こんにちは。株式会社シンシア・ハートで代表取締役をしている堀内猛志(takenoko1220)です。
このnoteでは、起業を志してベンチャー企業に新卒入社したのに、結局17年も所属してしまった結果、38歳6か月にしてやっと起業した人間のヒューマンストーリーという名のポエムブログを書いています。
前回のnoteでは、妻の最期と、僕の思いを綴りました。未だに妻が亡くなったことは信じられず感情もぐちゃぐちゃですが、そんな経験をしたからこそ伝えたい、伝えなければならないと思うこともあります。
妻の死を「学びにつながった」なんてことは絶対に言いたくありません。それでも、前を向いて生きていくしかない以上、同じような後悔は絶対にしたくないし、僕以外の人にもしてほしくないので、文章にしていきたいと思います。
目次
人は何のために生きるのか
当たり前の日々=かけがえのない日々
家族は唯一無二の存在
もし時間が戻るなら
何を聞き、何を伝えればいいのか
「いつか」はすぐそこに
亡くなった後のこと
喋りにくい本音こそ話す
いかに健康が大切か
異変を感じたらすぐ病院へ
健康診断を受けよう
できることは何でもする
これからの話
もう一度前を向くために
息子のこと
仕事のこと
僕は僕の使命を果たす
今を大切に
メンバーを募集しています
人は何のために生きるのか
当たり前の日々=かけがえのない日々
妻が亡くなってから思い出すのは、旅行したり、いいご飯を食べたりしている特別な時間ではなく、何でもない毎日の風景です。
帰ってきたときに「ただいま」「おかえり」って言ってくれたこと。近くの公園のベンチに座り、コーヒーを飲みながら喋ったこと。予定がない休みの日に、手を繋いで家の近くを散歩したこと。一緒に眠りにつく前の会話。
他人同士が一緒に暮らして、日常を一緒に過ごせるのはすごく素晴らしいことです。多くの人が想像する以上に、人間はその時間を支えにして生きているのではないかと思います。
だからこそ僕は、病気で寝ていても入院していても、なんなら亡くなった妻に毎晩話しかけているだけでも、一緒にいられれば幸せでした。
人生の最後に「もっと仕事しときゃよかった」なんて思う人はほとんどいないはずです。そして、一人で何かをした時間よりも、大切な人と一緒に過ごした時間を思い出すのではないでしょうか。
もし、そういう時間をないがしろにしている方には、改めて自分自身の時間の使い方を振り返ってみてほしいと思います。
家族は唯一無二の存在
友人をはじめとする周囲の方々は、妻を喪った僕をすごく心配し、「困ったときは連絡して」「抱え込まないでね」「いつでも頼ってほしい」と、たくさんのメッセージをくれました。その言葉は僕の助けになったし、すごくありがたかったです。
でも、彼らには彼らの人生があります。僕がつらいからといって、その都度呼び出すわけにはいきません。
一方で、家族は無条件に頼っていい存在だと思うんです。僕の両親は、僕が「大丈夫だよ」と断っても、ずっと家にいてくれました。特にしてほしいことがあったわけではありませんが、ただそこにいてくれて、話しかけたときに会話ができて、一人じゃないと思えることは心強く、嬉しかったです。
僕は、結婚していない方や、結婚したくない方に向けて「結婚っていいよ」なんて、価値観の違いを押しつけるつもりはありません。
それでも、理由なく一緒にいられて、迷惑をかけても無条件に許してくれる人がいることは、寂しいときやつらいときに、ものすごく助けになります。だからこそ、家族と過ごす時間や、生涯のパートナーと出会うための時間をもっと大切にしてほしいと思います。
もし時間が戻るなら
亡くしてみて初めて気づきましたが、僕は、過去に戻れるとしたら、妻に向き合う時間を増やしたいです。
僕は、仕事に集中する時間と家族に向き合う時間を分けることなく、曖昧にしていました。休みの日や、妻と話しているときも仕事のことを考え、一緒に過ごす時間の質を下げてしまっていたんです。
今さらですが、どうして一緒にいるのに妻のことを見ていなかったのだろうと、めちゃくちゃ後悔しています。
誰しも、人生の優先順位は何かを考え、やりたいことをいろいろ探すと思います。でも、やっぱり誰といたいかが大事なんです。自分の横にいる人を幸せにしようとすることが自分にとっても1番幸せなことなのだと、改めて感じました。
聖書にも「汝の隣人を愛せよ」とありますが、まさにそうだと思います。僕は、幸せにする人の優先順位をもう間違えたくないので、これを心に刻んで生きていくつもりです。
何を聞き、何を伝えればいいのか
「いつか」はすぐそこに
もう何度も繰り返し言っていますが、僕は明るい未来に期待ばかりして、最悪の事態に備える準備を怠っていました。心のどこかでは、今が永遠に続くと思っているから「いつかやろう」と先延ばしにしていたんです。
でも、実際には「いつか」なんて言っているほど時間の猶予はなく、あっという間に妻は逝ってしまいました。早く行動して早く決着をつけないと、手遅れになってしまうことは山ほどあるのだと、今になって実感しています。
僕に限らず、人間は、答えを出しにくいことを先延ばしにしてしまうものです。だからこそ、僕が妻と話しておけばよかったと思っていることを書き留めておきます。
亡くなった後のこと
本気で妻が良くなると信じていた僕は、亡くなった後のことを話そうとしませんでした。でも、彼女がいなくなった今、聞いておけばよかったと思うことがたくさんあります。
第一は、息子の将来のこと。こんな子に育ててほしい、こういうことは絶対にさせないでね、という思い。食べさせてほしいものや着せてほしい服だってあったはずなのに、今となっては知ることができません。
そして、妻の両親・友人との付き合い方。妻なら、みんなと息子の成長を共有したり、子育ての悩みを相談したりと密に連絡を取りあったと思います。僕も、もちろん疎遠になるつもりはありませんが、向こうはどんな距離感でいるのか、僕のスタンスは妻の希望通りなのか、それはやっぱりわからないんです。
遺品についても、どうしてほしいか全然聞けていませんでした。物にもたくさんの思い出が詰まっているのですが、全部残しておくわけにはいかないので、つらい気持ちを堪えながら整理しています。
ただ、妻が書いたものは捨てられそうにありません。遺品整理をしていて見つけた、息子の離乳食を記録したノート。1日目からずっと、何を食べたかだけでなく、感想も併せて記録が綴られていました。読んでいて涙が溢れましたし、その続きを書いてあげたいと思わずにはいられませんでした。
思い出に浸ってしまい少し話が逸れましたが、亡くなる前提で話したくないと思っている自分がいたために、大事な会話ができていなかった。今、こういう状況になってみて、もっと聞くべきだった、話すべきだったと、心底思います。
喋りにくい本音こそ話す
妻は、妊娠するタイミングと、がんになるタイミングが重なって、発見が遅れてしまいました。
僕は、妻と二人で過ごす時間が好きだったことはもちろんですが、兄・姉と12歳以上も年が離れていて末っ子気質な妻がちゃんとした母親になれるか心配で、子どもを設けることを先延ばしにしていたところもあります。
一方で、妻が亡くなってから初めて会った高校の友人たちは、妻に対して「とてもしっかりした人だ」という印象を持っていました。また、友人の中でも、誰より子ども好きだったという話を聞き、僕が知ってる妻と、みんなが知ってる妻は全然違ったんだと気づかされたんです。
妻の友人たちの話を聞いた後、僕は、自分の不安を言葉にしていたらどうなっただろうと考えました。もし、僕が「君が子どもを育てていけるかちょっと心配なんだよね」と伝えたなら、妻は「そんなことないよ。私はこんな風に考えてるよ」なんて答えて、「そっか!それならすぐにでも」と、早くに子どもを設ける選択をしていたかもしれません。
そうしていれば、妻はもっと長く息子の成長を見れたし、何よりも、もっと早くがんを見つけることができた可能性があります。
そんな会話ができなかった理由は「相手の気持ちを思って」なんていうきれいごとではなく、僕自身がビビってただけでした。
大事な人とは、言いづらいことや難しいことほど、どれだけ会話できるかが大切です。そうすることで解決できることは山のようにあると、そして、もしかしたらそれが運命を変えるかもしれないと、僕は思っています。
だから、大事な人と一緒に明日を迎えられる人は「話しにくいな」と思うことも言葉にしてみてほしいです。そして僕は、もっとたくさん「好き」って言っておけば良かったと思っているので、愛情もぜひ伝えてください。
いかに健康が大切か
異変を感じたらすぐ病院へ
妻は、製薬会社からの依頼を受け、医薬品開発における臨床試験や製造販売後の調査をする仕事をしていました。特にがんの検査を担当していたので、がんにはとても詳しかったのに、自分の病気の進行には気づけませんでした。
大腸がんの主な症状は、便秘と下痢、そして痔です。便秘や下痢は普通の人でもよく起こる症状ですし、痔は「妊婦あるあるだね」なんて言っていました。
さすがに血が出てきたときには病院を考えたようですが、女性の医師がいいからと受診をためらい、結局行かなかったんです。僕は、なぜあの時にもっと強く「行っておいで」と言えなかったのかと、今も後悔しています。
普段、忙しく過ごしている人ほど、身体の不調があっても、原因を調べることを後回しにしてしまいがちです。僕もそんな時期があったので気持ちはわかるのですが、もし「なんか変だな」と感じたら、すぐに病院に行ってください。
健康診断を受けよう
とはいえ、身体の異変を自覚しないままに、病気が進行することもあると思います。それを防ぐためには、やはり定期的に健康診断を受けることが大切です。
世間の皆さんに健康診断を受けてもらうために、僕ができることは多くありません。ただ、先ほども「汝の隣人を愛せよ」と書いたように、僕は、自分の周りにいてくれる人を幸せにしようと決めました。
だからこそ、自社の福利厚生の一環で、一般的な健康診断に加え、がん検診も実施することを計画しています。社員本人だけでなく、パートナーの方も会社負担で受診できるようにするつもりです。
できることは何でもする
早期発見はもちろん大切ですが、予防という観点でも、できることはたくさんあります。
お酒やタバコなど、身体に害があるものを控えるのは言わずもがなですが、実は、1日1時間歩くだけで、がんの発生リスクをだいぶ抑えられるそうなんです。現代人はなかなか歩く時間が減っているので、自社のメンバーには、朝や夜の散歩や、ウォーキングしながらのミーティングを勧めています。
また、睡眠不足ががんの発症リスクを高めるという研究もあるので、しっかり眠ることも大切です。
まだ具体的には決まっていませんが、健康診断やがん検診と併せ、適度な運動や睡眠といった健康のための習慣も社内ルール化できたらいいなと考えています。
これからの話
もう一度前を向くために
今は「幸せに生きるって、そんな簡単じゃねえんだな」という気持ちでいっぱいで、これからどうやって生きればいいかなんて全くイメージも湧きません。
でも、僕にはやらなければならないことがあります。立ち直れるのがいつになるのかはわかりませんが、前を向いてリスタートしなければいけないんです。
その一歩を踏み出すために、ここからは決意表明を書いていきたいと思います。
息子のこと
病院から家に帰ってきた時、そして、棺の蓋を閉める最後のお別れの時、妻に息子を抱っこしてもらいました。当然、まだ1歳の息子は、妻が亡くなった事実を理解することはできていません。
でも、息子がずっと元気いっぱいでいてくれるので、僕も元気をもらっています。通夜や葬儀の最中も、泣くこともなくいい子でいてくれたので、参列してくださった方々からはすごく和まされたと言っていただけました。
妻は、最後の最後まで息子のことを想っていました。病院の先生にも「夫は強いから自分で何とかすると思うけど、残される息子のことが心配」「自分のことはいいから、できる限り息子と一緒に時間を過ごしたい」と語っていたようです。
正直、自分がシングルファザーになる未来が来るとは思ってもいませんでした。
僕は「小さい頃の服なんて、楽ならいいんじゃない?」とざっくり考えているタイプです。ハロウィンにはかぼちゃの服、クリスマスにはサンタクロースの衣装、最近は自分の着物と息子の甚平……。妻がやってくれたように、季節のイベントに合わせた衣装を用意するようなことはできないかもしれません。
それでも、妻が大切に想っていた息子を一人前の人間に育てるのは、僕が1番やらなければいけないことであり、僕にしかできないこと。
妻に「陽翔のことは大丈夫だからね」と伝えられるよう、強く、明るく、健やかに息子を育てていきたいです。
仕事のこと
僕は、家族を最優先にして生きていくと決意しています。でも、仕事ほど、人や世の中の役に立つことができて、わかりやすくやりがいを感じられるものはないと思います。
その例として、一つエピソードを紹介します。
僕は、妻が入院してすぐ、日頃から動画編集を依頼している方に「今まで撮りためた写真や動画を使ってムービーを作ってほしい」とお願いしました。僕がそばにいられない夜中に妻が起きて、孤独を感じてしまうことのないよう、一晩中動画を流しておきたかったからです。
妻は、僕といる昼間も、ずっとそのムービーを見ていました。このことを制作者の方に伝えたところ「表現を間違えてるかもしれないけど、めっちゃ嬉しいです」と言ってくれたんです。
やっぱり、仕事とは、誰かのためになることをやるものだと実感しました。だからこそ、僕は仕事が大好きだし、今後も辞める気はありません。
ただし、家族あっての仕事なので、僕以外の人にも、優先順位は間違えてほしくないと思っています。
大事でないことや、やりたくもないことに割く時間は、人生にはありません。株式会社シンシア・ハートでは、プロダクトの開発などを通じて、自分が1番輝くことだけに集中できるような世の中の実現を目指していきます。
僕は僕の使命を果たす
僕は以前から「人生を味わい尽くす」と心に決めて生きてきましたが、妻が亡くなってからは「それってどういう意味だろう」と改めて問い直していました。
その結果、思い至ったのは、最後に「いい人生だったな」と感じられるような思い出をたくさん作るということでした。
思い出を作るためにはいろんな経験をすべきで、そんな経験をするためにはいろんな人との出会いや繋がりが必要。
そして、同じことを繰り返すばかりでなく、新しいことに挑戦することで、また新たな価値観が形成されていく。
「そういう繰り返しが大事なんだよな」と思ったら、ようやく立ち直れる気がしてきました。ここで止まってるわけにいかないと感じたんです。
妻がいうには、僕は強い人だから。早く立ち直って「もうどうしたらいいかわかんない」と思い悩んでいる人たちのために生きるという、僕の使命を果たしたいです。
今を大切に
目の前にある幸せや、大事な人と一緒にいられる今日が、明日もあるとは限りません。僕は、それを身をもって体験しました。
このnoteが、何気なく日々を過ごしている方や、今まさにつらい思いをされている方、そして、今後そんな思いをされるかもしれない方に届き、何かが変わるきっかけになれば嬉しく思います。
メンバーを募集しています
今回もプライベートの話が中心になりましたが、僕が代表を務める株式会社シンシア・ハートは、おかげさまで5月末で第3期を終了し、6月から第4期を迎えました。
当社の掲げるビジョンは「全世代がときめくAgelessな社会をつくる」こと。年齢に関係なく、全ての人が自分の未来に期待し、今を生きること、明日が来ることにときめくことができる社会をつくるため、全力を尽くしていきます。
そんな当社では、現在創業メンバーを募集中です。COO候補をはじめ、キャリアアドバイザーや求人ライターなどさまざまなポジションがあり、副業やフルリモートといった働き方も選べます。
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