こんにちは、unname代表取締役の宮脇啓輔です。
ポストコロナ時代が訪れ日本企業各社が出社回帰しているのは、対面のコミュニケーションを重視し、生産性を高めようと取り組んでいます。それは、「コミュニケーション力を高めることは生産性を高めることに直結する」と確信しているからではないでしょうか。
結論から簡潔に話す、いわゆる「結論ファースト」と言われる話し方は、ビジネスの現場でこれまで散々言われてきていたと思います。しかし実際には、意外とできていない人が多い印象があります。
構文を意識して最初に「結論は・・」と言っておきながら、結論を言わずにだらだら説明する人も少なくありません。
また、「ちょっといいですか?」と雑に話し始める人もいます。これは、相談なのか報告なのか、すぐ終わるのか長くかかるのかもわからない。聞いている側が我慢できずに「これは相談ですか?それとも報告?」と尋ねることも少なくありません。
「結論ファースト」なんて、ビジネスパーソンならみんな飽きるほど耳にしているはずなのに、なぜできない人が多いのか?
その理由について考えてみた結果、行き着いたのは「結論から簡潔に話さなければならない深い理由を、理解できていないから」ということでした。
ということで今回は、「ビジネスパーソンが結論から簡潔に話すべき理由と、話かけられる側の心境についても解説していきたいと思います。
結論から話せないことは機会損失
「結論から簡潔に話そう」と言われる基本的な理由として、「相手の知りたい結論を先に伝えた方がわかりやすい」「時間短縮につながる」の2つがよく挙げられます。しかしこれらは、結論から話すべき浅い理由であり、結論から話すべき深い理由は他にあると考えています。
まず深い理由の一つ目が、「結論から簡潔に話せない人は、仕事ができない人と思われる」ことです。
話が長くて結論が見えない人は、そもそも自分の考えがまとまっていない状態で話し始めてしまっています。あるいは、相手の時間を奪っているという自覚がないと思われます。
その結果、「この人は頭の整理ができていない」「要約して簡潔に話す能力がない」と評価されてしまいます。そう思われると社内での評価がジリジリと下がっていき、それが積もった先には「大きなプロジェクトに呼べない」「大事なクライアントとの会食には出せない」と判断されかねません。
つまり、本人にとっても大きな機会損失になります。また、「機会損失」は将来得られる可能性があった機会を失うだけなので、なかなか自覚することも難しいのです。
簡潔じゃないコミュニケーションを指摘してくれる職場の方が、実は優しいのかもしれない
私も「結局、これは何の話なんだろうか?」と思いながら人の話を聞いた経験は何度も何度もあります。その相手が部下や親しい間柄であれば「もっと話を整理してから話して」と注意しますが、社外の人や、まだ関係が浅い人だった場合には、さすがにそこまでストレートに伝えることもできません。
なので、実は注意されていないだけで相手に「この人は仕事できなさそうだな」と思われているかもしれないと、危機感を持った方が良いと思っています。
部下は上司の脳を疲れさせてはいけない
そしてもう一つ、より重要で本質的な「結論から簡潔に話すべき」理由があります。それは、「聞く側の脳を疲れさせないため」です。
では、なぜビジネスシーンでは、特に聞く側の脳を疲れさせてはならないのか?
それは、「報連相」がその構造上、部下から上司に報告する形になることがほとんどだからです。そのため、上司が情報を聞く立場になります。
意外に思われるかもしれないですが、会話においては、話す側よりも聞く側の方が頭を使います。話す側は、自分の脳内にある情報を出していけばいい。しかし、聞く側は未知の情報を受け取って、それを理解し、構造化して、最終的には判断したり回答したりしなければなりません。聞く側の方が圧倒的に脳を使うのです。まずは、このことを理解しておかなければなりません。
聞く側は、「話を聞く」「構造化」「不明点の洗い出し」を同時に行なっている
特に聞く側が社長や役員クラスであれば、脳のリソースの単価も圧倒的に違います。そのため、部下がダラダラと話すことで時間を浪費するだけでなく、その脳内リソースを奪ってしまうことになる。そうなるとその上司がその日に行うべき重要な意思決定の精度まで落とすことになります。
そういったリスクとデメリットがあるから、話す側は「結論から簡潔に」伝えなければならないのです。
相手が社長や役員ではなかったとしても、基本的に上司の方が部下より重要な意思決定を必要とする仕事をしています。つまり、意思決定を担う立場の人に無駄なエネルギーを使わせてしまうのは、組織としての損失にほかなりません。
これが組織内のあちこちで同時多発的に起きているとしたら、会社の生産性にどれだけ影響するか。考えるだけでとんでもなく恐ろしい話です。
(上司が有能であれば)その上司のパフォーマンス最大化を追求できる組織が強い
いやいや、とはいえ、「自分の生産性が高ければ、自分の給料が上がりそうでいいじゃん」と思うかもしれませんが、それも間違っているのです。
基本的に会社の業績は、社員の給与にも直結しています。そのため、より重要で大勢の人を動かせる仕事をしている上司のパフォーマンスを最大化させた方が、会社の業績も上がるので、結果的に社員の給与アップにもつながります。なので、いかに上司にコアな業務に集中してもらえる環境を作るかが重要なのです。
その意味でも「結論から簡潔に話す」ことは、上司の雑務を巻き取り、業務効率を上げるのと同程度の効果があると言っても過言ではないでしょう。だからこそ、部下は「結論から簡潔に話す」ことの必要性を、しっかり理解しておく必要があると考えています。
上司や経営者の立場から言わせてもらうと、やはり我々の仕事は思考の質を問われる仕事がメインとなります。だから、夜の20時を回る頃には、脳の疲労は限界に達しています。よく「30歳を超えると体力が落ちて長時間労働ができなくなる」と言われますが、個人的には体力だけの問題とは思っていません。
年や経験を重ねて重要な役職に就くことで、仕事の質が上がり、思考の回数と負荷が圧倒的に増えます。脳死状態でできる作業がどんどん減る代わりに、重要な意思決定のために脳をフル回転させているからこそ、疲れるのだと思っています。
私自身、20代の頃は深夜まで仕事をしていましたが、会社の経営に関わる判断をするようになってから、とても深夜まで働けなくなりました。それくらい、思考の質を問われる判断をし続けているのです。
そんな負荷のかかる仕事をしている時に、何が言いたいかわからない、だらだらした報告を受けると、時間的にも精神的にかなりキツいのです。だから、話す側の人に対して「結論から言ってくれよ」と思ってしまうし、時には「もう少し整理してからにしてください」と頼むこともあります。これは、上司・部下に限った話ではありません。営業先、パートナー、取引先、全てに通じる話です。
話がまとまっていない人に関わると打ち合わせの時間も伸びるし、聞いている側は疲れてしまう。「結論から簡潔に話す」ができない人は、その人と関わるあらゆる人に悪影響を及ぼしてしまうということを、自覚しなければなりません。
不寛容な環境が人を育てる
では、どうすれば「結論から簡潔に話す」ができるようになるのでしょうか?その答えの一つは「圧をかけられること」だと思います。
自分が若手の頃は「話長いんだけど?」とよく言われました。
それくらい圧をかけられると、結論を話すべき深い理由を理解していなくても、話し方が矯正されるので、それはそれで良かったのかもと思ったりもします。
私が新卒で入社して3年間所属していたサイバーエージェントには、仕事ができて、とにかく忙しい先輩・上司が大勢いました。迂闊に話しかけて、「話が長い」「で、結論は?」「何言ってるかわからない」と何度言われたことか。中には「俺の時間をなんだと思っているのか」と激怒する人もいました。
忙しすぎて話を全然聞いてもらえないから、なんとか聞いてもらうためにこちらも必死になる。だから、上司に話しかける際には、結論から簡潔に話せるよう事前に準備とシミュレーションをする癖がつきました。
実際、結論から簡潔に話せるようになるには、かなりトレーニングが必要です。私の場合は、サイバーエージェントの上司や先輩から、強制的に話し方のトレーニングをさせられていたようなもの。
ちょっとした会話は、簡潔に構造化し、脳内でシミュレーションした上で、想定質問も用意しておきましょう。いわば「出来レース」状態にしておくのです。そうすれば、上司との会話も必要最低限で終わらせることができます。職場環境が「ダラダラとした報告」に不寛容であればあるほど、会話術は磨かれていくのです。
これを繰り返し繰り返しやってきた人だけが、簡潔なコミュニケーション力を手に入れる
しかし現代では、そんな不寛容さは「パワハラだ!」と言われかねません。だから、部下や後輩の本来指摘するべき仕事っぷりに対して寛容な上司や先輩が増えました。しかし、ダラダラとした報告にも「いいよ、いいよ」と話を聞いてもらえる環境で、「結論から簡潔に話す」を身につけるのは、かなりのメタ認知力と努力を必要とします。指摘してもらえないと、自分がどれくらい簡潔じゃないか気づくことさえ難しいのです。
寛容さが求められる時代に、「ダラダラ長いと話を聞かない」「結論から話さないと怒る」といった不寛容な対応をするのはかなり難しいことです。しかし、寛容すぎるが故に、相手の貴重な時間や脳内リソースを奪っていることにも気付かずにダラダラと話し続けてしまうことは、聞く側・話す側双方にとって何も良いことがありません。
先日も社内報告会の場で、資料に書いてあることをただ読み上げるだけの人がいました。残念なことに、相手の脳内リソースと時間を消費しているという自覚がないのだと思います。
だからこそ、私は部下や後輩に対して「忙しい人の脳のリソースを奪うな」と言い続けています。上司が「忙しい俺の時間を無駄にするな」と覇気を出したり、時には「話をまとめてから来い!」とキレて見せたりすることも、部下の成長の手段としては有効なのかもと思っています。不寛容さに寛容な職場というものは、自分で成長しないといけないこの時代には、ありがたい存在なのかもしれません。
さらに言うと、上司や部下が寛容でいられるのは、その職場が「パツっていない」からだと思います。先日「パツって暇な顔をしろ」にも書きましたが、人は余裕がなくなって初めて、本気で効率化を求めるようになります。
駅まで徒歩10分かかるのに7分前に家を出てしまったら、最短ルートを考え、できるだけ信号のない道を選ぼうとするはずです。
それと同じで、余裕のなさや焦り、プレッシャーなどが、効率的な方法を考えたり、その人の能力を覚醒させたりします。クライアントワークメインのコンサルティング会社の若手が急成長するのも、忙しすぎたり、社内の上司やクライアントからプレッシャーを浴びるので、覚醒せざるを得ないからです。
話す側は、追い込まれた状態を認識し、ようやく結論から簡潔に話すことを本気で考え始めることができるのです。自分の能力を覚醒させるためにも、“パツった状態”は必要なのだと思います。
結論から簡潔に話すための3つのスキル
結論から簡潔に話せるようになるためには、3つのスキルが必要です。
①結論を一言で伝えるための要約力
②相手の知りたい情報を取捨選択するための想像力
③適切な順番でわかりやすく話すための構造化力
このステップで会話を結論から整理し、簡潔に仕上げていく
とはいえ、これらを習得するはかなりハードルの高いことなので、最初からできるようになるのは難しいでしょう。
①要約力を磨くには、「結論〜〜」「一言で言うと〜〜」を口癖にし、上司に当てることが重要です。その際に結論になっていなかったり、一言で言えてなければ、何度も反復したり、テキストで落ちついて書き直すといいでしょう。
相手が知りたい情報の取捨選択はかなり難しいです。なので、②想像力を磨くために最初のうちは、、上司に直接「この報告では何を知りたいですか?」と聞けばいいと思います。
また、報告をした際に「なんで?」「ここはどうなっているの?」と尋ねられたら、話した後で「なぜこの情報が必要だったのか」を聞いてみるのもいいでしょう。そうやって聞けば「この点を確認しておかないと、この先のことを考えられないから」「他部署との連携に関わってくるから」などと、理由を教えてくれるはずです。
そのため、ファーストステップとしては、「情報がが足りないことを恐れずに」まず結論から簡潔に話すことに徹しましょう。情報が足りなかったとしたら、聞き手が尋ねてくれるだけなので大丈夫です。そのやり取りの中で必要な情報量を掴んでいく。一度、伝える情報をガツっと減らして、必要に応じて増やしていくイメージです。このような情報量を調整する経験を徹して、各レイヤーに求められる簡潔さを掴むことができるのです。
③構造化力を磨くためには、話し出す前にテキストで書き出すことをお勧めします。頭の中だけで構造化するのはかなり難しいですが、テキストで時間をかけて整理すれば、意外と簡単にできたりします。そしてそれを話す前に簡単にシミュレーションしてから、ロジカルエラーがないかチェックしましょう。
ビジネスシーンでは、大いに他人と比較せよ
話が長い人が減らない理由としては「職場環境の寛容さ」だけでなく、「他人と比較しないから」もあるのではないかと思っています。
人生において他人と比較することは、ややネガティブに語られることが多いです。他人と比較すると自己肯定感が下がったり、自分の嫌なことばかり見つかるからです。しかし、ビジネスシーンではその常識は一旦捨てて、しっかり他人と比較してください。
仕事においては他人と比較しなければ、自分の現在地を把握することができません。優秀な人と自分を常に比べて、今の自分に何が足りないか、何を身につけるべきかを知ることは、成長に直結します。なので、優秀な人と自分をひたすら比較し続け、その差分を埋めていってください。寛容な職場においては、話が簡潔でわかりやすい人とたくさん比較することが、自分の話の長さに気づく唯一の方法なのです。
「人の振り見て我が振り直せ」が勝手に成長するためのコツなのです
結論から簡潔に話せるようになるための訓練としては、プレゼンやピッチなど、大勢の人の前で話す機会を増やすことをおすすめします。「note」や「X」などで発信するのもいいでしょう。短い文章でわかりやすくまとめて書くことは、「結論から簡潔に話す」のいい訓練になると思います。これらの方法に共通することは、コミュニケーション上の制限があること。時間や文字数の制限があることで、物理的に簡潔にならざるを得ないというアプローチになります。ぜひ試してみてください。
ピリつくような体験が人を成長させる
「結論から簡潔に話す」を習得するためには、なんといってもピリつくような体験をたくさんすることが一番だと思っています。
ある程度大きい会社では、出世をすると不寛容さはどんどん増してきます。「社長への報告が30秒しかもらえない」「取締役の中で発言をしないといけない」といったシーンが増えてくるからです。このようなピリつく経験が何よりも重要なのです。
出世をすると、脳のリソースが重要な人たちに囲まれて仕事をしていくことになるので、結論から簡潔に話さざるを得ません。逆に言うと、そうした対応をできない人が出世するのはなかなか難しいということです。
自分の評価のためにも、そして何より、自分より重要度の高い仕事をしている人の脳を疲れさせないためにも、早速「結論から簡潔に話す」を徹底してみてください。