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ここは鹿児島県の奄美大島。世界自然遺産にもえらばれた豊かな自然と伝統を誇る地域です。
トラストバンク会長兼ファウンダーの須永珠代が学長をつとめる自治体職員の学び舎「トラストバンクアカデミア」のライブ配信を奄美から開催。チェンジ代表取締役の福留大士さんをゲストに「これからの日本経済とDX」について語りました。
あらゆる業界で進められている「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」が、少子化やデフレなどの課題をかかえる日本経済を変革する可能性を探ります。
(ライブ配信は2021年8月3日に実施)
(チェンジ福留(左)とトラストバンク須永(右)/奄美大島紬など日本の伝統技術を世界に発信するファッションブランド「ARLNATA(アルルナータ)」の装いでお届けしました!)
目次
【講演:チェンジ 福留さん】
・「日本経済」とは「国を経営し人を救う」
・日本は資産1京円を超すお金持ちの国、なのに・・・
・DXは人口減時代の解決策、つぎの産業革命は
・一人ひとりの「安くてラッキー」がデフレ要因に?
【質問コーナー】
・自治体における資産とは?
・自治体にとって資産の安全な運用範囲とは?
・これからの自治体職員に必要なスキルとは?
・「トランスフォーメーション」の実現に大事なこととは?
| 「日本経済」とは「国を経営し人を救う」
須永:きょうのテーマは「日本経済とDX」。福留さんは常に日本経済の視点で物事を考えている人なので、「日本経済」のマクロの話から最後に「地方とDX」の話をしていきたいと思います。
福留:まず「経済」という言葉の語源は、「経世済民」の略語であるといわれています。つまり「日本経済」とは、「日本国を経営して、人民を救うこと」なんです。
須永:あらためて考えたことがなかったですね。「経済」というと、どうしてもお金のことだけをイメージしがちですが、もっと大きなことを意味するんですね。
福留:「お金」というのは、生活や人生を豊かにし、幸せになるための道具です。目的はお金の先にあるのに、お金そのものが目的化しているのが今の経済なんですよね。お金を道具としてうまく使い、お金を通じて人が救われないといけない。つまり、「経営」をして、「人が救われる」というのが経済にとって重要です。
さらに、経済を語るには「人口減少」のデータを見ておく必要があります。よく「少子高齢化」と、少子化と高齢化がセットで語られますが、高齢化は長生きの証なのでいいことだと思います。
一方、社会を支える子どもたちが減ってしまう少子化は、深刻な社会課題ですね。生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに、わずか40年後の2060年には4000万人いなくなるとされれています。須永さん、地方をくまなく回ってきて人口減少を感じるところはありますか?
須永:ものすごく実感しますね。数字だけでなく目でわかるくらい人口減や高齢化を感じます。
福留:人口減は地域経済に大きな影響をおよぼしています。地域経済をすべて足すと日本経済になります。
福留:高齢化はいいことですが、国や地方の財政で考えるとどうでしょう?
自治体に地方交付税で入るお金は年間約15兆円ありますが、なんと、そのうち13兆円は社会保障費に充てられます。つまり、自治体が何か新しい政策を実現したいとき、政策的経費に投じられる枠がほとんどありません。
須永:そうですね。それはあらゆる首長さんからよく聞きます。
福留:社会インフラの維持コストと社会保障費の増大の二大要因は、これからの日本経済を考えるうえでカギになります。過去を振り返ると、給付費(社会保障制度にかかる費用)は平成2年の47.4兆円から、平成27年には114.9兆円に膨らんでいます。これが負担につながっている。
つまり、少子化と高齢化が同時に進むことが何を意味するかを考えないといけません。この数十年で社会保障費の構造改革ができなかったことは、今後の日本経済にも影響があります。
福留:一方で「子どもの貧困率」。2012年くらいから改善していますが、子どもの貧困は日本経済にとって大事なデータです。
須永:1クラス30人だとしたら、3~4人が貧困というのは多いですね。
福留:そうですね。どうやってこのマクロ環境のハンディキャップを乗り切るのかは、私たちの世代で考えないといけません。
日本は資産1京円を超すお金持ちの国、なのに・・・
福留:僕も20年弱くらい経営をしていますが、会社にはミッションやビジョンという成しとげたいことがあります。トラストバンクでいうと「自立した持続可能な地域をつくる」というビジョンや、地域やシニアを元気にして人・モノ・おカネがぐるぐる回るようにすることですね。
福留:成しとげたい事業をするには、資金を調達しないといけない。資金は、他人から借りる(負債)か、自分で用意する(純資産)かです。お金を調達したら、ITや在庫、現預金などの「資産」を運用して利益をつくります。資産を回転させて売り上げをつくり、費用を差し引いた利益が純資産に戻っていく。これが経営ですね。
ここでクイズです。日本全体の総資産はいくらでしょうか?
福留:正解は・・・・・1京1375兆円です。
負債をのぞくと、正味資産の国富が3700兆円もあります。部門別にみると、個人は2700兆円もある。日本人は大金持ちなんです。それなのに、貧困が問題になる。
つまり、高齢者や富裕層に資産が偏っていることが一つの課題としてみえてきます。
政府のセクターもみてください。これは何としても解決したいと思っていますが、負債が1335兆円あり正味資産は99兆円です。お金はぐるぐる回っているので、政府の借金が個人の資産になっていることもあります。
バブルが崩壊したあと、個人も企業もかなり負債を抱えていました。この負債を政府が肩代わりして、個人や企業が資産を増やしてきたのがここ20~30年の日本経済です。政府は個人や企業を豊かにするためにひとり気を吐いてきた。この状況をちゃんと踏まえないといけません。
福留:いまの日本のGDPは500兆円くらいなので、日本全体の資産は0.5回転くらいしかしていません。有効活用されていない。たとえば、個人資産のうち現預金だけで1000兆円もあり、なにもせずに寝ています。日本にはお金のストックはあるが、富を生み出すために使われていません。
ミクロの視点でいうと、要は「誰もなにも決めない」ということです。
消費は「車や家を買おうかな」と何らかの意思決定をします。それを「まあ、いっか」と決めない。企業も「そろそろ設備投資をしようかな。まあ、いっか」と。つまり、消費や投資の意思決定をしないことが、お金がぐるぐる回らない一番のミクロ要因です。
須永:それによってデフレが続いているともいえますよね。
| DXは人口減時代の解決策、つぎの産業革命は
福留:「DX」とは、テクノロジーを使って人々の生活がよくなることです。自治体では、行政サービスでいかに住民生活をより良く変化させられるのかがDXの主眼になります。
これまでの「トランスフォーメーション」を振り返ると、DXは第4次産業革命といわれます。第1次は蒸気機関で動く。第2次はエンジンやモーターで動く。第3次はプログラムしたとおり正確に動く。そして、第4次は状況に応じて柔軟に動くです。
福留:産業革命による変化をみると、1900年のニューヨーク市には馬車が走っていました。それが13年後、車に変わっています。僕らもスマホによる変化を経験しています。スマホが一気に普及して、通信やコミュニケーションのモビリティが高まりました。
須永:学生のころ待ち合わせで出会えなかったのが、今では考えられないですね。
福留:こうした劇的な変化が第4次産業革命です。新しいIT技術を使って人々の生活を劇的に変えようとしているのが、いまの世の中の趨勢です。
福留:さて、ここで質問です。
もし、みなさんがこの1913年に生きていたら、どんな産業を生み出しますか?産業構造の転換は、新しいビジネスを生み出します。須永さんならどうでしょう?
須永:今でいうスマホケースの感覚で、車の装飾をやりたくなりますね。
福留:いいですね。このとき、豊田自動織機の自動車部やダンロップのタイヤ、東京海上日動の自動車保険など、車から派生したすそ野は大きかった。このように、今の生活がデジタルによってどう変わるかを想像しながらDXを進めていかないといけません。
福留:はっきりいうと、デジタルは経済にとってデフレ要因にもなります。なぜなら、ネットで価格が見える化され、消費者が情報によって賢くなるからです。このパソコンはどこなら最安値で買えるか、ひたすら比較します。すると、企業もどんどん価格競争をしないと勝てない。デジタルは基本的にデフレを促すんです。
この先のトランスフォーメーションが起きる世界は、単にネットで価格比較する世界ではありません。たとえば、農作業をロボットで自動化したり、農家と消費者を直接つなげたりできます。すると、高齢化で従事者が減っている農業が人口減少時代に立ち向かえるようになる。これがDXの大きなメリットです。
須永:ふるさと納税でもいえますが、デジタルによって今までの資本主義で分断されていたものがつながりをみせています。農家と消費者が近くなりました。農家の人が食べてもらえる幸せや喜びを感じられるのも大きなポイントかなと思います。
福留:金融でもキャッシュレスはトレンドです。現金のハンドリングはすごく大変です。ATMの維持コストや輸送車に何千億円もかかる。自治体も、窓口で手数料を受けとる人件費とキャッシュレスで処理するコストを比べると、現金のハンドリングコストは強烈なんですよね。
須永:まさに人口減の時代は、キャッシュレスにすることでコストを押さえられますね。
福留:製造業は、大量生産・大量販売から、シェアする時代になりました。トヨタも、車の生産販売から移動サービスにシフトしてきました。比較大量生産の世界から個別オーダーで作られる世界への変化ですね。
須永:まさにデジタルが果たす役割ですし、多様化の点でも個別オーダー型は普及していきますよね。
福留:SDGsの観点からも、大量生産・大量消費の先には大量廃棄があります。大量のごみをどう処理しているかへの想像力が欠けている人が多いなかで、地球環境をサステナブルにするためにも適量を消費する経済に変わりつつあります。
情報産業でも、システムを毎回開発するものから、SaaS(Software as a Service)の利用型に変わっています。あるいは、無料で利用でき、広告やデータ活用によるビジネスモデル。情報産業のあり方やサービスの作り方が変わってきています。
| 一人ひとりの「安くてラッキー」がデフレの要因に?
須永:国の資産をみたとき、ぐるぐる回転せずある一定の場所に固まっている印象でした。お金が詰まってよどんでいる感じがします。
福留:よく「富の偏在」の話がありますが、政府のお金が個人にまわり、将来が心配だから貯金にまわされ、お金が銀行口座にありつづける。「金は天下の回り物」とはよくいったもので、お金は回ってなんぼです。僕が消費したお金が企業のお金になり、企業から従業員に支払われたお金が消費される。これが永遠に繰り返される。だから、デフレってだめなんですよね。
僕らは生活者として消費するには安いものを買いたい。しかし、それは誰かの生活を犠牲にしているわけで、しわ寄せが子どもの貧困などにつながる。そこへの想像力がものすごく大事です。
目先で「安い、ラッキー」と思うのは本当にダメなんだというのを、ある経営者から教えてもらいました。「こんなにおいしい日本食が数千円で食べられるなんて、海外ではないよね」と食事のときに話したところ、「数千円で食べられるということは、ここのお店の従業員や仕入れている農家の犠牲のもとに成り立っているのが想像できないのか」と言われ、痛切に感じました。
それから「日本は食が安くておいしくて、幸せだよね」という発言自体もやめようと。そのマインドの集積が今の日本経済の低迷を促していると思います。
須永:一人ひとりの行動が変われば、1京1千兆円以上の資産がある日本経済にはポテンシャルがあります。自分が安くて得した先で働いている人の給料、その家族の生活、その世帯の消費が安くなるとどうなるのか。この負のスパイラルが長く続いています。
福留:会社員が将来、収入が上がるという安心感をもてるようにすることも大事です。
須永:その不安が貯蓄に回っているということですもんね。
福留:なので、副業の解禁はよい傾向だと思います。経営者としては、副業は社員の疲弊にもつながるので会社の給料を上げたいと思いますが、少しでも「自分の収入はまだまだ上がる」と思えたら未来は明るいですよね。
65歳で定年退職し、75歳までの10年間で毎月何十万円も稼げることを想像できるようになれば、お金が貯蓄から消費に回るようになると思います。
最近、知り合いの医者から「90代の人が『老後が不安でしょうがない』と言っている」と聞きました。若い世代でいくらでも支えられる盤石な経済をつくることが課題で、そのためにDXしていくことが大事です。
須永:資産はあるので、回すだけといえば回すだけ。「株式会社日本」として、みんなで資産をどう活用していくか。どうやってお金を回していくのかを考えていきたいですね。
参加者からの質問コーナー
ここからは、参加した自治体職員さんなどとのQ&Aを紹介します。
| 土地の価値をあげる
――自治体における資産とは何でしょうか
福留:最大の資産は「不動産」です。自治体の価値は、土地の価値に紐づきます。土地の価値をあげることが、自治体のポテンシャル(固定資産税など)を上げ、地域の魅力を高めます。首長から職員まで、地域の価値をどう上げるかは、不動産の価値をどう上げるのかをひたすら考えるのが大事なポイントです。
さらに、バランスシートにない資産も重要です。たとえば、「関サバ」や「深谷ネギ」といった地域ブランドがキャッシュフローを生み出します。地域の人のアイデアはバランスシートに載りませんが、将来にわたる大事な資産だと思います。
須永:よく「よそ者の視点」といいますが、地域に根づいた人しか動かせないと思いますね。
福留:外圧で変わるケースもありますが、中の人たちが本気になって考えないと物事は変わりません。地域にアツい人たちがいるのは自治体にとって資産です。
どういう街にしたいのか、ブランドをどう育てていくのかも重要です。ブランドは品質に対する約束みたいなもので、「軽井沢に別荘を立てればまちがいない」と想像してもらうことがブランドです。人が寄ってくる仕掛けをいかにできるかが勝負です。
不動産も寝かしているだけでは、ただの空き地でしかありません。活用すれば人の流れができ、オカネが落ちる。自治体にしかできない不動産の利活用はたくさんあります。
| リスクをとることを評価
――自治体における資産とは、どこまでが安全な運用の範囲だと思いますか
福留:よい質問ですね。自治体の投資で安全な領域や可能な領域は、企業に置きかえても良い問いです。投資はリスクマネーなので失敗の方が多く、一番安全なのは現金で置いておくこと。それがいまの日本ですね。投資と消費がちがうのは、投資は価値が上がっていくことです。
価値が上がるかどうかは、そこにお金をかけたらどれだけの人が喜び、どれだけの人が集まってくるかを考えて計算しなければなりません。箱モノも「人がこれだけ来てこれだけのお金を落とす」とシビアに試算できていれば投資になります。その見積もりが甘いから、安全な投資になっていないんですよね。
そこで、データが重要になります。官民連携で民間の力を借りれば、ここにアウトレットモールを建てると何百万人来る、といった精度の高い予測ができます。
清水の舞台から飛び降りるようにエイヤーで投資するのではなく、民間の力も借りながらちゃんとデータで組み立てると安全かつ可能な投資になります。
須永:これからの自治体職員にはデータを読み解く力が必要ですね。官民連携は大事ですが、利益が先行してしまう企業も多いので、企業との付き合い方や見極め方も経営能力です。データを読み解いたうえで「決断」する。言われるがままの決断ではなく、自分たちで考え、決断する能力をもつことがすごく大事です。
福留:あとは、人を巻き込むことですね。自治体がいかに企業の投資を引き出すか。自分たちはこんなに魅力的な土地、人、仕組みがあるということ。単に「工場を立ててください」という企業誘致ではなく、「こういう志でこんな街づくりをしたいのできてください」と呼びかける。
ふるさと納税のような市民の税金以外のお金はリスクマネーにしやすいので、投資資金にして挑戦する。無謀な挑戦ではなく、民間企業を巻き込んだ科学的裏打ちのある挑戦をすることが、安全で可能な投資になっていきます。
須永:コロナでゼロリスクに向かっているなか、投資は絶対にゼロリスクはありません。むしろ、預金していることがリスクになることは十分ある。やらないリスクはあるのに、日本全体でゼロリスクの風潮があるように感じます。
福留:リスクをとって挑戦すると、一定の確率で失敗します。ゼロリスクの世界は何もしないことです。環境が変化していくなかで、チャンスをつかまなかったリスクや機会損失がしっかりと責任追及されたり、機会損失を放置していたことが責任問題になるような組織風土になると変わってくると思います。このチャンスをなぜ取らなかったのかを議論しないといけません。
いまは、やったもん負けです。やるリスクしか追及せず、やらないリスクは追及しない。一人ひとりの職員や市民が何かを変えるリスクをとりにいくこと。リスクとリターンの裏返しの関係をちゃんと理解しないといけません。日常生活もたくさんのリスクをとっています。車の利便性と事故率はそうですよね。このリスクとリターンの考え方を教育にも入れていく必要があるなと思っています。
リスクをとる姿勢が評価されないと、物事を決められないからお金が回りません。決めない理由はリスクが怖いから。その雰囲気や文化が変わってくるとお金が回っていくと思います。
須永:失敗しないと成功しない。小さな失敗を繰り返して成功率を上げていく文化をつくっていきたいですね。
| 経営とデータのスキル
――これからの自治体職員にはどのような能力が必要だと思いますか
福留:経営能力ですね。RESAS(地域経済分析システム)でデータをみて、この地域がなにで売り上げをたて、従業員(住民)の飯のタネをつくり、なにに投資をするのかという経営能力が求められます。
須永:「経済」の定義がそのまま自治体に当てはまりますね。
福留:「経国済民」の国は地域の集積です。いままでは法律や手順に沿って業務を回すことが大事でした。自動化が進んだ先に自治体職員がやるべきことは地域経営です。アイデアを形にし、最後は稼いで住民を幸せにすることです。
いまやグローバル競争で製造業が日本を守ることができなくなってきました。この地域はなにで飯を食うのか、一つ一つの地域が考えないといけない。住民も企業もです。自治体職員は一人ひとりの企業や個人じゃ考えられない大きな絵を描くことが大事です。
――これからのIT人材にはどんなスキルが必要だと思いますか
福留:データサイエンスが重要です。自治体のもっているデータは多岐にわたっていて、政策の立案から実行までいかにデータに基づいた事業をやれるか。自治体にデータサイエンス部門があってもいいなと思います。資産をどう運用してどんな風に地域の価値を上げていくのか、という地域経営や地域経済を考えて形にしていく人たちが大事です。
須永:自治体の組織編制も変わっていいのではないかと思いますよね。
| 10年後の自治体の役割は?
――まさに今は幕末ですよね。幕末時代も教育が社会を動かしていました。困難な時代ほど人材だと思います
須永:会社のスラックには「令和維新」と書きましたが、まさに起きている途中なんじゃないかと思っています。
福留:薩摩藩は幕末に財政危機に陥りましたが、ここ奄美が生み出した黒糖により蓄財できたお金が明治維新の原動力になりました。
須永:幕末に何もなかったところからサトウキビを作って改革を成しえたのだから、自分たちにできないことは全くありません。
福留:人材次第ですよね。我々の工夫でまた新しい産業を生み出し、次世代に引き継ぐ資産を築く意気込みでやっていかなければなりません。
――ただ業務をデジタルに置き換えるだけでなく、「トランスフォーメーション」まで実現するために大事なことはなんでしょうか
福留:10年後、20年後の自治体の役割はなんだろう?と考えること。自治体は住民にどういう価値を提供するのか、住民との関係がどのように変わっていくのかをイメージすることです。デジタルシフトの先にあるトランスフォーメーションがどういうものなのかをイメージすることが一番大事ですね。
須永:「安くていいよね」の一歩先を考える。従業員の給料はいくら払われているんだろう、などとちょっと先の未来を考えるだけでも考え方はだいぶ変わります。
福留:考えたもの以上にも以下にもなりません。自治体はまちづくりの投資の主体であり、不動産の価値を高める主役であることを自覚し、いかに産業を集積させるかを考えて実行する。あらゆる住民満足度をあげるための住民サービスを考える。事務はデジタル化されるので、それ以外にどんな仕事を自分たちが作っていくのかを考えることですね。
須永:職員自身がトランスフォーメーションしていかないとですね。
~終わりに~
福留:毎日の生活はマクロな話とは縁遠い。今日の晩御飯は何にしようかなとか、マクロなことはあまり考えません。日本経済の課題は多いですが、チャンスは絶対にあります。遊休資産がいっぱいあるので、いかに活用して地域のポテンシャルを開花させるかです。
ファーストペンギンとして出る杭になる人たちを期待しています。日本は出る杭が打たれることはありますが、究極まで出てくると横並びになろうという力学が働きます。お手本があらわれ、周りの自治体が嫉妬して追いつこうとするくらいに突き抜けてほしいです。
デジタルや経済のさらに上位概念が地球や自然です。それを感じさせてくれるのが、ここ奄美。日々忘れがちなことを奄美のような場所は思い出させてくれるのがありがたいですね。
このライブ配信の模様は、YouTubeチャンネル「トラストバンクアカデミア」にも動画を載せています。ぜひ、ご覧ください。