こんにちは。ウォンテッドリーでエンジニア採用を担当している村上です。
2026年9月28日、ウォンテッドリーはAIアプリ「Mendy by Wantedly」(以下、Mendy)をリリースしました。
Mendyは、転職エージェントとのやりとりをサポートする、一人ひとりに寄り添う転職AIエージェントアプリです。エージェントから届くメールをまとめて管理でき、返信文面の案づくりや、スカウトが自分の経歴や希望条件にどれくらい合っているかの判定をAIが手伝ってくれます。キャラクターのモデルになったのは、深海に住む小さなタコの仲間「メンダコ」です。
プロジェクトのキックオフからリリースまでの約4ヶ月間、担当チームは試作と改善を何度も重ねてきました。
今回は執行役員CTOの安間が聞き手となり、Wantedly VisitでAI機能やAIを使った新しいプロダクトを開発している「Visit AI Squad」のメンバー3名に、Mendyの開発秘話を聞きました。
プロフィール
市古 空 Visit AI Squad リーダー / PdM 兼シニアバックエンドエンジニア
学生インターンを経て新卒で入社。基盤開発からプロダクト開発に移り、AI機能の企画から実装、グロースまでを担当。Mendyではプロジェクトリードを務めた。
小室 光広 Visit AI Squad / エンジニア
SIerを経て入社。キャリアAIエージェントや福利厚生サービス「Perk」のAIレコメンド機能などを開発したのち、Mendyの開発に参加。AI-DLCをはじめ、新しい技術や開発の進め方の発信にも力を入れている。
冨永 康二郎 Visit AI Squad / バックエンドエンジニア
SIerでシステムエンジニアとして働いたのち、自分でプロダクトを作りたいとWebエンジニアに転職。Mendyではメール機能のほか、開発の土台づくりや、AIが書く返信文を評価する仕組みづくりを担当した。
安間 健介(聞き手) 執行役員 CTO
キヤノンで通信ライブラリの開発を担当し、HTTP/2の標準化チームを主導。ディープテックベンチャーで技術部門の責任者を務めたのち、ウォンテッドリーに入社。VP of Technologyを経て現職。
Visit AI SquadとMendyの開発体制
安間:本日はよろしくお願いします。まず、Visit AI Squadが何をしているチームなのか教えてください。
市古:ウォンテッドリーでは開発チームの単位を「Squad」と呼んでいますが、Visit AI Squadは、WantedlyのAI機能や、AIを使った新しいプロダクトをつくっているチームです。私たちはこれまでに「ソーシングAIエージェント」や「キャリアAIエージェント」を手がけてきました。
安間:そうなんですね。Mendyの場合はどのような体制でつくってきましたか?
市古:バックエンドエンジニア4名とモバイルエンジニア2名が中心です。そこにインフラエンジニア、PdM、デザイナーが加わりました。アニメーションや画面の文言は他のチームにも力を借りましたね。
チャットのないAIプロダクトへの挑戦
安間:MendyはこれまでのAIプロダクトと、ちょっと違うところがありますよね。
市古:そうです。Mendyには、これまでのAIプロダクトにあったチャット画面がありません。ユーザーが話しかけなくても、AIが裏側で動いてくれる仕様になっています。
安間:新しいチャレンジだったのですね。チャットがないAIプロダクトって、作るうえで何が難しかったですか?
小室:これまではチャット画面のあるAIプロダクトを出してきたため、技術的には会話の履歴をどう管理するかが議論の中心でした。今回はアンビエントエージェント、つまりユーザーが意識して呼び出さなくても動くAIという考え方を採用しました。AI自身が判断して動く仕組みをどこまで用意するのか、その要件を決める議論にかなり時間を使いました。
安間:どんな点が議論になったのでしょうか。意見が分かれたりはしなかったですか?
小室:まずは、そもそも実現できるのか、という点ですね。それから作り方です。AIに判断を任せる「エージェント型」にするのか、あらかじめ決めた手順で処理する「ワークフロー型」にするのか。機能ごとにどちらが合うかを何度も話し合いました。今回は私がまず考えを出して、メンバーに意見をもらいながら合意をとっていく形で進めました。
冨永:私はMendyの中心になるメール機能を担当しましたが、難しさは大きく2つありました。1つは、メールアプリとして満たすべきことがたくさんある中で、限られた期間でどこまで作るかを決めることです。転職する人にとって何が必要で、何は最低限で良いのかなど、開発にかかる時間とのバランスを見ながら決めていきました。もう1つは、そこにAIを組み込むことです。
安間:AIが入ると、何が変わるのでしょう。
冨永:AIの処理はどうしても時間がかかってしまいます。「メールに返信する人は、どの場面で、どれくらいなら待てるのか」など、決めないといけない条件が多い中で落としどころを探し、チームで合意をとっていくのが大変でした。
動くものを作り、磨き続けた4ヶ月
安間:開発はどんな流れで進んだのですか。
市古:構想自体は2026年5月に固めていて、6月上旬にキックオフしました。そこからは正直、大変でしたね(笑)。「作って、触って、直す」という繰り返しを1〜2ヶ月続けた時期がありました。
安間:そういう進め方だと、計画も立てにくいですよね。
市古:そうなんです。ただ、直す段階に早く進まないといけないことだけは分かっていました。そこで、「最初の6週間で一通り動くものを作る」を区切りにし、7月前半には実際に動くものを用意しました。そこから9月上旬までは、触っては直す試行錯誤をひたすら続け、9月末のリリースを迎えました。
安間:開発チームからPOへの提案も多かったですよね。意識していたことはありますか。
市古:今回は企画も開発チームが主体になって進めてPOに提案していきました。そのときに意識していたことは、動くものをもとに話すことです。新しいものを考えるとき、文章だけだと話がどうしても抽象的になりがちですよね。形にして持っていくだけで、議論がぐっと進みます。そのため、ペースも月に1回とかではなく、毎週持っていくくらいの勢いでやっていました。
安間:毎週ですか。それはすごいスピード感ですね。
市古:そのおかげで、開発の区切りも「ここまで動くものを作る」と置きやすくなって、チームにリズムが生まれたと思います。
安間:振り返ってみて、うまくいったことと、次に活かしたいことを教えてください。
市古:早めに動くものを作って、改善の期間を長くとるという判断はうまくいきました。一方で、開発スピードを優先し、プルリクエストを各自の判断でマージすることも認めていました。そのせいで、あとから設計の無理が見つかり、ほぼ作り直しになった部分もありました。最初にきちんと考えていれば防げた手戻りなので、そこは学びとして次に活かしたいですね。
開発をAIにどこまで任せるか
安間:Mendyは、Claude CodeなどのAIコーディングエージェントにコードの多くを書かせて作ったそうですね。振り返ってみて、うまくいったことから教えてください。
市古:いちばんはスピードです。6週間で一通り動くものを用意できたのも、POに毎週動くものを持っていけたのも、試作をつくる手間をAIが大きく下げてくれたからです。リポジトリもバックエンドからモバイルまでTypeScriptでひとつにまとめていて、AIが全体を見ながら書けるようにしていました。バックエンドのエンジニアも、APIから画面まで通して作れました。
安間:反対に、うまくいかなかったことはありますか。
小室:AIにどこまで任せて、人がどこまで見るかという加減だと思います。今回は、AWSが公開しているAI中心の開発の進め方「AI-DLC」(AI-Driven Development Life Cycle)を取り入れました。AIと一緒に仕様と設計を固め、それに沿って実装を進めるやり方です。ただこれは、これまでの私たちの開発スタイルにそのまま適用するとうまくいきませんでした。AI-DLCは仕様をしっかり固めてから進める開発には適していると思います。一方で、施策を次々に回して仮説を確かめる私たちのような進め方だと、AI-DLCで用意されている工程を一部飛ばさないと開発スピードに追いつかないと感じました。Mendyの開発を通じて、チームやプロダクトに合わせてどこまで何をやるかを定める必要があると学びましたね 感じました。
冨永:最初は人が確認する場面を多くとりすぎてしまい、AIに任せる量を増やせず、結局つきっきりになっていました。開発を通じてどこまで人が見れば良いかの感覚がつかめたのは、次の使い方につながっています。
安間:AIが書く仕様書や設計書の質はどうでしたか。
市古:AIは大量の文書を一度に生成するため、人が読み切れないまま承認してしまい、実装の段階で「あれ、違った」と気づくことがありました。そうなると手戻りが大きくなってしまいます。
小室:加えて、生成される文書が冗長すぎるとも感じています。それをまたAIが読み込むので、無駄な情報が増えてしまいます。いま地道に続けているのは、冗長なコメントやドキュメントを消すことです。そもそも必要なコメント、ドキュメント以外は生成させないことが、後々コントロールしやすくなると考えています。
「かわいい」をどう作ったか
安間:Mendyって、ウォンテッドリーのプロダクトの中でもキャラクターの「かわいさ」が際立っていますよね。かわいさは、仕様に合っているかどうかより感覚に頼る部分が大きいと思うのですが、どう作っていきましたか?
市古:大きく分けて、プロダクトとしての役割と、キャラクターの世界観という2つの観点があります。プロダクトの面では、Mendyをただの飾りにせず、プロダクトの中で意味を持たせることを最初に考えました。そこで出てきたキーワードが「育てる」です。
安間:「育てる」ですか。
市古:はい。転職活動を受け身でこなす作業ではなく、自分のキャリアを自分の手で育てていくものとして表したかったんです。自分で動いて決めていくほど、メンダコも成長していく仕掛けがあれば、たくさんのサービスがある中でも価値を出せるのではないか。この仮説から出発しています。
安間:キャラクターの世界観のほうはどうですか。
市古:キャラクターとして出す以上、その完成度も詰めないといけません。ここはウォンテッドリーのデザイナーチームが力を注いでくれました。「2Dか3Dか」、「ちょっと生意気な感じか」、「かわいさ全開か」、「何を考えているか分からない不思議な感じか」、「曲線か直線か」など、社内でアンケートもとりながら決めていきました。決まった世界観は「直線より曲線を使う」、「Mendyは生きているので必ず動かす」といった決まりごとにして、画面のデザインに落とし込んでいます。この流れはデザイナーが主導してくれましたね。
開発中に生まれた遊び心のあるアイデアもリリースに取り入れられています。たとえばマイページでメンダコをタップすると、話すセリフが変わったり、くるっと動いたりします。
Visit AI Squadは、どんなチームか
得意なことが違うメンバーが集まっている
安間:実際に一緒に働いてみて、Visit AI Squadはどんなチームだと感じていますか。
冨永:バランスのいいチームだと思います。小室さんは新しい技術をいち早く調べて「次はこれがよさそう」と提案してくれるし、私はとりあえずやってみるタイプで、市古さんはそれをうまくまとめてくれます。全員が同じタイプだと、発想やアプローチの幅が狭くなってしまいます。それぞれの強みを活かしながら、お互いに補い合えるチームだと思っています。
小室:変化を受け入れる力が強いチームだと思います。AI-DLCを含め、これまでの開発スタイルになかった進め方を柔軟に取り入れて、しかも取り入れて終わりにせず、最後までやりきる力もあります。
安間:変化を受け入れられて、新しいことを提案できる人なら、このチームを楽しめそうですね。
市古:「楽しむ」は大事なキーワードですね。冗談を言いながら開発することも多くて、「こういうのがあったらいいんじゃない?」というアイデアもよく出てきます。議論の中で意見を言いやすい雰囲気もあると思います。
一人ひとりが小さなプロダクトマネージャー
安間:ウォンテッドリーの開発チームの中でも、このチームならではの特徴はありますか。
市古:ウォンテッドリーではどのチームでも、プロダクトを考える力が求められます。なぜそれをやるのか、どう解決するのか、最終的にユーザーにどんな価値が届くのかを数字まで追って確かめる。Mendyのチームは、それがさらに強いと思います。前例のない中で、一人ひとりが小さなPdM(プロダクトマネージャー)のように、なぜやるのか、Mendyの世界観に合うのかまで踏み込んで意見を出し、良いものを作り上げています。
職種を越えて言葉を合わせる
安間:バックエンド以外の職種とは、どうやってコミュニケーションをとっていましたか。
小室:私は主にモバイル領域のテックリードと話していました。意識していたのは共通の言葉を使うことです。私は以前、個人でAndroidを触っていたことがあり、テックリードもAndroidが得意でした。一方で、MendyはすべてTypeScriptで書かれているため、「Androidではこうだけど、TypeScriptだとこうなる」と、両方の領域の言葉を使って伝わるように話していました。
安間:もう一人のモバイルエンジニアは新卒だと聞きました。一緒に働いてみてどうでしたか。新卒メンバーにとっては、初めて関わった開発がそのままプロダクトとして世に出たことになりますよね。
冨永:自分で考えて動けるエンジニアで、すごく仕事がしやすかったです。自分が何をすべきか分かっていて、課題に対して「こうしたほうがいい」と提案もしてくれました。
このチームで働くやりがい
安間:このチームで働くやりがいも聞かせてください。
冨永:「何を作るか」から深く考えられることですね。与えられた課題を解くだけでなく、解くべき課題や優先順位を筋道を立てて提案できます。だからこそ、納得したものを作り、ユーザーに価値を届けることができます。その過程にやりがいを感じます。
市古:私も近いのですが、ユーザーの課題を解決できるところに大きなやりがいがあります。もっと身近な話をすると、いま自分たちのサービスを使ってくれているユーザーがどこで困っているのかを突き止めて、解決する。その結果、ユーザーの行動が変わるところや、喜んでくれる人を見る機会が多いんです。
小室:ウォンテッドリーのミッションは、働く人に直結しています。人生の大半の時間を過ごす仕事だからこそ、やりたいと思える仕事に就いてほしいと思いますし、自分も、世の中がそうなるためにできることがウォンテッドリーなら実現できそうだと考えて入社しました。チームとしても、技術的にもやりたいことができ、一丸となって開発を進められます。また、ウォンテッドリーは発信の文化が強いのも魅力で、私たちのチームも発信に力を入れています。
安間:最後に、Mendyをどんな人に使ってほしいですか。
冨永:メール経由で届く求人を読み切れずに困っている人ですね。Mendyは求人を見やすく整理して、自分の経歴と希望条件にどれくらい合うかも示してくれます。やりとりそのものを簡単にして、本当に向き合うべき転職の悩みに時間を使ってほしいです。
安間:ありがとうございました。
編集後記
かわいいメンダコの裏には、試作と改善の積み重ねや職種を越えた議論がありました。新しい手法を取り入れ、うまくいかなかったことも次の進め方に活かしていく。そんな姿勢に、このチームの強さを感じた対談でした。
一緒に働く仲間を募集しています
Visit AI Squadには、前例のないプロダクトを「なぜ作るのか」から考え、動くものを作りながら答えを探すことを楽しめるメンバーが集まっています。新しい技術や進め方を試すのが好きな人、職種を越えて意見を出し合いながらプロダクトを作りたい人にとって、面白い環境だと思います。
少しでも気になった方は、まずはカジュアルにお話ししましょう。Mendyもぜひ使ってみてください。
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Mendy紹介ページ:新アプリ「Mendy」を提供開始|一人ひとりに寄り添う「転職AIエージェント」