転職活動をしていると、必ずと言っていいほど聞かれる質問があります。
「あなたのキャリアの軸は何ですか?」
この問いに、自信を持って答えられる人はどれくらいいるでしょうか。「年収を上げたい」「成長したい」「社会貢献がしたい」…色々な思いはあっても、それを「軸」として明確に言語化するのは、意外と難しいものです。
今回は、そんなキャリアの悩みを解決するヒントとして、有名な組織論の一つである「ハーズバーグの二要因理論」を元にしたキャリアの考え方をご紹介します。
目次
- 仕事の「満足」と「不満」は別次元の話?
- あなたのキャリアを「縦軸」と「横軸」で整理しよう
- 幸せなキャリアを築くための2ステップ
- STEP1: まずは「縦軸」の最低ライン(ボーダーライン)を決める
- STEP2:「横軸」を追求して幸福度を最大化する
- 重要な論点
- よくある失敗転職例
- 最後に
- おまけ
仕事の「満足」と「不満」は別次元の話?
突然ですが、「ハーズバーグの二要因理論」という理論を聞いたことはありますか?
これは、アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱した理論で、「仕事における満足を引き起こす要因と、不満足を引き起こす要因は、全く別の次元にある」という考え方です。
実はリクルートの人事制度にもこの理論が大きく影響を与えている
具体的には、以下の2つの要因に分けられます。
- 衛生要因 (Hygiene Factors)
- 満たされないと「不満足」を引き起こす
- 例:給与、労働条件、会社の制度、人間関係など
- 重要なのは、これらが満たされても「満足」には直結しないという点です。「給与が上がらない」と不満にはなりますが、「給与が高いから、すごく満足!」とは必ずしもならない、ということです。
- 動機付け要因 (Motivator Factors)
- 満たされると「満足」を引き起こす
- 例:仕事そのものの面白さ、達成感、成長実感、承認されることなど
- これらがなくても、ただちに不満にはなりませんが、満たされることで仕事へのやる気や幸福感が高まります。
これらを踏まえると、自分のモヤモヤの正体が見えてきませんか?
例えば、大手企業で勤める方のよくあるモヤモヤ。
「給与は高いけど、なんだかやりがいを感じられない…」
「現職に特に不満はないんだけど、このままで良いのかなぁ」
これらはまさに衛生要因は満たしているものの、動機づけ要因が不足しているから起こっている状態です。
一方で、ベンチャー企業でお勤めの方によくあるモヤモヤ。
「仕事は楽しいんだけど、ずっとここで働く絵が見えない」
「どれだけ頑張っても給与が上がってこない」
これらはその逆で、動機づけ要因は満たしているが、衛生要因が不足している状態と言えるでしょう。
あなたのキャリアを「縦軸」と「横軸」で整理しよう
この「二要因理論」は、キャリアプランニングに当てはめることもできます。その際、私たちはキャリアを「縦軸」と「横軸」の2つで整理することを推奨しています。
- 縦軸(主に衛生要因)
- 年収、役職、企業規模など、定量的で客観的に測れる価値
- 生活の基盤を安定させるために必要な要素です
- 横軸(主に動機付け要因)
- やりがい、社会的意義、成長実感、裁量権など、定性的で主観的な価値
- 仕事の幸福度や満足度に直結する要素です
幸せなキャリアを築くためには、この「縦軸」と「横軸」のバランスを考えることが非常に重要になります。
幸せなキャリアを築くための2ステップ
では、具体的にどう考えれば良いのでしょうか。
ここで重要なのが縦軸と横軸を置いて、2STEPでキャリアの方向性を整理することです。
STEP1: まずは「縦軸」の最低ライン(ボーダーライン)を決める
縦軸、つまり年収やポジションにはキリがありません。上を見れば無限に存在します。そこで大切なのが、「これだけはクリアしたい」というボーダーラインを決めることです。
ここでもっともわかりやすいのは収入です。
自身の理想とする生活にはいくら必要なのかを時系列で捉えて、縦軸に置くのがおすすめです。
当然、これは家族構成やライフプランによって人それぞれです。
「生活していくために、最低でも年収〇〇万円は必要だ」
「この役職以上でなければ、自分の必要な収入は保てない」
など、自分なりの基準を設けてみましょう。
まずは不満要因を消すことが重要。
STEP2:「横軸」を追求して幸福度を最大化する
縦軸のボーダーラインをクリアできたら、次はその状態を保ったままで「横軸」を最大限に伸ばせる選択肢を探します。
たとえ年収が少し下がったとしてもボーダーを超えているようであれば
- より大きな裁量権を持って仕事ができる
- 社会的な意義を強く感じられる
- 新しいスキルを身につけ、成長を実感できる
といった「横軸」の価値を追求することで、キャリア全体の幸福度は格段に向上するはずです。
昔ポルノが「幸せについて本気出して考えてみた」って歌ってたが、その作業に近いかもしれない
重要な論点
ここまで読まれた方は、お気づきの方も多いかと多いかと思いますが、これらを考える際にはとっても大切な論点が2つあります。
①縦軸のボーダーをどこに置くのか?
②横軸は何を設定するべきか?
①は比較的考えやすいかと思います。
ChatGPTに自身の理想のライフプランを記載すれば、どれくらいの収入が必要なのかをざっくり教えてくれるでしょうし、信頼できるFPの方にご相談するなども良いと思います。
難易度が高いのは②です。
これはもはや仕事を通じて「どんな人生にしたいか」という非常に大きな問いになります。
個人的には仕事での状態だけでなく、例えば「毎週末家族とどこかへ出かける」や「趣味の釣りでYoutubeをはじめる」などプライベートでの状態も横軸に設定するのをお勧めします。
これらは仕事とのトレードオフになりやすい項目も含まれるため、いくら仕事で満足いく状態を作れたとしても、これらの重要な項目を毀損して自己実現はあり得ないからです。
よくある失敗転職例
このフレームで考えると、よくある転職の失敗例もわかりやすく整理ができます。
①横軸を毀損して縦軸を追い続ける
すでに縦軸の年収はボーダーは超えているにもかかわらず、横軸を毀損しながら縦軸を追い求める形です。
例えば、家族との時間をとても大切にしている年収1000万円の方が、休日残業を繰り返し家族との時間を減らしながら年収1200万円になった場合、縦軸は上昇していますが、横軸は毀損している状態です。
この場合、年収アップ、キャリアアップはしているものの、幸福度は大きく下がる可能性が高いです。
②横軸を捉え違えている
自身にとってのやりがいを捉え違えており、横軸の最大化に失敗するケースです。ここは決して正解がない領域なので、常に自身を省みて仮説のアップデートが必要です。
この領域の言語化は一人で実施するのは非常に難易度が高いので、個人的にはコーチと伴走するのをお勧めします。私自身もコーチとしてコーチングを提供する身ですが、一方で6年程度毎月コーチングを受けています。
③年収以外の衛生要因が想定外
年収はオファーで明確にボーダーを超えるかが見えますが、人間関係などは入社しないとわからない側面もあります。よくいう「上司ガチャ」などがその最たる例でしょう。
転職活動での選考は、人事→Mgr→役員などで完結するケースも多く、実際に働く方とは働くまで会えないケースも多いです。
オファーを受諾する前に、配属予定の部署のメンバーや上司などと面談のお時間をいただけないか人事に依頼し、自分にとって違和感がないかを確認するなどが自衛手段になるかと思います。
最後に
転職活動は、自分自身のキャリアにおける「縦軸のボーダーライン」と、本当に大切にしたい「横軸」は何かを見つめ直す絶好の機会です。
「ハーズバーグの二要因理論」というフレームワークを頭の片隅に置きながら、自分だけの幸せなキャリアの形を探してみてはいかがでしょうか。
また次回の記事で、お会いしましょう!
おまけ
ハーズバーグの二要因理論について詳しく知りたい方は、こちらの本がお勧め。リクルートの人事制度、組織風土の基盤を作った大沢さんが書かれた名著です。
また、Noteの中でご紹介させていただいた「キャリアの縦軸横軸」についてはこちらの本でも解説されています。
私の前職で学生向けのキャリア講演を何度もご依頼させていただき、その度にとんでもない満足度を叩き出して下さった青田さんの著書。弊社のキャリアアドバイザーの推奨図書にもしています。
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