現代のテクノロジーを駆使した環境制御型農業(CEA)の発展の背景には、変わりゆく地球環境、農業課題、食の安全の問題があり、これから直面していく世界的な課題への取り組みとして、ココカラも注力していきたい領域です。
- 環境制御型農業(CEA)とは
- なぜ環境制御型農業(CEA)が必要なのか
- 環境制御型農業(CEA)は、持続可能な農業をめざす新たな取り組み
- ココカラが担う役割
環境制御型農業(CEA)とは
環境制御型農業(Controlled Environment Agriculture:通称CEA)とは、光、CO2、温度、湿度、気流、養などのパラメーターに着目して生育環境を制御して行う施設園芸(現在のハウス栽培)のことです。植物が育つ環境をコントロールすることで、作物の光合成速度を高めて成長を促進させ、収量をあげることが可能となります。
環境制御型農業(CEA)は、立地や栽培方法、栽培の形態によって分類できます。栽培方法には、土壌を使った栽培方法、ハイドロポニックス(水耕栽培)、エアロポニックス(養液を根に霧状に噴霧)などがあり、栽培形態としては、グリーンハウス型と垂直農(Vertical Farming)型などがあります。
植物生理学やデータに基づいたコンピューター管理を行う、これからますます発展が見込まれる農業といえます。
なぜ環境制御型農業(CEA)が必要なのか?
農業は、環境の変化、食の需要の増加、労働力など、私たちを取りまく環境の変化や、そこから生じる数々の課題に対応しながら、変化していく必要があります。これまでも、既存の農法に変化を加えながら世界の農業は変化してきました。
しかし、これまでの農業を続けることで直面していく課題があります。それは、食の安全、食料確保の問題です。世界の食料安全保障は、すでに次のような危機に瀕しています。
1)気候変動による清浄な水の不足
2)耕作地における有機物/腐植物の割合の減少
3)土壌由来の病原菌、害虫、病気
4)輸送費と労働力不足
5)農業用肥料の輸入依存度
6)持続可能な農業を取り入れない
7)農薬の多用
8)経済格差
9)世界的なパンデミック
深刻な気候変動により、世界中できれいな水が不足し、また農業が可能な耕作地が減少していきます。一方で、世界人口は増加を続け、人口が都市に集中することで巨大都市が増えると言われています。
そこで懸念されるのが、全ての人に安全な食料を行き届かせる「食料確保( Food Security)」の問題です。
世界中すべての人に、病原菌やその他の汚染、残留農薬のない十分な食料を供給する。そのためには、きれいな水、病原体や汚染のない土壌、農薬の使用を最小限またはゼロにすることが必不可欠になります。
近い将来に直面する食料安全保障課題
世界の食料安全保障は高リスクにあり、近い将来、下記のような課題に直面することが予測されています。
1.気候変動(短期的解決不可)
2.人口の増加(2050年には97億〜100億人の予測)3.耕作地の減少
4.急激な都市化
5.パンデミック状況の継続と進化
6.増大する輸送・運送・人件費
昔ながらの農業における課題解決の方法のひとつは、環境制御型農業(CEA)を学び、適応することです。人類がこれまでに犯した過ちを繰り返さないために、より持続可能な選択をしていく必要があります。
環境制御型農業(CEA)は、持続可能な農業をめざす新たな取り組み
限られた土地と水を使って、増え続ける人々の食料を満たすためには、従来型の農業ではとても生産が追いつきません。それどころか、耕作可能な土地がさらに減少していくという悪循環に陥ってしまいます。
限られた場所で、効率的に収量を上げ、計画的に作物を生産し、食料確保の問題解決となるシステムが必要となります。
それが「環境制御型農業(CEA)」です。
これは、テクノロジーを駆使した世界的な「持続可能な農業」への取り組みと言えます。
●環境制御型農業(CEA)のメリット
作物の生育環境をリアルタイムで把握し、その時々の条件に適した対処をすることで、下記のようなメリットが挙げられます。
1)水や養液などの供給量を最小限に抑える
2)限られたエリアで最大限の収量をあげる
3)AIによる自律栽培が可能になる
4)都心など建物や小区画の垂直活用
5)気候など外部環境に影響を受けないため、持続的かつ計画的な収穫が可能
環境制御型農業(CEA)が目指すところは、将来的な食料確保(Food Security)と食の安全(Food Safty)の問題解決であり、「場所を選ばない農業(Grow anywhere)」です。
下記は、環境制御型農業(CEA)生産における実証データです。
【環境制御型農業(CEA)による農業】
露地栽培に比べて、限られた土地における水、肥料の大幅な削減と、大幅な収量の向上が実証されています。
また下記のように、生育が早く、品質が安定しているため、年間を通じて生産できるのもメリットのひとつと言えます。
【年間の収量】
【環境制御型農業(CEA)による生産期間】
上記は、作物ごとの環境制御型農業(CEA)による生産期間です。環境制御型農業(CEA)によって生産管理することで、年間を通して計画的な作付けと収穫が可能になり、廃棄作物の削減にも繋がっていきます。
●環境制御型農業(CEA)のデメリット
環境制御型農業(CEA)の開発は、まだまだ発展途上の分野で、開発・運営にあたっては、下記のような課題が挙げられています。
1)高いエネルギーコスト
2)初期投資額が大きい
3)熟練工が必要となる
4)技術が未発達(未知の部分が多い)
近年急速にその必要性が注目される環境制御型農業(CEA)は、まだまだ未知な部分が多く、世界各国で、農業におけるデータの蓄積、テクノロジーの研究開発が行われています。そのため、これからも軌道修正を繰り返しながら進歩していくことが予測されます。
環境制御型農業(CEA)の将来的な展望
・最適化と栽培技術の向上
・エネルギー効率の向上。
・自動化、IOTやAIの活用
ココカラが担う役割
業種や専門の枠を超えて、農業に関わる課題に取り組んでいく。それがココカラのミッションです。
農業は社会の基盤です。食の安全・食料確保があってこそ、私たちの社会は繁栄することができます。病原体や汚染のない土壌で、農薬の使用を減らし、残留農薬やその他の汚染のない安全な食料の確保と、すべての人が食料を入手できる食料の安全保障が、今強く求められています。
ココカラでは、持続可能な取り組みに焦点を当て、最適化に適した持続可能な栽培媒体の開発に注力していきます。
また、最適化に必要なセンサーや技術を導入し、その技術やノウハウの教育も行くために、世界の大学と連携し、環境制御型農業(CEA)、培地としてのココピート、最適化技術などに関するセミナーを積極的に開催していく予定です。
その他、IoT、AI(特に収穫段階でのAI)の活用に力を入れ、エネルギー効率向上のための科学技術開発にも取り組んでいきます。
ココカラとともに課題意識を持ち、次世代へ続く農業のあり方を考え、一緒に課題解決への取り組みをしてくださる方は、是非ご連絡ください。
(参考資料)
・Barbosa et al., 2015. Comparison of land, water, and energy requirements of lettuce grown using hydroponic vs. conventional agricultural methods.
・Jensen M.H. (1997) Food Production in Greenhouses.
・注目を浴びる環境制御型農業 (MITUI&CO.GLOBAL STRATEGIC STUDIES INSTITUTE)