日本生命での東大の採用責任者の話の続きです。(前編から読んでください)
学生が煮詰まってくると、最終面接に上げるかどうかを判断します。これを「見極め」と呼ぶのですが、要は、最終面接直前にぼくがその見極め面談を行うということです。ただ、ぼくはそこで、学生たちにあることを問いました。それは、
「心の底から日本生命で働きたいと思っていますか?」
ということです。
就活にはだまし合いのようなところがあって、採用する側も、どうしても採用したい学生と状況しだいで内定を出す予備の学生に分けていたりしますし、学生は学生で、とにかく内定をもらっておきたいので、本気かどうかはさておき「御社が第一志望です」というのが当たり前という世界です。でも、そこであえてこの質問をしていました。
就活を進めていくと、いろんな人に出会います。おもしろい人、性格の悪い人、切れ者、まじめな人。もちろんいろんな話も聞く。会社のこと、仕事のやりがい、業界の話、社風。就活生は、これらの情報を自分の中で咀嚼していく。理屈として頭で整理していくだけでなく、気持ちとしてハートにも格納していく。
名の通った会社だというブランド力や、事業や仕事内容、社会性や社風、給料や勤務地など様々な要因でどこに就職したいかを判断していくわけですが、本当にその会社で働きたいのかどうかは後回しにされがちです。「内定を取る」という目的にフォーカスして、形だけの志望動機を理屈で作り上げてしまいがちだからです。でも、大切なのは「本当にそこで働きたいと思っているかどうか」です。
だからぼくは、最終面接前の東大生たちに、「明日は最終面接ですが、夜、寝る前に、もう一度胸に手を置いて、本当に日本生命で働きたいと思っているかどうかを自分の心に問うてください」と伝えました。「いろんな職員に会ってもらっているので、あのときの人はこうだったなとか、あの人は楽しそうにしてたなとか、あの人の言ってたことは説得力があったなとか、いろいろ感じてきたと思うんです。それを思い出しながら、自分の気持ちを確かめてください」とも伝えました。
その気持ちが確かなものであれば、最終面接では、その気持ちをそのままぶつけてもらえばいいんです。そうして出てきた言葉には、こねくりまわした形だけの理屈よりも、何百倍ものパワーがあるからです。実際、そうして最終面接に挑んだ東大生たちは、全員、しっかりと内定を取ってくれました。
ちなみに、自分の心に問うた結果、まだニッセイへの気持ちがホンモノではないと気付いた学生には、最終面接をキャンセルさせ、追加で別の職員に会わせることにしていました。もちろん、彼らが本気で煮詰まるまで、何人でもそれを繰り返しました。
学生は、就活についておおいなる勘違いをしています。面接官からの質問にテキパキと論理的に答えられるか、志望理由を理路整然と述べられるか、自分の強みを的確に言語化できるか、そんなことで評価されると勘違いしちゃってるんですね。でも、採用する側からしたら、会社の中に受け入れて、しっかりと育てて一緒に歩んでいく仲間を見極めているわけです。恋愛とおんなじです。ハートで決めるものなんです。
これは何も就活に限った話ではないんですけどね。営業であれ組織の意思決定であれ、ハートで決めて理屈を用意するものです。就活もその例外ではないということです。
※ぼくは人事畑が長かったので、また機会を見つけて人事ネタを書いていきたいと思います。