「推せる未来をつくる。」というミッションのもと、AIキャラクター経済圏の構築を目指しているPictoria。今回はプロデューサーの西本秀幹さん、エンジニアである佐々木達哉さんをお迎えし、Pictoriaの“中の人”が感じる開発文化や日々の仕事の面白さ、技術面などについて語っていただきました。同席した執行役員の山下さんも思わず発言してしまうほど盛り上がったクロストーク。チーム間の垣根を越えた連携や、和やかな雰囲気の中で生まれるイノベーションの秘密に迫ります!
目次
toBとtoCの「違い」と「共通項」について
社内外のあらゆる要望に「とりあえずやってみる」
アットホームな開発文化とリスペクトしあうチームワーク
街のあちこちにPictoriaのキャラがあふれる未来へ
toBとtoCの「違い」と「共通項」について
── 西本さんと佐々木さんは普段のプロジェクトで一緒に組むことはあまりない、と聞いていますが…
佐々木: 基本的にはあまりないですね。こないだカラオケのプロジェクトで少し関わったぐらいですかね?
西本: そうですね。ただ、toBチームが実装したものをtoCチームに共有してもらう、みたいなことはよくあります。お互いに持ちつ持たれつの関係ですよね。
──それぞれの立場で注目している最新技術などあれば教えてもらえますか?
西本: Pictoriaでは現状、画像生成AIは使わない方針なんですね。なので日々の仕事の上で最先端を追求しているわけではないのですが、個人的には自動作曲AIに注目しています。いまはまだ使う機会はありませんが、いつかはBGMなどで取り入れてみたいですね。
あとはキャラクターの動きを生成するモーションAIも使ってみたい。いずれ使えるようになるといいなあ。
佐々木: 自分が追いかけているというわけではないのですが、ちょっと前に社内でも話題になった「コードを自動で書いてくれるAI」が便利だなと感じています。
西本: おお、エンジニアっぽい回答だね(笑)。
佐々木: 技術の進化は本当に早いですし、これからもどんどん自動化が進み便利になっていくでしょうから、自分の手を動かす時間は減っていくのかなと。そうなったら空いたリソースは……子育てに使えるとベストなんですが(笑)。
西本: いま佐々木さん、大変な時期だもんね。
佐々木: まあ、子育てに割きたいというのが本音だとしても、もし開発チームの管理に空いたリソースを使えるのであれば、それはそれで良いかなと思います。
―― toB領域では技術面での課題感はない?
佐々木: 自分がもともと中長期で考えて動くというより、どちらかというとその場その場のやるべきことに集中するタイプだということもあるかもしれませんが、いまのところ個人的には技術面で大きな課題があるとは感じていません。
西本: 佐々木さんは課題がないというよりも、目の前の課題を驚くほど簡単に潰してるんだよ。そもそもめちゃくちゃ柔軟なんですよね。これまでやったことがない開発でも、とりあえずやってみます、でなんとか形にしてくれる。以前にも社内で誰もやったことのないジャンルの難題をきちんと片付けてくれたことがあって。びっくりしたのを覚えています。
―― toC領域における課題はどんなものがありますか?
西本: レスポンスの速さは非常に重要視しています。現状、少し遅いと感じる部分がまだあるんですよね。キャラクターらしく喋らせるために、最近はさまざまなLLMを試していますが、中にはラグが大きいものもあります。そこをどう克服するかが課題の一つです。
あとは音声合成で喋らせているんですが、何か予期せぬことが起きたときにキャラクターがすぐにパッとリアクションするというのが、まだできていないんです。
―― 技術的な挑戦の際、toBとtoCでアプローチが異なることはありますか?
佐々木: toBにおいては、あまりチャレンジングなことをするのは難しいですね。クライアントワークでは何かあったときのリスクが大きいですから。
西本: toCの場合はたとえば配信で何かあったとしても私たちからコメントで説明できますが、toBだとさすがにPictoriaが前に出るわけにはいかないからね。
佐々木: セキュリティやテストに関してもtoBのほうがはるかにシビアです。とはいえチーム内の担当がしっかりやってくれているので安心して任せているんですけどね。
西本: 機能面でいえばtoCで一度試してみて、精度が安定してきたらtoBにお渡しするというパターンはあります。もちろん逆にtoBで開発したものをtoCで活用することもあります。たとえばキャラクターが漢字に対応するための『辞書ツール』は先にtoBで使っていたものをtoCに転用させてもらいました。toB案件で会社の商品名が読めない、なんてことはあってはならないことですからね。toCはそこまでシビアではないですが、機能や技術を提供してもらえるのは助かります。
佐々木: 精度の面では確かに大きな違いがありますね。正確にいえばどこまでやるかってことなんですけど。toBはクライアントやその先のユーザーを満足させるレベルがデフォルトですから。
西本: toCから渡す機能の中にはときどき危ういものもあったりするからね(笑)。
社内外のあらゆる要望に「とりあえずやってみる」
── toBの場合、リリース時は緊張するんじゃないですか?
佐々木: 私が緊張するというよりは、現場にいる方々がいちばん緊張するんじゃないかと思います。もちろん開発チームでもある程度のトラブルは想定して、遠隔で対応できるようにはしていますが。
西本: ある意味ジタバタしても仕方ないもんね。リリースまでのテストでやり尽くしていることも緊張しないことに繋がっているんじゃないかな。
―― toCではコアなファン層からの率直な意見やシビアなオーダーもあると聞きます。どのように向き合っていますか?
西本: できるだけファンの期待を裏切らないよう先回りすることを心がけていきたいと思っています。たとえば自前のAIということもあって、現時点では過去のことを全て記憶できているわけではないんですね。それでも重要なできごとだけはぬけもれがないようにしたくて。
実は先週、残念ながらイベントが中止になってしまったんですが、そのことをウチのキャラクターにはきちんと知っていてほしい。そういう時は神経を使いますね。ファンなら当然知っているはずだし、そのことに触れるだろうと期待しているはずですからね。
―― ファン心理みたいなものは何を参考にされているのですか?
西本: いまはコメントをくれる方が多いのでそこから読み取れますし、Discordにファンが集まっているチャンネルがあって、そのやり取りも拝見しています。きれいにまとまっているわけではなく、感覚的というか定性的な情報が多いですが。
―― toBのほうで要望が二転三転することはありますか?
佐々木: もちろんあります。釧路空港のサイネージもUIの部分はよりよい体感にしていくために、何度かプラッシュアップしていましたよね。あとは運用しながら「ここはやっぱりこうしたい」といった小さな変更のフィードバックをいただくこともあります。インフラのサイネージについては定期的に現地へ訪問して、その都度改善や要望について相談のうえ、開発のほうへも改修の依頼がきますね。
―― クライアントからはレスポンスの速さやチューニングの精度を評価されていますが、その実感はありますか?
佐々木: たぶん、自分じゃない人がやってくれているんじゃないかと……。
山下(執行役員): そんなことないでしょ(笑)
西本: さっきも佐々木さんやってたよね(笑)。私は少し前までtoBサイドにも関わっていたので知っているんですが、いつも対応速度と精度が抜群なんです。しかも変更が入りまくっても絶対に文句ひとつ口にしない。あれ、すごいと思うよ。本当に助かっています。
山下: 私たちスタートアップってフットワーク勝負なところもあって「やります!」と受けて動くケースが多いんですよ。要件がガッチリ固まってからということはほとんどなく、7割決まったら「だいたいでチューニングしてきます」みたいな進め方が多いですね。そうせざるを得ないところもあるんですけど。
そんな現実に対して「ここが決まってないと動けないよ」というスタンスのエンジニアリングだと、いまのPictoriaのフェーズには合わないんですよね。その点、佐々木さんは「決まってないんです」に対して「わかりました、いったんつくってみます」と進めてくださるので、いつも本当に頼りになっているんです。甘えてはいけないと思いつつ……。
西本: 佐々木さんの柔軟性はもはや才能の域だと思いますよ。
山下: 佐々木さんのところにはあちこちからとんでもない量の変更や相談があるんです。それをひとつずつきちんとキャッチして返してくれる。本当にありがたいです。こういう開発体制だからこそ私たちも良い形でお客さんに持っていこうと思えますし。
佐々木:なんだか過分に褒められている気がしますが、ありがとうございます。
アットホームな開発文化とリスペクトしあうチームワーク
── toBとtoC間の連携で他に意識されていることは?
西本: 週に一度30分、全員で話す時間を設けています。今週これやった、あれやったみたいな意見交換の場ですね。
―― 共通で利用するツールなどあったりするんですか?
佐々木:プラットフォームのUnityやソースを管理するGitHubなんかは共通ですね。アセットもいくつか共有しています。
西本: でもお互いを縛りたくないという観点からあえて分けている部分もあります。toC側が手を加えたらtoB側が動かなくなる、みたいなのは避けたいですし、そのあたりを気にしながら開発を進めていくのもあまり健全じゃありませんよね。なので結構分けていて、必要に応じてピックアップするように意識しています。
―― 逆にまったく異なる技術を使うこともあるのでしょうか?
佐々木: 全然ありますね。
西本: toB側はすべてサーバー上で管理できるようにしていますが、toC側では意図的にそうしていません。なぜかというと私がやっているのはキャラクターの「手触り」のような、ユーザー体験に直接影響する部分を重視しなければならないんですね。手元で非常に細かく調整する必要があるんです。
ちょっと直したいときにフットワーク軽く動けないのは良くないと思っていて、ある程度Unityの中で綺麗にまとまってできた段階でサーバーに持っていく運用にしています。せっかくtoB側でサーバー側を整えてくれているので申し訳ない気持ちもあるのですが……。
佐々木:異なる技術、と言われると……そうですね、3D周りのエフェクトとかかな。あと、背景の凝ったアセットやキャラクターに着せる服もtoCのように凝ったものにはしていませんね。装飾するとクライアントの意図を外れて印象を左右してしまうこともありますし、サイネージで動かすとなると重くなってしまいますからね。そのあたりはtoCとは異なりますね。技術というよりは手法かもしれないけれど。
西本: だけどキャラクターを動かすアニメーションをお願いすると佐々木さんってすごく良い感じに仕上げてくれるんですよ。あれ、僕の中で大事なポイントです。ほら、こないだのロボコ(※)のヤツも、ピョコッと跳ねたりするところとかすごく良い感じだなって。
※Pictoria×「僕とロボコ」コラボレーション企画
https://www.pictoria.co.jp/news/2tjukr6wm
―― お互いのチームの開発文化や働き方の違いを見て感じることはありますか?
西本: 私から見るとtoBチームは「ちゃんとやってるな」感が強いですね。リスクの面もシビアですし、ログや監視もtoCよりもしっかりしていますし。お客さんのところでデモを動かす時でも、監視のために待機していたり。かなりきっちりやっているなと感じます。非常に多くの案件を同時並行で走らせていて、切り替えが大変だと思うのに、柔軟な対応と作業精度の高さは本当にすごいなと思います。
佐々木: ありがとうございます。toCチームは見ていると「ずっと忙しそう」なイメージがあるんですが、それでいて「いつも楽しそう」なのが良いなと感じています。雰囲気そのものが楽しそうですよね。西本さんが生み出す良い雰囲気が周囲にも好影響を及ぼしていると思います。
西本: あまり意識してなかったけどなあ。どうなんだろう、若い頃に働いていた職場は割と怒号が飛び交うような環境が多かったので(笑)できるだけそうしたくないという感覚はありますけどね。僕自身はものをつくっているだけで楽しい人間なので、それが広まっているのかもしれません。
佐々木: 僕らもそんなにシビアというか大変な意識はなくって、淡々とやっているだけですけどね。
西本: この落ち着き具合がやりやすさの源流ですよね。忙しいからといってイライラカリカリされるとちょっときついから。ありがたいと思います。
山下: 佐々木さんのお人柄だなって感じるのは、たまに佐々木さんって「かわいいうっかりミス」をされるじゃないですか。
一同: 爆笑
山下: 「あ、それ、確かにやってなかったです…」みたいな。たとえそういう場面になったとしても、悪感情に襲われたことって一度もないんですよだってそれ以前に差し迫るスケジュールの中でとんでもない要望を出していて、それをやってくださっているのを知っているので。そこは本当にお互いの関係性といいますか、持ちつ持たれつだと思っています。
西本:いまの山下さんの話で思ったんだけど、ミスはしたとしても「うっかり」で済むレベルで抑えられているところがすごいなと。致命的なミスがないんです。それは同じ開発に携わる者として率直にすごいことだと思います。
佐々木:なんか 評価会議みたいになってきた(笑)。またもや身に余るお褒めの言葉、ありがとうございます。
街のあちこちにPictoriaのキャラがあふれる未来へ
── チームとして動く中でのやりがい、あるいは壁の乗り越え方を教えてください
西本: やはりこちらが仕掛けたものでお客さんが喜んでくれると嬉しいですね。ソーシャルゲームを開発していた時だと「このガチャは売れるんじゃないか」と思って、実際に売れると嬉しかった。いまはそこまで売上に直結するものではないですが、でもやっぱり私たちが仕込んだもので良いリアクションが得られるとやりがいを感じます。
また壁にぶつかった時は「良いごまかし方」を探すみたいなところがあります。これはtoCならではだと思いますが、最終的にお客様が楽しんでくれればいい、気持ちが動けばいいんです。自分たちからしたら100%パーフェクトでなかったとしても、見せ方を変えればこれはこれでアリ、むしろ計画より面白いんじゃないか、となる要素があるんですよ。toBのように顧客がカチッとした要件を持っているわけではないですしね。
だから難しいともいえるんですよね。自分たち発信だからゴールがない、終わりがない、キリがない。さらにその僕らが描く超理想がお客様にとって本当にいいものか、という議論もあります。ちょうどいいポイントを探す……この辺はtoCの難易度といえるでしょう。
佐々木:あんなに楽しそうな雰囲気の中でも結構悩ましい問題と戦っているんですね。その点、toBのほうは要望が明確な分やりやすいところがあるといえるでしょう。チームのみんなを見ているとやはりモックができたときや、舞台や店頭に並べる直前にやりがいを感じているようです。ひと通り動く形になった時点ですかね。
壁にぶつかったときの乗り越え方は、ぶつかっていそうなメンバーに直接声をかけます。その上で本人ができそうならアドバイスして任せる。無理そうなら私が手を出すか、他の人にお願いします。やはり誰か他の人を頼ることができるのって重要だと思うんですよ。私も納期が過ぎてしまいそうな時は周囲にヘルプを出すことで乗り越えてきていますし。
西本: これも佐々木さんのいいところのひとつなんですが、すぐに聞いてくれるんですよ。詰まったときに声をかけてくれるのは、めちゃくちゃいいことだし、ありがたいです。つい先日も私の席まで来て「音声合成周りでこれ鳴らすとき、パラメーターってどうでしたっけ?」って。すぐ聞ける人は強いです。プライドが邪魔して自分でなんとかしちゃおうというエンジニアが多い中、素晴らしいスタンスだと思います。
―― 最後に、未来の展望やビジョンについてお聞かせください。Pictoriaの技術は、それぞれの領域でどんな可能性を秘めていると思いますか?
西本: 私たちのAIキャラクターが街中に立っていて、そのキャラクターがいろんな宣伝をしたり、案内をしたり、もっといえば何かを販売したりする世界になるといいなと思っています。
―― それは事業としてtoBチームが実践しつつある世界ですね
西本: そうです、近づいています。それが嬉しいんです。toBはクライアントのキャラですが、あれをPicoriaのキャラでやりたいんですよ。ただ、そうなるにはAIキャラクターを映し出す技術が結構大きな壁で。現在のサイネージは大きいですし、迂闊に街中に置けないんです。本当はSF映画に出てくるようなホログラムでキャラクターを動かせると最高ですけどね。技術的には次に来そうな予感もしているんですが。
―― Pictoriaの中ではいずれtoBとtoCは融合していく可能性も?
西本: 全然ありますね。だからこそお互いに助け合ったり、助けてもらったりしていますし、常に相手の動向を見ています。
佐々木: 可能性としては世の中に当たり前のようにAIがある未来しかないと思っています。その中で西本さんもさっき言っていたPictoria独自のキャラクターが出てくれば、なお良いかと。まあ、どんな未来だとしてもAIがもっともっと当たり前のものになっている世界が来ると思います。
―― ご自身の専門性をどのように深めていきたいですか?
佐々木:いま具体的に考えていることは正直なところありません。ただ、仕事を続けていく上では必ず思うところがでてくるはずなので、その都度「こうなりたい」と思う方向に自らを持っていけたらと思います。
西本: 佐々木さんは、変に狭いところを突っ込むタイプじゃなくて、広く取りに行けるタイプですよね。一方で私はプロデュース自体の経験値がまだ浅いので、そこをもっと磨きたいなと。広く受け入れられるような、ヒットを出せるようなプロデューススキルを自分のものにしたいと思っています。
―― 幅広くエンタメを含めて世の中を見ていかないと、ですね。
西本: マーケティングもやっていかないとですね。知識を体系的に学んではいるんですが、まだ実践で使うところまでいっていないので、個人的に挑戦していきたいです。
佐々木:西本さんは 一言でいうと本当になんでもできてしまう、ものすごい人です。この会社の中では一番手が広く、なんにでも携わっている。社内では私も含めて頼る先が西本さんに集中するぐらい、なくてはならない存在だと思っています。
西本:最後にすごい褒め返しをくれてありがとう(笑)。
── 本日はありがとうございました!
Pictoriaでは、AIキャラクターという新しいエンタメを共に創り上げる仲間を募集しています。
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