【代表インタビュー】外国籍約20人の保証人になった経験が、80万人の生活インフラへ。世界中の「日本に来てよかった」を創るGTNの挑戦
「日本、特に地方が生き残るための鍵は、間違いなく多文化共生のマインドを持つこと」
外国人の日本での生活は、部屋が借りられない、携帯電話が契約できないなど、数多くの障壁に満ちています。株式会社グローバルトラストネットワークス(以下GTN)は、代表取締役社長である後藤氏が学生時代に抱いた問題意識を原点に、外国人の「信頼」を保証することで、彼らの生活インフラを根底から支える独自の事業を展開しています。
単なる事業に留まらず、日本の社会課題を解決し、「世界から真に人が集まる国」を創るという壮大な構想を掲げる後藤社長。その情熱の源泉と、GTNが目指す未来について、詳しくお話を伺いました。
後藤 裕幸 / 代表取締役社長
大学在学中に起業し、ITバブルの崩壊や事業のバイアウトを経験。外国人の友人たちが直面する「家を借りられない」という課題に対し、自ら約20人の保証人を引き受けた経験から、外国人の信用を創造する現在の事業を着想。2006年7月、株式会社グローバルトラストネットワークスを設立。「外国人が日本に来てよかったをカタチに」という理念のもと、家賃保証事業を基盤に、通信、クレジットカード、人材紹介、医療支援など、外国人の生活に不可欠なサービスをワンストップで提供している。
ITバブルの挫折と、外国人の仲間が教えてくれた”リアルな課題”。すべての原点は学生時代にあった
ーー後藤社長はこれまでに3度も起業されているとのことですが、まずはGTNの創業に至るまでの経緯についてお聞かせください。
大学2年生の時に、韓国人や中国人の留学生の仲間と一緒に最初の会社を立ち上げました。私自身、昔から偏見というものが全くない性格で、当時まだ韓流ブームなどもない時代、周りの日本人が欧米からの留学生に注目する中で、私は彼らと自然に交流していましたね。
日本の学生がサークルや合コン、アルバイトの話に夢中になっている時、留学生の彼らは「世界をこうしたい」と大きな夢を語り、家族から借金をしてまで日本に来て、必死に勉強していました。 その優秀さと熱量に触れて、彼らと一緒にオンラインゲームとファッションサイトの事業を立ち上げたのが、私の起業家としての第一歩でした。
しかし、その矢先にITバブルが崩壊し、資金調達も困難となり、その事業は手放すことになりました。その後、コンサルティング会社を立ち上げたのですが、これも最終的には手放すことになりました。
ーーITバブルの崩壊など、厳しいご経験をされたのですね。そこから再び3度目の起業へと向かう中で、次に見えてきた「課題」とは何だったのでしょうか?
そして3度目の起業を考えた時、私の目の前にあったのは、仲間である外国人たちが直面している、あまりにも根深い問題でした。
日本に来た外国人が、まず一番に困るのが「家」なんです。親がガソリンスタンドを50店舗も経営しているような裕福な中国人ですら、保証人がいないために適切な住まいを借りられなかったり、事務所をパーテーションで区切ったような部屋に、数人が暮らしている光景も目の当たりにしました。
私自身も、頼まれるがままに約20人もの保証人を引き受けていました。中には会ったこともない「友人の友人」まで。でも、彼らは誰一人として家賃を滞納することなく、真面目に生活していました。この「保証人がいない」という課題は、ビジネスにできるのではないか。そう考えて立ち上げたのがGTNです。
私たちが提供するのは「信頼」そのもの。見知らぬ誰かの人生を支える、社会インフラとしての使命
ーーご自身の原体験が、GTNの事業の根幹になっているのですね。社名や理念に込められた想いについてもお伺いできますか?
社名の「グローバルトラストネットワークス」が示す通り、私たちが提供しているのは「信頼(トラスト)」そのものです。日本で暮らす外国人には、様々な場面で「信頼」が欠けていると見なされてしまいます。家を借りられない、携帯電話を契約できない、クレジットカードが作れない。彼らはマイノリティであるがゆえに、常に信用の壁にぶつかるのです。
GTNの役割は、その信頼を私たちが肩代わりし、付与することです。大家さんや企業に対して、「もしこの人が家賃を滞納したら、我々がすべて支払います。トラブルが起きても、我々が責任を持ってサポートします」と約束する。どこの誰かもわからない外国人を個人として見るのではなく、「GTNが保証するなら」と受け入れてもらう。この信頼のネットワークを築くことが、私たちのビジネスモデルの核です。
ーー「外国人が日本に来てよかったをカタチに」というミッションを掲げられていますが、これは具体的にどのような状態を目指しているのでしょうか?
誤解されがちですが、「GTNのおかげで良い家に住めました、日本に来てよかったです」とはならないと思っています。なぜなら、住居は「衣食住」の一つであり、生きていく上での最低要件に過ぎないからです。当たり前のことができたからといって、そこに感動は生まれません。
本当に「日本に来てよかった」と感じる瞬間は、その先にあるはずです。良い仕事に就けた、素晴らしい仲間と出会えた、好きな人と結婚できた。そういった一人ひとりの幸せな体験が生まれるためには、まず、その土台となる生活が当たり前に送れる環境が必要です。
かつて外国人は、携帯電話の分割払いが金融商品にあたるため、与信審査に通らず契約できないことが多々ありました。私たちはその課題を解決するために、自ら通信事業者(MVNO)になりました。
家も、携帯も、その他の生活インフラも、私たちが提供するのはあくまでも「当たり前の土台」です。その土台の上で、彼らが日本で最高の体験をし、心から「来てよかった」と思える未来を創ること。それが私たちの目指すミッションです。
競合調査より先にまず、やる。課題ドリブンで拓く「誰もやらないからこそNo.1になれる市場」
ーー御社は不動産保証から始まり、今では通信や金融、医療までワンストップで事業を展開されています。他社にはない圧倒的な強みだと感じますが、経営において大切にされていることは何でしょうか。
私たちは「課題ドリブン」な会社です。外国人が直面する課題がある限り、私たちのサービスは生まれ続けます。だからこそ、競合調査に時間を割くよりも「まずやってみる」ことを大事にしています。机上で考えるよりも行動するほうが、早く、正確な答えにたどり着けると信じています。行動以上にコストパフォーマンスの良い調査はありませんから。
もちろん、挑戦には失敗がつきものです。だから社内では「失敗の奨励」を掲げています。会社や仲間のために本気で挑戦した結果の失敗なら、それは価値ある経験です。何もやらないことの方が、よほど問題だと考えていますね。
ーー「まずやってみる」という文化は、後藤社長のどのようなお考えから来ているのでしょうか?
外国人とビジネスをしてきた経験が大きいですね。彼らとの間では、「以心伝心」や「阿吽の呼吸」といった日本的な曖昧さは通用しません。自分の意見を率直に主張しなければ、存在しないのと同じです。私はむしろ、その方がスタンダードだと感じています。
よく「日本の常識は世界の非常識」と言いますが、私はまさにその通りだと思っていますね。
例えば、就職活動で皆が同じリクルートスーツを着る文化。一律のスタイルは安心感を生む一方で、個性を発揮しづらくする面もあります。もっと自分らしさを表現していいはずなのに、社会の同調圧力でそれができなくなっている。
それでは生きづらいですよね。だからGTNでは、「どう見られたいか」を自分で考え、責任を持つことを大切にしています。ルールで縛るのではなく、個々の主体性を尊重する。それが挑戦するカルチャーの土台になっています。
「5年で変わらないと見放される」日本の危機。地方創生の鍵も、外国人の受け入れにある
ーーGTNが向き合っているのは、個人の課題だけでなく、より大きな社会構造の変化だと感じます。後藤社長は、現在の日本や世界をどのようにご覧になっていますか?
まさにその通りで、日本の社会システムは、根本的に「日本人しかいない」という前提で作られています。例えば不動産業界で「外国人OKですよ」と言いながら、「保証人は日本人の親族でお願いします」と平気で言われる。この矛盾に気づいていないほど、社会全体が内向きなんです。
私は以前から、日本の人口が減ることは予測していました。最も信頼できる経済指標は人口動態ですから。納税者である生産年齢人口が減れば、国力が衰えるのは必然です。その唯一の解決策が、外国人材の受け入れです。しかし、肝心の日本がこれだけ住みにくい環境のままであれば、いずれ誰も日本を選んでくれなくなります。
ーー労働人口の減少は、特に地方で深刻な問題となっています。この点についてはどのようにお考えですか?
非常に面白いデータがあります。日本で最も人口減少率が高い秋田県は、実は外国人受け入れに最も消極的な県でもあるんです。一方で、福岡県のように外国人に対してオープンな街は、若者も流入し人口が増えている。これは偶然ではないでしょう。
排他的なマインド、つまり多様性を受け入れない文化こそが、人口減少の根本原因の一つではないかと私は考えています。それは外国人に対してだけでなく、若者や女性など、異なる価値観を持つ人々を排除する風土に繋がります。それでは、地域が衰退していくのも当然です。日本、特に地方が生き残るための鍵は、間違いなく「多文化共生」のマインドを持つことだと、私は考えています。
目指すは地球規模の「人口リバランス」。自らの手で事業を創り、世界を舞台に挑戦したい人と未来を創る
ーー社会課題を解決し続けてきたGTNですが、今後どのような未来を見据えているのでしょうか。
私たちが最終的に目指しているのは、地球規模での「人口のリバランス」です。世界を見渡せば、日本のように人口が減り働き手が足りない国がある一方で、若者が溢れているのに仕事がない国もたくさんあります。この巨大な不均衡を、人の移動によって最適化していく。それが私たちの究極の目標です。
それは単に労働力を移動させるという意味ではありません。自分の生まれた環境がすべてではない、と知る機会を世界中の人々に提供したいんです。視野が狭いことは、不幸の源泉です。
今の環境が合わなくても、少し場所を変えれば、自分を必要としてくれる場所、輝ける場所は必ずある。日本人だってそうです。一度海外に出て初めて、日本の良さや自分がどれだけ恵まれていたかに気づくこともある。私たちは、人々が自分にとって最適な生き方を選べる、その選択肢そのものを提供していきたいですね。
ーー最後に、この記事を読んでいる求職者の方へ向けて、GTNで働く魅力や、どのような方と一緒に働きたいかメッセージをお願いします。
GTNは、日本に数少なく残された、安定的かつ長期的に成長する市場で事業を展開しています。社会貢献性とダイバーシティ、そして世界を肌で感じられる環境がここにはあります。だからこそ、私たちは言われたことだけをやる人ではなく、能動的に自分のキャリアを考え、課題解決に挑戦したい人を求めています。
社内には起業経験者も多く在籍しています。一度は自分で事業を立ち上げたものの、一人の力では限界を感じ、「GTNのプラットフォームを使えばもっと大きなインパクトを残せる」と考えてジョインしてくれた仲間たちです。そのような起業経験者はもちろんGTNでキャリアを築いてきた人も、意欲次第で大きな権限を担える環境があります。20代の執行役員や部長も珍しくありません。
将来、自分で事業を創りたい、世界を舞台に大きな挑戦がしたい。そんな熱い想いを持った方にとって、GTNは最高の環境だと約束します。ぜひ私たちと一緒に、まだ誰も見たことのない未来を創っていきましょう。