがないかと探していたところ、Wantedlyのデザイナーインターン募集を見つけました。
その後、カジュアル面談の際に、Wantedlyのクリエイティブをいろいろと見せていただいたのですが、そのときに「すごいクールだ!」と一気に引き込まれて。
ーー入社の決め手になったものは、何だったのでしょうか。
田中:最終面接で、「デザインに対してどのようなこだわりを持っていますか」と代表の仲に質問したところ、「同じ機能を持つAとBというサービスがあったときに、自然とAを使ってしまうようなプロダクトを、つくりたい」という答えが返ってきて。「この会社は本当にモノづくりを大切にしている会社だな」と感じ、入社を決めました。
いかにして“没入感”を演出するか
ーー入社後は、どのような業務に携わりましたか?
田中:1年目は「Wantedly VISIT」のProductQualitySquadに配属され、グロースをひたすらやっていました。具体的には、自ら課題を発見して改善提案し、提案が採用されたら、UIデザインを行う、という流れです。
またその傍ら、チームの状態や社員のエンゲージメントを計る「Pulse」という新規プロダクトにおいて、slackと連携したコミュニケーションの設計を担当しました。
ーープロダクトのグロースにおいて、大変だったことはありますか?
田中:いろいろと改善案を出して実装してみるんですが、10本やって1本当たればいい方で。いくらやっても結果が出ないときは、やはり落ち込みますね。
ただ、新しい施策が外れた場合、「外れた」という結果だけは確かなものとして手元に残るので、「こっちの方向には進まなくていいんだ」「正解に1歩近づけた」と思って頑張るようにしています。
ーー他に、1年目のプロジェクトで印象深いものありますか?
※メインモーションの映像のみ抜粋
田中:年末の総会で、毎年新卒メンバーが自分たちで考えた企画を発表するのですが、その一環で、コンセプト、絵コンテからモーションまで自分一人で担当して、オープニングムービーを制作しました。
“没入感”を演出し、イベントの世界観に引き込むための道具として、絶対にオープニングムービーをつくりたかったんです。総会でオープニングムービーをつくったのは僕がはじめてだったこともあり、いまでもときどき話題にしていただいています。
ーーデザインに興味を持つきっかけとなった『サマーウォーズ』にもつながりますね。その後は、どのようなプロジェクトに携わりましたか?
田中:当時「Wantedly VISIT」には、機能追加や改善を繰り返してきたことで情報が多くなり、統一感を欠いたUIによる操作負荷の増大という課題がありました。そこで、プロダクトを根本から刷新するためのリノベーションプロジェクトが立ち上がりました。
5、6人のチームで分担しながら進めていたのですが、メッセージ画面については、コンセプト提案からデザインまで僕1人で担当しました。デザインをいまのトレンドに合ったものに刷新した上で、スクロールすることでスレッドタイトルが「募集名」から「企業名」に変わるインタラクションを設計し、“やりとりのはじまり”感の演出と使いやすさを両立しました。
また、企業とのやりとりを自然に促すUIを設計したことで、有料プランへの課金率がそれまでの2倍になりました。
▲メッセージ画面のBefore After
以前は静的な画面だったのに対し、インタラクションを導入することで、情報の重複表示を解消した。やりとりの開始時点は「募集名」が重要である一方、やりとりが進むにつれて「企業名」がより重要になってくるという仮説のもと、スクロールによってスレッドタイトルが変わるようになっている。
魅力はモノづくりに真剣に向き合う仲間たち
ーー田中さんがデザインにおいて大切にしていることはなんですか?
田中:やはり、常に意識しているキーワードは“没入感”です。例えばTikTokやInstagramって、スクロールすると無限に面白いコンテンツが出てきて、気が散る要素が一切ないですよね。こうした“無限スクロール”も、没入感を生み出すUIの例です。
UIの優れたプロダクトを使っていると、起動した瞬間からその世界観に引き込まれ、アプリと人間がシンクロしているような感覚に陥ります。
自分がプロトタイピングをするときも、細かい強度を検証しつつ、こうした“没入感”が生まれているかを確認するようにしています。
ーーはたらく環境としてのWantedlyの魅力は、どのような部分にありますか?
田中:ビジネス、エンジニア、デザイナー、いずれの職種においても、本当にモノづくりが好きな人が集まっているように思います。かつ、デザインの力を信じている人がすごく多い。
だからといって、「デザイナーが偉い」というヒエラルキーのようなものがあるわけではなくて。「良いプロダクトをつくるぞ」という目標に対して、みんなが一丸となって取り組める空気感が魅力的だと感じます。
また、3月から外部パートナーの倉光さんと隔週で1on1をさせていただいているのですが、これは非常にめぐまれた環境だと感じています。具体的には、“デザインの家庭教師”のような形で、スキル向上のための課題を出していただいたり、アウトプットやキャリアに関する相談に乗っていただいています。デザイナーの成長に、会社が投資してくれていると感じますね。
ーー今後はどんなデザイナーを目指していきたいですか?
田中:一言で言うと、常識や既存の枠組みに囚われない“クレイジー”なデザイナーですね。いま、「世の中のUIデザインはコモディティ化している」と言われているんですが、実際にデザインをしていると、事業指標や画面サイズといった制約に囚われていると感じることがしばしばあります。でも、本来デザイナーは、そうしたルールを一旦無視して、理想を描くべきだと思っていて。
コモディティを脱して、まったく新しい価値を生み出すために、ルールを破り、超えていくという意味で、“クレイジー”なデザイナーになりたいと思っています。