こんにちは。株式会社シンシア・ハート代表取締役の堀内猛志(takenoko1220)です。
僕は前職で、50名から4000名まで成長した企業の人事役員を務め、節目ごとに生まれる“人”と“組織”の課題に向き合ってきました。
現在は、成長企業向けの戦略人事コンサルティングと、ミドル・ハイレイヤーに特化した人材紹介に取り組んでいます。
このシリーズでは、僕の経験をもとにしながら、40代からの「キャリア中盤」の戦い方をお伝えしていきます。
第7回のテーマは「経験を資産に変える方法」です。
目次
はじめに
前回は、セレンディピティはただの幸運ではなく、努力や発信、人とのつながりによって、起きやすい状態を自分で作っていけるものだという話をしました。
キャリアの中盤戦略 Vol.6|計画的セレンディピティの起こし方 | 株式会社シンシア・ハート
そうやって種まきを続けていると、自分の中に「掛け算できる項」が増えていきます。では、その項とは何なのか。僕はそれを、「資源・資本・資産」という3つの段階で捉えるとわかりやすいと考えています。
そこで今回は、「資源・資本・資産」の考え方について整理しながら、自分が持っているものを捉え直し、価値に変えていくための方法を紹介します。
経験を価値に変える3つの段階
はじめに、「資源・資本・資産」という言葉を整理しておきます。
まず、資源(Resource)とは、日々の時間や経験、情報、人とのつながり、感情、熱量のような、まだ価値として整理されていない素材のようなものです。そのままでは、すぐにお金や仕事に変わるわけではありません。
そして、資本(Capital)とは、資源をただ消費して終わらせるのではなく、増やしたり、育てたりできる状態にしたものです。経験を通じて身についたスキルや考え方、体力、人との信頼関係などが、これにあたります。ただし、資本のままでは、使い道が見えないこともあります。
一方で、資産(Asset)とは、それ自体に価値がある状態です。誰かが見たときに「これは欲しい」「これは使える」と判断できる形になっているから、取引ができる。僕は、そういうものを資産だと捉えています。
「資源・資本・資産」を2つの例で考える
「資源・資本・資産」という言葉だけでは、まだイメージしづらい部分もあると思います。ここでは、魚とフリマアプリの例を通して、価値がどのように変わるのかを見ていきます。
魚は、さばき方で価値が変わる
まずは、刺身を食べたいときを想像してみてください。
一番安く買えるのは、おそらく魚を丸ごと買うことです。身はたくさん詰まっているし、量だけを見れば一番お得かもしれません。でも、多くの人は魚をさばきたくありません。だからスーパーでは、刺身用の柵を販売しています。
さらに、柵を切るのも、皿に盛り付けるのも面倒だという人もいますよね。そういった人のために、スーパーでは刺身も販売されています。
多くの場合、グラムあたりの価格は、加工前の魚が一番安く、刺身が一番高くなります。それでも、食べる人は、魚そのものだけでなく、さばかなくていい、切らなくていい、すぐに食べられる状態に価値を感じているから、刺身を買うんです。
つまり、加工前の魚は資源、柵は資本、刺身は資産といえます。この構造って、すごくビジネスらしいですよね。僕はスーパーで刺身を見るたびに、それを実感しています。
ガラクタも、欲しい人に届けば資産になる
もう一つ、フリマアプリの仕組みも面白い例です。
自分の手元にあるガラクタを、「こんなものは1円にもならない」と思って捨てていた人は多いと思います。なんなら、粗大ゴミとしてお金を払って処分していたものもあるはずです。
でも、メルカリのようなプラットフォームができたことで、それを買う人が出てきました。
たとえば、ガラクタでオブジェを作りたい人がいるかもしれない。ドラマや番組のスタッフが、制作のためにガラクタを探しているかもしれない。自分には価値がないように見えても、誰かが見たときには「それ、欲しい」となることがあるわけです。
こうしてみると、ゴミだと思っていたガラクタも、本来は資本になり得るものです。それを欲しい人の目に触れる場所へ出すことで、資産化しているといえます。
資産化に必要な二つの視点
魚やフリマアプリの例から言える重要な視点は二つあります。一つは、資産化の出発点になる「資源」を見落とさないこと。もう一つは、同じ資源でも、捉え方や使い方によって価値が変わるということです。
魚がなければ、刺身は作れない
大前提として、資産化するには元になる素材が必要です。
刺身でいえば、魚があるからこそ、切り出すことも、盛り付けることも、パッケージングすることもできます。どれだけ見せ方を整えても、元になる魚がなければ、刺身は作れません。
これは、人の経験や仕事でも同じです。
最近は、AIを使えば見た目の整ったアウトプットをすぐに作れます。でも、自分の中に経験や考え方、感情、熱量といった資源がないまま、表面だけを整えても、味のない刺身のようなものになってしまいます。見る側、食べる側はそこまで馬鹿ではありません。
だからこそ、まず必要なのは、自分の中にどんな資源があるのかを整理することです。資産化は、パッケージングから始まるのではありません。元になる資源があって初めて、価値に変えていけるんです。
日々の経験は、すべて資源になる
では、その素材はどこにあるのでしょうか。もしかすると「自分には資産化できるものは何もない」と思う人もいるかもしれません。でも僕は、日頃からやっていることは、すべて資源になると考えています。
たとえば、忙しい環境で毎日夜遅くまで働き、社長や上司から厳しく言われながら、なんとか仕事を回している人がいたとします。そんな環境では、「体力的にも精神的にもすり減るだけで、何も得られない」と感じることもあるでしょう。
もちろん、心身を壊すような働き方を肯定したいわけではありません。ただ、「資源・資本・資産」の考え方を持っていれば、その経験を「すり減っただけ」でなく、前向きに捉え直すことができます。
厳しい環境でやり切ってきたなら、体力や胆力がある。無理な要求に対して、なんだかんだ最後は応えてきたなら、臨機応変に考える力がある。夜遅くまでかかっても納期に合わせてきたなら、コミット力があるともいえます。
一般的には美味しくないといわれるような魚も、調理方法を工夫すれば美味しいかもしれないし、ペットフードになるかもしれないし、骨や魚油をサプリメントに加工することもできるかもしれない。
つまり、一見使えないように思える素材でも、捉え方や使い方によっては価値に変わる可能性があります。「まずいから使えない」と決めつけて腐らせてしまうのではなく、自分が持っている資源をどう使えるか、一度考えてみてほしいと思います。
自分の資本を見える化する
自分の資本を資産に変えていくためには、まず、自分が何を持っているのかを把握する必要があります。
資本といっても、種類は山ほどあります。金融資本はわかりやすい例です。ほかにも、スキルや経験は資本になりますし、人的資本や社会関係資本という言葉があるように、自分を手伝ってくれる人がどれくらいいるか、人とどうつながっているかも、自分の資本だと考えられます。
ただ、多くの人は、自分が持っている資本をちゃんと把握できていません。一番測りやすい金融資本でさえ、自分が今どれくらい持っているのかを正確に把握している人は、それほど多くないと思います。預金、保険、株式、家の中にあるものまで含めて、「全部でざっくりこれくらいだな」と言える人は、意外と少ないのではないでしょうか。
投資をするなら、本来はまず手元に何がどれくらいあるのかを見るはずです。いくら投資できるのか、どれくらいのリターンを狙うのかは、そこから考えるものです。
キャリアも同じです。自分が何を持っているのかが見えていない状態では、資本をどう運用するかも、どう資産化するかも決められません。だからこそ、経験を資産に変える第一歩は、自分の資本を見える化することなんです。
資本は、ファクトで語って初めて伝わる
ただ、資本は自分で把握しているだけでは不十分です。相手に伝わる形で語れなければ、価値として届きません。
転職市場では、職務経歴書をもとに、その人の経験やスキルを見ます。ただ、僕は、職務経歴書だけで人の価値をすべて測れるかというと、限界があると思っています。
前職で人事をしていたときにも、経験やスキルだけを見れば、即戦力に見える人はいました。一方で、まだ特別な経験を持っていない新卒入社の人が、圧倒的に人を巻き込む力を持っていて、後輩や友人をどんどん入社させてくるようなこともありました。
一人で戦える経験者と、人を巻き込むことで新しい資源を増やせる人。会社にもたらす価値という意味では、後者の方が大きい場面もあるわけです。
これは、新卒がいいとか、若い方がいいという話ではありません。その人が持っている資本を、もっとちゃんと見た方がいいという話です。
人を巻き込む力だけでなく、学び続ける意欲や、仕事に対するマインドも、その人自身の資本です。40代だから厳しいとか、こういうキャリアだから難しいとか、職務経歴書だけで決めつけるのは違うと思います。
ただし、そういった資本が「自分にはあります」と言うだけでは伝わりません。大事なのは、「自分はこういう状況で、こういうことをやってきた」と事実に基づいて言えるかどうかです。先ほど例に挙げたような、厳しい環境でやってきた人が、「自分はそういう環境でもやってきた体力や胆力がある」と言うからこそ、説得力を持ちます。
そこまで言葉にできれば、単なる自己PRではなく、ファクトであり、エビデンスになります。経験を資産に変えるとは、AIで作ったパッケージのように、きれいな言葉で盛ることではありません。自分がやってきたことの中から資本になりうるものを取り出し、根拠を持って語れる状態にすることなんです。
資産は、必要とする相手に届けて初めて成立する
持っている資源や資本を、資産に変えることができれば、キャリアにおけるチャンスは広がります。レバレッジを効かせることもできると思っています。
ただし、資産化は、相手がいて初めて成立します。自分のスキルや経験を欲しがっていない企業に打ち出しても意味はありません。
逆にいえば、自分の武器や経験を、必要としている企業に向けて打ち出せれば、今以上の年収を提示してもらえる可能性もあります。
今は、みんなと同じようにできることだけが評価される時代ではありません。ニーズが多様化している時代だからこそ、ニッチな価値でも、必要としている人に届けば価値になります。誰かが熱烈に欲しがるものなら、お金を払う人はいるんです。
だからこそ、自分が持っている資本を、「経営者と対峙してもぶれない」「厳しい状況でも納期に向き合える」「人を巻き込んで前に進められる」といった看板に変えられるかを考えてみましょう。その看板を見て「そういう人を求めていました!」と言ってもらえる場面は絶対にあるはずです。
おわりに
今回は、自分の経験を資産に変える方法について書いてきました。
日々の時間や経験、感情、熱量は、まず資源になります。それをただ消費して終わらせるのではなく、増やしたり、育てたりできる状態にすれば資本になる。そして、その資本を必要としている相手に届く形にできれば、資産に変わっていきます。
大事なのは、自分の中にある資源や資本を、そのまま埋もれさせないことです。
苦しかった経験も、悔しかったことも、人とのつながりも資本になります。さらに捉え方や使い方次第で、資産化できるものはたくさんあるはずです。
何も持っていないなんてことはありません。まずは、自分が持っている資本は何なのか。そして、それをどう資産化できるのか。そこから考えてみてほしいと思います。
これからのキャリアを考える方へ
40代、50代になると、今の延長線上を進むべきなのか、これまでの経験を別の形で活かすべきなのか、自分一人では判断しづらい場面が増えてきます。
シンシア・ハートでは、ミドル・ハイレイヤーの方を中心に、これまでの経験や強みを整理しながら、次のキャリアの選択肢を一緒に考えています。
転職を前提にしている必要はありません。「今のままでいいのか」「自分にはほかにどんな選択肢があるのか」「この記事の話を、自分の場合はどう考えればいいのか」。そうしたことを一度整理したい方は、ぜひご相談ください。
株式会社シンシア・ハート | キャリア相談のご提案
シンシア・ハートに関心を持ってくださった方へ
当社では、一緒に事業をつくっていくメンバーも募集しています。
役員候補をはじめ、bizdev、pdm、営業、キャリアアドバイザーなど多数のポジションがあり、副業やフルリモート、業務委託といった関わり方も可能です。
Wantedlyに掲載しているポジション以外にも、一緒に取り組みたい仕事はあります。僕たちが目指している事業や考え方に共感してくださる方は、ぜひWantedlyまたはXからご連絡ください。