学生を卒業し、社会に出て22年が経過した。
サラリーマンとして企業で働かせていただき、その後、家業を継ぐため埼玉県川口市へ戻った。
30歳で社長に就任し、気づけば「働いている時間」が、「働いていなかった時間」を超えていた。
人生の半分以上を、社会の中で働いていることになる。
けれど正直に言うと、僕は社会人になってからしばらく、「なぜ働くのか」ということを深く考えていなかった。
もちろん目の前の仕事には向き合っていた。
成果も求めていたし、勤めているときは結果を出し、評価されたいとも思っていた。大泉工場に戻ってからは、日々、会社を成長させたいとも思っている。
ただ、「企業活動を通じて、社会に対して何をしたいのか」という問いに対して、自分の中ではっきりと言語化できていたわけではない。
そんな僕が、この数年で繰り返し考えるようになったことがある。
僕たちは、何をしているのか。
その問いに対する一つの大きなきっかけが、「発酵」との出会いだった。
そもそも発酵とは何か。
それは、微生物の働きによって、人間にとって良い変化が起こる現象のことだ。
つまり、発酵食品を作っているのは、実は人間ではない。
本当に働いているのは、微生物たちなのである。
では、人間は何をしているのか。
それは、彼ら微生物が働きやすい環境を整えることだ。
温度。
湿度。
空気。
素材。
衛生状態。
彼らが健やかに活動できる環境を整えることで、人間にとって良い変化、“発酵”が起こる。
これは、友人である発酵デザイナーの小倉ヒラクくんの最新著書『僕たちは伝統とどう生きるか』にも書かれていた一節で、改めて、僕はこの言葉に強く共感した。
大泉工場は2016年から、KOMBUCHAという発酵飲料を製造している。
お茶に糖分を加え、酵母や菌たちが活動しやすい状態をつくり、液体そのものを発酵させていく飲み物だ。
そこには「スコビー」と呼ばれる、酵母と菌からなる膜が存在する。
KOMBUCHAをつくる上で最も重要なのは、この微生物たちが健康的に働ける環境を維持し続けることだ。
そして、この事業を続ける中で、僕はあることに気づいた。
発酵と経営は、とても似ている。
僕は大泉工場の代表ではあるけれど、自分自身で_SHIP KOMBUCHAを仕込んでいるわけではない。
1110 CAFE/BAKERYで毎日パンを焼いているわけでもない。
BROOKS GREENLIT CAFEでスムージーを作っているわけでもない。
テストキッチンで新しい食品を生み出しているわけでもない。
では、僕の仕事は何なのか。
それは、一緒に働いてくれているスタッフたちが、健やかに、前向きに、安心して挑戦できる環境を整えることだと思っている。
発酵は、菌が働きやすい環境を創る。
経営は、人が働きやすい環境を創る。
そう考えると、経営という仕事もまた、発酵に近い。
もちろん、僕自身まだまだ未熟だ。
本当に素敵な環境を創れているのかと問われると、悩むことも多い。
もっとできる。
もっとやれる。
そう感じる日も少なくない。
それでも、やり切りたいと思う。
なぜなら、僕自身、素敵な環境に身を置くことで、変わることができたから。
荒れた土壌では、植物はうまく育たない。
空気が淀んだ場所では、人もどこか苦しくなる。
逆に、素敵な環境には、人を前向きにする力がある。
挑戦しようと思える。
誰かを応援したくなる。
新しいアイデアが生まれる。
笑顔が増える。
発酵も、経営も、本質はそこなのかもしれない。
結局僕らは、「人間にとって良いことが起こる環境」を創りたいのだ。
大泉工場は、「地球を笑顔で満たす」というPurposeを掲げている。
正直、とても大きな言葉だと思う。
簡単に実現できるものでもない。
けれど、その理想を本気で目指すのであれば、僕ら自身が“発酵”していかなければならない。
人も、組織も、社会も、放っておくと腐敗していく。
不満。
諦め。
分断。
他責。
無関心。
そういったものは、一箇所で生まれると、周囲にも伝染していく。
だから僕は、発酵する側であり続けたい。
誰かを前向きにできる存在でありたい。
社会にとって、少しでも良い変化を生み出せる存在でありたい。
そのためにも、僕の周りの人々には、自分自身の環境を大切にしてもらいたい。
誰と時間を過ごすのか。
どんな言葉を使うのか。
何を食べ、何を見て、何を感じるのか。
環境は、思っている以上に人をつくる。
そして人はまた、環境をつくっていく。
経営を通じて、社会を発酵させる。
それが、今の僕にとっての「働く理由」の一つなのかもしれない。
そして大泉工場には、そんな素敵な環境を創ろうと、本気で挑戦してくれている仲間たちがいる。
彼ら彼女らもまた、社会を少しずつ発酵させている。
素敵な環境を創り続けた先に、社会が少しずつ発酵し、人や地球にとって良い変化が生まれていく。
もしそんな循環を、本当に実現できたなら。
その時初めて、僕たちは「何をしている会社なのか」を、胸を張って言えるのかもしれない。
社会を発酵させる大泉工場に少しでも興味を持っていただけたなら、ぜひ、リクルートサイトを覗いてみてもらいたい。