1
/
5

取締役 北野唯我が解説。「ワンキャリアが解くべき、HR領域のイシュー」

ワンキャリア取締役 執行役員CSO(最高戦略責任者)の北野と申します。

私たち、ワンキャリアは「HRテック」という括りで語られることがあります。「HRテック」とは人材領域を意味する、HR(ヒューマンリソース)にテック(テクノロジー)を掛け合わせた造語です。 この HRテック企業は、転職サイト「ビズリーチ」を手がけたビジョナル株式会社を代表例に、今では数多くの企業が上場企業として市場に存在しています。

では、ワンキャリアを含む「HRテック企業」は、どのような社会課題、イシューを解こうとしているのでしょうか?

本記事では、我々HRテック企業を取り巻く3つのキーワードを中心にお話していきます。
1つ目は「人材の流動性」、2つ目が「人的資本開示」、3つ目が「個人のエンパワーメント」です。

HRテック企業のもつ社会的役割とは?

本題に入る前に、そもそもHRテック企業のもつ社会的役割とは何なのでしょうか。

マクロで見ると、人材領域は、人材の移動をスムーズに行うことをメインにした「人材紹介・人材派遣」と呼ばれる事業と、移動した先で個人が成長したり生産性を高めたりするためのサービスを行う「人材育成事業」の大きく2つに分類されます。前者は9.5兆円、後者は企業向けの研修サービスだけで0.5兆円市場規模です。

前者(人材紹介・人材派遣)は「国家」という単位で見ると、成熟産業から成長産業に人がスムーズに移動できるようになることや、ある企業では活躍が難しい人に他の企業で活躍できるような機会をつくり、支援するといった役割を担っています。例えるならば、「血液」のようなものです。人間の体が、血液を通じて酸素を全身に運んだり、老廃物を排出したりするのと同じことです。

一方で、後者(人材育成事業)は、人の成長や変化を支援します。私たちは普段から仕事を通じて「学び」を得る機会がありますが、それだけでは限界があります。通常業務だけでは、得られない知見やスキルといったものを成長・拡大させる役割を担っています。

このような人の「移動」と「成長」は両輪で成り立つものであり、片方だけでは社会は円滑に進化していかないものです。

そして、私たちHRテック企業は、この「移動」または「成長」について、20年前にはできなかったデータやテクノロジーなどを駆使したアプローチで実現するための企業体です。私たち、ワンキャリアでは、この「移動」をキャリアデータにより支援することが社会的役割の一つだと私は考えています。

大きな変化となった「人的資本開示」の義務化

もう一つ、「HRテック企業」の社会的役割を語る上で、忘れてはいけない重要なものがIRの視点です。つまり、投資家・資本家と企業をどのようにつなぐのかという観点です。

実は 2020年代に入り、大きな変化が起きようとしています。それが「人的資本開示」です。人的資本開示とは、これまで企業の中でクローズにされていた人にまつわる情報を開示しなければいけないというルールで、2023年3月期決算より上場企業に義務化されたものです(※1)。投資家に対して情報をオープンにすることを目的としたこのルールですが、なぜ投資家にとって「人的資本」は重要なのでしょうか?

答えは、「人材の活躍や活性化の具合は、長期的に企業の成長と大きな関係がある」と考えられるからです。

簡単に言うと「生き生きと、生産性が高く働いてる社員の多い会社は、今後も伸びるだろう」ということです。

そしてこの「人的資本開示」は、「人材の流動性」にも強く影響を与えます。私たちが企業を選ぶ際に、その企業の実態を検索・確認できるようになると、転職や就職におけるミスマッチは減る可能性があるということです。

※出典1:「人的資本開示」の詳細:https://www.cas.go.jp/jp/houdou/pdf/20220830shiryou1.pdf(内閣官房非財務情報可視化研究会 )

人的資本開示と「人材の流動性」の関係性

一方で、「人材の流動性」もまた、企業の人的資本開示を加速させる可能性があります。というのも、人材の流動性が高いほど、その企業が人材を上手に活用できているのか、それが企業のパフォーマンスにどの程度影響を与えているのかを評価するデータが豊富になるからです。実際に、人材の流動性が高い企業は、パフォーマンスの改善や人材開発の投資効果の向上(※2)に寄与することが証明されています(具体的には、流動性と売上高経常利益率は、逆U字の様な関係になると言われます)。

つまり人的資本開示と人材の流動性は、両者がグルグルと押し車のように加速していく関係にあるわけです。

※出典2:https://www.rieti.go.jp/jp/publications/nts/16j062.html

なぜ人材の流動性は高まるべきなのか?

人材の流動性が高いことで、(もちろんデメリットもありますが)企業と個人双方にメリットをもたらす側面があります。企業にとっては、スキルの多様性と新鮮なアイデアが継続的にもたらされるようになり、競争力が向上します。McKinsey&Companyの報告によれば、多様性の高い企業は業績が同業他社に比べて+7%〜+15%上昇する傾向があるとされています(※3)。一方、個人にとっては、自身のスキルや経験を活用する機会が広がり、キャリア形成の自由度が高まります。たとえば、マイナビ社の調査では、業界・仕事・成長を重視して転職すると、転職後に非常に満足する割合が高いことが報告されています。(※4)

ここまでが流動性と人的資本会議の関係性の話になります。
どうでしょうか?なんとなく、イメージがついてきたのではないでしょうか。

※出典3:https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/sansei/diversity/pdf/004_05_03.pdf
※出典4:https://tenshoku.mynavi.jp/knowhow/reason/140214/index/

人的資本開示のその先 -結局幸せになるのは企業だけなのか?

では、人的資本開示が進み、人材の流動性が高まったとしましょう。しかし、もっと重要なのは、その先だと私は思います。具体的には

「それで本当に働く人は、幸せになるのか?」

という視点です。

現実的な話、流動性と人的資本開示が進んだとしても、富を得て幸せになるのは、結局は投資家や資本家です。つまり、投資家や資本家だけが経済的な強者になる可能性が大いにあるのです。そこで重要なのが「個人のエンパワーメント」です。

これまでの人材業界は、どちらかと言えば、企業優位・法人優位のサービスが大きく成長してきました。実際にお金を出すのは企業や法人であって、個人が支払いをするサービスは日本では大きく台頭していないというのが現状です。よって、資本主義社会である限り、企業や法人に向いていくのは、企業の力学として不可抗力だとも言えます。

少し話がそれますが、我々は創業以来「エンドユーザーファースト」というコアバリューを掲げて戦ってきました。これは、ある意味で私たちがこのドメインにおけるアンチテーゼでもあり、自分達への訓戒でもあります。放っておくと、企業や法人が優位になる産業だからこそ、忘れてはいけない教訓として掲げているのです。

個人のエンパワーメントには「スキル」だけではなく「機会」も必要

話を戻し、「個人のエンパワーメント」を人の「移動」と「成長」という側面で捉えると、実は少し見え方が変わります。まず、「成長」で言うと、スキルや技術が最も分かりやすいでしょう。働く人がスキルや技術を持ち、磨くことで、エンパワーメントされるという意味合いです。

一方で「移動」という観点でみるとどうでしょうか?実は人が「移動」するには、スキルや技術だけではなく「機会」、つまりチャンスも同様に必要になります。ここで言う「機会」とは、転職や就職も含みますが、社内で新しい部署や職種に挑戦することもありえるでしょう。

個々の能力を発揮して自己実現を果たすためには、スキル開発だけでなく、そのスキルを発揮する機会の提供も必要です。そして、これは人々の「働くこと」に対してポジティブな感情を増やすことにつながると思われます。

HRマーケットの展望ーオープン化・カジュアル化・多層化

それでは、直近10年で私たちHRテック企業は、社会にどのような価値をもたらそうとしているのでしょうか?私は以下の3つのキーワードがヒントになるのではと見ています。

「オープン化」「カジュアル化」「多層化」です。

まず「オープン化」とは、これまでクローズだった情報がオープンになることを指します。就職や転職の際に必要な情報、またはスキルアップに必要な情報がオープンになっていくことを指しています。Googleのサーチエンジンのように、スマホさえあれば誰でも情報にアクセスできるという方向性です。

2つ目は「カジュアル化」です。これは人々が働くという行為や、転職、就職、アルバイト、副業が少しずつカジュアルになっていくという流れです。たとえば、隙間時間を使って働くのは、2000年代の日本では容易なことではありませんでした。

3つ目は「多層化」です。これはキャリアという概念が多層で、同時進行的なものになっていくということです。例えば、共働きの夫婦はどちらかが家事・育児だけをして、どちらかが働くのではなく、その両方を同時並行で進めていくことが求められます。他にも、本業で大きな企業で働きながら、土日や隙間時間に副業で自分の好きなことをする。このような人も、昔に比べると増えてきました。これを多層化という表現にしています。

ワンキャリアが挑む、「データのオープン化」と「個人のエンパワーメント」

最後に、私たちワンキャリアが解こうとしているイシューは何なのか?冒頭に挙げた3つのキーワードから、私の考えをお伝えしてこの記事を終わりにしたいと思います。なお、これはワンキャリア全体の見解というよりも、私個人の見解です。

1つ目の「人材の流動性」について。これは、就職・転職にまつわる「キャリアデータ」を活用して解いていきたいと考えています。 

2つ目の「人的資本開示」。企業の人材戦略や概念といった上流から関わることで、あるいは企業の人的資本開示に必要なデータを提供することで実現していきたいと考えています。 

3つ目は「個人へのエンパワーメント」。これは私たちが持つ動画・記事・イベントといった「コンテンツ」を通じて、働く人たちに現代で通用するスキルと考え方、機会を提供していきたいと考えています。

これらの方向性は現時点での私個人の見通しであり、仮説です。現実的には、社会や働く人の価値観は変わり続けていくもので、 私たち自身が変化していかなければいけない面もたくさんあります。


私たちは今後もミッションである「人の数だけ、キャリアをつくる。」の実現に向けて、HR領域で事業を加速させていきます。

まだ道半ばですが、一緒にHR領域のイシューに向き合ってくれる仲間を探しています。

この記事を読んでご興味を持ってくださった方、ぜひ以下のリンクから当社の詳しい説明や、募集中のポジションを覗いてみてください。

▶️会社概要資料はこちら
▶現在募集中のポジションはこちら


52 Likes
52 Likes

Weekly ranking

Show other rankings
Like 株式会社 ワンキャリア's Story
Let 株式会社 ワンキャリア's company know you're interested in their content