Space Station OS - オープンソースの宇宙ステーションOS
「Space Station OS」は宇宙ステーションの開発と利用を促進するオープンソースの制御ソフトウェアです。宇宙ステーションをもっとオープンでもっと身近なインフラに近づけます。
https://spacestationos.com/ja#develop
皆さん、こんにちは。スペースデータ採用担当です。
スペースデータで活躍するメンバーがどんな経験を持ち、日々どのような仕事に取り組んでいるのか、その一端をお伝えするために、社員インタビューや対談インタビューをお届けしています。
今回は、JAXAで研究開発部 システム技術ユニットとして活躍しながらも、スペースデータの宇宙シュミレーションを担当している菅原 啓介さんへのインタビューです。
菅原さんのスペースデータでの挑戦、そして宇宙技術を広く届けたいという熱いビジョンについてご紹介いたします!
◆プロフィール
・名前 :菅原啓介(すがわら けいすけ)さん
宇宙シュミレーション担当
── 菅原さん、本日はよろしくお願いします。改めてとなりますが、ご経歴を教えてください。
こちらこそ、本日はよろしくお願いいたします。
私は東北大学大学院を卒業後、2017年にJAXA(宇宙航空研究開発機構)に入社しました。入社後最初の数年は、人工衛星のデータ解析や機械学習を活用した技術の開発に取り組んでいました。
特に注力していたのは、衛星とスペースデブリの衝突リスクを予測するプロジェクトです。地球の周回軌道には多くの人工衛星と、スペースデブリと呼ばれる宇宙ゴミが存在しており、これらが衝突する可能性があります。人工衛星やデブリはおよそ8キロメートル毎秒もの速度で地球を周回しているため、衝突すると衛星の部品が壊れたり、最悪の場合は衛星システム全体が機能しなくなったりすることさえあります。そのため、両者が衝突するリスクが高いと予測された場合は衛星側が回避運用を行う必要があります。私たちの研究では、ちょうど台風の予報のように、衛星の運行に影響を与えるデブリとの衝突リスク予測を行い、その結果をもとに回避運用の要否の判断材料となる情報を提供できるようにしました。
用いた技術としては、いわゆるデータマイニングや機械学習です。過去の衛星とデブリの衝突リスクに関するデータを分析し、機械学習を用いて未来の衝突リスクを予測しました。
また、月面探査に関するプロジェクトに関わったこともあり、その際は月面探査車の経路計画を行いました。
月面では太陽の光が当たる場所と当たらない場所があります。当時検討対象としていた月面探査車は太陽光が電力源のため、できるだけ日当たりの良いルートを走る必要がありました。しかし時には水や氷などの調査対象を探すために、日影に入る必要もあります。
したがって、電力(バッテリー)が枯渇してはならないという制約を守りつつ、調査対象領域にもできるだけ多く立ち寄れるような経路を設計しなければなりません。つまり日向と日陰をうまく行き来する経路です。大変難しい問題でしたが、チーム内で意見を出し合い、最適な経路を設計する手法を検討しました。
2022年からは、システムエンジニアリング(SE)やモデルベースシステムエンジニアリング(MBSE)を衛星開発に適用するための研究開発に携わっています。
── 現在スペースデータで担当している業務の内容について教えてください。
スペースデータには2024年から参画し、デジタルツイン技術を活用した宇宙環境の再現に取り組んでいます。現在、「宇宙デジタルツイン」と「Space Station OS」のプロジェクトを担当しており、このプロジェクトでは、宇宙環境をデジタルで再現し、衛星や宇宙機のシミュレーションを行うことを目的としています。
まず、宇宙デジタルツインについてですが、熱流体解析やアルゴリズムの開発を行い、宇宙空間における物理現象を忠実に再現するシステムを構築しています。具体的には、宇宙機がどのように動作し、熱や電気の影響をどのように受けるかを詳細に検討し、その結果をシミュレーションに反映させています。
宇宙ステーション内でロボットを動かす際に、どのようなシミュレーションが必要かを考えることも重要な業務の一部です。高精度なシミュレーションを追求すると、時間やコストがかかるため、どこで妥協点を見つけるかが鍵となります。その中で、どのようなソフトウェアを使用するのか、それとも開発するか、実際にどのように運用するかなどを検討するプロセスが必要とされています。
また、宇宙デジタルツインの一環として、ユーザーがソフトウェアを使いやすくするための仕組みを模索しています。たとえば、Webブラウザ上でシミュレーションを視覚化し、ユーザーがインタラクションできる環境を整えることも重要だと考えています。初めはユーザーがシミュレーションを観察してイメージをつかむことが多いと思いますが、将来的には、実際に使ってロボットを開発したいというニーズにも対応していく予定です。このようなソリューションを提供するために、コストや手段を考慮しながら、ニーズと技術を結びつける全体設計の役割を果たしています。
一方、Space Station OSについては、アーキテクチャが整備された段階にあり、シミュレーション機能の実装や細部の開発を進めています。現在は新しいチームとしてプロジェクトを進行中で、試行錯誤を重ねています。
↓ Space Station OS プロジェクト
── スペースデータ 代表 佐藤さんとの出会いはどのようなものでしたか。
佐藤さんとの出会いは、JAXAの同期である坂本さんの紹介がきっかけでした。坂本さんのスペースデータに関するお話から宇宙関連の新しい技術や挑戦に対する興味が深まりました。「一度佐藤さんと話してみないか」と提案を受け、実際にお会いすることになりました。
佐藤さんと初めてお会いした際、非常に技術に精通している方だというのが第一印象でした。
特に、デジタルツインやゲームエンジン、3Dビジュアライゼーションに関する具体的な技術についても豊富な知識を持ち、各種技術について詳しく語ってくれました。一方でビジネスや社会実装という観点でのビジョンも明確で、事業への情熱が伝わってきました。「この方は事業から技術まで抜け目なく理解している」と感じ、知識の広さと深さには驚かされました。
また、オープンソースでのソフトウェア開発に対する強い信念があり、さまざまな人々の力を借りて新しいものを作り上げていくことを重視されていました。
この考え方には非常に共感し、私自身もそういったアプローチを大切にしていきたいと感じていたので、ディスカッションを通じて、技術の可能性やその実現に向けた具体的な手段についてのビジョンが明確になり、今後のキャリアにおいて大きな指針となる出会いになったと思っています。
この出会いは、私にとってスペースデータの事業に深く関わる重要なステップとなり、日々新しい発見と学びを得ています。
── はじめて、スペースデータの事業構想を聞いた時はどう思いましたか?
「宇宙のデジタルツインをオープンソースで実現する」という発想にワクワクしました!
JAXAのプロジェクトとはまた異なり、世界中のエンジニアと連携しながら宇宙シミュレーションを作り上げていくというのは新しい体験で、非常に刺激を受けましたし、特に、佐藤さんが描いていたビジョンや技術的なアプローチについて聞いた時、その情熱と明確な構想に共感し、私もその一翼を担いたいと思うようになりました。新たな挑戦を経験することが、私のキャリアにとっても大きな意義があると感じました。
── スペースデータに参画しようと決めた理由は何でしたか?
私がスペースデータに参画した理由は、2つあります。
1つは、デジタルツインのプロジェクトを通じて、宇宙技術に興味を持つ人々にアクセスできる環境を提供できるという魅力を感じたからです。
このプロジェクトは、単なる技術開発ではなく、関心を持つ多くの人々との接点を生み出す機会でもあります。私自身、自分が手を動かし、新しい技術を形にすることがとても好きです。特に、シミュレーション環境やソフトウェアの開発に携わりたいという思いが強く、このような環境で自分のスキルを発揮できることが決め手となりました。
もう1つは、スピード感あふれる環境で優秀なメンバーと共にプロジェクトを進められることです。
立ち上がったばかりの事業に参加することで、何をするかが明確に決まっていない状況での柔軟な発想や迅速な決定が求められるという点に魅力を感じました。
自分たちで新たな技術やシステムを作り上げていくプロセスに携わることで、チャレンジングな体験ができると感じています!
実は、中学時代からゲームを自作していて、友人と一緒にゲームを作ったり、お互いが作ったゲームで遊んだりする中で、創作の楽しさを知りました。この時期の経験が今の私の原点となっていて、今でも自らの手で新しい技術を生み出すことや、スピード感のある挑戦的な環境での経験が日々楽しく、刺激的な環境で成長できることを嬉しく思っています。
── スペースデータでの働き方や他のメンバーの雰囲気などはどうですか?
スペースデータの職場は非常に優秀で、オープンかつ活発な雰囲気が特徴です。
メンバーは技術に対する情熱が強く、新しいアイデアや挑戦に対しても非常に前向きだと思います。お互いに刺激を受け合い、良い緊張感を持って取り組むことで、日々成長を実感できる環境が整っています。
具体的なエピソードとしては、同じテックリードの加藤さん、矢田さん、池田さん、といったメンバーとの議論や共同作業が特に印象的です。
それぞれ異なるスピード感で仕事を進めており、特に加藤さんは本業が多忙な中でも驚くほどのスピードで成果を上げています。そのため、常に「気づいたらすごいものができていた」といった驚きがあります。このような環境では、メンバー同士が互いに圧倒されながらも、前向きに挑戦し続ける環境があります。
また、全体共有会では佐藤さんが、事業の成長に伴う自覚の重要性について語り、チーム全体の士気を高めメンバーに勇気を与えてくれています。技術的なスキルだけでなく、チームワークやお互いのサポートが重要視されるため、メンバーは共に成長し合いながら、より良い成果を目指す文化が根付いていると実感しています。このような環境で働けることは、非常に充実した経験で、日々の業務が楽しみになる要素でもあるなと思っています。
── 今後スペースデータでどんなことを成し遂げて行きたいですか?
今後、スペースデータを活用して実現したいことは、宇宙技術に関する知識を広く提供し、誰もがアクセスできる環境を整えることです。
特に、オープンソースの取り組みを通じて、自分が開発したソフトウェアを他の人々と共有し、改良を重ねてもらうことを目指しています。これにより、技術が多様な視点から進化し、より多くの人々に宇宙技術に触れる機会を提供できると考えています。
オープンソースの開発において、ルール作りは重要だと思っています。個々人が自由に開発できる部分と、制約が必要な部分を明確に分ける必要があります。また、ある開発者がソフトの一部を編集したことによって、ソフト全体に影響が及ぶということはあってはなりません。個々の変更の影響が限定されるようなソフトウェア構造とすることによって、各開発者が自分の作業に集中でき、知識や得意な技術を活かしやすくなります。これによって、多くの人々が集まり、協力して一つの製品を作り上げることが可能になると考えています。
文化祭のような雰囲気でソフトウェアができていくといいですね!各開発者が自分の得意分野を活かしながら、最終的には協力して一つの製品を完成させる、そんな未来を描いています。
スペースデータを通じて技術の共有と改良を進め、誰もが学び、使い、楽しめる環境を創出したいと考えています。最終的には、宇宙技術がより身近なものとなり、多くの人々がその可能性を体験できる未来を目指したいです。
── 最後に、スペースデータに興味を持ってくださっている方にメッセージをお願いできますか。
スペースデータは、技術や経験を共有しながら共に成長できる場所です。
宇宙に関するシミュレーションを通じて、多くの人々に利用されるプラットフォームを作り上げる貴重な経験を積むことができます。
ぜひ、積極的にアイデアを交換しながら、楽しんで知識を深めていってほしいと思います。手を動かして学ぶことが好きな方や、挑戦的な課題を楽しんで取り組める方を歓迎します。共に新しい可能性を切り拓いていきましょう!
最後までお読みいただきありがとうございました!次回のインタビューもぜひ楽しみにお待ちください。
スペースデータでは、様々なポジションで募集を行っております。詳細は求人票にてご確認ください。皆様からのご応募を心よりお待ちしております。