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米国カリフォルニアにオフィスを構えてから1年を記念して、弊社代表山口にインタビューを行いました
2022年、米国進出
―リバティーンズ株式会社を2007年に創業してから現在に至るまで事業拡大されてきたと思います。なぜこのタイミングで米国に進出しようと思ったのですか。キッカケや理由などがあれば教えてください。
米国進出を決めた理由
キッカケは大きく分けて3つあります。
一つ目が、純粋に起業家として、私たちのサービスを一人でも多くの方に届けたいと思っていた事です。必然的に海外は視野に入れていました。そして海外を視野に入れると狙える市場規模が大きくなります。獲得できる市場規模を大きくしていくというのは、企業体として、事業の成長を考える上でとても重要な事です。更に、私たちが最も得意としている特定分野の広告市場が、世界的に急成長していたタイミングであったことも大きな要因です。
二つ目が、私たちに米国市場での実績がある為です。以前、自社アプリを米国でリリースして、ほぼ広告費ゼロでASO(App Store Optimization)のみで1000万ダウンロード以上獲得できた事が大きいと考えています。そのため私たちのマーケティング事業自体が米国を得意としていたという背景があります。一部の人たちからは、米国と日本の文化が異なりすぎて、アジア市場の方が適しているのではないかという意見もありましたが、私たちは確かな実績があるため、米国市場を選択しました。
三つ目が、アメリカ人・経営コンサルタントの言葉。将来の方向性で迷っている時に、自分の会社の未来の話をしたら、「僕が君の立場だったらシリコンバレーに行くよ」と言われた事が大きいと思っています。日本人にシリコンバレーと言われるよりも、経験豊富なアメリカ人にシリコンバレーへと言われた方が説得力がありました(笑)
渡米決断後の情報収集
―では米国行きを決断してから、行った事を教えてください。
私の場合は、まず米国行きを決断していたので会社設立とビザの手配を行いました。その間に何度か渡米し、事業を行う上で仮説をつくるための情報収集をしました。そのために聞いて回った質問は、「なぜ日本の会社は米国で成功しないのか。失敗事例は何か。」という事です。
―どちらかというと成功談ではなくて失敗談を集めにいったのでしょうか。
主に失敗事例だけを聞いてまわりました。
その理由としては、よく言われる事ですが、成功パターンは一つのパターンだけではなく再現性がない場合も多いが、失敗パターンは特定しやすく再現性があると考えるからです。
例えば大谷翔平選手の大きな成功の理由は、二刀流で両方の能力がとても優れていること。しかしここに一般的な再現性はありません。このように同じことをやろうとしても背景が違いすぎて、全く再現性がない場合があります。しかし、失敗例のパターンを見つけ出そうとすると、例えばそのまま野球を例に取ると、「マウンドが日本と比べて硬かったから」、「ボールが違ったから」。結果、「慣れるまで時間がかかった」など、特定しやすく再現性のある理由が多いと感じています。これなら対策はできます。ビジネスも一緒だと思っています。
つまり、失敗例には再現性があってパターンがある。それを特定しどう回避するかを分析した後、勝てる根拠や道筋を導き出し、勝率を上げたいと考えました。
本気でやっていく、を米国にいる人たちに伝える
―米国進出する上で、心がけていたことはありますか。
米国現地にいる日本人含め、米国籍の人たちに対して私が「これはやらない」と決めていた事があります。彼らにとって、とても失礼だなと考えていたのが「腰掛けで米国にいる」、またはそう思わせる事です。「視察」という名目で訪れ、結局現地にいる人にとっても、その後、何にもならないというのを可能な限り感じさせないようにしました。やはりそういう人に何かを協力したいと思えないと思うし、誠実さが伝わらないように感じたので。恐らく現地の人も疲弊するはずだと考えました。
―そうなると本気というのは、山口さんはどの様に伝えたのでしょうか。
「もう渡米が決まっていて、既に来ている」という状態を先に作りました(笑)リスクになりそうな部分は回避した上で、最低限の準備を日本で行った後、会社設立やビザの手配。その後に踏み込んだ情報収集という流れにしました。この流れにした理由の一つに、現地の人たちに私の本気度を伝えたかったというのがあります。一番最初に情報収集をしようとすると恐らく協力してくれる人たちが減ると考えました。
―情報収集が先で勝率がどうかを考えていくっていうのが普通の考え方だと思います。それだと上手く行かない可能性が高いということでしょうか。
渡米前後で私が行った情報収集の種類は2つあると思っています。一つは先に述べた「仮説構築のための情報収集」、もう一つは「仮説を確信に変えるための一次情報の取得」です。後者に関しては、可能な限り生の一次情報を得る必要があると考えました。そのためには、かなり自分から踏み込んだスタンスを取らないと情報は取得できません。結果として、「もう私たちの米国進出は既に始まっている」という状況を可能な限り早めに作り出す必要がありました。
私たちの行動指針の一つに、「判断のプロセス」という項目があります。これは、断片的かつ未確認な情報の上で判断するのではなく、正しい一次情報や事実を確認していくことで初めて正しい判断が成立するという考え方です。「思い込み」を可能な限り回避する考え方とも言えます。
世界規模に大きな会社でしたらまた別だとは思いますが、例えば私たちの会社の企業規模で「米国へ行って、新規事業開拓のための一次情報を取得してきて下さい」「事業を立ち上げてきてください」と社内の誰かを派遣したとします。そこで自分が触れるのはあくまでも誰かが取得した上での二次情報ですから、その情報を元に何か重要な決断をするのは相当困難だと思います。つまり、経営判断をする層が一次情報をある程度持っていないと、重要な局面での判断が出来ないと考えます。実際、上場企業でもCEOが米国に行っているケースもあります。この、「誰が」現地へ行くのか、という話が、失敗事例を集めた中にまさにケースとして存在していました。少なくとも外国で会社を新しく作り「事業の立ち上げ」をするとなると、相応の大きな裁量と責任が必要です。それを持った人が責任を持って行かなければ、結果的に事業の難易度を上げてしまう可能性があると考えました。その為、まずは私自身が行くべきだという話になりました。本気を試される場所、大変シビアな場所。そんな場所だからこそ、組織のトップが本気になって初めてスタートラインに立てるのだと思っています。
―情報収集は知り合いの方、「ツテ」を頼って行かれたのでしょうか。
日本で知り合った方から紹介してもらい、更にその方に紹介してもらって、という幸運な縁の繋がりに恵まれました。今でもその方たちにはとても感謝していますし、実際に取引させていただいている企業様もいらっしゃいます。どうやったら周りの人たちから協力してもらえるかを意識し、かつ協力してもらえるビジネスかどうかを常に問い直す、というのは非常に大事な視点・姿勢だと思っています。私たちの行動指針の「人を巻き込む」の重要性を自分でも痛感しているところです。※この言葉の意味は、一人では大したことはできない。その為、大きな力を得て大きな目標を達成するために人の力を借りれるような、人が力を貸したくなるような存在になろうという趣旨の言葉。
時間を共有して感じた「ダイバーシティ」
―どんなメンバーと仕事をしているかや、感じていることなどを教えてください。
米国のメンバーは全員米国籍ですが全員バックグラウンドや人種もバラバラです。それぞれの個性を持ちながら、みんなとても優秀で、私自身いつも助けられ非常にリスペクトしています。
そんな彼らと接していて考えさせられるのは、多種多様な人が集まった国、かつ歴史の比較的浅いアメリカでなぜ世界一の経済が達成できるのかということでした。
世界中から優秀な人たちを集めて巨額の投資をしていることがシンプルにその理由の一つでしょう。企業の中にあらゆる人種の優秀な人たちが存在していますし、加えて、例えば米国の大学は、人材を世界中から自分の大学へヘッドハンティングしてくるという話もあります。人材を集める意欲や実行力、システム自体が日本と全く異なると感じました。
また、米国は多種多様な人材をたくさん集めることで生まれる「ダイバーシティ」の深さ、そしてそのダイバーシティを受け止められる環境が強みになっていると感じます。
本当に大事なことは世界のどこでも変わらない
「相手の役に立つことをまず行う、そのために自分たちが価値をどうやって生み出すか」というビジネスの基本的な考え方は、どこにいても変わらないと信じています。
日本人にとっては特に、遠い米国では何かとてつもなく大きなことをやっている、と感じる場合もあるのではと思います。確かにその面もあるかもしれません。しかし、目指すところに向けて「愚直に問題設定をして、問題解決をしていくこと」はどこにいても全く変わらないはずです。それを真摯にやっていくことがビジネスの本質だと思っています。
また、上記に述べたダイバーシティという言葉は、「多様性」と定義されますが、「違うこと」を尊重し、それを認め合うことが言葉の解釈となっていると思います。しかし、「何が自分たちにとって同じなのか、一番大切なのか」を共有した上で、お互いに違うことを尊重する、そんなダイバーシティの在り方が、ビジネスを行う上で非常に自然、かつ重要だと考えています。
「中心にある大切なもの」は変わらない。この意味でビジネス自体が共通言語になり得ると考えています。
「リバティーンズ」を知ってもらうために必要なこと
―日本で15年実績を積んでから米国に進出しましたが、セールスの面で大きく違いがありましたか。
やはり信頼を得るのがとても大変でした。恐らく日米で企業として信頼を得るための要素は同じだと思います。しかし、信頼を得るためのプロセスが違うと思いました。
例えば、米国では、プロダクトのコンテンツマーケティングの重要性が日本よりとても高いと考えています。日本国内でのBtoB事業では、コンテンツマーケティングはそこそこでも、対面で会って人対人の部分が大きなウェートを占めていると感じる事が多々あります。当然これは米国も同じです。しかし、米国内で認知を高めようと思うと国土が広すぎて、実際に全ての人に直接会うのは難しい。結果的に、プロダクトのコンテンツマーケティングが日本より重要になります。
結果だけ言われると当然の様に思えます。しかし、実際は、この部分において自分の成功体験が邪魔になったことがあります。私は東京でBtoBのビジネスに長く携わり、人と会ってコミュニケーションを取ることを大事にしてきました。そこでの多くの成功体験をベースに考えた時、コンテンツマーケティングの優先順位をまずは高める、というアプローチは頭で理解していても優先順位を上げることが難しい部分がありました。
そして、国土が広い米国では、たとえBtoB事業であってもプロダクトのマーケティングは、日本以上にオンライン化が進んでいると感じます。例えば、日本でもコロナ禍で営業先訪問や人に簡単に会えない、制限された状態が続きました。各企業でもリモートワークが多く導入され、BtoB企業のマーケティング手法は、デジタル化していきました。その結果、BtoB企業がBtoC企業の様に、それまで以上にWEBや動画を含めたデジタルコンテンツを駆使し、顧客へのアプローチ手法が変わって行きました。率直に言えば、BtoBマーケティングのオンライン化がコロナ禍の日本で加速しました。米国ではこの傾向がもともとの国土の広さも相まって、日本より更に成熟している状態だと感じています。
私たちのコンテンツマーケティングは、まだまだ伸び代が多分にあると感じています。これから更に力を入れていきます。一方、プロダクト自体は徹底してローカライズした甲斐もあり、良い感触を得られています。今年ニューヨークでプレゼンを行った時も、私たちが最も反響があったと実感できました。その為、プロダクトや自分たちの実績、顧客の問題解決に関しては何も違和感なく自信を持っています。
また、日米同様に、業界の大きな動きの中で「モバイルアプリマーケティングに対する新たな知識への欲求」がこの業界全体に存在していると考えています。まずはそれに応えられるような発信をしつつ、自分たちは「こういう存在です」という情報発信能力が大事だと思います。お客様が抱える課題とその解決、自分たちの強み、新たな知識やアプリマーケティング戦略、企業体としてのスタンス、実績や歴史。これらを多くの方々へ発信する情報発信能力が企業として問われていると感じています。
徹底的に発信していくこと
―日米での違いを実感されて、改めてこれから一番重要なことは何でしょうか。
私たちの行動指針の中に「2つの強み」という項目があります。この考え方は強みは1つではなく、2つ以上の要素の掛け合せで、強みが存在するという考え方です。日米、それぞれのやり方があり、やるべきことや大事なことの優先度も異なる。それを両方知っている事自体がリバティーンズの強み。世界で戦える。日米双方のスタッフが、相手の状況を理解して、その上でそれぞれが発信していくことが重要だと思います。私たちにとっては、発信力が、シンプルに最も大事になっていく、と思っています。