私たちトレノケート株式会社は、"世界を変える「人」を育てる"をビジョンとし、創業より約30年、IT人材の育成に尽力し続けています。1,500を超えるさまざまなラインナップの研修コースや自主学習教材を取り揃え、お客様のニーズに合わせて提供しています。
今回は、当社のレジェンド講師の一人であり、数々の受講者を魅了してきた山下 光洋に、講師として受講者を惹きつけるテクニックや講師業の魅力について語ってもらいました。
AWS(Amazon Web Services、以下AWS)インストラクターアワードで3年連続の受賞実績を誇る山下の話は、IT講師のキャリアに興味をお持ちの方にとって、貴重な発見となることでしょう。
ぜひご覧ください!
【プロフィール】
山下 光洋 (やました みつひろ):AWS認定インストラクターとして年間1,500名以上にAWSトレーニングを提供。実務経験を活かした実践的で参加型の講義スタイルが高く評価され、多くの受講者の学びと成長を支えている。
エンジニアとしての経験をどう活かす?「IT講師」としての役割とは
ーー山下さんの、トレノケートに入社するまでのキャリアを聞かせてください。
私のキャリアはIT業界から始まったわけではありません。はじまりは新卒で不動産業界に入社し、マンションのリゾートホテル化事業に携わりました。その後、音楽バンド活動や製造業で配送担当として従事していました。
転機が訪れたのは、配送業に従事していたときです。上司から「ITの仕事に向いているんじゃないか?」と言われたことがきっかけで、「それなら本格的に取り組んでみよう」と決意し、2003年に未経験から業務アプリケーションの開発エンジニアに転向しました。
実は、どの業界にいても、専門職ではなかったものの、ITを活用した業務の効率化に積極的に取り組んでいました。たとえば、不動産業界時代には手書き伝票を印刷フォーマットに統一し、業務の質を向上させた経験や、音楽バンド活動ではオフィシャルサイトを自作したこと、また製造業では配送業務をデータベース化したことなどが印象に残っています。
開発エンジニアとしてIT業界に飛び込んでからは、着実に技術スキルを身につけ、情報システム部門でも知見を広げました。こうした幅広い経験をもとに、2018年にトレノケートにジョインし、現在はIT研修講師として多くの方々に技術や知識を伝えることに注力しています。
ーーこれまでバンド活動や異業種のご経験も含め、非常にユニークなキャリアをお持ちですが、特にITエンジニアから「講師」という道へ進むきっかけは何だったのでしょうか?
講師への転職を考えたきっかけは、トレノケートから声をかけていただいたことでした。しかし、最初は正直お断りしていました(笑)。というのも、これまで受けた外部研修が自分の成長に繋がったと感じたことがなく、講師という役割に対して「試験合格のテクニックを教えるだけ」という偏見があったからです。
その考え方が大きく変わったのは、自分自身の経験と、トレノケートとの面談を通じて、国内における講師不足の現状を知ったことがきっかけでした。
話は前職の情報システム部門でのエンジニア時代に遡ります。当時、自身のやれることの選択肢が限られていると感じ、私は外部の勉強会に積極的に参加し始めました。そこで出会ったのがクラウド技術、特にAWSでした。その革新性に衝撃を受け、従来のサーバー管理から解放され、より効率的に業務を進める可能性を広げてくれるクラウド技術に強く惹かれました。
さらに、トレノケートとの面談を通じて、当時、日本にはAWSの認定インストラクターがわずか数人しかおらず、多くの受講希望者がトレーニングを受けられない状況が深刻化していることを知りました。IT業界がクラウド技術へ急速にシフトする中で、私は「本当に価値のある知識を提供し、実務に貢献できるエンジニアが求められている」と強く感じました。
その後、「クラウドやIT技術の正しい使い方をもっと広めること」で、現場のエンジニアの役に立つことができ、それが「講師」という役割で今の自分に求められているのだと確信しました。こうして、最終的にトレノケートからのオファーを受け、講師として転職を決意しました。
「面白くないだろう」と思っていた受講者が変わる瞬間
ーー「講師」の仕事で最もやりがいを感じる瞬間はどんなときですか?
最もやりがいを感じる瞬間は、やはり受講者の方から直接感謝の言葉をいただくときですね。最初は「どうせ面白くないだろう」と思っていた方が、講義を通じて興味を持ち、目の色が変わっていく瞬間がとても嬉しいです。研修が終わるときに「すごく名残惜しいです」「もっと学びたくなりました」といった感想をいただいたり、後日AWSのイベントなどで受講者の方に再びお会いしたときに、「講義で学んだ内容を実際に使っています」と言っていただけると、とても励みになります。
最近特に印象的だったのは、私のトレーニングをきっかけにクラウド技術の習得を決意された方が、職場でAWS推進の中心メンバーとして活躍されていると聞いたときです。受講者が学んだことを自分の成長につなげ、その後、職場で成果を上げていると知ることができ、講師としてこれ以上の喜びはないと感じました。
トレノケートのビジョンは『世界を変える「人」を育てる』ですが、私の考えでは、それは決して「ノーベル賞受賞者を輩出する」ような大きなことを意味しているわけではありません。私たちのトレーニングを受けた受講者が、自分の目の前の世界や職場で変化を起こし、周りにポジティブな影響を与えることが重要だと考えています。そうした変化の瞬間に立ち会えることこそ、講師としての大きな喜びです。
ーー受講者を惹きつけ、興味を持ってもらうために工夫している点は何ですか?
受講者の関心を引きつけるために、私は講義の中で多くの実演デモを取り入れ、実際に動く技術を目の前で見せるようにしています。これにより、理論だけでなく実際の使い方を体感してもらい、学びの実感を高めることができます。また、講師になった現在もエンジニア時代と同様、業務効率化や新技術の研究を続けて自身のスキルをアップデートしています。その結果、講義で紹介する事例は「最新の実践例」となり、受講者が具体的な業務応用をイメージしやすくしています。
また、オンライン講義においても私はあえて立って話すことで自然な動きと活気を加え、受講者が画面越しでも集中しやすい環境を作っています。PCカメラを目線の高さに調整し、アイコンタクトを意識しながら、後ろのホワイトボードを活用して視覚情報を補強しています。これにより、対面での講義のような学習体験を得ていただけるよう、「ただ見ているだけではない」双方向的な学びの場を実現しています。実際に、「ライブ感があって集中しやすい」「実践的な内容で理解しやすかった」という声をいただくことが、講師としての自信とやりがいにもつながっています。
IT講師のキャリアには、「伝える力」を磨くことで広がるチャンスがある
ーー山下さんの今後の「講師」としての目標を教えてください。
今後の目標は、トレノケートのグローバル展開している強みを活かし、海外拠点へのトレーニング提供や国際的な研修実施に挑戦することです。世界中の異なる文化やニーズに合わせたトレーニングを行い、受講者にインパクトを与えることで自身のスキルも新たな次元へ引き上げたいと考えています。
もちろん、そのためには英語力をさらに高める必要がありますが、その挑戦自体が私にとって大きな成長の機会です。国際舞台での講師活動を通じて、新しい学びと経験を共有し、より多くの人に技術の魅力を届けていくことを目指しています。
ーー山下さんから見て、IT講師に向いている人は、どんな人だと思いますか?
向き不向きはわかりませんが、やはり情熱を持っている人は魅力的だと思います。
講師は人の人生に関わる仕事です。ITや技術をただ教えるだけでなく、その知識を活かして受講者の働き方や業務を改善したい、助けたいという気持ちがある人は講師として魅力的ですし、この仕事を心から楽しめるのではないでしょうか。
ーー最後に、IT講師のキャリアに興味を持つ方に、どのようなメッセージを送りたいですか?
IT講師への転職を考えている方にお伝えしたいのは、「伝える力」を磨くことがキャリアを広げる鍵であるということです。どんな仕事においても「伝える力」は欠かせません。上手に伝えることができれば、自分のやりたいことを実現するチャンスが広がります。講師は、このスキルを専門的に伸ばすことができ、成長を日々実感できる職業です。
私自身、初めて勉強会で登壇したときは緊張でいっぱいでした。多くの方が「人前で話すのは苦手」と感じると思いますが、初めは誰もが同じです。経験を積むことで自然と伝える力が身についてきます。
講師としてのキャリアは、スキルを育てるだけでなく、自分の市場価値を高める意味でも有意義な挑戦だと思います。
少しでも興味を抱いているなら、ぜひその思いを行動に変えてみてほしいです。
挑戦する価値は十分にありますし、その決断が未来を開く第一歩になるはずです。