巷ではDX、DXと謳われており、何でもかんでもDXと言いすぎる故、何がDXなのかわからないとの声も聞こえてくる。ごもっともである。ナリコマもDX認定を受けているが、その過程ではナリコマの事務局内でも認識の齟齬があった。経産省の旧DX推進ガイドラインが悪い。
余談であるが、数年前、国内最大手の化粧品会社がDXだと謳って大手コンサルと合弁会社を作ってDX推進をしているが、合弁会社を作るということ自体が社内にデジタルに強い人材がいないことを示している。しかもコンサルとの合弁会社だから、コンサルからも人が投入されるであろう。当然デジタル企画はコンサル人材が担うことになるのは想像できる。それって化粧品会社側にノウハウ残らなくない?その後打ち出される策もデジタイズ、デジタライズの域を出ることない策で、唯一事業構造を変えそうなのはサブスクくらいだが美容部員の代わりにはなっていない。それでもDX注目企業2025に選ばれているのって、ほんとDXってわからないぞ。
ナリコマはそもそもDX企業だよ
従来の給食業務というのは、献立ソフトで献立を作り、作成された発注書から材料を野菜、肉、牛乳など商店や業者に発注し、厨房で仕込みから調理まで行い、業者からの請求を請求処理して、さらに栄養管理の処理をしなくてはならない。電話・FAX・伝票・書類が飛び交う業務なのである。お食事だけ作っていればOKという世界ではない。
それをナリコマではデジタルとセントラルキッチンを組み合わせ、PCとインターネット回線だけあれば、給食提供から栄養管理まで対応するスマートな世界を20年前から作っている。自社他社問わず導入する厨房にとっては業務が大転換することは言うまでもない。デジタルで厨房の運営モデルに変革をもたらしてきたことがナリコマの強みである。
この人手不足や物価高の環境下で医療・介護給食部門が厨房を維持できないレベルまで危機が高まっている中で、ナリコマのサービスが高い評価を得ているのは、紛れもなくナリコマがDX企業だからである。
ナリコマって良い意味で変だよ
日本において企業がITシステムを企画・構築する場合はSIerにお願いするということが一般的だ。「餅は餅屋」の諺があるとおり、日本人的には専門的なことは外部に任せるDNAの文化なのかもしれない。それでも30年くらい前には事業会社の中にも電算部門という今で言うIT部門があったのだが、PCとWindowsが普及し、コンピュータが専門職だけのものでなくなった1995年頃に、エンドユーザーコンピューティングとアウトソーシングの名の元にIT部門の廃止や子会社化が進み、事業会社の中にIT部門を持つ会社が少なくなった。
事実、日本におけるIT技術者の所属している企業の割合は2015年の統計で、73%がIT企業となっている。だが、アメリカでは65%のIT技術者がIT企業ではなく事業会社に所属している。アメリカのIT企業はセキュリティやデータアナリスト会社のようなスペシャリティな企業のイメージで、日本のような「ITシステムをクライアントの代わりに作る会社」ではないことが多い。アメリカの企業は自らITエンジニアを雇い、自らの事業のためのITシステムを自分たちで開発するスタイルが一般的だ。
だからナリコマはアメリカ的な思想の会社と言える。ナリコマだけにしかできないことにこだわり、自社が所有することに昔からこだわってきた。ノウハウが財産だと、ノウハウを内部留保することが重要だと、内製にこだわってきたのである。むしろ時代がナリコマ的になってきたと言ってもよい。
ナリコマが内製化にこだわるのには理由がある
さて内製化を進めるメリットって何だろう?ざっと思いつくのは3つ。
① 会社のビジョンに沿った開発ができる
ナリコマは給食会社である。全国のお年寄りがナリコマの作るお食事を食べて、生きる幸せを感じてもらいたいという願いがある。そのためにもおいしいお食事と厨房経営の両立が不可欠である。介護給食に求められる様々な品質要件とセントラルキッチンの生産効率をバランスさせるためにITを活用しているのである。だが、給食業務は一般には知られていない、栄養管理、給食管理、監査対応、生産管理、考慮しなくてはならないことが山ほどあることを外部業者に理解してもらうことはなかなかに難しい。継続して内製を重ねることが求める結果を得られやすいのだ。
② 変化に即応しやすい
私たちの顧客である病院や介護施設さんは保険収入で経営が成り立っており、言わば国の方針で経営が左右される。さらに保険報酬の改定は医療なら2年、介護は3年である。世の情勢はその2年、3年の間にも変化する。今の世の流れは残念ながら病院さんや施設さんにとって良い方向へは向かわない流れである。その流れの中で給食部門に求められることも変化していく。病院/施設経営において、給食部門が大きなコストを占める部門であるだけに見過ごされるわけには行かないのが現実だ。そのように厳しい経営環境でわたしたちナリコマが様々なサービスを開発して、安定した病院/施設経営に導くためにナリコマができることを一分一秒でも早く提供しなくてはならない。
③ ノウハウが自社に蓄積できる
個人的な思いであるが、私はナリコマを選択してくれた価値を現場や顧客や利用者さんに与えたい。そのためにも、新しいテクノロジーなどはどんどん取り入れて価値創造へつなげたいのだ。使い物にならなかったり、使い方にクセが強いものもあるだろう、それでも開発側がテクノロジーを使いこなせるようにならなくては、課題を解決することはできない。課題を解決できるのは引き出しの多さなのだ。その引き出しを外部に頼るようでは、現場や顧客や利用者さんが抱える困りごとを解決することは難しい。ノウハウが自社に蓄積しないのであればインハウスである必要はないし、エンジニアは単なるコストセンターになってしまう。自らの存在理由を無くさないためにも、決して課題を業者さんへ丸投げするような仕事をしてはいけない。
Wowって感じてもらいたくない?
やはりDXを進めるなら内製化していないと意味がない。今やデジタルと経営は一体となっている、デジタル抜きでサービスに付加価値を創造することはできない。だが世の中は予測不能だ、当たることもあれば外れることもある、そんな混沌とした時代の経営にはアジリティが重要なのだ。私たちの行動原則は考えて、作って、判断する、とにかくすぐやる。100%を求めるのではなく、60%から走りながら考える。だからナリコマには内製にこだわるのだ。
ITでもって従来では実現不可能なサービスを提供し、人々の新しい明日を創ることができるのがITエンジニアだと思ってきたし、これからもそうでありたい。ITでWowを感じる世界をつくることがDXなのだ。システム部よ、もっと大きな志を持とう!
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この記事を書いた人のインタビューはこちら
東京新拠点への挑戦!チームの垣根を超えるシステム開発〈前編〉
東京新拠点への挑戦!チームの垣根を超えるシステム開発〈後編〉