前編では、研究開発責任者の木下さんと、CHROの和泉正倫さんに、世の中の教育のあり方についてそれぞれの考えを聞きました。
「あるべき教育のアップデート」を掲げる木下さんと、「人間回帰」を掲げる和泉さん。
AIが人に教えられる時代に教育会社は何を売るのか、という問いには、木下さんの「まだわからない」という率直な答えと、和泉さんの「憧れドリブン」という考え方を伺いました。
後編では、その考えを自分たちの組織に向けたとき、何が見えてくるのかを聞きました。
キカガクの社内教育文化と、いま作り替えの最中にあるスキルマトリクスについてです。
(※前編はこちら)
先輩の背中を見て、議論しながら学ぶ社内教育
視点を変えて伺います。教育のプロとして、自社の社内教育の仕組みについて、良いところと改善すべきところを教えてください。
木下:前編でお話しした「憧れ」の話は、実は社外向けだけでなく社内にもそのまま当てはまると思っています。ある意味、昔の大学に近いイメージです。決まった講義があるわけでもなく、基本的には先輩の姿を見て、議論をしながら学んでいく。学びたい人が自由に学べる形になっている気がしています。
和泉:僕も同じことを考えていて、キカガクの良さとしては、内発的に学ぼうとする人がすごく伸びますし、その状態は持続しやすい。一方でデメリットもあって、どうしても伸び方のばらつきが出てしまうのと、特定の人に依存しやすいので、その人が抜けたときに組織としての成長が鈍化してしまう。人材育成の仕組みとして、平均点を全員で取り、力の総量を大きくするという方向にはあまり向いていないんです。
それは変えていくべきだと思いますか。
和泉:一概に悪いことではないと思っていて。前編でお話しした「憧れドリブン」ではないですが、内発的にやりたいことを持って伸び続けられる人が伸び続けられる組織であることが、もしかしたら僕たちの強みなのかもしれません。他の会社のように、誰が抜けても同じ成果が出るように一律に仕組み化するのが正解なのかは、正直まだわかりません。
人事としては、そこは今もまさに手探りです。仕組み化と、一人ひとりの力を伸ばすやり方と、どちらが事業の成長性に合っているのか、実際にスキルマトリクスを動かしながら確かめている最中です。
スキルマトリクスを、いま作り替えている最中です
キカガクでは、スキルマトリクスをAIネイティブな内容に作り替えていると聞きました。具体的に、何を変えたり何を入れようとしていますか。
和泉:まだ最初のバージョンの段階です。これまでは、人が組織をつくることを前提につくられた評価の基準でした。そこに、AIという新しい要素を加えてみています。ただ、それで人を正しく評価できているかというと、正直まだわかりません。
それでも、AIを使って組織を変えていくことを社会に提案している会社が、自分たちで試していないのはおかしいと思うので、今少しずつやってみているところです。
その動きを、R&Dの視点から見てどう感じますか。
木下:この時代は、スキルマトリクスに限らず、あらゆる仕組みを少しフレキシブルにしておくべきだと思っていて。今の研修もそうですが、時代の流れによってダイナミックに変わっていく領域ですし、そこにどれだけ変化に対応できる仕組みにしていけるかが大事です。
一つひとつを完璧に定義しきるのは難しいと思うので、運用しながらブラッシュアップしていく前提でやっていくしかないと思っています。
ただ、評価について難しいと思っていることがあります。たとえば「AIの出力を批判的に検証する力」があるかどうかを、感覚だけで判断するのは正直厳しい。
何回かAIで出した資料をそのまま出してきただけで評価を下げるのは違うと思っているので、そこをどう測るかは、僕たちもまだ手探りです。
プロンプトを分析して評価を定量化する試みもあると聞きました。
木下:そうなんです、結局は感覚とコツで測るしかなくなってしまうところがあって。ただ、人の能力をAIとのやり取りから可視化する研究は、いろいろなところで進んでいます。
ちゃんと深掘りした質問ができているか、AIに対してどれだけ自分の意見を伝えられているか。
ターン数や、そのやり取りの質を定量的に測っていくという方向性です。
和泉:似た例で言うと、プログラミング未経験でも、法律などの専門知識を武器にAIを使いこなして、プロダクト開発のハッカソンで良い結果を残す人がいる、という話も最近聞いたことがあります。
木下:それ、僕も聞いたことがあります。AIの生成した出力と、その人の最終的なアウトプットとの類似度を見ると、その人がどこを自分の意見として上書きしたかがわかる。丸ごと使っているだけなのか、専門家としてきちんとポイントを見極めて手を加えているのか。そこを見れば、その人の専門性がどう効いているかが見えてくると思っています。
対談を振り返って
最後に、今日の対談を振り返っていかがでしたか。
和泉:未来について考え続けること、考えを止めないことだと思っています。人事領域だけでなく、幼児教育・インターの領域も、僕らのミッションから切り離せないところにあると思うので、地道に考え続けていきたいです。
今日、木下さんと話していてすごく面白かったのは、R&Dの話です。教育企業がR&D部門を持っているというのは、かなり珍しいと思うんですよね。でも聞けば聞くほど、AI技術と教育、両方の専門性が深いからこそ、新しい時代の学びをつくれる。それって、自分たちが思っている以上に強みだし、得意なポジションなんだと感じました。
木下:ありがとうございます。まさに今日の対談自体が、それを表していた気がしていて。僕らは教育を深くし続けないと、専門性がすぐに代替されてしまうと思っています。AIが出てきたことで、逆にそこの重要性に気づかされました。
インタビューをしながら感じたのは、AIネイティブな組織を目指すことは、結局「人に何ができるか」を問い直すことなのだということでした。技術の話も、組織の話も、たどり着く先は同じだったように思います。
キカガクは、こうした問いを社内で終わらせず、率直に発信していきたいと思っています。取り組みに関心を持ってくださった方は、ぜひ採用ページも覗いてみてください!