こんにちは。株式会社シンシア・ハート代表取締役の堀内猛志(takenoko1220)です。
僕は前職で、50名から4000名まで成長した企業の人事役員を務め、節目ごとに生まれる“人”と“組織”の課題に向き合ってきました。
現在は、成長企業向けの戦略人事コンサルティングと、ミドル・ハイレイヤーに特化した人材紹介に取り組んでいます。
このシリーズでは、僕の経験をもとにしながら、40代からの「キャリア中盤」の戦い方をお伝えしていきます。
第2回のテーマは「40〜50代が目指すべき“開発職”の正体」です。
目次
はじめに
開発職の4つの型
市場開発
事業開発
組織開発
技術開発
「開発職」とは「役割」である
おわりに
はじめに
前回は、40〜50代のキャリアにおいて、管理職一択ではなく「開発職」を目指す選択肢が重要になってくる、という話をしました。
では、その「開発職」とは具体的にどんな仕事なのでしょうか。今回は、この言葉の定義を整理しながら、どんな役割を担う人を「開発職」と呼ぶのかをお伝えしていきたいと思います。
開発職の4つの型
「開発職」を端的に表すならば、「創造する役割」です。つまり、ゼロイチで価値を生み出す人たちのことをいいます。
そして「開発職」は、何を創造するかに応じて4つに分かれます。「市場開発」「事業開発」「組織開発」「技術開発」です。ここからは、それぞれの役割について詳しく解説していきます。
市場開発
市場開発とは、その名のとおり、新しいマーケットを切り拓く仕事です。具体的には、エンタープライズセールス、海外展開、アライアンスなどがこれにあたります。こうした役割が必要とされるようになった背景にあるのは、製品やサービスのコモディティ化です。
かつて、車や家電などの製品は「まだ持っていない人に届ける」だけで大きな価値がありました。「ALWAYS 三丁目の夕日」の時代を思い浮かべるとイメージしやすいかもしれません。この頃は、全員が同じようなニーズを持つ、大きなマーケットが存在していました。
しかし、製品が広く普及するにつれて、機能性やデザイン性が問われるようになります。車も、ただ走ればいい時代から、より低燃費で、安全性が高く、乗るだけで気分が上がるようなものが求められる時代へと変わりました。
さらに、何に魅力を感じるかは人によって異なります。服も食事も、どんなものを素敵だと思い、どんなものをおいしいと感じるかは、人それぞれですよね。人々のニーズがどんどん細分化されていくにつれて、製品やサービスも多様化していきました。
しかし、そうして生まれた差別化も、やがて他社が追いつくことで、優位性を保ち続けることが難しくなります。こうした中で注目されているのが、新たな市場そのものを創り出し、競合の少ない領域で勝負する「カテゴリー戦略」です。
たとえば、日本では伸びにくい商材でも、海外では可能性があるかもしれない。中小企業向けでは伸びしろに限界があっても、大手企業向けに提案先を広げることで新たな市場が見えるかもしれない。あるいは、他社との連携によって新しい価値を生み出せることもあります。
このように、既存市場の中でシェアを奪い合うことではなく、新たな切り口からカテゴリーそのものを立ち上げ、まだ十分に開拓されていない市場を形にしていくことこそ、市場開発の役割なのです。
事業開発
事業開発とは、自社にとってまだ存在していない事業を立ち上げ、ゼロから売上をつくっていく役割です。世の中にまだないビジネスを生み出す場合もあれば、世の中にはすでに存在していても、その会社の中ではまだ手がけていない事業を形にする場合もあります。新規事業立ち上げ、BizDev、PdMなどがその例です。
事業開発は、既存の仕組みを応用して商品やサービスの見せ方を変える仕事とは異なります。たとえば、総合型の人材紹介から医療特化型の人材紹介サービスへシフトする場合、提供先は変わっても、基本的なスキーム自体は大きく変わりませんよね。これは事業開発というより、「商品開発」や「サービス開発」の領域です。
また、事業開発は「事業企画」とも異なります。構想を描いたり、戦略を立てたりと、コンサル的な動きをできる人は世の中にたくさんいます。しかし、事業開発において求められるのは、そうした計画を現実の中で前に進める推進力です。単に「こういうサービスがあったらいいですよね」「新事業の売上予想を立ててみました」といったレベルにとどまらず、実際に顧客のもとへ出向き、話を聞けるかどうか。これが大切になってきます。
新規事業を形にしてきた経営者の多くは、この試行回数が半端ではありません。ミドリムシを活用した事業で知られる株式会社ユーグレナの創業者である出雲充氏は、事業を立ち上げる初期段階で、1日平均3社、2年間で約500社に営業をかけたそうです。
ところが、まだ世の中にない製品やサービスは、奇怪なものとして受け取られてしまうことも往々にしてあります。実際に、出雲氏も多くの企業に提案したにもかかわらず、買ってくれる会社は0で、売上も2年間0円だったと語っています。
多くの人は、数社回って反応が得られなかっただけで「ニーズがない」と判断してしまいます。そうではなく、相手の反応に応じて修正しながら、諦めずに提案を続けることが成果につながります。単に企画するだけでなく、事業として成立させるためにここまでやるのが、事業開発という仕事なのです。
組織開発
組織開発とは、組織変革、人材開発、制度開発などを通じて、組織そのものの勝ち方をつくり直していく役割です。
これまでの日本企業では、人材育成といえば、現場で成果を出した人がそのまま管理職になる形が一般的でした。いわば、「名プレイヤー=名監督」という発想です。日本のプロスポーツでも、こうした人選は多く見られますよね。
一方で、海外では監督というスキルをしっかりと身につけた人が監督になることが一般的です。たとえば、サッカーの現ドイツ代表監督であるユリアン・ナーゲルスマン氏は、一度もプロのピッチに立つことなく、20歳で現役を引退した人物です。しかし、彼は大学で経営学とスポーツ科学を学んだ後、欧州サッカー連盟(UEFA)の指導者ライセンスを最高成績で取得し、28歳という史上最年少でブンデスリーガの監督に就任しました。
僕は、プレイヤーと監督とは、普通免許と大型免許くらい違うものだと思っています。だからこそ、これからの組織開発にあたっては、単に優秀な人を昇格させるようなテンプレート化した人材配置ではなく、人をどう育てるか、どんな基準で評価するか、どんな役割分担にするかといったことを、意図を持って設計しなければなりません。
たとえば、営業組織も、かつては一人の営業担当がすべてを担う形が一般的でした。しかし今では、マーケティング、インサイドセールス、ダイレクトセールス、カスタマーサクセスといった形での分業が広がっています。これはアメリカ企業のセールスフォースが始めた仕組みで、組織のフォーメーションデザインをゼロから作った例です。
その意味で、これからの人事や組織づくりに求められるものも変わってきます。従来のように「人に興味がある」「人のことがよくわかる」だけでは足りません。組織開発を担う人は、事業がどこへ向かおうとしているのか、そのためにどんな人材が必要で、どんな組織であるべきかを理解したうえで、育成の仕組みをつくり、制度を設計し、必要に応じて新しいチームの形まで考える必要があります。
技術開発
技術開発とは、新しい技術を生み出し、それを価値として実装していく役割です。4つの開発職の中でも、もっとも「開発」という言葉が似合う分野だと思います。
ただし、昔のように、優れた技術を開発すればそれで終わり、という時代ではなくなっています。特に、AIのような新しい技術が次々と生まれる中では、それをどう使うか、どう事業に組み込むかまで含めて考える視点が欠かせません。
また、これからの時代は、単にコードを書き、技術を開発するだけでなく、それを推進する側に回ることも求められます。具体的には、その技術を実際に現場で使われるものにできるか、ビジネスと連動させられるか、最終的に売上や顧客価値につなげられるかまで考えることが、技術開発を担う人には必要です。
「開発職」とは「役割」である
ここまで、市場開発・事業開発・組織開発・技術開発という4つの型を見てきました。ただ、ここで一つ確認しておきたいのは、僕のいう「開発職」とは、あくまで「役割」であって、必ずしも「職種名」と一致するわけではないということです。
たとえば、人材開発という職種に就いている人が、24時間365日ずっと新しいことだけをしているわけではありません。決まった制度を運用したり、既存の研修を毎年実施したりする仕事もあるでしょう。それはそれで、組織を支える大切な役割です。事業開発という職種に就いている人もまた、ゼロイチの新規事業開発だけをしているとは限りません。
逆に、求人票に記載する職種名には明確なルールがないので、組織開発や人材開発と書かれていても、実態としては既存の研修を回しているだけというケースや、事業開発と書かれていても、仕事内容の大半は営業というケースもあります。
つまり、重要なのは職種名や肩書きではないのです。自分の業務の中に、「新しい価値を生み出す仕事」がどれくらい含まれているのか。その割合を見極めることが大切になります。
また、転職すれば、異動すれば、昇進すれば、急に創造的な仕事だけができるようになるわけでもありません。むしろ、今いる場所の中で、自分の仕事に占める「創造」の割合をどう増やしていくかが勝負です。
これは個人にとっても大事な視点ですが、同時に会社側にとっても重要です。社員一人ひとりに対して、どれだけ開発的な役割を用意し、それをデザインできるかどうかで、組織の成長も大きく変わってきます。
おわりに
開発職とは、市場、事業、組織、技術といったさまざまな領域で、新しい価値を生み出し、それを前に進めていく役割のことです。キャリア中盤において大切なのは、自分がどんな名前の仕事に就いているかではなく、自分の業務の中にある「創造」の割合をどう増やしていくかを考えることだと思います。
次回は、管理職と開発職の違いを比較しながら、仕事を「支援」「推進」「戦略」「創造」の4つのレイヤーで捉える考え方を整理していきます。自分がいまどこにいて、どこを目指すべきか。キャリア中盤の現在地と進むべき方向を、より具体的に考えていきましょう。