malnaの代表の高橋です。
「AI、AI」と毎日のように社内で言い続けているのは、他でもない僕自身です。「Claude Codeを使って」「この業務は明日から自動化できる」——メンバーにそう言い続けてきた。
負担をかけたり、不安にさせてしまっている部分があると思っています。
この記事は採用向けに書き始めましたが、今malnaで一緒に働いてくれているメンバーへのメッセージでもあります。

Claude Code全社導入して2週間。採用で大事にしたいことが変わった話。|malna株式会社
「自分の仕事、この先どうなるんだろう」
最近、この問いが頭から離れないという話をよく聞くようになりました。経営者でも、現場のメンバーでも。正直に言うと、僕自身もそう感じることがあります。
今日は、そのことについて思っていることを書きます。
「価値ある仕事」の定義が、変わっている
うちのメンバーから「この調査、Claude Codeで10分で終わりました」というSlackが届いた日がある。これまでは半日かけていた業務だった。その瞬間ふと思った——このスキルや時間に払われていたお金は、これからどこに行くんだろう。
以前は、データを分析してレポートにまとめるのに5時間かかっていた。GeminiやChatGPTを使っても、その5時間は「しかたない」で通っていた。でも今は、Claude Codeをバックグラウンドで走らせておけば、同じ作業が10分で終わる。社内の時間感覚が変わった。1日かけてやっていた仕事が、別の業務をやりながら「バックグラウンドで済ませておくもの」に変わっていく。
一つの問いが、ずっと頭にあります。
自分の仕事は、これから価値を持ち続けるか。
付加価値労働生産性、という言葉があります。自分が1時間働くことで生み出せる「差分の価値」——他の誰か、あるいは何かでは代替できない部分だけが、本当の意味での付加価値です。これが上がり続けるかどうかで、仕事の将来はほぼ決まると思っています。
そしてAIの登場は、この「付加価値」の構造を根本から塗り替えています。
なぜか。AIが「遂行」を代替し始めると、その業務の市場価格はゼロに近づいていく。資料作成、業務設計、調査——これらにかつて払われていた対価は、より安くより速いAIに引き下げられる。一方で、「何をやるか」を決める仕事は逆の動きをする。AIが速くなるほど、意思決定の質が成果の差を生む。希少性が上がり、価値が上がる。この逆説が、AI時代の付加価値のすべてを決めると思っています。
ホワイトカラーは、これから2つに分かれる
ここ数年のDXで、デジタルツールを「知っている・使える」こと自体が価値でした。プロジェクトマネージャー、業務設計コンサルタント、SaaS導入の専門家——希少性は、スキルの習熟度や知識の深さにあった。
でも、AIがその前提を崩しています。
業務設計はAIが補助してくれる。ツールの使い方はAIが教えてくれる。提案書も報告書も、AIが下書きを作る。「知っていること」の付加価値は、急速にコモディティ化しています。
マーケティング支援をやってきた立場として、これを他人事には見ていられない。「このままでいいのか」と、僕自身もずっと向き合ってきました。
これからホワイトカラーは2つに分かれると思っています。
AIと競合していく人。業務をこなし、資料を作り、処理をする——「遂行すること」が仕事の中心にある人。AIはまさにここが得意で、AIが進化するほど付加価値が下がる。活躍できる場所が、少しずつ狭くなっていく。
AIが強くなるほど価値が上がる人。何をやるかを決め、AIに何をさせるかを定義し、最終判断を下す人。この人の付加価値は、AIが強くなるほど増え続ける。この2つの違いは、スキルや知識量の差ではありません。思考の向きの問題です。
「編集長」というイメージ
後者の人間を、僕は「編集長」と呼んでいます。(もっとしっくりくる言葉がないか、悩んでいます。いい表現があればコメントで教えてください)
雑誌の編集部を想像してほしい。締め切り前日、会議室のテーブルに企画書が10本並んでいる。ライターたちが書いた原稿が次々と読まれていく。 「リスクはありますが、この企画の責任私がとります。」「この特集、没にしよう」——そう言える人間が、その場に一人いる。編集長だ。
編集長は、記事を書きません。何を特集するか。どの記事を没にするか。この企画、そもそも必要か——最終的な判断は編集長が下す。
AIが「ライター」になった今、仕事はこの構造に近づいています。AIは速く、正確で、疲れない。でも「何を書くべきか」は決められない。「その方向でいいのか」という問いは、人間が立てるしかない。
そして、ライターが優秀になればなるほど、編集長の判断の重さが増します。
AIが10倍になるほど、編集長の付加価値は10倍になる。これが逆説です。
編集長に必要なのは、技術でも知識でもなく、思考の転換だと思っています。
一つ目は、「アルゴリズムをどう作るか」から「そもそも何が問題か」への転換。AIはゴールに向かって最速で動ける。でも、ゴール自体が間違っていたら意味がない。問いを立てられる人間が、価値を持つ。
二つ目は、「業務をどう改善するか」から「この業務、廃止できないか」への転換。改善はAIが得意です。人間がやるべきは、そもそも必要かを問うことだと思っています。malnaでClaude Codeを全社導入したとき、最初にやったのは改善じゃなく廃止だった。あるとき僕はメンバーに「この定例、来週からなくしましょう」と言った。毎週1時間かけていた進捗共有の会議だ。AIによる日次サマリーに置き換えることにした。「改善できないか」ではなく、「そもそも必要か」を問う——その向きに変えた、最初の一歩だった。
三つ目は、「間違えないようにする」から「決断して責任を取る」への転換。精度を上げることの価値はAIに移っていく。経営者やリーダーに残るのは、不確実な状況でも「これでいく」と言える力だと思っています。
この三つの向きを持てる人間が、AIの時代に付加価値を出し続けられます。
編集長の核心は、ラストマンシップだと思う
編集長を定義するとき、最も重要なのはラストマンシップです。
最後の一人として責任を取れるかどうか。
AIがどれだけ精緻な答えを出しても、最後に「これでいく」と言える人間がいないと、何も動かない。そして「これでいく」と言った人間が、結果に責任を持つ。この構造は、AIがどれだけ進化しても変わらない。
malnaではこれをオーナーシップを獲ると呼んでいます。自分の仕事を、自分の事業として持てるかどうか。誰かに言われてからやるのではなく、自分ごととして動けるかどうか。
ラストマンシップを持てる人間、オーナーシップを獲れる人間——それが、AIの時代に自分の仕事の価値を持ち続けられる人間の正体だと思っています。
malnaが勝てる理由
malnaは今、事業の転換点にいます。
マーケティング支援にとどまらず、株式取得や事業譲渡も視野に入れながら、中小企業の事業をAIで再構築していく方向に動き始めています。
なぜこれが勝てると思っているか。
日本の中小企業のAI採用率はOECD加盟国の中で最低水準です。300万社以上が、ほぼ手つかずのまま時間が過ぎていく。その市場に入っていく。狙いは、AIで再設計することで価値が上がる会社です。そういう会社をAIで作り直して、事業価値を上げていく。
競合他社は今も「教える」か「実行する」かのどちらかです。知識を教えるコンサルは、その知識自体がAIに代替されていく。広告やコンテンツを実行するエージェンシーは、実行業務から順に自動化されていく。
malnaは判断し、設計し、事業を動かす専門集団として戦います。AIが強くなるほど、判断の価値が上がる。その構造が、malnaの勝ち筋です。
もう一つ、戦略とは別の話をします。
この1ヶ月、インターンも、アルバイトも、正社員も、業務委託も——コミットしているメンバー全員にClaude Codeの使用を必須化しました。やってみて、これは本当に大変だとわかりました。普段の業務を取り組みながら、仕事のやり方や頭の使い方ごと変えることを同時に求めるわけです。メンバーにとっては相当なプレッシャーだったと思います。それでも、みんなが踏ん張ってくれた。
実際にやり切ってみて初めてわかったことがあります。それは、他の会社は簡単に真似できない。宣言するだけなら誰でもできる。ということです。でも、現場が本当に変わるまでには、想像以上の摩擦と時間がかかる。僕たちがその大変さを身をもって知っているということが、逆説的に、今のmalnaの強みだと思っています。

Claude Codeに触れて衝撃。malnaを1週間で"AIネイティブ"な企業に変えると決めた話|malna株式会社
malnaで働く人の付加価値が上がり続けると思う理由
これが、今日一番伝えたいことです。
世の中の大半の会社では、社員はまだ「遂行者」として働いています。指示されたことをこなし、ツールを使い、処理をする。その付加価値は、AIが進化するほど下がっていく。
malnaで働くということは、毎日、編集長として仕事をすることです。
AIを使って業務を自動化する。「これ、AIに任せていいか、人間が判断すべきか」を考えながら動く。会社や事業の再設計に最初から関わる——「どう改善するか」ではなく「どう再設計するか」を問い続ける現場に立つ。
これは研修では手に入りません。実際にやらないと身につかない、編集長としての判断力です。
冒頭の話に戻ると——malnaで1〜2年働いた人間が1時間で生み出せる価値は、遂行者として働き続けた人間とは別物になっていく。AIが5年後に今の10倍になったとき、その10倍のAIと毎日仕事をしてきた編集長の価値は、圧倒的に高くなります。
malnaをそういう人の集まりにしたい
malnaで働く人間は全員、自分の仕事の編集長であること——これが、僕が絶対に変えたくないことです。
事業の形は変わっていく。扱う業界も広がっていく。でも、ここに集まっている人間は全員、ラストマンシップを持ち、オーナーシップを獲って動いています。AIが強くなるほど、その人間の付加価値が上がっていく。
人数より、全員が編集長であることの方が大事だと思っています。遂行者を集めて回すより、判断できる人間だけが集まっている状態の方が、長く強くいられます。それが今の僕の確信です。
来てほしいのは、「自分がどう判断する側に回るか」を考えている人です。ツールの知識じゃないです。まだうまく言語化できなくてもいい。その方向に向いているかどうか、話しながら確かめましょう。私も正解は毎日模索しているので、ぜひカジュアルにお話させていただきたいです。