「梅が競走馬の走りを支える。」
誰も想像していなかったこの出来事は、梅づくり100年の梅干屋からスタートした研究が、思いがけず結んだ“ひとつの物語”です。
その象徴となったのが、元競走馬 『ウメムスビ』。
デビューからわずか半年でGⅠレースに出走するなど、そのひたむきな走りは多くのファンを惹きつけ、スポーツ報知をはじめ数々のスポーツ紙でも取り上げられました。
私たちにとって、まさに特別な存在です。
スポーツ新聞の他、LIVING和歌山版にもウメムスビは取り上げていただきました。
■ 梅づくり100年の会社が、梅の力を科学するまで
紀州ほそ川は、梅づくり100年の老舗梅干屋です。
その伝統を受け継ぎながら、「伝統食材に新しい使い道をつくる」というミッションのもと、梅の有効成分を科学的に研究してきました。
和歌山県立医科大学との共同研究では、梅の
- 高い抗酸化力
- 免疫力向上
- 疲労回復サポート
といった健康価値が次々に明らかになり、その研究成果は、全国で愛される妊活女性向けサプリ「ウムリン」へとつながっています。
ウムリンは紀州産梅から特殊抽出加工した梅抽出物です。
■ 研究は畜産の世界へも ニワトリ → 豚 → そして競走馬へ
紀州ほそ川の研究は、ヒト向けだけでなく、畜産の世界へも広がっています。まず ニワトリ(採卵鶏・ブロイラー) の現場で、梅由来成分を含む飼料試験が始まりました。
そこで
- 生存率・産卵率の向上
- 免疫力向上
- 肝機能が良好・代謝がスムーズになる
といった変化が見られ、続いて養豚農家 でも生育面での手応えが寄せられました。
こうした現場の反応を受け、私たちの中で一つの新しい問いが生まれます。
「梅の力は、競走馬にも応用できるのではないか?」
畜産でも確認された 疲労回復・食欲管理・整腸作用──
これは競走馬が抱える課題そのもの。
こうして紀州ほそ川の研究は、競走馬の世界へと広がっていきました。
ニワトリでの基礎研究は、競走馬に向けた大きな足掛かりに。
■ 馬主資格を得て、現場に向き合う決断を
梅の力が馬のパフォーマンスに寄与する可能性が見えてきたとき、
紀州ほそ川は“机上の研究だけではわからない世界”があると感じました。
梅抽出物を実際の競走馬に与えたいと、弊社代表・細川達矢が牧場巡りをするも、競走馬は高額で繊細なアスリートだからこそ、実験の協力者を募ることが難しく、畜産とは桁違いの参入障壁の高さを痛感しました。
そんな中、当時投資銀行に勤務していた兄・陽介が馬主資格を取得して、当社の経営に代表として合流したことで競走馬向け梅抽出飼料「Vitav」の開発が加速しました。
他の動物での投与実績から、馬への有効性にも自信がある。それでも協力者を集うのが難しいのなら、自ら馬を所有して試してみよう。自分の馬で結果を出せば話を聞いてもらえるはず。そんな想いを込めて最初に迎えた馬にウメムスビ(梅+結び。新しく馬主となってできたご縁を大切にしたいと思い)と名付け、一頭馬主になるという夢に、Vitav事業の想いを託し、日本中央競馬会(JRA)栗東トレーニングセンターの新谷厩舎に預けました。
ここから、私たちの研究は“机上から現場へと一気に動き出し、梅由来成分が競走馬のパフォーマンスにどのように影響するのか——本格的な実証フェーズが始まりました。
新谷厩舎に預けたウメムスビを家族で訪問した際の一枚
■ 馬主になることで開けた梅抽出飼料「Vitav」の開発
新谷厩舎では通常、新しいサプリメントは2年ほどかけてクチコミを聞くなどして慎重に導入を検討するので、当初はVitavに懐疑的。「オーナーの馬だけであれば・・・」という条件で投与実験が始まりました。
実験開始後ウメムスビの状態は良好。飼葉をよく食べ、毛艶はピカピカ。辛口の新谷先生も素直に認めるほどタフに調教をこなしました。その頃からVitavの消費スピードが加速していき、気付けば在庫がなくなる事態に(笑)。
「効果は明らか。これは本物」との言葉を新谷厩舎の皆様から頂けるようになり、正式に採用が決定。より効果的な与え方を共に探求することに。Vitav導入により胃薬や他のサプリメントが不要になり、手間とコストを削減、体調管理がしやすくなったとの声をいただきました。Vitavは競走馬の役に立てるのだと自信が確信に変わりました。
新谷厩舎を訪問する当社代表。現場の声を聞き、競走馬に役立てる方法を共に探求してきました。
■ 一頭馬主から法人馬主へ
ウメムスビをきっかけに、私たちは競走馬の体調管理を“自分たちの手で確かめる”という
これまでにない立場を得ました。
そしてこの挑戦は、株式会社紀州ほそ川飼料を法人馬主として登録するという決断へとつながり、これまでの梅干屋の歴史にはなかった新しい一歩を踏み出すこととなりました。
紀州ほそ川の100年の歴史に、“馬主として競走馬を支える”という新しい章が加わった瞬間でした。
※法人馬主とは…会社として馬主権利を持つこと
2022年7月2日 小倉競馬場にて公式レースデビューしました
■ ウメムスビが結んだ縁が、梅研究を次のステージへ導いた
ウメムスビは、その果敢な走りだけでなく、調教の様子や人懐っこい性格からも多くのファンに愛されました。
スポーツ報知では「初GⅠでも咲くウメムスビ」と大きな見出しで紹介。
SNSでも
「応援したくなる!」
「ウメムスビ君可愛すぎる!」
といった声が広がり、ウメムスビは競走馬という枠を超えた存在になっていきました。
それは、紀州ほそ川が100年守ってきた “梅の力” と、競走馬の世界が“結ばれた”瞬間でした。
スポーツ報知(2022年12月13日)
2022年12月18日 朝日杯フューチュリティステークス(GⅠ)に出走しました
■ 伝統食材は、未来の産業になる
ウメムスビとの挑戦を通して、私たちは確信しました。
伝統食材は、食卓だけではなく
ヒトの健康・畜産・スポーツといった
まったく新しい領域の未来をつくる素材である。
梅は
- 医療・健康食品(妊活)
- 畜産・養殖(鶏・豚・魚)
- 競走馬(スポーツ科学)
という多領域へ広がり、“100年続く伝統” から “新しい産業” を生み出せることを示しました。
研究の原点となる自社の梅畑にて
■ 最後に
ウメムスビは、紀州ほそ川に多くの“結びつき”をもたらしました。
- 梅と馬
- 研究と現場
- そして、人と人
そのすべてが“実を結んだ”ことに、私たちは深い感謝を抱いています。
紀州ほそ川はこれからも、
伝統食材の新しい未来を結ぶ会社 として
梅の力と可能性を世界へ届けていきます。
【細川陽介プロフィール】
慶應義塾大学理工学部卒、慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。メリルリンチ日本証券㈱、㈱日本政策投資銀行を経て、2021年JRA個人馬主資格取得を機に投資銀行を退職し、家業を継ぐ。㈱紀州ほそ川・㈱紀州ほそ川創薬・㈱紀州ほそ川飼料の代表に就任。2022年ウメムスビで馬主デビューし、㈱紀州ほそ川飼料を法人馬主化。約15年の投資銀行勤務の経験を活かし財務面から弊社事業を支える。2024年慶應義塾大学矢上賞受賞。