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経営理念「笑顔創造」に基づき、企業のブランディング・マーケティング支援を行う株式会社ライオンハート。同社は2年前(取材:2024年)にある組織課題を抱えていたことをきっかけに、フラップスプラン株式会社が開発した『ワンネス経営®️プログラム(以下:ワンネス経営)』という研修と出会い、経営者からメンバーに至るまで全員が受講しました。一人一人の主体性を高めることで、自走するチームをつくるというワンネス経営。そんな研修を受講することになった背景や、研修を通じて得た自身の学びと気づき、そして社内に表れたリアルな変化を常務取締役兼戦略人事の妹尾利津子(せお りつこ)にインタビューしました。
常務取締役 妹尾利津子(せお りつこ)
北海道空知郡中富良野町生まれ。高校卒業後、弘前大学教育学部美術教員養成課程にて油絵に没頭し、卒業後画家を目指すも挫折。青森県の携帯ショップ販売員を経て、愛知県知立市にてデザイナーのキャリアスタート。現場たたき上げにてデザインやディレクションスキルを身につける。2012年ライオンハート入社、2016年執行役員就任、2023年戦略人事として理念が浸透した組織づくりを強化する中で、常務取締役に就任。最近、敢えて興味分野から遠いランニングとゴルフに挑戦中。
課題解決の鍵は「人の心の成長」
──ワンネス経営の研修を受ける前、妹尾さんが感じていたライオンハートの組織課題を教えてください。
社内でのコミュニケーションや働き方において、経営理念である「笑顔創造」に逆行するような問題が続いた時期がありました。例えば、チームのマネージャーであってもチーム運営や会社経営に関して受け身であったり、他責的な言動や、自分本位な振る舞いが多いメンバーも出てきたり。
「笑顔創造」という言葉自体は自社スタッフであれば誰もが知っていますが、「浸透」が十分にできていないと感じていました。こうした複合的なモヤモヤに対して、何か打ち手はないものか漠然と考えていました。
──ワンネス経営を知った経緯、そしてその研修がモヤモヤの解消につながると感じた理由は何だったのでしょうか。
ワンネス経営を展開するフラップスプラン代表の福永さん(ライオンハート一同、「ふくちゃん」と呼ばせていただいています)と弊社会長の市川、社長の長澤が経営の勉強仲間だったことがきっかけです。もともと、同社の研修を受講すること自体は決まっていたのですが、目的が明確ではなかったんです。私たちは会社で行う全てのことに目的がないとモヤモヤしちゃうところがあって、どうしたものかと考えていた時、ちょうど自社の課題が示し合わせたように浮き彫りに。そうしたことを「ワンネス経営」で解決できるのか?市川がふくちゃんに飲みがてら相談。そこに私もご一緒して、お話を聞いたのが最初です。ふくちゃん曰く「そうそう、そういうの、解決できちゃいます」と。これはいいご縁だと思いました。
ワンネス経営とは、「人の心の成長」という観点とともに、「組織の成果の最大化」と「自走するチームづくり」を、それぞれマネージャーとメンバーに向けて教えてくれる研修です。特に私自身としての着目ポイントは、心理学や行動心理学に基づいたアプローチによって、人の感情の原因や対処法について学べるという点です。
ふくちゃんと話すうちに、私たちが抱えている本質的な課題の輪郭がはっきりしてきました。ワンネス経営の研修を受講し「人の心の成長」にアプローチすることで、その課題解決に向かうビジョンが描けてきたのを覚えています。
研修と聞くと「怖い、厳しい」というイメージが先行することも多いと思うのですが、この研修は「怖くない」のが特徴の一つ。フラップスプラン様の行動指針である「もっとたのしくおもしろく」という想いが込められていて、ポジティブに、楽しく、構えず受講できるところが魅力的でした。実際にやってみて、照れ臭く感じるほど、自分やメンバー、会社と向き合う演出がたくさんありました。そうした青臭いことをまっすぐにやれる機会、しかも笑いあり、涙あり、というのはなかなかないことだと思います。
──ライオンハートでは、お客様の課題解決においても本質を深り下げて解決することを大切にしていますよね。この研修も「人の心の成長」という、組織課題の本質にアプローチし、ポジティブに受講できるところが理念「笑顔創造」ともマッチしていますね。
「マネジメントの無免許運転」からの脱却。組織の成果を最大化させる
──輪郭がはっきりとしてきた「本質的な課題」とは、具体的にはどういうことでしょうか。
ふくちゃんに相談するなかで、「マネージャー達にもっと自立してほしいけれど、上手くいかず悩んでいる」と話したら、「それは無免許運転と同じですね」と言われました。
確かにそうだなと思いました。車の運転だって習っていなければ、車の正しい動かし方はおろか、正しい交通ルールもわかるわけがありません。マネジメントも同じこと。経営陣がマネージャーに対して「自走して欲しい」といくら思っていても、なかなかうまくいかなかったり「なんか惜しいな」と感じるのは、マネージャーが自身の役割ややるべきことを知る機会がなかったからなんだ、と。
それにもかかわらず、私たちはマネージャーに「できるでしょう」「やってください」「こうあるべき」を漠然と求めていたのだと気が付きました。
マネージャー個人のマインドやスキルの問題ではなく、経営陣が何も教えてあげられていなかった。私たちが悩んでいた課題の原因は、私たちがつくっていたんです。
これはまさに中小企業あるあるじゃないでしょうか。経営陣としては、マネージャーに対して「役職についたのだからちゃんとしてよ」と言いたくなります。でも、彼らがその役職にふさわしい動きができていないとしたら、それは「ちゃんと」が具体的に何を指すのか、何が成果になったら「ちゃんとできた」のかを言われていないからなのかもしれません。
──ライオンハートの皆さんが、ワンネス経営でどのようなことをしたのか具体的に教えてください。
約7ヶ月間にわたり、役員含め、各チームのリーダー・マネージャーになる人向けの研修を7回行いました。その後、メンバーも交えた全社員でさらに半年間受講しました。
ワンネス経営が提唱する心の成長とは、最終的に仲間同士がビジョン心理学的にいう「相互依存」の状態であることです(参考)。自分と会社、上司と部下、経営者と社員など、お互いが自立した上で協力し、同じ方向を見て、一緒によりよい成果を生み出す状態。ドラッガーが提唱するマネジメントの目的「組織の成果最大化」にもつながります。
「相互依存」の状態になるために、依存と自立の状態を理解し、どのようにステップアップしていくかを学びます。例えば、上司からの指示待ちのような一方的な依存状態から、自主的・主体的に行動する自立状態へと進化させていく方法などです。そのために、PREP法(相手に伝わりやすい説明の仕方)など効果的なコミュニケーション方法なども学びます。
人間の心の仕組みから始まり、実際の仕事の場面に適用できる具体的なスキルまでを一貫した理論に基づいて学んでいくのが、この研修の特徴のように思います。
ワークを通じて、まさかのマインドセット!2ヶ月後、常務になると宣言
──「心の成長」を通じて「マネージャーが自分の役割を知り、自立して動ける」ようになるための学びや、ワンネス経営に参加してみて良かったと思うことは何でしょうか。
自分自身のお話をすると、役員として感覚的に理解していたことを整理できたのが一番大きかったです。必要に応じて直感でランダムに実施してきたことが言語化されることで、理想のマネジメントを再現可能にしてもらった気がします。
特に「崖理論」というテーマは印象深かったですね。会社を引っ張り経営する側と、現場で事業に携わり、日々一生懸命頑張ってくれているマネージャーやメンバーとの間には深さも幅も大きな崖(※覚悟のギャップを崖として表現)があるという話です。
間に崖があるとわかっていても、ビジョンに向かい目標達成していくために、経営陣は先に進まなければならず、崖の手前にいる人たちも遅れないように頑張って力を発揮する。マネージャーはその間にいて、みんなを同じ方向を見て活躍できるよう引っ張る役割。マネジメントが整っていなかったら、経営陣はまた崖の手前側に戻ってこないといけない。「みんな、こっちだよ」と示し、引き連れて行くために。それを繰り返しているとビジョンに向けて加速することは難しい。
そのような前提を踏まえ、会社全体におけるそれぞれの立ち位置を体感できたのが「崖理論」の、ちょっとしたワーク。とてもシンプルなものでしたけど、私にとってはターニングポイントになったと言ってもいいくらいのことが起きました。内容は、その場を崖の手前側と向こう側に分け、実際にメンバーに立ってもらうってだけのワークというにもあまりに単純なひとコマ!
ふくちゃんによって「りっちゃん(妹尾さん)は、ここね」と、崖の手前に振り分けられた、当時執行役員だった私。その瞬間の強烈な違和感は、今でも忘れられません。「私の立ち位置、ここじゃない」って。「自分のいるべきところは、崖の向こう側だ」と。その約2ヶ月後、経営会議で「私、常務になります!」とまさかの自己推薦。
本来、常務なんて自分がなりますと言ってなるようなものじゃないんですけど、私の宣言を受けて、社長の長澤も「俺も、常務になったら?って話そうと思ってた」と。え、それなら先に言ってよ!と思いつつ、同じ気持ちでいてくれたことが嬉しかったです。
会長の市川も、ワークの時点で私と同じ違和感を持っていて、「僕はずっと、りっちゃんはこっち側(崖の向こう側)だと思って接してきた」と。
会長も社長も、私の立ち位置について、ずっと前から「あなたはそこじゃないよね」と示してくれていたにも関わらず、私がひとり、それを頑なに受け取っていないだけだったんだと気付かされました。
──どのような心境の変化があったのでしょうか。
以前の私は単純に経営側にコミットすることを恐れて、躊躇していました。
私はもともと自己評価がとても低く、失敗や傷つくことを恐れ、防御の塊みたいなタイプで。その自分が、自分自身の可能性に制限をかけていたんです。しかし、それを超えていかなければ部下たちをリードすることもできません。それから、こうして今の自分を超えていくような経験をマネージャーたちもする必要がある。その時、自身の経験を活かしてサポートすることができたなら、チーム全体が大きく成長する可能性があると感じました。
経営陣、マネージャー、メンバーは、そもそも視座が違います。それぞれの役割や立場が違うから。よって、視座、つまり物事を眺める立ち位置、見え方を揃えることはできない。だけど、互いの差異を認識し、その内訳を理解しさえできたら、どうすれば相手に伝わるかを想像し、創意工夫を込めたコミュニケーションができるようになります。
研修を通して、マネージャー層とはマネジメントの、メンバーとは同じ方向を見て力を発揮するための共通言語ができた(※共通言語に関してはこちら)ことは大収穫です。共通概念を共通の言葉で持ち合うことで、立場による見え方の違いを超えてコミュニケーションができるようになりました。
──ワンネス経営を受けたことは、ライオンハートにとってどんな機会だったと思いますか。
「自分自身にも、相手にも興味を持つこと」を学んでトレーニングする機会だったと感じています。
この研修は、初めてポジション問わず全社員で同じ講座を受ける機会となりました。お互いの感じたことを共有したり、ディスカッションしたりするなかで、私自身、初めて彼ら彼女らのことを知る機会を得たんです。そのなかで「この人にはこんなすごいところがあったんだ」と感動することがたくさんありました。
人を知れば知るほど、魅力を感じてもっと活かしたいと思ったり、尊敬する気持ちが生まれたり。
そのように相手の立ち位置や魅力を素直に尊敬できるのも、先ほど話したように「崖理論」を学び、自分や相手の立ち位置が分かるようになることが関係すると考えます。立ち位置の違いをわかっていないと、他の人のすごさに圧倒されて自信を失う可能性もあります。
「崖理論」はリーダーワンネス受講者しか習いませんが、メンバー同士も自分と仲間を知るワークを通じて、お互いに興味を持ち、理解し合う方法を学びました。
それぞれの立場において、相互理解は欠かせない。互いの理解がなければ、そもそも協力関係にはなれませんから。
学びは行動に起こし、継続してこそ力になる。経営陣もメンバーも変化し続ける
──研修を受けたマネージャー・メンバーへの影響はどのように感じていますか。
マネージャーたちも、自分を省みて、自走してチームのマネジメントを行うための鍵をたくさん手に入れたと思います。例えば、セルフハンディキャップ(言い訳できるように自分でハンデをつくること)を避けるようになり、より堂々とした姿勢で仕事に臨む姿が見られるようになりました。自分自身のセルフイメージの低さやコンフォートゾーンを自覚したり。
ワンネス経営の研修終了後、さらにマネジメントをいろはを学ぶ講座を受講してもらっているマネージャーのひとりは、ワンネスを素直力で吸収して、うまいこと開花したなぁと思います。その講座では、毎回、学んだことを上司にシェアする時間が宿題として出るんですが、その時の彼の態度やプレゼンテーションはまさに、ワンネスでも習った主体性の塊。
ライオンハートで10年以上にわたる活躍の中培ってきた持ち味を全部生かして、彼自身の頭と心をしっかり使って学んでいることがひしひしと伝わって、手前味噌ながら、感動ものです。
ただの学びの見聞録にとどまらず、感じたこと、提唱、危惧、いろんなことを広い視野と高い視点で捉えており「この仕事に自分の命を活かしているんだな」と。実はこの人、私とはちょっとギクシャクした時期がだいぶ長くあったわけですが(この件についてはこちら)、今ではお互いに、今見えている未来のことやちょっとした相談ごとを本音で話せるようになり、人事としてもとても心強いです。
また、あるデザイナーは、フィードバックの受け取り方が変わりました。以前は、デザインに対する指摘、アドバイス、ほぼ全てに反論または言い訳のオンパレード。研修後は素直に受け止めようとする姿勢に変わったように思います。熱心に勉強し、楽しそうに取り組む姿が印象的でした。おもしろさを見出して、楽しく取り組んでいる人の仕事は見ていて気持ちがいいです。
仕事への向き合い方が変わり、徐々にリーダーシップを取れるようになったことで、成長したというか、心の背が伸びたような感じがします。
──ワンネス経営の研修受講から1年が経ちますね。これから会社として研修の学びをどう活かすことが大切だと考えますか。
研修で学んだことを実践できるかどうかで大きな差が出ます。今は研修終了後にどうやって学びを風化させないかという工夫を考えています。理念の浸透と同じように、継続的な取り組みが重要です。
当たり前のことだけど、研修を受けたからとて、一気に劇的な変化が起こるわけではないと思っています。また、組織の変化には、過半数以上の変化が必須。それにはまず、まず自分が変化を恐れず、素直力で吸収し、挑戦し、成長すること。ワンネス研修のキーワードの一つに「私が変われば、チームが変わる」という言葉があります。自分が変わり周りも変化する。そしてまた自分に影響を与え、良い循環が生まれます。
寝る前に歯磨きをしたり、朝になったら起きて支度するのと同じくらいごく自然に、肩肘はらず、研修で学んだことを日常に組み込み、実践できるようになることが目標です。
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