ウォンテッドリーのモバイル開発における「AIネイティブ」な品質保証への転換
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こんにちは。QAエンジニアの青柳です。
ウォンテッドリーでは、プロダクトの成長を止めることなくユーザーへ価値を届けるため、高頻度なデリバリーを重視しています。特に Wantedly Visit のモバイル開発においては、週1回のリリーストレインが走るスピード感のある環境です。
本記事では、この高頻度開発の中でQAチームがどのようにAIを活用し、単なる手作業の置き換えではない「AIネイティブな品質保証」を構築しているのか、その実践事例を紹介します。
目次
現状の課題 : リリーストレインとQAの構造的ペインポイント
実践1 : Claude の「Skills」を活用したテスト設計の形式知化
実践2 : Devinによる「QA観点」の自動抽出と効率化
実践3 : 自律型AIによる自動テストの安定化 (Accessibility ID付与)
実践4 : コード解析による仕様の可視化と自律的なQA
おわりに : QA の役割は「検証」から「品質基盤の設計」へ
現状の課題 : リリーストレインとQAの構造的ペインポイント
毎週の リリーストレイン* と施策ごとの QA を並行して行う現場では、MagicPod を活用した自動テストを導入しているものの、「当たり前品質」を維持するだけでリソースが逼迫するという課題がありました。
テスト工程が開発のボトルネックになりかねない状況を打破するため、私たちはAIを「ツール」として使う段階から、ワークフローに「組み込む」段階へとシフトしました。
*リリーストレインは、システム開発やソフトウェアリリースにおいて、決まった時間 (ダイヤ)で定期的にリリースを行う手法
実践1 : Claude の「Skills」を活用したテスト設計の形式知化
QAチームでは、テスト品質向上のために「設計/レビュー/振り返り」の3つの役割を分離して運用しています。ここで課題となるのが、ドメインごとに異なるモバイル領域固有の暗黙知やベストプラクティスの共有です。
私たちは、これらモバイル領域の知見を Claude の提唱する Skills (特定のタスクを実行するためのプロンプトや知識をパッケージ化したもの) として集約しています。インシデントや観点漏れの情報を継続的に Skills へ反映することで、誰もが一定の品質でテスト設計を行えるナレッジを構築しています。
実践2 : Devinによる「QA観点」の自動抽出と効率化
Mobile Tech Lead の協力を得て、AIエージェントの Devin を活用した QA 効率化にも取り組んでいます。具体的には、リリース用ブランチと本番コードの差分を Devin が解析し、確認が必要な変更点 (PR) を自動で抽出する仕組みです。
- リリースに含まれる変更一覧を取得
- 動作確認が不要な変更を機械的に除外
- 残った項目を機能単位でグループ化し、iOS / Android 別の確認項目リストを出力
これにより、テスターのスキルに依存せず、網羅性の高いQA観点を瞬時に用意することが可能になりました。最終的な確認は人間の目で担保しつつ、初期設計のスピードを大幅に向上させています。
実践3 : 自律型AIによる自動テストの安定化 (Accessibility ID付与)
MagicPod によるリグレッションテストの運用において、UI変更によるテストの失敗 (Flaky : 実行のたびに結果が不安定になる状態) は大きな課題でした。従来は、要素特定のための Accessibility ID 付与を都度エンジニアに依頼しており、開発の手を止める要因となっていました。
現在は、この ID 付与作業を Devin を活用してQAエンジニアが行っています。QAエンジニアが直接 AI に指示を出し、コードベースを修正することで、エンジニアの工数を奪うことなく、テストの安定性と開発チーム全体のベロシティ向上に貢献しています。
実践4 : コード解析による仕様の可視化と自律的なQA
最新の仕様書が存在しない、あるいは最新の挙動を知るためにコードを読み解くしかない場面でも、AIエージェントが力を発揮します。ある大規模なリグレッションテスト施策では、Devin にアプリ全体を巡回させ、画面構造と挙動を網羅的に調査させました。
これは「仕様がわからないからエンジニアに聞く」という受け身の姿勢から、QA自らが「AIと共にコードから正解を可視化する」という自律的な姿勢への転換を象徴する取り組みです。
この調査の具体的なプロセスや、Devin へどのような指示を与えたかについては、過去のブログ記事「Devin × Gemini で挑む「仕様の可視化」。AI協働で全機能リストを作ってみた」で詳しく解説しています。AI を活用したより深い探索に興味がある方は、ぜひこちらも参照してください。
おわりに : QA の役割は「検証」から「品質基盤の設計」へ
AI をQAプロセスに組み込むことで見えてきたのは、QAエンジニアの役割の変化です。 これからの QA の主戦場は、単にテストを回すことではなく、AI が常に最新のコードと仕様を理解し、自律的に動けるための仕組み (Skillsやデータ) を整えることにあります。
本記事で紹介した活用事例が、みなさんの現場でAI活用の第一歩を踏み出すための、具体的なヒントになれば幸いです。