【CFO×VC対談】創業4年半・累計40億円調達で巨大市場のDXに挑む。VCが惚れた、建設ベンチャーの熱量と泥臭い舞台裏
2025年10月、クラフトバンクは総額38億円の資金調達を発表しました。
本記事にゲストとしてお招きしたのは、SeriesBラウンドの共同リード投資家で、初回投資から約3年を共にするベンチャーキャピタル「Angel Bridge」の山口さんです。
同社では林パートナー、八尾ディレクターにクラフトバンクを担当いただいていますが、Angel Bridgeは担当者に限らずワンチームで様々な側面で投資先を支援する体制を取っていることが特徴です。
本記事では主に採用などを支援いただいているAngel Bridge山口さんとクラフトバンクCFO 巻島さんに、SeriesBの資金調達に至った経緯・出資判断のポイント・今後の動きなどを、対談形式で語っていただきました。
登場メンバー
山口さん | Angel Bridge ベンチャーキャピタリスト
主にシード・アーリーステージへの投資に携わる。慶應義塾大学理工学部卒業後、東京大学大学院に進学。修士課程修了後、ボストン コンサルティング グループに入社し、戦略策定などに携わる。2024年にスタートアップ支援を志しAngel Bridgeに入社。
巻島さん | クラフトバンク CFO
東京大学法学部卒業後、日本政策投資銀行(DBJ)に新卒入社。法人営業・財務部を経て、INSEADにてMBAを取得。企業ファイナンス部にてM&Aファイナンス、サーチファンド・ジャパンの取締役等を歴任。2024年にクラフトバンクに参画。
前例のない「10億円出資」の決め手
まずは現在のSaaS市場における資金調達環境について教えてください。
巻島:今、SaaSの資金調達環境はかなりの逆風が吹いていますね。コロナ禍以降、SaaSの上場企業の株価が軒並み下がっている中では、我々のような未上場企業のバリュエーション(企業価値評価)に対する目線もかなりシビアになっています。
山口:そうですね。しっかりと業績を出していないと評価されづらい状況だと思っています。以前であれば、PSR(Price Sales Ratio/株価売上高倍率)などのマルチプル(※)も非常に高く算出されていたので、高いバリュエーションで調達しやすく、投資家も勢いのある投資を続ける「イケイケドンドン」な雰囲気がありました。
いまだにアーリーフェーズのSaaSスタートアップに関しては将来的なポテンシャルを評価する傾向が強く、高いバリュエーションでの資金調達も散見されますが、クラフトバンクさんのようなミドルフェーズのスタートアップに対しては特にシビアに業績が見られているように思います。
※マルチプル:企業価値や株価が、売上・利益・純資産などの財務指標の何倍になっているかを示す指標。
巻島:バリュエーションが上がりづらい環境の中ですから、しっかりとSeriesBのラウンドを進めていくのは一筋縄ではいきませんでした。
山口:でもクラフトバンクさんの場合は、巨大市場で大きくアップサイドを描ける将来性が魅力ですよね。いろんな業界がどんどんDXされていく中で、建設はDXの余地が残されている大きな産業のひとつだと思っていますし、VCとしてもそういう大きなスケールで挑戦する企業家を探していたんですよ。
世の中にはニッチな領域を突いた巧いビジネスもありますけど、市場が限られている場合には大きな時価総額・売上規模に成長していかないんです。建設DXのように、レガシーかつ巨大で難易度の高い業界を正面から攻めるダイナミックなビジネスは、非常に面白いなと思います。
巻島:ありがとうございます。そこが面白さであり醍醐味ではありつつ、「こうすればいい」という正解や公式がない中で試行錯誤しているので、簡単ではないですね。長期的な目線で伴走してくださる投資家の皆さんとご一緒できたことは、本当に良かったと思ってます。
山口:近年のスタートアップ界隈を見ていると、SeriesA前後のARR(年間経常収益)が数億円のところまでは順調でも、売上が数十億円という規模に近づいてくると成長鈍化するケースも散見します。
一方でクラフトバンクさんは、攻略が難しい建設業界にポジショニングしつつも、一定の成長率を維持したまま着実に伸びている実績がありました。そこが、Angel Bridgeの「10億円」という額の出資につながったポイントです。
10億円出資に至った「一番の決め手」はなんだったのでしょうか?
山口:理由としては前述の通り、市場規模や業績などももちろんあるんですが……。それ以上に、やっぱり「(クラフトバンク代表の)韓さんがすごい」とAngel Bridge一同が感じていたことが大きな理由です。
SeriesAでリード投資家として出資させていただいてから、これまで約3年間伴走させていただくなかで、「韓さんとクラフトバンクの皆さんであれば、もっと成長できる」という確信を持っていたからこそ、割と早期に「2ケタ(10億円)出資しよう」と決まったように思います。
巻島:おお。どういうところを評価いただいたのか、この機会にもう少し詳しく伺っていいですか?
山口:いろんな企業や経営者さんを見ていると、「賢いリーダー」とか「熱意があるリーダー」って結構いらっしゃると思うんですが、韓さんはどちらも兼ね備えています。
クラフトバンクさんのマーケティングのやり方には我々も常に驚かされていますが、建設業界というのはスマートな戦略を描ける賢い人が勝てる業界でもない。「泥臭さ」と「戦略性」の両立ができているところが韓さんの特長であり、Angel Bridgeとしても非常に高く評価させていただいているポイントなんです。
巻島:ありがとうございます。ところでAngel Bridgeさんの投資先は若手起業家が多いイメージですが、韓は結構年上の部類になるでしょうか?
山口:そうですね。Angel Bridgeの投資先でも、20代後半から30代前半の若手経営者が多いのですが、韓さんは「マチュア(成熟)」という感じだと思います。
もちろん、経験を積み、酸いも甘いも噛み分けた経営者に対してVCが持つ一般的な懸念点というのもあります。すでにある程度の成功を収めている方だからこそ「もうそこまで一生懸命頑張らなくてもいいや」と、悪い意味で落ち着いてしまうのではないか、とか。
けど韓さんの場合はそうじゃない。もっとハングリーにやっていこうという姿勢の方だと思うので、そこは全く心配してないですし、これまで積み上げて来られた経験がむしろプラスに働いているのかなと思っています。
巻島:たしかにずっとハングリーですし、ポジティブで、タフですよね。ずっと一緒にいると、こっちが疲れるくらいのパワーがあります(笑)。
山口:そうかもしれません(笑)。
投資ラウンドで見えた、投資家の違い
巻島:今回は海外の投資家とも話をしたんですよ。日本の投資家だけだと、Angel Bridgeさんみたいに10億円とか出してくれるファンドってあんまりなくて。
海外投資家と話す上では、日本の建設マーケットをちゃんと理解してもらうのに時間がかかりました。例えば僕らが「土木工事」をイメージして語っても、お相手の投資家はずっと「住宅リフォーム」の話だと思って聞いてた……ってことがありまして。
山口:市場環境が違いますもんね。日本では極端に新築が好まれますけど、アメリカは既存住宅の売買・リフォーム・リノベーションがマーケットの主流ですから。
巻島:僕らもアメリカの土木事情とか知ってるわけでもないし、多重下請け構造も日本ならではの事情だったりするので、その理解を正していくのに結構時間がかかって。基本的な認識の差を埋める作業や、分かりやすく説明する作業が思ったよりも大変でしたね。
山口:その苦労は推して知るべしだと思います。
海外投資家は日本の投資家と比較してファンドサイズが大きく巨額の出資が可能ですし、特に米国などの投資家からは進んだ知見を取り入れられることも多い。彼らから資金調達を行うと、大きなメリットを享受できる可能性があります。
一方で海外にはちゃんとガバナンスを効かせようと交渉してくるカルチャーがあるので、スタートアップ側が得たいものを勝ち取るためには、しっかり議論する必要が出てきますよね。
巻島:そうですね。単純に、時差のある日本と海外で同時に議論や調整が進んでいくので、そこのハンドリングやコミュニケーションも気を遣いましたね。
上場に向けてという視点では、今後広く投資家を集めていく必要が出てくると思うので、すごくいい練習になりました。
最終的な投資先を選ぶ上でのポイントは?
巻島:パートナーとして一緒にやっていくという観点では、やっぱり日本の投資家の方が日本の建設業の実態をよくご存じだし、よりコミュニケーションを取りやすいと感じましたね。
加えて、まだ成熟していないマーケットを開拓していくという現状において、僕らの事業が長期的なものになりやすい傾向をご理解いただく必要もあって。「今はホワイトボードと紙をメインで使ってます」という方々をDXしていく事業ですから、計画達成できるように試行錯誤してますけど、思っているより時間がかかってしまう可能性もあるんです。
「地銀連携での開拓」はその試行錯誤の中で生まれた僕らなりの答えのひとつですが、まだまだやりながら調整していくフェーズ。「長期的な目線で見てくれる日本の投資家」に投資いただくのが一番いいと判断しました。
特にAngel Bridgeさんは、理解者として親身に併走してくださる印象です。「汗かき系VC」というか!
山口:たしかに「汗かき系VC」かもしれません(笑)。うちは基本なんでもお手伝いしますってスタンスなんですよ。一緒に頑張ることを大事にしているといいますか。「我々の投資先をもっと伸ばすためにできることをやろう」と考えると、必然的にそうなってしまうし、個人的にもその方が面白いと思っています。
投資家の一番の仕事はそもそも「いい会社に投資すること」だと思うのですが、投資してからの支援やお手伝いも重要だなと思っていて。やっぱり一緒に走っていると「うまくいってる会社の共通点」みたいなものが結構見えてくるんですよね。そうすると、次の投資先の見極めにもすごく効いてくるというか。
巻島:なるほど。
山口:例えば、建設業界だと韓さんのような方が上手くいってると知った今、次に建設業界周辺に投資をするなら、粘り強い感じの泥臭さも持っている人だといいんだな、とか。そういう部分は、我々が学ばせていただいてる面も大いにありますね。
調達後、クラフトバンクのこれから
調達完了を受け、今後はどのように動いていくのでしょうか?
巻島:全国での採用を強化していきます。今まさに採用をガンガン進めているところで、10月・11月だけでも30人以上入社しています。
今回の資金調達の背景としても、地域密着型の営業組織の土台をしっかり作れてきたことで地銀連携が進んだり、全国の工事会社さんと対面でしっかりコミュニケーションを取れたりという成功体験がありました。加えてプロダクト自体もしっかりお客様のニーズに応えられるようになってきた今、いよいよ拡大に向けてアクセルを踏んでいきます。
山口:実績ある経営陣、他業界から集まった尖った人材、全国各地で展開するリアルビジネス。クラフトバンクにはいろんな強みがありますよね。こういうフィールドで、事業が軌道に乗ったSeriesBのフェーズに、さらにもう一段階チャレンジができるというのはすごく面白い経験になるんじゃないかと思います。
巻島:業界は難しく、時間のかかる事業ですし、社内もまだまだ整ってないベンチャーです。それでも泥臭く動いて考え続ける、心強い仲間がたくさんいます。もしこの仕事を「面白そうだ」と感じてくださった方がいたら、ご一緒できると嬉しいです。
クラフトバンクについてもっと深く知っていただくために、VCの方をお招きしてのイベントや、代表 韓と喋れる少人数制のミートアップも不定期開催しておりますので、ぜひお気軽にご参加ください。
▼写真:Angel Bridgeと共催の採用候補者向けイベント(Angel Bridge ベンチャーキャピタリスト 八尾さん)
▼Angel Bridgeによるクラフトバンクの記事
・中小建設工事会社のためのDXで建設業の変革に挑戦(クラフトバンク株式会社)
・Angel Bridge投資の舞台裏#19(クラフトバンク株式会社)
(執筆・撮影:青柳ゆみか https://x.com/aopan_na )