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新型(高還元)SES企業の仕組みと、今時のダークSESの市場への影響について

この辺はもう、採用の競争やそこでのグレーなトークなどもあいまってか、ポジショントークまみれな領域の話だったりもするので、本記事ではなるべく中立・客観的な角度で記事を書きたい。

なお、今回は一部、推測を多く含む内容になるので、この点もご留意頂きたい。

なんで推測かって、『見えない』様にできてんだもん。なにがどう『見えない』のかは、本記事中で説明できればと思う。

1.高還元SESってなによ?

ここで聞いたことないレベルだと、この先の話についてこれるかわからんけど。
『派遣(準委任)売上×還元率=給与』と言う仕組みの給与体系の会社があって、その中の還元率を高い数字に設定している会社さんやな。高還元の会社さんにもいくつか流派があるようなので、ビジネスモデルそのものを表す言葉ではない。

まあ建前抜いて話せば、大きな目的は、『派遣会社や他のSES会社に対して採用で優位を取りたい』という事になるだろう。【給与高くして採用】これ自体に文句がある人はまずいないと思う。

平成24年10月(2012年)の「改正労働者派遣法」の施行により、派遣元事業主はマージン率を公開することが義務付けられたという流れがあるので、本格的に【高還元】と言う言葉が用いられたのはそれよりも後の話なのではないかなと推測する。


なお、派遣会社のマージン率計算は下記の仕組みらしい。

マージン率=(派遣料金の平均額-派遣労働者の賃金の平均額)÷ 派遣料金の平均額

だいたい派遣会社の平均マージン率が30%前後だが、30%全取りできるのかというとそうでもなく、このあたりもマージンの中に含まれている。らしい。

・派遣労働者の社会保険料
・派遣労働者の有給休暇費用
・研修・教育費、福利厚生費
・その他諸経費(募集費・システム代など)
・営業利益

※ITだと平均のマージン率高めらしい
※日本人材派遣協会によると、営業利益は1.2%くらいの薄利なのだとか。

Webサイト
https://www.jassa.or.jp/keywords/index3.html

派遣会社にだけ不利になる様にも書けないしな。気を遣う記事じゃ.....。

これに対して高還元SESは、還元率の計算方法で決まったものがある訳ではない。計算方法を工夫する事によって数字を良く見せる事ができてしまうのも、現在の実情である。高還元と言っても、必ずしも派遣会社よりもマージン率が低いとは言い切れないようだ。

『派遣会社や他のSES会社に対して採用で優位を取りたい』と言う目的に対して、【マージンを低くして勝つ】と言う手段は模倣が難しい訳ではないので、高還元界隈に競合が殺到。その中のお作法が悪い連中や、もともと計算方法が違う文化(エージェントとか)出身の競合も参入して、競争が激化。
80%や90%と言う、派遣のマージン計算方法じゃどうやっても無理じゃ。と言う数字まで飛び出す事態になってきている。

今後も競争が続き、様々な工夫や小技、採用トークが編み出され、採用市場でしのぎを削って行く事になるだろう。


2.ちょっと変わった構造をしているっぽい。

高還元SESは大きく分けて、自分達で営業を行うタイプと、行わないタイプの2種が観測されているが、共通点も多い。主に採用トーク『に』会社本体側『が』影響をうけた内容が多め。

・高還元
・自由 (案件選択の権限がエンジニア側にある)
・残業が少ない
・独立支援制度がある
・取引先数が多い
・リモートワークのみOK
・副業可

などである。メリットはそのままなのでデメリットに触れると、

・個人の自由度が高い為、キャリアは個人ごとにバラバラになる
・バラバラなので、頭数を揃えて戦力化はしづらい
・派遣(準委任)売上×還元率で給与が決まるので、リーダー格ほど報酬面で損をする
・上記の個人戦重視が祟り、特にSI商流で商流を上げづらい。
・待機者が多いと詰むので、社員が一生在籍できる仕組みではない。

などがある。
責任を負うことを避けたいとか、フリーになるから会社の目的とかどうでもいいとか、フリーはヤだけど個人レベルで戦いたいとか、そういうニーズを持った人物であれば、これは特にデメリットとも言えず。また、この手の希望を持った求職者と言うのは割と転職市場のボリュームゾーンにあたる層でもあり、いわばこの辺の人を真正面から取り合いしている界隈。なのである。

(組織戦を捨てている為、実はメリデメが準委任契約で稼働するフリーランスのものに酷似しており、フリーランスになる人も特に多い層なのではないかなと推測される。還元率100%・リスクも100% がSESフリーランス)


こんなわけで、基本構造はある程度決まってくるのだが、自由度の高い高還元SESは、営業への負担が半端ないことになるので、営業機能を自社で持つかどうかと言う点も大きな意味を持ち、いろいろと戦術レベルで差が出てきて、それが戦略レベルにも影響してくる。


・営業を自社で抱える系高還元SES

フリーランスのエージェントに近い業態と言える。が、社員である為営業中にエンジニアに逃げられたりはしない。待機は離職へ直結するリスクなので、空けずに決めなくてはいけない。そのほか....、

・単価連動→所属社員の給与に跳ね返るので、なるべく高く単価取らないと
・案件選択→戦略を背景にした人員配置がしづらい
・残業が少→案件の幅が狭くなる
・リモワ →案件の幅が狭くなる

と、営業マンの腕が所属エンジニアの満足度を左右する事もあって、【奉仕型のハイスペ営業マン】の確保がとにかく重要な業態である。

営業は【エンジニアの理想と現実のギャップ】に挟まれるポジションだったりするので、ワガママなタイプのエンジニアを引いてしまうと地獄で、顧客に理不尽を押し付けたりしなくてはならなかったりする。(これそもそもモンスターを育成するやり方なんじゃねえかなとか)

この手の地雷エンジニアが増えてしまうと営業マンの離職率が跳ね上がる事となる訳であるが、もともと高還元である為、そうそう営業に高給払ったり、安易に頭数を増やすこともできない。この泣き所にどう対処しているかによって、会社ごとに差分が生まれてくるはずである。


・経験者縛りで採用
 採用ハードルが高くなる分、営業側の負担は少なくなるはず

・営業がブラックに耐える
 だいたい社長も営業で、頑張ってる。

・外注とかフリーとかまわしてペイしよう
 多くが考える方法なのだが、おそらくこれはうまく行かなくなりつつある。(後述)

なんにしても。機能的にはフリーのエージェントに近い物があって、雇用・社会保険加入などを提供するという、みんなのイメージに近い企業体。それがこのタイプなのではないかと思う。



・営業を自社で抱えない系高還元SES

今回あらたに発見された勢力。なにしろ、見えない。見えない様にできてた。

まず、営業を自社で抱える系のところで説明したように、高還元SESはそこそこ営業への負担が大きいシステムである。採用でそうとう注意をしないと、また、運用でも園児ニアが無茶言いださない様にコントロールしていかないと、営業はガンガン討ち死にをする。これらの維持、再雇用、再育成、馬鹿にならないコストなのである。高還元のシステムでは許容できない。

そんな【営業】と言う機能をアウトソースする。おそらくは現在最も進化した高還元SES会社ではなのではないだろうか。(厳密には、営業が在籍しないと言う意味ではない)


【営業のアウトソース】
SES市場では、【他社から人を借りてさらにまた他社に貸す】ことによって手数料を得るビジネスがある。それを主な生業とする会社もあれば、ソフトハウスに入社したのに社員を触らせてもらえず右から左をやるしかないという立場の営業マンも発生。このケースは少なくはない。
この又貸しビジネスは参入が極めて容易である為、競合数がとても多く、案件、とくに人材の確保が難しいという難点がある。(決裁者を抑えた高額案件か、逃げない人材のどちらかを確保できると、一気にうまく行く)

これらの【また貸しビジネス会社 又は 営業マン】に、自社の社員の営業を任せればよいのである。

このやり方は双方にメリットがあって、右から左の営業側は、渇望の【逃げない人材】を確保する事ができる。このメリットは大きい。一方、所属会社側は自社で抱える系が負う営業的なコスト・デメリットを回避する事ができる。
さらに、この営業委託先から入る売上を【100%】と扱って計算すれば、営業コストをゼロにした形で馬鹿の様な高還元率を掲げる事ができる。多重派遣のできない派遣会社には実行不可能な、ある種の到達点と言えよう。

デメリットは下記。

・自社リソースを駆使した戦略的な動きはまず無理になる
・粗利抜かれる(営業会社は安い要員にも10万とか乗せないと利益取れない)
・商流深くなる(営業会社が体制組んでないと、最短でも2社先の体制に入る事になる)
・営業は基本的に利害を共有していない

と、さすがに営業面では脆弱さも抱える。この弱点とどう付き合うかが、このタイプの高還元SESにとってのキモなのではないだろうか。

・経験者縛りで採用
未経験者の決定がかなり絶望的なので、経験者層に注力。あの手この手で採用で勝つ

・数を抱えて、確保した利益で待機者の待機分の売上減に備える
となると未経験層の採用になるが....そこは、ムニャムニャする。

・ハイブリッドで対応する
自社で営業する層と、他社に預ける層とに分ける。(しかし、大変なとこだけ自社でやるとかあんのかなあ)

こんなところかなあと推測。いや、なにしろ見えないんだよ。推測するしかできないんだ。


3.見えないってなによ?

高還元かどうかは直接的に関係ないのだけど、このあとの話につながって行くので触れておく。
以前、別の記事で商流が深すぎて見えない【ダークゾーン】みたいなものがSES市場にあるという話をしたんだけど。

字が汚くてすまねぇ..... お絵描きした。

見ての通り(?)業界のピラミッド(のつもり)なのだが。

SES市場は大きく3層に分かれていて、単価・作業内容等も分かれている。

SI層 1st 対エンド。SIerの領域
上層  2nd 大手ソフトハウスや、高商流のソフトハウス
     3rd それらの協力会社(小規模ソフトハウス)
下層  見えないゾーン(ダークゾーン)

SI層は対エンドでビジネスを実行できる能力を持つ。収益力高い
上層は、対エンドに必要なプロセスを1層に依存している企業群で、収益力は低い。

SI層の企業も、付加価値の低いビジネスプロセスをアウトソースする先として上層の企業とは共存関係にあり、このあたりの領域では、信用や実績、会社単位で提供できる価値などが重視される。
多くのソフトハウスの従業員から見えている範囲がこのへんである。


上層の底の部分には、チーム戦が不可能な事業者。フリーランスのエージェントや、前述の営業会社などがいて、上層に人材を供給している。個々のフリーランスを直接発掘してくると言うのはエージェント以外の業態には難しい訳で、例えばフリーランスは見えない存在にあたる。

と言う感じで市場ができているのだが、どうもTwitterやらで流れてくる情報を見ていると、このSI層・上層の常識から大きく逸脱した事例などが見受けられ、それ以外のSESプレイヤーの存在も推測された。
(ヒトモノカネ無しでスタートした零細のソフトハウスなどはそこからスタートせざるを得ない訳で、そこにいる=問題があるという話ではない)

零細のままストップした古い企業群が、社長同士のコネとかで相互に人を貸し合う事で、【商流7社はさまってます】の様なミラクルが発生するものと思われる。

この領域の問題点の原因は【みえない】ことに起因するものに集約される。
仮にこの層の経営者の立場・この領域を脱出する前提が無いものとして仮定し、一旦考えて頂きたい。

信用を得てもプラスが無い

信用を獲得するインセンティブが働かない

エンドやプロジェクトに打撃を与える行動にコストが発生しない

違法行為・詐欺的な行動にインセンティブが発生する

が、成り立つ。
問題行動により発生する費用面のコストは主にエンド・SI層が負担しており、また、商流を挟んでいる為実際の所属会社名は表には出ず。(商流ゴマかしている場合は特に)信用棄損的なコストは上層のソフトハウスのチームが負担する。

非常に厄介な話ではあるが、基本的には零細企業・個人事業主の話であって、局所的な問題にしかならなかった。また、この領域を脱出する前提が無い企業と言うのも、あまり考えづらい話であった。

リーマンショックの前までは。



4.そこそこ大きな、ダークSES企業が増えてきているっぽい。

またしても高還元とは別軸の話なんだけども。というかアレなんだわ。わし、同じような構造の会社に居たことあるんだわ。(あの時はこんなことになるとは思わんかった)リーマンショック後の世界、特に2012年前後が一番ロースキルアサインがはかどったので、そのあたりで増えたのではないかと思うのだけど。


商流を挟むことにより、悪質な行動をとる事にコストが発生しない。と言う利点を全力で活かす事を考えてみよう。

・未経験を職歴偽装で出す
・鬱の人を雇用。隠して出す
・勤怠悪い人を隠して出す
・超ワガママな人も隠して出す
・その他調整上の問題は隠して出す

まあ、やるわな。

ただしこれをふつうにやると、さすがに営業会社の営業だって逃げる。だって信用ダメージ大きすぎるからね。そこで、【営業を任せる】と言う仕組みが効いてくる。

営業会社の営業側は【逃げない人材】を確保する事ができる。

このメリットが大きいのである。
営業会社の営業は、結構大変で、商流も人材も自前で調達。給与もフルコミや、かなりインセンティブに偏った報酬制度のものが多く、【逃げない人材】の確保によって確定する粗利の恩恵はとても大きい。

SES営業の方には伝わるかも。たぶん2015年くらいにはもうかなり増えていたのではなかろうか。
・なぜか営業会社の人がいつも【所属から営業任せられてる】1社先人材を営業してる。
・営業会社の中でめっちゃ粗利抜く会社が増えた(15万とかのってたりする)
・しょうもないエンジニアがめっちゃ高い。
・とにかく借りてくる人の質が落ちた。すげー落ちた。

この手の採用特化でめちゃ強い会社が、営業活動を放棄しつつ、その他の零細を淘汰しまくってたと考えると、めちゃツジツマがあってくるんだわ。

さらには営業機能をもった人材系SES会社すらも淘汰していった可能性がある。エンジニアバブルの影響もあり、かなり採用面の効率が落ちていたのではないだろうか。2018-2019年あたりで、中堅どころに対して事業売却したSES会社が少なくない。(営業会社機能だけが残ってたりする)

この手の『営業活動を放棄した採用特化でめちゃ強い会社』が、営業を自社で抱えない系高還元SESである率は低くは無いのだと思う。

※高還元=悪ではない。 悪の中に一部、高還元が含まれるだろうという”推測”である。

コロナ時期の2020年5月や6月。めちゃくちゃな勢いで『どうみても偽装』な経歴書が回ったことは忘れてはならない。なぜか当時めっちゃ未経験採用してた会社もあった。フツーに営業会社に未経験人材流して決まるはずがない時期である。

これはあくまで推測に過ぎない話ではあるが、推測に過ぎないからそんな会社は存在しないと言う話は、どう考えてもありえないのである。

あとまあ、なんて言うの? そこそこの規模なのに、主要取引先がほとんど営業会社ばっかだったケースを見てしまったんじゃわ。ぼくが昔いた会社も確信犯でそうしてたし。


5.2nd層の我々が考えなくちゃいけない事

客観的に見てこの構造は強く、止まる事は無いと思われる。行くとこまで行くでしょう。

これは結構大きなパラダイムシフトを起こす問題で、ふつうに商流を確保し、営業してパートナーを増やすというモデルの利益が期待できなくなっていくのである。だって、所属会社がやらかした悪さのツケを払わせられるのは、SI層と、上層の我々だからね。 これではコストが見合わない。

直接的に採用面での競合にはならない(採用するターゲットが違う為)のであるが、我々が採用しない層を採用し、商流を噛まして偽装し、放り込んでくる訳であるので、まあ、アサイン後には低くない確率で『そういう結果』が待っているよね。

対応策としては
・直接所属会社と契約する。
・社員雇用メインで考える。
・実績保証のある人だけ借りる。

このようなものだろうか。

営業会社を噛まされてしまうと、その営業は「知らされてなかった」と言う言い訳が使用可能になってしまう。その言い訳が嘘か真かは、見分ける事ができない。


単に、営業会社が放り込んでくる『一社先社員』をなるべく回避するという方法でも良いかもしれない。
フリーランスも同様の危険性を持っているが、高確率のハズレガチャよりはだいぶマシなハズで、マトモな人を引けるならば利用はできる。 高還元SESも、営業がしっかりしている会社の人であれば、むしろ安心できる相手だろう。

なんかもう、ある程度信用できる勢で固まってアライアンスネットワークとか、組みません? マジで。

不況のたびにアレな会社が伸びるてのを見てきているので、今回のコロナでも、きっと伸びる。
さらに進化した、【アレな会社(オルタナティブ)】の登場を考えると、さすがにアタマ痛いんじゃが....。


6.万が一、外部的な力で状況が改善するとしたら

2つ考えられる。

・行政による規制など
単に、善管注意義務違反や発生した損害の賠償請求、売上との相殺などなど。発注者側の権利が保護される目的で行政が市場に介入すれば、それだけで大きく市場が変化する。

・ダークSES領域で労働組合組織が....
まあ、ふつうにちゃんとやってるところが特に影響を受けず。
いろいろとやらかしているところが、その分のコストを負担するようになれば良いだけなんだね。


大手の派遣会社とかがキレたら、メスが入ったりするかな....
どっかのえらい人の目に留まらないかねえ、この記事。
(客観性はどうした)




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