こんにちは。株式会社シンシア・ハート代表取締役の堀内猛志(takenoko1220)です。
僕は前職で、50名から4000名まで成長した企業の人事役員を務め、節目ごとに生まれる“人”と“組織”の課題に向き合ってきました。
現在は、成長企業向けの戦略人事コンサルティングと、ミドル・ハイレイヤーに特化した人材紹介に取り組んでいます。
このシリーズでは、僕の経験をもとにしながら、40代からの「キャリア中盤」の戦い方をお伝えしていきます。
第6回のテーマは「計画的セレンディピティの起こし方」です。
目次
はじめに
前回は、40代から開発職を目指すためには、これまで積み上げてきた経験を「足し算」で終わらせるのではなく、「掛け算」に変えていくことが大事だという話をしました。

キャリアの中盤戦略 Vol.5|あらゆる職種から「開発職」を目指す方法|キャリア・クラフティングのススメ -『人事組織で悩む経営者』と『キャリアで悩む個人』の間の人-
営業、事業企画、人事。一見バラバラに見える経験も、自分なりの方程式として捉え直せば、別の領域に持ち込むことができます。そして、その掛け合わせは、ときに思いがけないチャンスにつながります。いわゆる、セレンディピティ(=幸せな偶然)です。
そこで今回は、キャリアにおけるセレンディピティを、自分で起こすための方法について書いていきたいと思います。
幸せな偶然は、本当に偶然なのか
まず、セレンディピティ(Serendipity)とは、思いがけない偶然をきっかけに、価値ある発見や出会いが生まれることを指します。
僕がセレンディピティという言葉を知ったのは、大学生のときでした。まさに『セレンディピティ』というタイトルの映画を見たことがきっかけです。
当時の僕は、セレンディピティを単に「ラッキーなもの」だと捉えていました。日本的な考えでいえば、日頃からいい行いをしていれば徳が積まれて、回り回っていいことが起こる、くらいの感覚です。
ただ、何をどれだけすれば、どんな偶然が起きるのかは、論理的に説明できません。だから、「ラッキーって、どうすれば起こせるんだろう」と思っていました。
でも、自分自身が40代になり、社会人経験や人生経験が増えてくる中で、セレンディピティは計画的に起こせるのではないか、と考えるようになりました。その鍵になるのが、「自分の考えや行動を発信し、気づいてもらう」ということです。
努力を見つけてもらえる形に
前提として必要なのは、努力量です。ある分野で一流になるには、約1万時間の学習や実践が必要だという「1万時間の法則」があります。もちろん、すべてがその通りにいくわけではありませんが、何かしらの努力や学習を積み重ねることは、セレンディピティを起こすうえでも土台になります。
ただし、それをやっているだけでは、「実はあなた、こんな知識や経験を持っているんですね」なんて気づいてもらえるはずがありません。だからこそ、noteでも、YouTubeでも、SNSでも、何らかの形で発信し、計画的に気づいてもらう努力を続ける必要があります。
SNS発信が好きではないという人もいるでしょう。でも、この時代において、自分が何をしているのかを発信し続けないと、いないも同然になってしまいます。その感覚は、持っておいた方がいいと思います。
タイパを気にしていては、セレンディピティは起きない
もうひとつ重要なのは、努力→発信→セレンディピティの過程を短期的に考えないことです。最近は、若者を中心に「タイパ」という考え方が広がり、目の前の報酬が分かりづらいことをやらない人たちが増えていると感じます。
たとえば、MBAのような学びもそうです。僕は、コロナ禍を機に37歳で早稲田大学ビジネススクールへ入学し、MBAを取得しましたが、タイパ重視の人からすると、「MBA取って何になるんですか?」と言われるだろうと思います。かけた労力を、早くリターンとして回収したいというのがタイパ的な考え方だからです。
確かに、MBAを取得したからといって、確実に転職が有利になるとか、事業が成長するとか、そういうメリットが確約されているわけではありません。でも、どこで返ってくるかわからないところに突っ込むからこそ、セレンディピティが生まれると僕は考えています。
もう一つ、別の例を挙げます。A地点からB地点まで行くとして、タイパ重視の人は、速く移動できる電車やタクシーを選ぶでしょう。でも、一番遅い方法を選んで歩いてみたら、その道中で何かに気づいたり、季節を感じたりすることもあるはずです。そういう時間の豊かさは、タイパの考え方からすると真逆なんですよね。
もちろん、効率的に考えることが悪だと言いたいのではありません。しかし、タイパばかりを気にしていては、セレンディピティは起きません。何かしら努力をし、何かしらを発信し、といった積み重ねを、一概に「タイパが悪い」と切り捨てないでほしいと思います。
幸せな偶然の仕込み方
ここからは、僕自身が実際に経験してきたセレンディピティと、そこに至るまでに何をしてきたのかをお話しします。
たくさんの人に会い、つながる
僕は、前職で人事の責任者を務めていた2015年くらいから、できる限り社外の人と会うことを心がけていました。ビジネスマッチングアプリなどのいろいろなツールを使いながら、毎月、会ったことのない経営者20人に会うことを目標にしていた時期もあります。
その中で出会った方々は、優秀な人ばかりでした。もしそんな人が自社の採用につながれば、タイパやコスパで見てもむちゃくちゃいい結果になります。ただ、そんなことはなかなか起こりません。経営者が自社の経営をやめることなんてまあ考えられないし、優秀な人は現職で活躍しているので、すぐに辞めるほどの不満もないからです。
そのため、僕が人と会うためにかけた時間やお金は、短期的に見れば無駄だともいえます。それでも僕は、長期的に考えていました。会った相手とは必ずFacebookで友達になり、つながりが途切れないようにしていたんです。マーケティング用語でいうと、「ナーチャリング」に近い感覚かもしれません。
SNSで発信し続ける
ご存じかもしれませんが、僕は、SNSで定期的に情報を発信し続けています。このnoteもその一つです。そのため、「堀内とはどんな人なのか」「何を考えているのか」については、いつでも見に来てもらえる状態になっています。
ここで生きるのが、Facebookでのつながりです。ゆるくても継続的につながっていれば、発信した内容を見てもらえる確率は上がります。実際に僕の元には、何かしらの発信を読んだ方からの人事や転職に関する相談が数多く寄せられており、「こういう飲み会あるけど来ない?」といったお誘いも定期的に届きます。
この部分だけを切り取ると、単に「お友達多いですね」「人脈が広いですね」という話に見えるかもしれません。もちろん、僕の役職や仕事柄、多くの人と会うのは事実です。
それでも、相談やお誘いの元になっているのは、コスパやタイパがいいかどうかわからない出会いに、できる限り顔を出し続けてきたこと、そして、その人たちに対して、SNSやnoteで発信し続けてきたことだと、僕は考えています。
誕生日に欠かさずメッセージを送る
もう一つ、Facebookで友達になっている人に対して、欠かさずに行っていることがあります。それは、誕生日にお祝いのメッセージを送ることです。
内容は「●●さん、おめでとうございます!最近は元気にしてますか?」といったシンプルなものですし、全員に送れているかというと実際はそうではありません。
返事もいろいろです。関係性が遠い人はスタンプ1つだったり、返ってこなかったりすることもあります。返事をしてくれたとしても、僕のことを覚えていない人もいると思います。
それでも、中には「この人、誰だったかな?」と思ってくれる人も、おそらくいるんですよね。メッセージをきっかけに、過去のやり取りや僕のFacebookのフィードを見て「あ!思い出した!」となり、そこからやり取りが生まれることもあります。
発信したことや、メッセージを送ったことに対して、すぐにリターンが返ってくるとは限りません。それでも、そういうことを続けていると、思いがけないところから良き縁がやってくることがあります。そして時には、「すっげえいい話来た!」みたいなことも起きるわけです。それこそ、まさにセレンディピティ、幸せな偶然なのだと、僕は思っています。
誰もがやっているセレンディピティの“種まき”
ここまで僕が書いてきたような、努力をすることや、人とのつながりを作ることは、実は学生時代までは多くの人がやっています。
たとえば、職業に直結するわけではないのに学校の勉強を頑張ったり、プロを目指しているわけではないのに部活動に打ち込んだり。友達付き合いもそうかもしれません。
皆さんは、リターンやメリットを考えながら、これらのことをやっていたでしょうか?きっと、そうではないと思います。単純に、気づいたらやっていたとか、ずっと続けていたとか、そんな感じではないでしょうか。
そして、その中で得たつながりが、今になって生きてくることもあります。10年ぶりに連絡をくれて、「実はお願いしたいことがあるんだよね」と言われるようなケースです。
なぜ10年も経って、わざわざ古い友人に依頼するのかといえば、それは「学生時代からいいやつだった」「努力できる人だった」といった記憶が、信用に結びついているから。つまり、10年前に作った関係性という種まきが、あとから効いているんです。
セレンディピティはストックモデルである
ところが、社会人になると、無意識にやっていた“種まき”をやらなくなってしまいます。強制的に学ばなければならない場もないし、サークルや部活動を頑張らなければならない理由もないからです。気づけば家と職場の往復だけ、趣味もなければ新しい人との交流もしていないという人は、多いのではないでしょうか。
特に最近は、若い人だけでなく、40代以降でも「そんなのやる意味あるんですか?」と、省エネで生きている人が多いように感じます。でも、今は人生100年時代です。40歳前後で「もう人生折り返しだし」と考えているなら、その認識は一度見直した方がいいと思います。
セレンディピティを起こすための努力は、ストックモデルです。若いうちから努力している人ほど、それを見てくれている人が増えますし、信用も積み上がります。未経験でもチャレンジさせてもらえるような、若さという切符もあります。
もちろん、50代、60代から努力するのが無駄だと言いたいわけではありません。ただ、若い頃から積み上げてきたストックと比べると、そこから得られる複利は小さくなります。
だからこそ僕は、今、家と職場の往復だけになっている人たちには、新しいコミュニティに行く、新しい趣味を作る、新しい仕事や学びに触れる、副業をやってみる。そういう“種まき”をもっとしてほしいと、声を大にして言いたいです。
チャンスは努力とアピールの先に来る
計画的にセレンディピティを起こすためのプロセスは、開発職という仕事を目指すための方法にもつながります。
Vol.3で紹介した4つのレイヤーになぞらえていえば、単に言われたことだけをこなしているうちは、なかなか上のレイヤーに上がるチャンスは来ません。

キャリアの中盤戦略 Vol.3|4つのレイヤーで捉える自分の現在地|キャリア・クラフティングのススメ -『人事組織で悩む経営者』と『キャリアで悩む個人』の間の人-
たとえば、支援層の仕事をしている人がいたとします。支援の仕事をしながら量をこなし、その中で自分なりに得たものをまとめてみる。そして、「こういうことを考えたんですけど、これどうですかね」と社内や上司に出してみる。
そうすると、「この人はただ作業をしているだけではなく、ちゃんと考えているな」と見てもらえるわけです。そこから、「もっとフロントに出した方がいいんじゃないか」「推進のレイヤーでやらせてみるか」といった話につながることがあります。
推進層でも同じです。ただ目の前の目標に向かって走るだけではなく、自分なりに戦略やオペレーションを考えてみる。それを周りに共有していく。
そうすると、「この人が考える戦略は面白いな」とか、「企画や戦略側に置いてみてもいいかもしれない」と思ってもらえることがあります。
こうした行動は、「やれば昇格できる」「行きたい部署に異動できる」という確約に基づくものではありません。ここが、タイパ的な考え方とは合わないところです。それでも、自分なりに考えて、動いて、周りに見える形で出せるかどうか。そこに、次のチャンスが来るかどうかの分かれ目があると思います。
掛け算の項を増やす
ここで、前回の記事で書いた「足し算」と「掛け算」の話に戻ります。

キャリアの中盤戦略 Vol.5|あらゆる職種から「開発職」を目指す方法|キャリア・クラフティングのススメ -『人事組織で悩む経営者』と『キャリアで悩む個人』の間の人-
20代はとにかく経験量を増やす「足し算」の時期、30代以降、特に40代からは、これまで積み上げてきたものによる「掛け算」の時期です。これはつまり、自分の経験を方程式にして、キャリアにレバレッジを効かせていくということなんです。
そして、今回書いてきた計画的セレンディピティの話は、レバレッジに直結しています。努力する。人とつながる。発信する。そういうことを続けていると、自分の中に掛け算できる項が増えていきます。
項が増えれば、得られるレバレッジは格段に大きくなります。本記事で一貫してお伝えしてきたように、学びも、人とのつながりも、発信も、すぐに何かに変わるとは限りません。でも、それぞれが後から別の経験と掛け合わさることで、思わぬチャンスにつながることはあるはずです。
おわりに
今回は、計画的セレンディピティの起こし方についてお伝えしました。
セレンディピティというと、どうしても「たまたま良い出会いがあった」「運よくチャンスが来た」という話に見えます。もちろん、偶然の要素はあります。ただ、僕はそれを完全なラッキーだとは思っていません。
コスパやタイパだけで片付けず、地道に努力をする。自分の考えや行動を発信する。人と会い、ゆるくつながり続ける。すぐに何か返ってくるかわからなくても、そういう種まきを続けている人のところに、結果としてチャンスが来るのだと思います。
はたから見ている人は、時に「あいつ、うまいことやったな」「絶対俺の方ができるのに」と思うかもしれません。でも僕からすると、チャンスを掴む人は、チャンスを掴むなりのことをやっています。つまり、セレンディピティはただ待つものではありません。起きやすい状態を、自分で作っていくものです。
そして、そうした努力や発信、人とのつながりは、自分の中に掛け算できる項を増やしてくれます。その項が増えるほど、キャリアに効くレバレッジも大きくなっていきます。
次回は、この「掛け算の項」をもう少し具体的に捉えるために、「資源・資本・資産」の考え方と、その具体例について書いていきたいと思います。
これからのキャリアを考える方へ
40代、50代になると、今の延長線上を進むべきなのか、これまでの経験を別の形で活かすべきなのか、自分一人では判断しづらい場面が増えてきます。
シンシア・ハートでは、ミドル・ハイレイヤーの方を中心に、これまでの経験や強みを整理しながら、次のキャリアの選択肢を一緒に考えています。
転職を前提にしている必要はありません。「今のままでいいのか」「自分にはほかにどんな選択肢があるのか」「この記事の話を、自分の場合はどう考えればいいのか」。そうしたことを一度整理したい方は、ぜひご相談ください。
株式会社シンシア・ハート | キャリア相談のご提案
シンシア・ハートに関心を持ってくださった方へ
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