はじめまして。クックパッドマートでマートステーション(=商品の受け取り場所)のプロダクトマネージメント兼、開発をしている今井 晨介と申します。得意料理はオムライスです!
今日はこの記事を通して、「ソフトウェア開発に自信のなかった私が、マートでハードウェア開発やプロダクトマネジメントにも挑戦している理由」をお伝えできればと思います。
小さな頃から勉強や電子工作などが大好きだった
生まれてから大学院時代までを京都の西陣という地域で過ごしました。
小さな頃から勉強や電子工作などが大好きで、知的好奇心旺盛な幼少期を過ごしました。治療薬の研究に携わっていた父は、週末にも自作PCをつくったり、車を自分で修理したりと根っからの理系パーソンでした。
そんな父の姿に刺激を受けて、小学生のときから自ら手伝ったり、お下がりのPCで見様見真似の自宅サーバーを作っているうちに、モノづくりが好きになっていったのはごく自然なことだったなと思います。
小学校の自由研究では、コインを入れるとLEDが光る貯金箱を作ったり、雑誌に載っていた回路図からインターフォンを作ったりと、気がつけば「プロトタイピング」をしていた幼少期でした(笑)
ふりかえってみると(後述しますが)、現在の仕事で冷蔵庫のプロトタイピングではんだ付けしたり、冷蔵庫のパーツを見つけて組み立てていくこともあるので、子どもの頃とやっていることは変わらない(笑)ような気がします。
学ぶことを支援してくれた母の支えもあり、勉強は好きな方だったと思います。(当時は授業中は先生の話を聞かなかったりするのに、家に帰ると熱心に勉強をする「変な真面目くんタイプ」だったと思いますw)進学は父が京都大学の卒業ということもあり、特に違和感もなく自分もその道を目指すようになりました。
進学を目指したのは電気電子工学学科。子どもの頃から電子工作が好きでしたが、あまり理解できずに作って楽しんでいただけで「どうして動いているのか」が知りたいと思っていました。電気回路のことからソフトウェアエンジニアリングの技術まで扱う学部で、ちゃんと勉強してみたいと思ったことが理由です。
実は、一度目の受験では挫折を味わうことになりました。その時はめっちゃ悔しかった。父親に負けたって気持ちが強かった。次は絶対受かろうと思って、毎日籠もって遊ばずに勉強していましたね。
二度目の受験で無事に合格し、京都大学での生活がスタートしました。
ラクロスと出会い「チームで大きな目標にチャンレジするおもしろさ」を知る
大学に入ってからは勉強もそこそこに、もっと熱中してしまったものがあります。体育会男子ラクロス部での活動です。
生まれてから高校までの間に、志望校を目指してひたすらに勉強するなど、「自分自身でどこまでやれるか」みたいな努力はたくさんしてきました。
次は「ひとりじゃできない大きな目標に“チーム”でチャレンジする」経験したいと思ったことが入部の理由です。
またラクロスは大学から始める人が多い競技で、それまで部活をしていなかった自分も平等に「日本一を目指す」ことができたのも魅力でした。
入ってみると面白いこと、難しいことがたくさんある競技で、どんどんのめり込んでいきました。
ラクロスは歴史がまだ短いスポーツだからこそ、戦略や戦術のセオリーが確立していません。だからこそ、頭を使って相手のチームを分析し、試合ごとに自分たちに適した戦い方を考える必要がありました。(京都大学の学生は頭を使うことが好きな人が多いので、この点はチームの強みだったと思います。)
またチームで大きな目標を達成するためには、自分の努力だけでは足りません。
「チームの成長のために自分に何ができるのか?」を考え続けたのは人生で初めての経験でした。
大きな目標に向かって、ものごとをブレイクダウンしていく。自分がやりたいことだけではなく、それを活かしてチームに貢献できることをする。このかけがえのない濃密な日々は、今の自分の軸になっています。
大学院でうけた、受験落ち並の敗北感
ラクロスに熱中した学部生時代を過ごし、社会人になるまえにもっと専門性を身に着けたいと考え、京都大学 大学院人間・環境学研究科に進学しました。
正直なところ、学部生時代にラクロスに打ち込んでいた分、学部生時代に勉強にかけられた時間は周りの学生に比べると少なかったと思います。(その分チームプレーのようなスキルはかなり鍛えられたので、トレードオフなのですが。)
僕は「情報可視化」という研究領域を専攻していたのですが、この分野に特化して勉強しはじめたのは大学院に入ってからでした。日々自分と周りとを比べて、自身の技術力や考え方の柔軟性の足りない部分を感じていました。
修士1年の期間は自分なりに頑張ってみたのですが、努力しても周りに追いつけない気持ちに焦り、かなりの挫折感を味わったことも事実です。(一回目に受験落ちたときくらいショックでしたw)
がむしゃらに自分を鍛え直すため、門を叩いた「未踏」の経験
そこで自分を鍛え直すために応募したのが、IT業界の登竜門的存在である「未踏事業」でした。
「未踏事業」とは独創的なアイディアと情熱を持つ人材を応援する、人材発掘・育成事業です。未踏の活動は、「 ITを駆使してイノベーションを創出することのできる独創的なアイディアと技術を有するとともに、これらを活用する優れた能力を持つ、突出した人材を発掘・育成することを目的」としています。(「未踏事業」公式ウェブより)
未踏クリエイターに採択されると9ヶ月間の間、実際に企業で活躍するプロジェクトマネージャーからのコーチングや、活動に必要な資金(=委託金)といった支援をうけられて、事業の開発に専念できます。
僕のように「自分のスキルを成長させたい」と思う人もいれば、すでに思いついている事業アイディアがあって「世間で通用するかを試したい・事業を成長させたい」という目的で、参加する人もいます。
僕は採択された後に、大人数のチームが効果的に議論できるようにするための「チャットツール」の開発を行いました。(皆さんが仕事でつかっているビジネスチャットツールをより進化させるようなイメージ。)
企画、開発、更にはデザインまでひとりでこなすのはかなり大変だったし、ここでも自分の技術力に引け目を感じることもありました。
そのなかで今でも活きているのが、担当のプロジェクトマネージャーから、ことある毎に繰り返し叩き込まれた一言でした。
「『誰』の『どんな課題』を『どう解決』するか」
自分の弱みだと感じていた「技術力」は手段であり、まずは誰の何を解決したいのかを考えることが本質だと学びました。解決の手段は、その後に考えることだったのです。
その本質は、僕の企業選びの軸になりました。
「ユーザーへの実直さ」に共感し、クックパッドに入社
就職活動の際に読んだ『600万人の女性に支持されるクックパッドというビジネス』(角川SSC新書)という書籍に、クックパッドの創業者の佐野の歩み・想いが綴られていました。
「料理が楽しくなることをやる。それ以外はやらない。極端な話をすれば、ユーザーを増やすことだって目的ではないんです。それで料理が楽しくならないならば。」
「今の世の中の延長線上に、スカッとした笑顔が出てくるか。それを自分の価値観にしよう、と。それこそ、僕が追いかけるべきものにしよう、と。」
「『毎日の料理が楽しみになる』『ナンバーワンになる』『儲かる』この三つが得られるものにしか絶対に手を出さない」
などさまざまな言葉があり、そのひとつひとつが「誰の何を解決したいのかを考える」ことを体現していました。
いくつかの企業を見ましたが、面接の質問や技術課題のなかにも、さりげなく細かいところで「ユーザー思考への問い」が見え隠れしていたり、選考を通して「自分がやりたいことと相違がないな」と感じました。
例えばエンジニアの面接官から、「このエラーが発生したときにはどういう挙動にする?」と尋ねられたり、人事からは「この課題を小学生にもわかるように解決するには、どうしたらいいと思う?」など。
社員との実際の会話を通して「ものづくりの本質的な考え方」に1番共感できたのがクックパッドだったので、入社を決めました。
写真:クックパッド新卒研修風物詩「壁のぼり」
「自分だからチームに貢献できること」を考え、道をつくった新卒時期
最初は料理動画事業の、サーバサイド開発から始めたのですが、学生時代からの悩みであった技術力の壁に衝突することもありました。
しかし一方で、この頃になると「サーバサイドだけ拘る必要はない、『チーム力』や『誰のために何をするかを考える力』を活かそう」と思えるようになっていました。
どうにかして「自分だからチームに貢献できること」を探そうと、自分の直接の業務範囲じゃないことでもちょっとずつやってみることにしました。
当時実地検証中だったスーパーマーケット向け料理動画サイネージ「cookpad storeTV」の使用状況を数値分析してみると、いくつかの仮説が思いついたので、次は電話でのヒアリングも行ってみました。
そうしていくうちに自分が得意なこと・チームに貢献できることの重なりが見えてきました。
自分が得意なことは、全体を俯瞰して見ることができ、開発の周辺で必要なことを一通りなんでもできること。そしてチームのゴールに向かっていくためにも、この強みが必要とされていると感じたのです。
写真:社内のキッチンで「ドッグフーディング」した時の様子
実地検証が終わる頃には上司からも、「実地検証」「数値分析」「外部交渉」「必要なハードウェアのプロトタイピング〜調達」「開発ディレクション」など、広い領域を任せてもらえるようになりました。
そうして料理動画サイネージが全国展開を達成した頃に、次のチャレンジを考えるようになりました。
写真:Cookpad TechConf2018に登壇したときの様子
マートとの出会い
そんなふうに日々チャレンジしていたのですが、実はクックパッドマートのことは、社内で話が出た頃から「おもしろそうだな」と思っていました。
そんなあるとき、社内のエンジニア全体MTG「tech mtg」(クックパッドでは隔週でエンジニア全体のMTGをします)で、現在の買物事業部部長の勝間から「マートエンジニアの社内公募」のお知らせがありました。(クックパッドマートは買物事業部という部署で、開発・運営しています。)
詳しく話を聞いて「これは!!!」とビビッときました。マートはクックパッドのミッションである「毎日の料理を楽しみにする」を確かに、実現できそうなサービスだと思ったのです。実際にマートで購入した食材を食べてみると、僕がこれまで買っていた食材とおいしさも全く違って、まさに「目から鱗」でした。
公募のお知らせがあったその日のうちに、勝間にDMをしてまずはランチに行きました。(下の写真が勝間です。)
そのあと事業責任者の福崎とも話をして「僕が貢献できそうなこと」について一緒に議論してくれました。
そのなかでサイネージ事業で経験したハードウェアに関する知見が、クックパッドマートでも必要だということで、異動が決定しました。(実際にマートでは発注管理に必要な「ラベルプリンター」や、商品を受け取る「冷蔵庫」など、さまざまなハードウェアの用意が必要だったのです。)
そうしてマートに異動し、最初は出荷商品を識別するために販売者自らが印刷・貼付する「ラベルプリンター」の開発を担当することになりました。
写真:初期のラベルプリンター
ラベルプリンター開発の道のりは、「1枚のラベルの向こうには、1人のユーザがいる(クックパッド開発者ブログ)」にも書いているので、ぜひ読みください。
マートに入って、開発のスピード感に驚く
2018年の秋に買物事業部に異動して、最も驚いたことは「ハードウェア開発を伴うサービスなのに、超リーンな開発サイクルを回していること」でした。
僕が大事にしている「誰のどんな課題をどうやって解決するか」を考えるときに、「最低限の機能を、最短で最小限にリリースして学習し、短期間での改善を重ねること」が必要です。
クックパッドのサービス開発の基本にその志向がありますが、ラベルプリンターや冷蔵庫のようなハードウェアを伴う場合にはそれを実現するのが難しかったりします。なぜなら、ソフトウェアと比べて改善や開発にかかるお金と時間のコストが高いからです。
それにも関わらずマートでは「検証段階ではとにかく最低限で爆速でリリースする!難しいことがあれば、運用で頑張ってカバーする!」という意気込みがありました。(もちろん本リリースのときは、ちゃんと「仕組み化」してからリリースしていますw)
現在は、ユーザーが商品を受け取るための生鮮食品宅配ボックス「マートステーション」のプロダクトマネジメント及び、必要に応じてバックエンド開発と、プロトタイプ開発を担っています。
これがチャレンジングで面白い。
なぜかというと「冷蔵庫にスマートロックをかける」という前例があまりないからです。必要なパーツを自分で考える必要があるし、色んな所から技術を引っ張ってくるので、総合格闘技みたいな感じで面白い。
ただ、僕にはハードウェアの専門知識が足りないので、発注先のメーカーさんなど外部の協力者の巻き込みも不可欠です。
そういった意味では「やっぱり、専門性が足りていないなー」と感じることもあります。一方、ソフトウェアとハードウェアのことを把握していて、ユーザー視点で課題解決を考えるのが好きで、チームプレーが好きで、人を巻き込むことも好き。そんな自分の働き方は「チームで勝つためのプレースタイル」だと思います。
エンジニアリングが弱いと感じては、未だに悔しいと思うこともあります。しかし、それをゆっくり伸ばしていても、その行為はチームのためになりません。
そうではなくて、自分だからできる「広い視野をもって、チームのためになるように動く」ことをやりぬくことに意味があるんじゃないかなあって思います。
そうしないと良いサービスはつくれない。
自分の強みも活かしつつ、僕はチームが勝つために働きたいです。
そんな私は、こんな人と働きたい。
以上、熱い想いを語りましたが、僕が一緒に働きたい人は「マートの事業に共感して、パッションを持って取り組める人」です。
僕が好きで尊敬する「花田さん」という営業メンバーがいるのですが、彼も本当にパッションがすごい!笑
そういう人から刺激される環境はアツいなって思います。ぜひ今後掲載される花田さんの記事を読んでほしいです。
あとは、技術力を持っているとしても「それを何のために使いたいか」という目的意識のある人は、マートに向いているし、一緒に働きたいなと思います。
技術は要ですが、手段だと思っているからです。何のためにその技術を使うのか、実現したいことのために必要な技術は何なのか。
その「考える順番に共感してくれる人」と一緒に働きたいです。
最後に、ソフトウェアの会社のスピード感で、ハードウェア開発に挑みたい人にとっては、またとない環境だと思っています。
僕が今取り組んでいる冷蔵庫(生鮮食品宅配ボックス)の開発にも課題がまだまだ山積みです。そこで挑戦したいと思える人がいたら、今すぐにお話したいと思っています。
未来の仲間に会えるのを楽しみにしています!
写真:東京メトロ「後楽園駅」にマートステーションを設置したときの思い出の一枚