こんにちは、unname代表取締役の宮脇啓輔です。
ビジネスパーソンが身につけるべきスキルには、大きく分類して2種類のスキルがあります。それは、デザインやプログラミング、動画編集など、わかりやすいアウトプットを生み出せる「成果を出すスキル」と、コミュニケーション能力ややりぬく力、言語化力や内省力などの「成長するためのスキル」です。
私も普段、採用活動をメインに行っているため、20代の方々と話す機会は多いのですが、ここ数年「成果を出すスキル」の獲得に躍起になっている人が特に多いように感じています。
もちろん、「成果を出すスキル」を身につけること自体は悪いことではありません。スキルはあるに越したことはないのですが、重要なのはどっちを先に習得しておくべきか?という部分です。その問いに対して私は明確な回答を持っており、若いうちに身につけるなら「成長するためのスキル」一択となっています。今回は、その理由について解説していきます。
目次
「急がば回れ」、若い頃は土台作りに時間を投資せよ
私の考える「成果を出すスキル」と「成長するためのスキル」を、詳しく定義すると下記の図の内容になります。

昨今はインターネット・SNS上で、成果を出すスキルの注目が高まっている
「成果を出すスキル」は、具体的で習得方法が科学され切っているので、一定時間勉強すれば身につけることができます。目にみえる成果物としても残りやすいので、他人から見てもわかりやすい技術と言えます。履歴書やポートフォリオとして書きやすく、副業などにもつながるスキルなので、身につけておくことで自分の武器が増える感覚になる人も多いです。短期的に収入も増えやすいのです。

成果を出すスキルを早く習得すると「若いのに仕事ができる人」になりやすい
一方で、「成長するためのスキル」は、習得度合いを測りにくいスキルです。また直接的に成果がでるスキルではないので、スキルそのものが評価の対象になることが少ないことが特徴です。例えば人間関係構築力やコミュニケーション能力などは資格があるわけでもないし、その能力の高低は相対的な評価となります。また、目に見える成果物としてアウトプットもできません。履歴書に「コミュニケーション能力が高いです」と書いても説得力がないので、このスキルは転職との相性は非常に悪いのです。また、どうすれば、そしてどれくらい身につければ良いのかはっきりせず、習得が難しいスキルなのです。

成長するスキルを身につけると「自走・自育ができる人」になりやすい
このように「成長するためのスキル」は転職や自己PRの場で伝えづらいこともあり、昨今では、ないがしろにされている傾向にあると感じています。SNSなどでも「スキルを身につけよう!」と呼びかけられているのは「成果を出すスキル」ばかり。「成果を出すスキル」が過度に注目されているようにも感じます。
繰り返しにはなりますが、若いうちはできるだけ「成果を出すスキル」よりも「成長するためのスキル」を身につけたほうが良いです。「成果を出すスキル」が知識に近いものである一方で、「成長するためのスキル」は所作や価値観であり、知識の吸収を加速させてくれるのです。なので後々圧倒的に伸びていくのです。
ビジネススキルにおける単利と複利
下記のグラフは、私が考える成長曲線です。(※これはあくまで私の主観であり、科学的根拠はありません)

30歳を過ぎてから失速する人は、成長するためのスキルが身についていない
25~26歳くらいまでは、どちらのスキルを身につけていてもあまり差は出ないと思っています。むしろ、最初のうちは「成果を出すスキル」の方が優勢になるでしょう。なぜなら、「成果を出すスキル」は目に見える成果が出るのでわかりやすく、周囲の人からも「若いのにすごいね」「これもお願い」と頼られて、短期的には成果が出やすいからです。
しかし、「成果を出すスキル」は、一度身につけた後にさらに伸ばすには、別の「成果スキル」を掛け合わせていく必要があります。たとえば、動画編集ができる人が、動画の企画を学ぶといった形です。一定の努力に対して一定の成果しか得られない構造の“単利”のスキルなのです。成果を出すスキルを優先的に身につけてきた人は、自分で学んで成長していく力がついておらず、勝手に吸収・成長していくことが難しいのです。それに、いくら「成果を出すスキル」が身についていても、そのスキルは個人プレーの側面が大きいので、チームで成果を出したり、マネジメントや部下の育成は難しい。プレーヤーには限界があり、人を育てられないと昇格も見込めません。
一方で、「成長するためのスキル」が成果に直結するには時間がかかったり、一定のポジションに就く必要があります。チームリーダーを任されたり、良好な人間関係を作ったり、プロジェクトで重要な意思決定をしたり、部下を育てたりする際に発揮されるスキルだからです。だから、30代に入ってリーダー的な立場になったときに、このスキルが身についているかどうかで大きな差がつきます。
さらに、「成長するためのスキル」が身についていると、どんな環境にいても、自分にとって必要な知識や学ぶべきことを見極め、自力で成長していくことができます。「成長するためのスキル」は積み重ねによって30代以降にできることが増え、“複利”のように効果が広がっていきます。早く持てば持つほど効果を実感できるので、先に習得しておくべきなのです。

習得しようとしているスキルの性質を知っておくことが重要なのです
長期的合理は若い頃の特権
こうした違いは、「短期的合理」と「長期的合理」の違いにも置き換えられるでしょう。
動画編集などのスキルを身につけたら、副業などで短期的には月に20万円くらい稼げるかもしれません。しかし、それ以上は単価は上がりにくいどころか、生成AIなどの新しい技術登場によりそのスキルが淘汰され、報酬が下がっていく可能性もあります。もし動画編集スキルのある人が自分の価値を上げようとするなら、企画力やプロジェクトマネジメント力などが必要になります。しかし、「成長するためのスキル」が身についていないと、企画力やプロジェクトマネジメント力といったソフトスキルを習得することが難しくなるのです。このため、「成果を出すスキル」だけに頼ってきた人は30代以降に伸び悩みやすく、「成長スキル」を身につけた人はむしろそこで大きく伸びていくのです。
さらに加えると、若手の頃はすぐに成果を求められない「無敵の人状態」なので、そのタイミングに長期合理を取りにいくべきなのです。新卒の頃はミスしても許してもらえるし、なんでもわからないことを聞きやすいタイミンづなのです。しかし、年齢が重なれば重なるほど、当たり前ですが成果を求められます。成果を出さないといけないこのタイミングで、成果の上がらないスキルを伸ばすのは、構造上難しいのです。

若手の頃は、将来への期待値を加味した評価がされやすい
こうしたことから、私はキャリアの最初の3~4年は根気強く「成長するためのスキル」を磨くべきだと考えています。実際、私の新卒時代では、新卒は下積みをして「成長するためのスキル」につながる経験をしっかり積むのが当たり前の社会でした。しかしここ数年、下積みに耐えられない人が増えてきたように感じています。なぜなのか。
SNSの発信には、表に出ない裏側があることを知っておく
それには2つの原因があると思っています。その一つは、SNSの影響です。
この7~8年の間に、NewsPicksをはじめとするビジネス系ウェブメディアが増え、その中からビジネス系インフルエンサーが誕生して、SNSでさまざまな発信をするようになりました。若くて成功した人が、ビジネス論やキャリア論について語るようになり、私たちはそれを簡単に知ることができるようになりました。その結果、メディアでは語られない裏側を想像することなく、表層的な発信のみを信じ込んでしまっている。今の自分には合わないような価値観やスキルを身につけようと、結果的に若手ビジネスパーソンの焦りを誘発しているのではないかと思います。
ビジネスインフルエンサーの発言の多くは、さまざまな経験をして成功と失敗を繰り返した結果から得た知見です。ある程度社会人経験を積んだ人は、彼らの話を聞いてもその言葉をそのまま受け止めるのではなく、「この人が下積みを経験したからこその結果だな」「その条件下であれば、この人の言う通りかもしれない」などと、冷静に判断することができます。
しかし経験を積んでいない人の場合、ビジネス系インフルエンサーの発言の表面だけを鵜呑みしてしまう。だから、「とにかく成果を出すスキルをどんどん身につけなければ」と考えてしまうのではないでしょうか。
「好きなことを仕事にして生きていく」
「飲み会には行かなくて良い」
「プログラミングを学ぶべき」
「スキルをつけて副業で月収10万円UP」
など、本当に今の自分が取りにいくべき価値観かどうか怪しいものばかりです。若手ビジネスパーソンには、このような言葉に対するリテラシーもメタ認知力も足りないのです。

若手の頃は、信頼できる"身近"なロールモデルの言葉を吸収していきましょう
また、有名企業やベンチャー企業などで活躍している人たちはSNSで「SNS映えする瞬間」を切り取って発信しているので、その人たちと比べて「同世代なのに自分は全然活躍できていない」と焦ってしまう。「自分ももっと目立ちたい! 頑張らないと!」と感じてしまうのだろうと感じています。SNSに映る姿が全てではないのに、距離感があるためそれが全てに見えてしまうのです。そのため、自分もSNSで承認されたいがために「成果を出すスキル」の獲得に懸命になっている部分もあるのではないかと推測しています。SNSがない時代はそんなことが可視化されず、社内の近い人たちしか見えなかったので、ロールモデルもわかりやすく、その人みたいに成る方法も明確だったのです。見え過ぎていることが良いことかどうか、問い直さないといけません。
また、若手社員が下積みに耐えられなくなったもう一つの理由は、インターンの一般化もあるのではないかと考えています。コロナ禍の大学生は、飲食店などでアルバイトをすることができず、その代わりにオンラインでできるインターンが一気に広がりました。これにより、「社会とつながっている」「ビジネスの一端を担っている」と感じる大学生が増えました。しかし、インターンは一見仕事をしているようで、社会人から見ると大したことはしていません。多少パワーポイントに慣れる程度かもしれませんが、本質的な仕事の力にはなりにくいと感じます。
本来であれば、居酒屋でさまざまな属性の方たちとコミュニケーションを円滑に取る能力を磨いたり、お客さんに喜んでもらえる接客を磨いたりするほうが、「成長するためのスキル」を身につけることにつながります。しかし、そういったアルバイトよりも、インターンのほうが時給が良くて、「パソコン使ってビジネスをしている感」があって社会人経験を積んだ気になってしまう。
微妙なパワポを作れる能力よりも、円滑な人間関係を作れる力の方が圧倒的に複利で効いてくるのです。

変にスキルをつけて自信をつけると"素直じゃない若手"になる可能性も
こうして、「成長するためのスキル」を身につける機会を逃したまま社会に出て、目の前の「成果を出すスキル」の獲得に必死になってしまう若い人たちが増えてしまったのではないでしょうか。
私は採用の現場で、20代の若手社員は特に「成長するためのスキル」を身につけているかどうかを非常に重視しています。たとえば、オンラインで面談をするときに、画面が映ったら相手の出方を伺う前に、自分から笑顔で「こんにちは!本日はよろしくお願いします!」と言えるかどうか。そんなちょっとしたことですが、そういったところに「成長するためのスキル」が身についているかどうかが滲み出ると思っています。なので、それができない人を採用しないようにしています。それくらい、「成長するためのスキル」を重要なものだと考えているのです。
成長したければ、目の前の仕事に向き合え
では、いったいどうすれば「成長するためのスキル」が身につくのでしょうか。正直なところ、「これをすれば身につく」と明確に言えるものがありません。ただ、あえていうなら「与えられた仕事で成果を出すこと」だと思っています。そんなこと?と思えますが、目の前のコトに向き合えずに、隣の青い芝を求め続ける若手ビジネスパーソンはめちゃくちゃ増えています。
たとえば、飲み会の幹事を任されたとしたら、宴会の満足度をマックスにするにはどうしたらいいかを真剣に考えてみる。「自分は飲み会の幹事なんてやってられない」と思う人には、次の機会はないのです。飲み会の幹事では、みんなに参加してもらうための人間関係構築力が必要だし、前日に全員にリマインドするといった気遣い、当日楽しんでもらうために場を盛り上げる力なども必要になります。そして、何よりそれらを楽しむ力とやり抜く力がいる。このように、成果を出すためには総合的な能力が求められます。なので、仕事に向き合っていると、その過程できっと「成長するためのスキル」は身につくはずなのです。
もう一つ、「成長するスキル」を身につけるコツとしては「短期的な不合理に向き合うこと」です。上下関係の厳しい体育会系の部活に入っていると、「なんでこんなことしないといけないんだ!!」と思っても、先輩や目上の人には自分から元気にあいさつすることが身につくし、先輩たちを気遣う能力も身につきます。確かに理不尽なことも少なくありませんが、そういったことを通してしか身につかないスキルがあるのも事実です。そのため短期的不合理を楽しみ、全力で向き合うことも「成長するためのスキル」を身につける上では必要だと思っています。
もちろん、不合理なことなので「なんでそんなことしないといけないの?」と思う気持ちはわかるし、短期的合理(一定期間頑張れば技術が身につく)である「成果を出すスキル」に目が行きやすいのもわかります。しかし、短期的合理にばかり目を向けていると、いつまで経っても長期的な成長に必要なスキルは身につかないことを知っておいてください。そして、短期的合理はみんな飛びつくので、差をつけることも難しくなるのです。

長期合理に向き合うには、「自分の周りが気にならないこと」が重要
「成長したい」というベクトルを自分に向けている人の方が、いらない悩みを抱えてうんうん考えがちです。そして気づい時には、ないものを求めて転職したりしているものなのです。いろんな情報や価値観に惑われやすい昨今ですば、そんな時こそ一旦、ベクトルを仕事の成果だけに向けてみましょう。
石の上に3年居ることの価値が、相対的位に上がる
SNSを開けば、同世代で大きな仕事をしている人がたくさんいて焦るかもしれません。しかし、まずは今の会社で認められなければ次のステップには進めません。SNSで承認欲求を満たすのではなく、社内で認められるだけの働きをすることに注力したほうが建設的です。
社会人として仕事をしていく上では、誰かに頭を下げてお願いしたり、ミスが起きてしまったらそれをどうリカバリーするか考えたりしなければなりません。そういった地道な経験や失敗を通して「成長するためのスキル」が身につくし、経験値も溜まります。そうなれば、いざ転職しようと思った時に話せるエピソードもたくさん蓄積されるはずです。だから、キャリアにとっても最も重要な20代に、目の前の「成果を出すスキル」を身につけることに必死になる必要はありません。時間がかかっても、しっかり「成長するためのスキル」を身につけることができれば、30代以降は「成果を出すスキル」だけで輝いて見えた人と立場が逆転します。そして、その先も自分に必要なことを見極めながら、成長していくことができます。
SNSの華やかな投稿に惑わされることなく、今の環境で地に足をつけて「成長するためのスキル」を磨いていきましょう。最初の3年は副業なんて考えずに、現職にフルベットしていきましょう。