こんにちは!株式会社リトプラでPRマーケティングを担当している「まっつん」こと松倉です。
弊社は、「遊びが学びに変わる」をコンセプトに、全く新しい次世代型テーマパーク「リトルプラネット」を企画・運営しており、デジタルコンテンツならではの体験の新しさ、可変性の高さを生かしたアトラクションを数多く生み出しています。
「-アトラクションができるまで-」第三回となる今回は、ロケット開発をテーマにした新アトラクション『ASTRO DELIVERY/お絵かきロケット宅配便』開発秘話をご紹介します🚀
今回はこれまでと少し趣向を変えて、開発をリードした、企画担当の「みやっち」、開発担当の「くらっち」、3Dデザイン担当の「ばたけー」と私のインタビュー形式でお届けします!
アトラクションの紹介
宇宙のあらゆる場所に宅配便を届ける『アストロデリバリー』社。新人配達員「コスモ」を宅配先の惑星へ届けるため、より遠くまで飛べるロケットのデザインに挑戦します。
思い思いに描いたロケットの絵を専用スキャナーで読み取ると、リアルな3Dロケットになってスクリーンに登場し、宇宙に飛び立ちます。塗った色や形でロケットの飛距離が変わるので、「どんな機体だと遠くまで飛べるだろう?」と考えながら、ワクワクドキドキのロケットづくりが楽しめます。
開発者の紹介
企画担当:みやっち 東京都出身。大学在学中はこどもたちのキャリア教育を目的としたNPO法人の設立に関わる。探究型学習の企画、運営を担当しこどもたちが好きなことを主体的に学ぶ環境を作る。 新卒社員として入社後、リトルプラネットでパークアシスタントマネージャーを経て、2021年から主に学校連携など教育関係の取り組みを担当、現在に至る。
開発担当:くらっち 大阪府出身。大学在学中は情報学を学ぶ傍ら、自身で立ち上げたチームで建造物などにプロジェクションマッピングを行う。大手印刷会社に新卒入社し、デジタルマーケティングのディレクターとして従事。その後、株式会社リトプラに入社しエンジニアへ転身。アトラクション・アプリの開発を行うアトラクションエンジニアとパークの設営・メンテナンス等を行うテクニカルサポートを担当、現在に至る。
3Dデザイン担当:ばたけー 宮城県出身。独学で3Dを学びコンシューマー向けゲームソフト開発会社に就職し3Dデザイナーとして従事。その後セールスプロモーションデザイン会社にて大手スーパーや大手電機メーカーの什器や販促物を手掛ける。2013年にスマホアプリ開発会社で3D背景デザイナーとして9年間開発に携わる。2023年に株式会社リトプラに入社、現在に至る。
▲『アストロデリバリー』開発中の くらっち(左)と みやっち(右)
『アストロデリバリー』はどのようにして生まれたのか
まっつん みなさん、本日はよろしくお願いします!早速ですが、今回のアトラクションの舞台は「宇宙」ということでリトルプラネットとの親和性も高いように思えます。そんな『アストロデリバリー』が誕生したきっかけは何だったのでしょうか?
みやっち 今回、ご縁があって、宇宙開発事業を手がける植松電機さんと一緒にアトラクションを開発することになりました。植松電機さんの知見や実績などをあわせることで、今までのリトルプラネットのアトラクションとは少し違った体験を提供できるのではと考えました。
具体的に企画内容を詰めていく中で、プラネタリウムや重力をテーマにしたものなどの案もありましたが、JAXAが2024年にMMX(※)の打ち上げを目指していること、なにより植松電機さんがロケット制作をしていることを踏まえて最終的に「ロケット」をテーマにした企画にしました。
(※)火星衛星探査計画MMX(Martian Moons eXploration)太陽系の惑星形成に関する謎の究明や惑星・衛星探査に関連する技術向上を目指し、火星衛星観測・サンプル採取を行い地球に帰還する、世界初の火星衛星サンプルターンミッション
まっつん なるほど。ロケット制作のプロフェッショナルである植松電機さんをアドバイザーに迎えることで、宇宙事業をより身近に感じてもらうことが出来そうですね!
くらっち はい。植松電機さんにアドバイスいただいたロケットシミュレーション式を用いたリアルな飛行を感じつつ、ロケット発射時にワクワク・ドキドキしてほしいです。飛行中は「行けー!」「飛べー!」と応援をしながら、みんなで盛り上がることを目指して開発していました。
ばたけー 私もくらっちさんと同じように、遊んでくれる方がワクワクするかをいつも考えて開発してました!ワクワクをいっぱい詰め込んだ結果、開発当初は無かった演出が打ち合わせのたびに増えて…。今だから言えますが、アトラクションの公開に間に合うのかヒヤヒヤすることもありましたね。
今回のアトラクションは、地上から宇宙へと背景がきりかわったり、演出盛りだくさんで作ったのでワクワク感が画面から伝わってくれていると嬉しいです!
本格的であるが故の開発の難しさ
まっつん 本物のロケットが飛ぶ際の計算式を参考にするなど、ディテールにこだわったアトラクションですよね。細かい設定なども自然と増えそうですが、やはり開発に難航したことも多かったのでしょうか?
みやっち そうですね。ロケットは計8種類あり、それぞれ空気抵抗や質量、推進力などの数値を調整しています。この数値以外にもリトルプラネットの塗り絵アトラクションならではの「色」によって性能が変わるという要素もプラスされてより複雑になります。
『アストロデリバリー』公開後もパークを回りながら、平日・休日などさまざまな視点でこどもたちの体験の様子を見学して微調整を続けています。
▲ロケットの飛行テストをする みやっち
くらっち あとはゲストが実際にアトラクションを体験する際、どこにハラハラ・ドキドキを感じていただけるか、ですかね。リトルプラネットの人気アトラクションの1つである『スケッチレーシング』では、追い抜き追い抜かれるなどの「競い合い」が醍醐味です。
対して『アストロデリバリー』は、ロケットを「できるだけ遠くに飛ばす」 ことを目的としています。そのため、対戦側の感情起伏ではなく、『アストロデリバリー』ならではの演出を取り入れています。例えば...
ロケットの飛行状態を教えてくれるテロップやナレーション(高度・速度・燃料の状況など)を入れる
燃料の残量・速度・高度・順位の表示
燃料が切れ墜落しているロケットへのカメラ切り替え
それぞれのロケットがどの高度にいるかがわかるマップの作成
などをアトラクションに混ぜ込みました。
さらに、今後はロケットに乗っているキャラクターの表情の表示や、燃料切れの際の演出などを追加するなど、感情移入しやすくなるブラッシュアップを行なっていく予定にしています。
▲「リス博士」がロケットの状態を教えてくれたり、それぞれのロケットがどの高度にいるかがわかるマップを追加
まっつん 確かに、こういった演出を入れることで、競争ではなく 目的地を目指そう! という意識に変わりますね!
ばたけー ちなみに、今回のアトラクションはリス博士が喋るのも注目ポイントの1つですよね!
みやっち くらっち まっつん かわいい…。
🚀開発担当「くらっち」のこだわりPoint🚀
ぬりえがロケットの高度・速度推移にどう影響を持たせるかの割り当てロジックの検討・実装について、ゲストが描いたぬりえの色のバランス・形によってロケットの性能に変化をつけましたが、どのパラメータをどのくらい変化させるかの試行錯誤を重ね、他アトラクションよりも特にパラメータ設計にこだわりました。
赤色系統には空気抵抗
緑色系統には推力
青色系統には質量
これらを割り当て、さらに色数が多いほど性能がより良くなる設計にしています。
また、実際のロケットと同じように燃料配合比が30%であれば、平均推力が最大になり、より高く飛ぶようにしているのですが、ぬりえ用紙を全部塗らず(燃料タンクを満タンにせず)とも30%の状態を作り出すことは可能です。満タンでない場合はその分、燃焼時間を減らして早い段階で燃料が切れるように...と、さまざまなロジックを織り交ぜています。
▲参考:植松電機が開発したCAMUI型(縦列多段衝突噴流型)ハイブリッドロケット
さらに、ぬりえの種類(ロケットの形)によっても、軽いのですぐ加速するが燃料が少ない、先端が尖っていないので空気抵抗力が大きいなど性能に変化をつけています。
フリーハンドで描くぬりえは、先端の形による空気抵抗の度合いや表面積の計算をリアルタイムに行うプログラムを施しました。
上記のように、さまざまな仕掛けを用意しているので、ゲストには探究心も持って試行錯誤しながら、より高く飛ぶロケット作りができる環境を作り出せたのではないかと考えています。
【参考】ロケットの全パラメータ一覧
ぬりえの色・機体の種類・形によって以下を変化させています。
燃焼時間 最大推力 空気抵抗係数 機体質量
推進薬質量 表面積 燃料配合比 推進薬の注入量(比率)
これらは私(くらっち)が『スケッチエアレーシング』を担当した時の経験を発展させつつ開発に組み込んでいます。
また、ゲストはロケットのパラメータをスキャン時(3D化する際)に確認できるようにしています。
ゲストに描いてもらったロケットをスキャンすると...
左から空気抵抗、推力、質量のパラメーターが分かるように表示される
パラメータ調整は基本的にエンジニアで行なっていますが、今回は新たな取り組みとして、非エンジニアでも調整できるように調整ツールを作成し、企画担当者のアトラクションへのこだわりを反映できるようにしました。
ロケットの高度推移のシミュレーションをグラフで可視化しています。
▲エンジニアでなくてもパラメータ調整可能なツールを開発
こどもならではの目線と柔軟な発想
まっつん 開発時の印象的なエピソードがありましたら教えてください。
みやっち アトラクションに登場する背景のデザインとメインキャラクター、ロケットのデザイン案を横浜国立大学教育学部附属横浜小学校5年1組のみなさんに考案していただいたことです。児童のみなさんが各グループに分かれて「なぜそのように考えたのか」熱い気持ちをもってプレゼンしてくれました。正直、どれを採用しようかとても悩むくらいで、全部採用したかったです。
ばたけー 私も小学生の想像力豊かなアイデアが印象的でしたね。細かな設定まで考えられたロケットやキャラクター達は、どれも魅力的でした!
くらっち 先ほど話に挙がったように、難易度が高い開発でしたが、難題をクリアした時の喜びは格別でした。みやっちとロケットの数値調整をしている時、さまざまな色・形のパターンを描いてスキャンしてテスト飛行をしましたが、思った通りに飛んだ時にはすごく嬉しかったです。またそうでなかった時も、どうやって処理の内容や手順を調整すべきかなどを検討している時間がとても有意義で充実していました。
▲横浜国立大学教育学部附属横浜小学校5年1組のプレゼンの様子
▲アトラクションの主人公「コスモ」の設定資料
まっつん 僕もこのプレゼンに参加させてもらったんですが、本当に素晴らしかったです。この発表の様子は後日改めて紹介させていただきますね!
ミライへの想い
まっつん アトラクション開発で自身が学んだこと、今後の展望などをお聞かせいただけますか?
くらっち 今のぬりえアトラクションは、体験中にゲストが何らかのアクションをして結果が変わるような、インタラクティブな要素はまだ多くはありません。もし、スクリーンのタッチ・ジャンプ・声を出すなどができたら、さらに体験の厚みが増えるのではと考えています。
まっつん 面白そう!アトラクションがさらに盛り上がりそうですね!
くらっち そうですね。これらの案を考えつつも、今パークに来場された方々がどのような反応をしているかをウォッチングしながら、日々ブラッシュアップしていけたらと思っています!
みやっち 『アストロデリバリー』は、私自身が初めて企画を担当したアトラクションなんです。リトルプラネットの現場で働いていた経験はありますが、改めて来場した方がどのような目線で楽しんでいるのか、遊びが学びに変わるポイントはどこなのか、などを改めて考えるきっかけになりました。
まっつん アトラクションを体験してくださっている方々を間近で見ていたからこそ、気づけるポイントも多そうですね。
みやっち そうですね。今後はその経験も活かしつつ、「遊びが学びに変わる」を通じて、興味関心を育みこどもたちのミライのきっかけになる体験を提供したいです。
ばたけー 気づきとしては、こども目線で楽しいと思ってもらえるモノづくりの難しさですね。すぐに文字などのUI面に頼ってしまいますが、感覚で楽しいと思える分かりやすさを作ることの難しさと、やりがいに改めて気づきました!
まっつん 横浜国立大学教育学部附属横浜小学校の方々が考案した新キャラクター「コスモ」も誕生しましたよね。2Dもかわいいですが、ばたけーさんの手によって3D化するとより愛着が湧いてきました。
ばたけー ありがとうございます!横浜国立大学教育学部附属横浜小学校の方々が考えてくれたキャラクター「コスモ」ですが、作っている間に私の中ではおっちょこちょいの新人宅配宇宙飛行士?となっていました。ポイントはかわいらしいフォルムと表情豊かなところでしょうか。
いろんな表情をつくりましたので、これからどんなコスモが登場するのか楽しみに待っててください!
🚀3Dデザイナー「ばたけー」の3Dギャラリー🚀
『アストロデリバリー』にはコスモ以外にも魅力的なモデルがいくつも登場します。飛行機や気球、ロケットから見た地球の見え方など、細かい部分にもこだわって制作しています。
▲リトルプラネットマークの飛行機
▲ロケットが飛び立つ際、地球を丸く見せるために島全体が丸い面に張り付いたモデルになっている
『アストロデリバリー』開発秘話いかがでしたか?
このアトラクションはもちろん、既存アトラクションについても、企画、開発、デザイン、運営といったそれぞれのチームが一丸となって開発しています。
その姿勢は、まさに「ONE TEAM」!
どんなに困難な状況でも、一人ひとり密にコミュニケーションを取りながら、楽しく開発に取り組んでいます。
少しでもご興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にエントリーください!