なぜ、技術責任者は自ら組織の「弱み」を語るのか──。
この記事は、プロダクト組織へのインタビューシリーズ第二弾です。今回はCTOの野口への単独インタビューです。(前回のインタビューは以下です。)
CTO野口による、スタメンが決して完璧な組織ではないという率直な告白の記録です。 成長に伴うリアルな課題、そしてCTO自らが語る組織の「弱み」と自身の「Will」。 それは、未来の「パートナー」を探すための、どこまでも誠実な想いを今回はインタビューしました!
写真:執行役員CTO 野口 卓也
野口 卓也 | 執行役員CTO 国内外の企業でエンジニアリングとマネジメントの要職を経験後、2023年にスタメンへ参画。前任CTOからの誘いを受け、エグゼクティブ採用としてジョインした。
入社後は、技術的負債の解消と組織のスケーラビリティ向上をミッションに、開発組織全体の設計を担う。
CTOの「会心の一手」──5年半動かなかったプロダクトの変革
──CTOとして数々の意思決定をされてきた中で、最も「会心の一手だった」と感じるエピソードについて、まずはお聞かせいただけますか。
2018年にリリースされてから実に5年半もの間、ほとんど手が加えられていなかった旧プロダクトからの脱却。それが、私にとって非常に大きな意思決定でした。技術的な負債、既存顧客への影響、そして何より、その変革をやり遂げるだけの強いオーナーシップの不在。様々な要因が、プロダクトを“塩漬け”にしていたんです。
大西をはじめとして、創業時から新しい経営陣に顔ぶれが変わったこともあり、経営方針も『スピード重視で、とにかく顧客の要望に応える』という方向へシフトしました。もちろんそれは事業を推進する上で正しい判断です。しかしその分、本来着手すべき技術的負債や古い機能のアップデートは、どうしても後回しになってしまう。多くの企業が、同様のジレンマを抱えているのではないでしょうか。
ただ、こうした課題を解決することが、私の得意領域でした。だからこそ、『このままでは未来はない』という強烈な危機感を覚え、新しい経営陣の信頼を得ながら、これまでとは全く違う角度からの意思決定をチームに促しました。変革を起こすことは、当時の私にとっても、かなり覚悟がいる決断でした。
この一手は、単なる技術的な挑戦であると同時に、組織を動かすという、極めて人間的な挑戦でもありました。「人と組織で勝つ」というビジョンを掲げる私たちだから、この変革は成し遂げなければならない。そう信じていましたし、これはスタメンの未来にとって、間違いなく『会心の一手』だったと感じています。
現実主義者の技術選定──RubyへのこだわりとGoの採用、そしてRustを見送る理由
──その変革を成し遂げた野口さんの、日々の技術選定における判断軸についてもお伺いします。
スタメンのバックエンドは、Ruby on Railsという『枯れた技術』をあえて使い続けてきました。これは、これまでの事業を支えてきた歴史へのリスペクトであり、安定した開発基盤を維持するための『こだわり』でもあります。
ただ、『枯れた技術』と言ってしまうと、人によっては『技術的な挑戦がしにくい環境なのでは?』と誤解されてしまうかもしれませんね。しかし、私たちの思想はその真逆です。この選択の根幹にあるのは、ただ一つの目的。『事業価値を最速でユーザーに届ける』ことです。
過去には、最新技術を追いかけるあまり、技術のキャッチアップそのものが目的化してしまい、本来届けるべき価値から遠ざかってしまった経験もあります。
こちらの記事でもCEOの大西と対談しているのですが、私たちはその反省から、市場で広く使われ、安定している技術をあえて選択し、それを深く、効率的に活用することが最も合理的だという結論に至りました。
その上で、未来への戦略的な一手として、Go言語を新たに採用しました。モダンな技術スタックを用意することで、優秀なエンジニアに『選ばれる』組織になるためです。
だからといって、単に『モダンだから』という理由だけで技術に飛びつくわけではなく、現実主義者として、常に組織の持続可能性を天秤にかけます。
例えば、今注目されているRust。私たちもすでにAPIのPoCを完了させていますが、本番環境への導入は『見送る』という判断をしています。なぜなら、現時点で、私が認めるスキルを持ったRustをメンテナンスできるエンジニアが、私以外にいないからです。
もちろん、これは『新しい技術に挑戦しない』という意味では全くありません。
私自身、常に最新の技術動向は常に追っています。大事なのは、その導入が目的になってはいけない、ということ。あくまでプロダクトを伸ばすための手段として、合理的な判断をする。そのバランス感覚が私たちが重視しているポイントなんです。
CTOの告白──「組織」を動かす葛藤
──技術的な意思決定の裏にある、リアルな判断軸を伺いました。次は「組織」という、より複雑なテーマについてお伺いします。CTOとしてエンジニア組織を率いる中で、大きな壁、あるいは葛藤を感じたのはどのような点でしょうか。
正直に言えば、『組織』というこの複雑なテーマには、常に課題を感じています。
例えば、現在のチームは若いメンバーが多い分、チャレンジへの勢いや熱量は申し分ない。しかしその反面、どうしても短期的な成果や、刹那的な喜びに価値を置きがちです。もちろん、それも大事なことですが、CTOという立場からみてみると、組織として常に長期的な視点で組織の未来を考え、意思決定をしなければならない。その目線の違いを、どうすれば組織全体に浸透させられるか。それには今も日々、向き合っています。
ただ、それを超えていくための壁には、現在の経営体制ならではの、構造的な難しさがあると感じています。
私自身もそうですが、今の大西体制になって経営陣が入れ替わりました。私たちは創業者ではない。先代が築き上げてきた歴史やクオリティを『守りたい』という意識が働きやすく、ダイナミックな新しい挑戦への決断が、時に鈍ってしまう瞬間があると感じています。
私自身は、いい意味でフラットと言いますか、これまで様々な企業を経験させてもらったこともあり、ものすごく執着しているかというとそうではない。いい意味で組織をメタ認知できる方なのかなと自己分析しています。
だからこそ、枠組みにとらわれない、0→1に近い思考で動きたいのですが、そのギャップにむずかしさを感じることもあります。私にとっても、2代目の経営者との協働は初めての経験ですし、おそらく彼自身もたくさんの葛藤や悩みも抱えていると思います。そして、私自身のキャリアも技術に特化してきたため、どうすればこの組織をダイナミックに動かせるのか。そこは、今も常に悩み、向き合っているテーマですね。
──その困難な状況でも、野口さんがスタメンを去らない理由は、どこにあるのでしょうか。
一言で言えば、『無責任』になりたくないからです。これからスタメンという企業が長い時を超えて日本を代表する企業となる場合、今の技術的、組織的な課題を残したまま、次の世代にバトンを渡すことは、私にはできません。
それに、私は『TUNAG』がこれからの日本にとって必要不可欠なサービスだと、心から信じています。市場がどれだけ変化しようと、最後は『人と組織』が企業の未来を決めるからです。その価値あるサービスを未来に残していくためにも、まず私たち自身が、誰よりも『人と組織で勝ち続ける』会社を体現しなければならない。
それが、私がここにいる理由です。
これは私自身のWillのため、というよりは、未来への責任ですかね。
私のWill──AIで「第3の事業」を創る
──ご自身の役割と責任について、真摯にお話しいただきありがとうございます。その責任を果たした上で、野口さんご自身がCTOとして、あるいは一人の技術者として、これからスタメンで成し遂げたい『Will(意志)』について教えてください。
会社の次のマイルストーンを達成するためには、既存事業の運用改善だけでは不十分です。TUNAGとWatchyという二つの事業で安定した成長は実現してきましたが、全く新しい成長軸が必要だという強い危機感があります。
──そのための、具体的な次の一手は。
明確に、AIを主軸としたプロダクトです。それを、スタメンの『第3の事業の種』として、私自身がリードして創り上げていきたい。それが、私個人のWill(意志)ですね。AIプロダクトの企業が、既存のSaaS企業とは比較にならないスピードで成長している現実を、私たちは直視しなければならない。会社が次のステージへ向かうためには、この道しかないと考えています。
技術的な課題解決、つまり『何を作るか』については、私の中である程度の道筋は見えています。ですが、本当に難しいのは、その新しい挑戦を、今の組織でいかにして実現していくか。新しい経営体制の中で、守りに入りがちな組織のギアを、どうすれば未来への挑戦へと切り替えられるのか。そこが、これから向き合うべき、本当の難しさだと思います。
ですが、技術だけでなく、その実行を支える『人と組織』に本気で向き合ってきた私たちが行うことでこの挑戦は最高に面白いものになる。そう考えています。
事業を創ることが好きな、「あなた」へ
──AIで第3の事業を創る。その壮大な挑戦を共に実現するために、野口さんは今、どんな「パートナー」を求めているのでしょうか。
私は、自分のことを『ナンバー2』タイプの人間だと思っています。つまり、本当は0→1で事業のアイデアを発想するというよりは、固まり始めた方向性に対して、技術の力で一気にドライブをかけていくのが得意なタイプなんです。技術的な課題解決には自信があります。ですが、今の私に足りないものも、はっきりと分かっている。
──足りないもの、ですか。
ええ。具体的な『AIという武器を使って、一体何をやるのか』を発想し、事業創出からそれを確実なものに安定駆動させていくこと。だから、共に事業を創っていける事業創出マインドのあるエンジニアの方が必要です。私が用意したエンジンを、どこへ向けて走らせるのか。その道筋を一緒に描いてくれる『相方』のような存在。そして、まだ未完成なこの『組織』という生き物を、共に育てていきたいと本気で思える方。そんな方と、出会いたいんです。
──最後に、この記事を読んで心を動かされたエンジニアの方々へ、メッセージをお願いします。
スタメンは、上場企業ではありますが、事業規模もまだまだ小さく、組織レベルもプロダクト、技術、コンプライアンスの観点だけとっても、決して完成された組織ではありません。むしろ、私が今向き合っているのは、正直人間の本能として、目を背けたり言語化したくないような、根深い組織課題です。決して楽な環境ではないでしょう。
ですが、だからこそ面白い。
なぜなら、ここには同じゴールを目指し、仲間を、そしてスタメンという組織を愛し、愚直に課題と向き合うチームがあるからです。皆が必死に組織と向き合っているにも関わらず、それでも、うまく回らないことの方が多い。
私が今見ているこの景色は、ものすごく難しいけれど、「人と組織で勝ち続ける」というVisionを描いているが故に、できることがあると思っています。人生でそう何度も経験できるものではない、壮大な挑戦だと思っています。
この攻略難易度の高いダンジョンを、ともに笑いながら共に冒険してくれる仲間を、待っています。
最後に
スタメンでは、一緒に挑戦をしてくれる仲間を絶賛募集中です!
少しでも興味を持ってくださった方は、ぜひ下記ページからエントリーをしてください。