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今回はCTOの藤田が執筆した書籍『マーケ領域で実践されている生成系AIの技術』(ソシム社)をテーマにした対談をお届けします。
企業の生成AI活用支援をしてきたピネアルの知見を集約した本書は、Amazonにて『メディアと社会』カテゴリ、『情報社会』カテゴリ、『社会一般関連書籍』カテゴリの3部門でランキング1位、書籍全体の総合ランキングも10位を獲得。SNSを通じ、多くの方から反響をいただきました。
藤田はどんな思いをもとにこの本を執筆したのか。そしてピネアルが目指す生成AI時代のマーケティングとは何か。代表・徳原との対談形式で赤裸々に語ってもらいました。
裏テーマは「難しい本」。あえて生成AIのマニュアル本にしなかった
徳原:
藤田さんの執筆した本がテーマの対談ということで、今日はよろしくお願いします。
藤田:
よろしくお願いします。
本を読んでいない方もいると思うので、まずはどんな本なのかからお話しすると、マーケティングの領域で生成AIを使ったワークフローやシステムツールの構築方法を解説した本です。それぞれの要素技術について、具体的にプロンプトがどうなっているのか、ワークフローの構成図がどうなっているのかなどを解説しました。
徳原:
この本は生成AIの本の中でもかなり専門的な内容を記述している、比較的珍しいカテゴリーの本で、書くのは相当大変だったんじゃないかなと思っていて。実際執筆をしてみてどうだった?
藤田:
めちゃめちゃ大変でした(笑)。
読者のためになる本を書こうとしたら事例をたくさん盛り込む本になりました。ちなみに事例本というのは、書くのが大変な本の一つらしいんです。
事例を本に載せて読者が読んで分かる程度に、何倍も抽象化・具体化して書かないといけないので、必要な情報の取捨選択をしないといけない。しかもオムニバス的にそれぞれが完結している必要がある。本に載せている社内の事例も、そのまま出せるわけではないので加工した内容を載せています。
事例を詰めこんだこの本、実は「難しい本を書こう」という裏テーマを持って書いていたんです。
徳原:
難しい本、というと?
藤田:
AIのようなテーマで簡単な本を書くと、情報の変化が早すぎるので、本というメディアは相性が悪いんです。みんな無料のnoteやYouTubeで情報を収集しているので。
逆にAIのようなテーマで本を買う人たちは、一定リテラシーが高くてさらに深い情報が欲しい人たち。そういった人たちが読む本を目指そうと思って、あえて難しく書こうと思って書きました。
徳原:
なるほど、確かに。
私も知り合いに「ぜひ読んでください。」と声をかけていろいろな人が買ってくれて、一番多くいただいた声が「難しいから挫折しました」だった(笑)。
SNSでAI関連の方からのポジティブな声はたくさんいただいていたけど、藤田さんのAI関連以外の人の反応ってどんな感じだったの?
藤田:
小中学校の同級生からは、買ってくれたけど挫折したという声をいただきました(笑)。
大学時代のAIに関係のない友人はAIを全然さわってなかったけれど、彼らも読める本になっていて「めちゃめちゃ良かった。」と言ってくれる人が多かったですね。
徳原:
「挫折した」って言葉を聞いて、どう思った?
藤田:
狙った通りの難易度になったな、と思いましたね。
もっとエンジニアっぽい本にすることも、書きっぷりによってはできたんですよ。実際にワークフローを組んで、コードを全部コピペできるようにするとか。でもそれって、ビジネス側の人があんまり興味ないんじゃないかと思ったんです。あえてマニュアル本にしないように努めました。
一方で、マーケティングを上流から分かっていて、プロセス整理を理解できる人にとっては、AIの技術でプロセスがどう変わるかが分かる内容になっています。
SNSの反響の声を聞いているといい塩梅になったなと思いました。狙ったとはいえたまたまですけど、ちょうど良い難しさにできたなと思いましたね。
せっかくなので聞いてみたいのですが、この本が出て徳原さんはどういう思いだったんですか?
徳原:
そうだね。自分たちがやっていることが応援したいと思っている人に届けばいいなと思っている中で、この本はそれが揃った、現時点での我々の集大成だと思ったかな。それができたことが、率直にすごく嬉しいなと。
そして、この本は藤田さんがメインで書いてくれましたが、エンジニアの小笠原くんをはじめピネアルの他メンバーも執筆協力をしてくれていて。みんなでコラボレーションして執筆されたものだったから、それもあって嬉しいという感情ですね。
藤田:
ありがとうございます。嬉しいです。
徳原:
嬉しいと言ってもらえて、嬉しいです(笑)。
生成AI時代、マーケターはより本質的な業務に集中できるようになる
徳原:
生成AIが出てきてから時間も経ってきていて、本を書き始めた1年前から考えてもかなり環境が変化したよね。
生成AIが進化を遂げていく中でのマーケティングがどのように変わっていくか、藤田さんの中でなにかイメージはある?
藤田:
難しい問いですね(笑)。
まず、AIによるマーケティングの未来については、あえてこの本では全く触れていないんです。
というのは、編集長に「本の中でマーケティングの話をしないでください。なぜなら藤田さんが書くマーケティングの本は誰も買わないからです。」って口酸っぱく言われていて。
ただ、AIの技術に関する本であれば、名前が通っていなくても内容がしっかりしていれば売れるだろうと。そんな背景もあって技術の本を書くように努めたので、本の中ではマーケティングの未来について触れていないんです。
徳原:
なるほど。
藤田:
それでも私自身の生成AI時代のマーケティングに対しての思いはあって。
マーケティングって少し乱暴に言うと「その商品を欲しいと思ってもらうこと」だと言えると思うんですけど、本質的にやるべきは顧客や商品のことを深く考えることだと思うんです。
どうしても日常業務では、クリック率の改善やデザイン調整といった戦術的なタスクに多くの時間を使いがちです。もちろんそれらも重要ですが、オペレーショナルな業務に多くの時間が割かれているのも事実です。そして、その領域はAIが得意とするところでもあり、AIが代替できる部分は多くあるということはすごく実感します。
そういった業務をAIに渡すことによって、本質的なマーケティングに取り組む時間と役割が増えていく。この流れは、これからもどんどん起きていくと思いますね。
徳原:
これは間違いなくそうなるよね。私もこれまでマーケティングに携わってきた中で、本質的な価値に直結しない、時間効率が悪い業務もたくさんあると思っていて。そこがAIに代替されていくと、個人としても組織としてもよい形になっていくと思う。
マーケティングは顧客と向きあって、顧客と会社をつなげていく重要なハブの役割を持っているので、AIを業務に活用して本質的なところに時間をかけていけるのは素晴らしいことだよね。
藤田:
そうですね。生成AIの技術で今までマスに打っていた広告をよりパーソナライズできるようになるといった話もありますし。良い技術の使い方をすることで本質的にやりたかったことがいろいろと実現されていくと思います。
徳原:
確かに。それが実現していくことは、我々マーケターの夢でもあるね。
これからのマーケターが持つべきは、サービス・製品への愛
徳原:
生成AIが進化していく中で、マーケターにとってこれからますます重要になる資質は何だと思う?
藤田:
オペレーションの部分はAIで自動化されて、一人でさまざまな領域をカバーできるようになっていくと思うので、上流の部分を考えられる人の価値が高くなりそうだなと思います。
例えば製品の戦略方針を考えたりとか、データ分析そのものではなくて分析によって何をしたいのかを考えるとか。
徳原:
いいね。ちなみに私も考えていることを言うと、対象となるサービスや商品を愛することが、より大事になってくるんじゃないかと思う。
藤田:
ああ、すごくいいですね。
徳原:
上流の戦略とかもちろんあるけど、愛するがゆえに適切な問いが生まれる部分があるんじゃないかと思って。やっぱり一周回って愛だなって思うんだよね。
藤田:
確かになぁ。その商品をどうしていきたいかを考えるときに、市場の規模や競合を考えて合理的な判断もできますけど、それ以上にやりたいと思うかどうかの人間の意思の割合ってかなり大きいですし。
AIを使って「好き」の判断を自動化するんじゃなくて、AIは自分の「好き」をより強力に反映してくれるツールという捉え方をした方が、今のAIに対してよい使い方ができるんじゃないかと思いますね。
徳原:
藤田さんはピネアルに来る前は、素材メーカーの研究職だったと思うんだけど、マーケティングという仕事に対してどんな思いを持っている?
藤田:
そうですね、もともと私は研究開発畑出身なので、結構本気で「いいものを作ったら売れる」という感覚を持っていたんです。
ただ今ピネアルで企業のマーケティングを支援する側になって、やっぱり「いいものを作るだけ」「いい技術があるだけ」では、世の中に価値は出せないと思うようになりました。多くの人にとっての価値になるのは、製品化やサービス化がされて多くの人たちが使えるようになったときなんだな、と。
素材メーカーの研究開発の人たちも、マーケティング思考を持たないといけないって言われたりするんですよ。ただ実際は難しいところがあったと思います。そんな中でAIは、マーケティングのバックグラウンドがない人でもマーケティングをできるパワーをもたらすんじゃないかと。
そういう意味では「全社員マーケター」みたいな世界観がやってくるのかもしれないなと思います。
徳原:
確かに。そうなったら誰もが自分が本当にいいと思うものをより追求できるようになると思う。
マーケターではない人がマーケティングを学ぶことによって、本当に自分がいいと思うことに没頭するモチベーションや機運が生まれてくるから、逆説的に大事なことだなと。
まさに藤田さんが言ってくれたように「マーケティングスキル」がよりジェネラルなものになったらいいなと感じるし、私たちもそういう社会や世界を作ることに貢献していきたいね。
さいごに
徳原:
藤田さんはどんな人と一緒に仕事したいですか?
藤田:
私は未経験からマーケティングの領域に入ってきて、今はマーケティング×生成AIで企業の支援を行っているんですが、まだ生成AIってChatGPTが出始めてから2年半ぐらいしか経っていないじゃないですか。
なので、私たちがやっている活動は経験がないとできない領域とは逆で、いかに変化にキャッチアップしながら世の中に価値を出していくかの挑戦が好きな人に向いている領域だと思います。
学ぶことが好きな人や変化が好きな人、そしてAIが好きな人と一緒に働きたいなと思います。徳原さんは、どんな人と働きたいですか?
徳原:
マーケティングやAI、新しい技術の掛け合わせでいろいろなことが実現できる世の中になってきている分、逆にその人ならではのクリエイティビティを持ってる人は魅力的に感じるかな。必ずしもデザイナーとかクリエイターでなくてもよくて、人にはない面白い視点や少し突飛に思われるような発想を持っている人と一緒に働きたいです。
ーーお二人とも本日はありがとうございました!
ピネアルでは複数ポジションで積極的に採用を行っています。
生成AIを活用しながら企業のマーケティング支援に挑戦したい方、未来の「働く」を共に創り出したい方は、ぜひお気軽にご連絡ください。
未踏の領域を切り拓く情熱を持った方との出会いを楽しみにしています!