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ヨーロッパに行ってシンプルなルールと信頼と罰について考えた話

マサです。

2018年5月末にエストニアのタリンにて開催されるLatitude59というスタートアップ向けのイベントに足を運びました。 そのついでに、ヌーラボの子会社があるオランダのアムステルダム、そして10代後半から訪れることを夢に見ていたドイツのベルリンに寄ってきました。どの都市も、僕にとってははじめての訪問でした。

参照: エストニア最大のテックカンファレンス「Latitude 59」がスタート——福岡市はのべ40人以上からなるスタートアップ代表団を派遣

タリン(エストニア)

「タリン」という都市名を聞くのが初めてだという方がいるかも知れませんが、世界最先端の電子国家として最近話題になっているエストニア共和国の首都の名前です。ブロックチェーンの技術でも大変注目を集めている地域でもあります。また、ツアー同行者と一緒に外食した際は「(ビール)足りた?」「足りん」という会話が頻繁にされました。大変面白いですね。

ラタス首相と面会

僕たちは福岡市の高島市長と行動をともにさせていただき、エストニア共和国の首相であるラタス首相と面会の機会を得ました。各参加者数名は自己紹介とともに自社の紹介をし、僕も同様にヌーラボの紹介をさせていただきました。エストニア共和国のFinTechのユニコーン企業であるTransferWiseさまにも、ヌーラボのBacklogを使っていただいている旨の話をしたところ、ラタス首相からも「ワオ」と驚いていただけました。

ちなみに、僕もしっかりスーツを持ってきたつもりになっていたのですが、妻と喧嘩をしながらスーツケースに放り込んでいたのは冠婚葬祭用の黒スーツでした。なので、カジュアルな格好にて訪問することになってしまいました。喧嘩など、するものじゃないですね。もちろん、持ってきたのが冠婚葬祭用の黒スーツだとわかったときは、僕も「ワオ」と驚きました。

Latitude59

Latitude59はエストニア最大のテックカンファレンスで多くのスタートアップが集まります。今年は、2,000人以上の人が参加し、福岡市からはなんと40名以上の人が参加し、更に日本各地からの参加者もおり、100人近くは日本人だったような気もします。とにかく日本人が多かった印象があります。

会場を見て回ると、「電子国家」というだけあって、ブロックチェーンや仮想通貨のスタートアップがブースを埋め尽くしていました。また、2日間に渡るLatitude59の1日目はEU一般データ保護規則(GDPR)の適用前日、そして2日目は適用初日という貴重なタイミングだったために、GDPR関係のコンサルティングのような会社もPRを頑張っていました。そして我らが福岡市高島市長も Fukuoka City のPRを頑張っていました。

そこで、僕はなんと久しぶりにピッチ大会への参加の機会をいただき、プレゼンテーションをさせていただきました。ピッチとは、スタートアップが投資家などを含むオーディエンスに提案をする3分から5分くらいの短いプレゼンテーションのことです。通常は創業3年から5年以内の若い企業がプレゼンテーションすることが多く、ヌーラボのような規模になるとなかなか参加しないものですが、今回は初のエストニアでプレゼンテーションの機会を得ることができましたので、参加させていただきました。優勝は惜しくも病理画像診断ソフトの開発を手掛けるメドメインとなりましたが、機会をいただき、ありがとうございました。

アムステルダム(オランダ)

続いて、タリンをあとにしてオランダのアムステルダムへ。移動は飛行機で2時間半くらいです。アムステルダムはヌーラボの子会社があるのですが、今までトランジットでちょっと寄る程度でした。今回はどのような街なのか、しっかり勉強しておこうと思い立ち寄りました。残念ながら土曜日から月曜のお昼にかけての滞在だったので、ほぼお休みのようなものでしたが、無事、ヌーラボがスペースを借りているWeWorkにお邪魔できました。

滞在中は Backlog for Amazon Alexa などを開発している伊東知治さん一家にお世話になり、迷子になることなくアムステルダムの街やハーレムの街をウロウロとできました。アムステルダムは大麻が合法な街だと伺っていたので、多少、治安を不安視していたのですが、香港や台湾よりも安全と言われているだけあって、取り立てて身の危険などを感じませんでした。

移動手段はトラムとメトロ

アムステルダムでの主な移動手段はメトロ(地下鉄)とトラム(路面電車)でした。タリンも同様にトラムが走っていたと記憶しているのですが、主に歩いてブラブラしていたため、ヨーロッパで公共交通機関に乗るのは初めてでした。

メトロの方は改札があるのですが、トラムは乗り降りのときにセンサーに切符(カードっぽいやつもある)を「ピッ」とする感じです。おそらくタリンのトラムも同様の仕組みだったように聞きました。乗り降りの際に車掌さんなどが周りにおらず、「おや?これは無賃乗車できなくもないぞ?」と頭によぎりましたが、無賃乗車を防止させるため、私服の検察官による抜き打ち検察があり、結構な金額の罰金を徴収されるとのことです。

これ、「信用乗車方式」といって、なかなかおもしろい仕組みなので、ベルリンでの体験も加えて、後にそこら辺について詳しく書きます。

WeWork Metropool

ヌーラボが入っているのは、フレキシブルな美しいワークスペースとスケーラブルなビジネスサービスを、志の高い起業家コミュニティに提供しているWeWorkというシェアオフィス。こちらに人事を担当するシャーロットをはじめ数名のヌーラバーが働いています。WeWork、噂には聞いていましたが、すごいオシャレな環境です。

短い時間でしたが、ヌーラバー達と話をして、ランチを食べて、急いでベルリン行きの新幹線に。

ベルリン(ドイツ)

若き頃にテクノミュージックに踊らされていた僕としては、一生のうちで一番行っておきたかったところ、ベルリン。現在、ヨーロッパのスタートアップの聖地と呼ばれている場所、ベルリン。大変短い訪問でしたが、ワクワクしました。また行きたい。次こそ、ベルクハインに入りたい!

スタートアップバブ Factory

2015年にオープンしたスタートアップハブのFactoryにもお邪魔しました。Googleが出資をしたことでも大変有名になったコワーキングスペース(のような場所)です。すぐ隣にあのベルリンの壁の跡があり、非常にヒストリカルな場所に立っています。Factoryの建物には音声ファイル共有サービスの SoundCloud も入居しているらしく「自分も使っている世界で使われているサービスがここから!」とワクワクしました。その後、街を探索していると、旅行の検索エンジンKAYAKのオフィスも発見しました。

ドイツでも移動手段はトラムとメトロ

ベルリンの地下鉄のプラットフォームには券売機はあるけど改札がなく、ほとんどの人が定期券を使っているので、道路から地下への階段を降り、そのまま地下鉄に乗車します。街中に走っているトラムも同様に、切符を持っているかどうかのチェックなどなく、道路からトラムに乗り込み、そのまま何もせずに座席に座る感じです。アムステルダムでは切符をセンサーに「ピッ」くらいはあったのですが、ベルリンではそれすらもなく、完全な「信用乗車方式」でした。

僕は遭遇しなかったのですが、調べてみると車掌さんや私服の検札官が見回りをしているらしくて、無賃乗車がバレると60ユーロ(おおよそ7,800円)が罰金として取られるようです。

僕は一日乗車券を買っていたので、地下鉄にもスイスイ乗れて、トラムにも気まぐれに乗って、どこか行きたいところに気ままに移動することができました。改札がないだけで、こんな素晴らしいユーザー体験になるのだな、と感心しました。

At your own risk (自己責任で)

ヨーロッパをウロウロしていると「at your own risk」っていう注意書きをよく見かけました。「自己責任で」っていう意味ですが、ホテルで洗濯機を使うにしても、注意書きで「Use at your own risk」って書いてありますし。聞いた話、アムステルダムのあの有名な『I amsterdam』のモニュメントの上に登って写真を撮ってもらったりする観光客が多いのですが、登ってみて足元を見るとやっぱり「at your own risk」って書いてあるらしいです。本当かどうかはわからないけど。

関与されない自由さ

おそらく他者の行動に関与しがちなカルチャーだと、モニュメントの上に登る人が頻繁に現れ、見た目が危険そうだと判断されたら「危ないから登るな」とうルールが敷かれるかと思います。そうなると、例えばモニュメント登り達人みたいな人がいたとしても、自己判断だけで登ることができなくなります。そのようなカルチャーのもと、社会や他者が間違いや危険なことがおこならいようにどんどん関与してきます。『全員間違いを犯す』という「疑心」や「不信」の上に組まれたマイクロマネジメントのような関与です。確かに間違いは減るかもしれませんが、トレードオフとして、禁止事項などが増え、自由は失われていきます。

ヨーロッパで体験した「自己責任」は、『大人だから自分でどうにかできるでしょう』という信頼や信用の上に成り立つ「自己責任」なのでは?という感じがしました。なので、シンプルなルールのもと、あまり他者や社会に関与されずに自分の責任の範囲内で自由に動ける。モニュメント登りの達人も、一般の人も、モニュメントにすいすい登っていける。ホテルの洗濯機をガンガンまわせる。

信用乗車方式

信用乗車方式も、名前の通り信用の上に成り立つシンプルな仕組みで、『当然切符は買うでしょう』という発想。改札前の混雑もないし、見送りも電車に乗るところまで切符なしでついていける。すいすいと移動できる。交通手段と街が一体化している感じで、「改札」という仕組みからの開放感があります。

ただし、時折、ちゃんとチェックする仕組みもあり、無賃乗車だった場合は、人前で注意され、通常の数十倍のお金を罰金として払わないといけなくなる。若干、恐怖政治っぽいところもあるけど、それがまた、ちゃんと抑止力として機能して、『当然切符は買うでしょう』という信頼を更に高めているのだと思います。

自由な環境 = 信頼ベースのシンプルなルール + 破ったときの罰則

上記のような公式を頭に浮かべたヨーロッパツアーでした。

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