日本生命での採用責任者の立場から見た就活の景色を語ります(前編)
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ぼくは、日本生命時代に東大の採用責任者をやったことがあります。
その年はオープンエントリー制を採用したこともあり、例年のようにOBのリクルーターを組織することができず、責任者であるぼくとスタッフ1名の2人チームで東大生の採用を担当しました。その代わり、出身大学にかかわらず、若手から中堅までの職員を面接枠にずらっと並べて、そこに面接を当て込んでいくやり方を採っていました。
東大からの採用ノルマは16名。歩留まりを考えて20名の内定を出さなければなりません。ところが、最終面接が厳しい。中途半端な学生をぶつけると、ほとんどが撃沈してしまうのです。だから、採用責任者としては、しっかりと学生を見極め、最終面接に上げていかないといけません。
ぼくは東大を担当していましたが、隣に早稲田チーム、慶應チームがいました。どちらも責任者とスタッフの2名体制です。採用ノルマも同じく16名。ところが、圧倒的に違ったのがエントリーの数です。早慶には何千人ものエントリーがあった一方、東大のエントリーはたったの250名。そこから16名を採用しなければならなかったんです。
ましてや東大生は、就活を少し舐めています。自分が選ばれるという自覚がなく、むしろ会社を選んでいるつもりでエントリーしてきている。ほとんどの東大生は、たいして興味もないままにニッセイを受けているし、実際、「御社が第一志望です」なんて言ってくれる東大生は一人もいません。だから当然面接の評価も低い。C評価、D評価のオンパレードです。
早慶は、数をさばいていくためにB評価以下はどんどん切り捨てていくのですが、東大でそんなことをやってしまったらすぐに候補者がゼロになってしまう。なので、面接評価がどれだけ低かろうと、次から次へと職員に会わせていくしかないんです。ただ、ニッセイのすごいところは、「会社は選ばれる側である」「入社するしないにかかわらず全員が潜在的なお客様である」という意識が徹底されているので、面接の場面で職員がせっせと日本生命のことをPRしてくれる。おかげで、会わせていくうちに東大生たちも徐々に興味を持ってくれるようになっていきます。
不思議なもので、興味を持ち始めてくれると、面接評価も上がっていきます。最初はD評価だったのに、何人か目ではA評価になったりもする。これを「煮詰まる」と呼ぶのですが、煮詰まってきた学生を最終面接に上げていくことになります。
その年の東大生の最終面接突破率はなんと100%でした。最終面接に上げた全員が内定になった。
早慶や他大はせいぜい50%といったところなので、これはあきらかに驚異的な数字です。でも、それには明確な理由があります。最終面接に上げる前に、ぼくが学生と直接会い、あることを伝えたからです。ぼくは、そこに就活や採用の要点が詰まっていると考えています。
では、ぼくは学生たちになんと伝えたのか? これは後編で語っていきたいと思います。