フォースタートアップスが法人設立から約3年半で東証マザーズへの上場を果たした2020年3月13日は、記憶に新しいコロナショックによる世界株価大暴落の日。 続く緊急事態宣言下でスタートアップの人材マーケットも一部停滞したが、3カ月間、情勢を見極めながらできる努力を重ね、今、当初描いていた成長戦略を徹底的に実行する決意を固めた。新たな仲間とともに、日本の再成長を目指す。
志水雄一郎 プロフィール フォースタートアップス株式会社 代表取締役社長兼CEO 慶應義塾大学 環境情報学部 卒業、株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア株式会社)にて『DODA』立ち上げなどを経て、2016年に成長産業支援事業を推進するフォースタートアップス株式会社を設立、代表取締役社長に就任。 2014-15年ビズリーチ主催『Headhunter of The Year』2年連続受賞。2016年 国内初『殿堂』入りHeadhunter認定。2019年より一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会ベンチャーエコシステム委員会委員に就任。2020年に一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連) スタートアップ委員会企画部会/スタートアップ政策タスクフォース 委員に就任。 人の可能性を最大限に生かし、日本の再成長と地球規模の様々な課題解決の実現へ 私たちは創業以来、日本の再成長を目指し、人の無限大の可能性を活かした事業創造を中心とした成長産業支援に取り組んできました。加えて今後は、日本の再成長にとどまらず、広く世界に目を向けて地球課題、環境課題、社会課題を、イノベーションを持って解決し、より良い未来の実現に少しでも貢献したいと考えています。
新型コロナウイルスをはじめ、地球規模の課題を解決するのは、恐らくディープテックやリアルテック領域のテクノロジーでしょう。それは本来、日本が得意としてきたもの。日本から、そのようなイノベーションが生まれたら最高です。 しかし、我々は、例えそれが日本から生まれなかったとしても、その課題解決に少しでも関わることができる企業体でありたいと思っています。その結果、我々の ※1 ケイパビリティリソースを拡大できるのであれば、日本を含むグローバル視点の課題解決ができ、より良い未来の実現につながると考えるからです。
※1 ケイパビリティとは企業が持つ強みのこと。
また、そのような視点を持って、成長産業支援事業に取り組んでいます。具体的には、創業時から注力してきたタレントエージェンシーサービス、国内の成長産業やスタートアップの情報を集約したデータベース『STARTUP DB』、大企業と有力スタートアップを結び付け、協業を促進するオープンイノベーションサービスなどです。
『STARTUP DB』は、国内最大級のスタートアップデータベースに成長しました。2019年夏には、米国の世界最大級のベンチャー企業データベース『Crunchbase』と提携。『STARTUP DB』に掲載された約12,000社の情報が、世界に向けて発信されるようになりました。 国内では、複数の有名大学で学術研究にも活用されているほか、スタートアップ企業向けには、無料会員機能『STARTUP DB CLUB』も開始。会員登録すると、提携サービスの割引などの特典があります。提携企業には、Oracle、AWS、Salesforce、Microsoft、ほかにも国内大手企業が名を連ね、いわばスタートアップの大応援団を形成しています。『STARTUP DB』は、データ自体の価値が高まるとともに、その周辺領域にも展開する足がかりとなる情報プラットフォームを目指して進化を続けています。
『STARTUP DB』を中心とする企業との連携事例を一つ挙げると、先日発表した三井住友銀行とSMBCベンチャーキャピタル、SMBCヒューマン・キャリアの3社と動き出した成長産業支援の取り組みです。
「SMBCグループとの提携」リリースより まずは、フォースタートアップスの『STARTUP DB』が保有するデータと、SMBCグループがもつネットワークを掛け合わせ、成長可能性の高い起業家・スタートアップを発掘・特定するための「情報」を整備します。成長させるべき起業家・スタートアップを見つけたら、両者共同で人材支援、およびオープンイノベーション支援を実施。SMBCグループが保有する融資を含めた強力な資金提供能力のほか、戦略的な共同資金支援の枠組みも視野に入れています。 その他にも、日本の成長産業に資本を投下すべきという志を共にする、大手企業やコンサルティングファーム、これまでも同じ志をもって協働してきたベンチャーキャピタル(VC)など、様々な企業体と連携し、成長産業に集中支援する取り組みを実現すべく、今、話を進めているところです。どんなにそれぞれの企業が事業を伸ばし、利益を上げようとしても、日本経済自体が沈んでは元も子もないですから。 このままの日本の姿に危機感を抱く方々と、「真にいま私たちがやるべきことは何か」議論し、次の展開に向けて動き出しています。
成長産業を支える枠組みはヒト、カネ、情報、戦略。全方位的に事業を展開予定 成長産業を支える枠組みは、ヒト、カネ、情報、戦略が大切だと考えています。ヒトについては、タレントエージェンシー事業で既に手がけており成果を上げています。 情報、戦略を担うのは、『STARTUP DB』とオープンイノベーション事業。 残る一つのカネについては、これまでもB/S投資やファンドへのLP投資などは手がけてきましたが、今後、さらに拡張する余地があると考えています。外部パートナーとの共同、あるいは当社単独で、GPとしてのファンド組成・運営も近いうちに実現したいと思います。
「千葉道場ファンド一次募集出資者として参画」リリースより タレントエージェンシーは、今後も変わらず我々が最も注力していく事業です。 以前は、プレIPOマーケットを中心とした企業をご支援をしてきましたが、今は、もう少し幅広くとらえています。大手企業に入社することが誉れであるここ日本において、これまでは、日本人が最も不得意な挑戦である、勇気をもって成長産業に飛び込むこと、または起業することを支援してきました。 今後は、もう少し手前の領域で、少しの勇気があればできるであろう、大企業における※2 カーブアウト、新規事業創出、DXなどに挑戦する人材も支援し、イノベーション創出に尽力できるのではないかと考えています。結局、成長産業を育てるという点では、プレIPOも大企業も同じ。昨今、コンサルティングファームやVCもこの領域に注目しており、彼らとも連携の準備を進めています。
※2 カーブアウトとは、企業が事業部門の一部や子会社を切り離し、ベンチャー企業として独立させ、収益の改善や事業の成長を図る経営戦略のひとつ。
従来のスタートアップ市場も十分に大きなマーケットでしたが、上場会社というさらに大きなマーケットが加わります。我々は、この領域も自分たちの成長ドライバーにしていきます。
ヒト、カネ、情報、戦略と全方位的に、挑戦を続けていきます。
世界株価大暴落の日に上場。緊急事態宣言下の苦境を経て徹底的に攻めに行く決意 私たち自身も、2020年3月13日にIPOを実現しました。その日は、コロナショックによる世界株価大暴落の日。記録にも記憶にも残るチームになったようです。 しかし、その後の緊急事態宣言で、SaaSやクラウドAIなど、それまで急成長を続けていたtoBのスタートアップが採用計画を見直すなど私たちの受注にも大きな影響が出ました。その後、私たちは少し復調しましたが、来期以降の情勢は予断を許しません。リーマンショック時も、企業のリストラが本格化したのは半年後から1年後でした。
ただ、今のマーケットを見ていると、大手でも民事再生に踏み切った会社などがあるなか、スタートアップはオフィスをなくしたり、一部のメンバーを外に出したりはしていても、「このスタートアップが潰れた」という話は聞こえてきません。生存能力は高いのではないでしょうか。
そして、本当に強いと目されるチームには、依然として大型の資金がどんどん集まっています。 私たちのビジネスは、当事者が「伸びたい」と思い、周りのみんなも「応援したい」と思っているチームから順に応援するというもの。それは、この状況下でも変わりません。
振り返ると、緊急事態宣言下の5月は受注が落ち込み、厳しい状況でした。 そこから3カ月ほど、社会情勢を鑑み、様子を見ながら改善した結果、再び攻めにいける手応えが出てきました。収益を確保でき、マーケットがあるなら、やはり、元々考えていた成長戦略を徹底的に、むしろ攻めにでよう、遅れた分を取り戻しに行こう、と考えました。 3カ月分の遅れをとりもどすには、ものすごいパワーが必要です。人を採用しなければ、来期以降の成長率の改善が難しくなります。ならば今期、採用を加速するという明確な意思を持ち、仲間を募っています。
成長産業セクターに関わる『人材とデータ』は価値が高いということが、私たち自身にも見えてきました。やはり日本には、成長産業が立ち上がり、成長していくことが必要です。 でも、優秀な人材が成長産業を選ぶという風潮がなかった日本には、まだまだそれをやるチームが必要で価値があります。また、この成長産業マーケットがどうなっているか、まとまったデータも存在していなかったので、誰も実態を正確に理解していません。 それを可視化し、序列化できる仕組みを持つ我々フォースタートアップスと組もうと、大企業や行政など様々なところからお声がけをいただいています。
収益性を担保でき、社会的責任があり、時代や社会からのニーズも集まっている。自分たちがやっていることに間違いはない。だからここでしっかり事業を創りあげ、社会システム化、インフラ化することがとても大事だと思っています。
コロナで始まった令和。「仕方ない」と言うな。人間の素晴らしさは「努力できる」こと 敗戦後何もなかった時代、みんなが次の夢と希望を持つためにソニーやパナソニックが生まれました。 トヨタや日立はカーブアウトして、そこに都市銀行がお金を出し、人が集い、グローバルで競争力を持つ企業体になりました。そんな企業体をたくさん持った日本が国際競争力を持ち、国民は、豊かな生活水準を享受しながら、日本人であることに対してプライドを持って生きたのが昭和時代でした。
平成時代は、成長産業に人と資金を集中させた米中やほかの国々が伸びた一方で、日本はそれができませんでした。令和の時代は、コロナという大きな問題からスタートしました。 ここで改めて、日本の昭和時代を思い出してみてください。昭和を経験していない方は改めて調べてみてください。当時はみんなが学び、働き、何もないところから自分たちの生活を良くするために、より良い国をつくるために懸命に努力しました。
中国は今DXも進み、その上でよく働き、人がいてお金も投資しています。でもここで、ただ「勝てない」と諦めるのではなく、少しでも働いたり、生産性を上げたり、DXを進めたり、一歩前に進むための努力をすれば、それらが掛け算されたときに得られるものが必ずあります。 今こそ、視野、視座、視点を高く持ち、国際競争力を持ち、自分の家族や子孫により良い未来を提供するために、動いてみませんか。
「社会がこうだから」、「事業がこうだから」、「会社がこうだから」仕方ないと簡単にあきらめる人には来てほしくありません。「自分には可能性がない」と言っているに等しく、悲しくなります。 人は何かを目指し、努力に努力を重ねることで、やっと目標に対して7割くらい達成できるもの。 宣言すると成功確率が2倍に上がるという、ハーバード大学の有名な研究もありますね。ならば、有言実行で、何かを目指して宣言し、少しでも確率をあげてみては。
人は怠惰で、楽な方向に逃げがちです。でも私は、人の素晴らしさは努力できることだと思います。 何のためにやるかが決まったら、努力できるのが人です。やる理由はいくらでもあると思います。 私は、その「やる理由」を提供する仕組みづくりをしたい。
お客様が誰なのかも、とても重要です。私たちは、日本を代表する起業家や投資家、エコシステムビルダー、さらに最近は政府や大企業の重要な役回りの方々とともに、時代をつくる仕事をしています。 この素晴らしい人々に囲まれ、人の無限大の可能性を生かした事業創造、社会創造、未来創造を、我々と共に挑戦してみませんか。
私は、目の前の世界だけで生きていた若い頃のしょうもない人生より、価値ある人生の目標に気づき、それに向かって実行し、精進している人生の後半戦のほうがずっと充実しています。 今後、もっとおもしろくなると思うから、私は努力を続けたいと思っています。 我々と一緒に価値あるものを見つけて、共に日本の未来を創造していきましょう。
for Startupsは、共に起業家・スタートアップと伴走し、成長産業を支える仲間を募集しています。