こんにちは、unname代表取締役の宮脇啓輔です。
先日、社内のメンバーから、こんな相談を受けました。
部下や後輩に指摘やフィードバックをするのは、頑張ればできるんですけど、本音を言うとあまりやりたくないんです。
これって性格的な問題なんですかね?
マネジメントや経営の立場にいる人なら、誰もが一度は抱えたことがある悩みだと思います。
私自身、振り返ってみても、学生時代から後輩に率先して厳しいフィードバックをするようなタイプだったわけではありません。社会人になり、マネジメントをする立場になってから、組織に不和が生じるのを防ぐための「使命感」や「自分が困るから是正する」という理由でやるようになっただけです。
では、なぜ多くの人が「指摘すること」に抵抗を感じてしまうのでしょうか。
ということで今回は、マネジメント層が必ずぶつかる「フィードバックの心理的ハードル」の正体と、その乗り越え方について解説します。
目次
「言いにくさ」の正体は、飛んでくるブーメランへの恐怖
自分の未熟さは、一旦「棚上げ」する
「自戒の念を込めて」
「言いにくさ」の正体は、飛んでくるブーメランへの恐怖
人に指摘をするのが苦手な最大の理由は、「嫌われたくない」という感情よりも、「自分への後ろめたさ」にあると思っています。
例えば、部下のミスを指摘したいけれど、頭の片隅で「自分も完璧じゃないしな」「自分だってミスをしているしな」という考えがよぎる。ここで偉そうに指摘したら、「お前もできてないじゃん!」というブーメランが飛んでくるかもしれない。
自分が100点満点の完璧な人間であれば、そんなブーメランを恐れることなく堂々と指摘できる。
でも、そんな人間はいません。
スポーツで考えると同じです。
「自分より上手い人が世界中にたくさんいるのに、自分が後輩に教えるなんて…」と思っていたら、誰にも何も言えなくなってしまいます。
「ブーメランが飛んでこない完璧な状態」など、いつまで経っても訪れないのです。だからこそ、一回自分のことを棚に上げる必要があるのです。
自分の視座やレベル感で、役割を全うしていくべき
では、自分が完璧でないなら、部下に何も言わなくていいのでしょうか。
ここで一つ、極端な例を考えてみましょう。
交通違反を取り締まる警察官がいたとします。 彼が休日にプライベートで車を運転している時、うっかり一時停止を無視してしまったり、少し信号無視をしてしまったことがあったとします。さて、この警察官は翌日仕事に戻った時、「俺も昨日違反しちゃったしな」という理由で、目の前で堂々と信号無視をしている車を見逃すでしょうか?
絶対にそんなことはしませんよね。
もし「自分も完璧じゃないから」と違反者を見逃し始めたら、その街の治安は崩壊してしまいます。
マネジメントにおけるフィードバックも、これと全く同じです。 「自分もできていない」という個人の至らなさと、組織のマネージャーとして「基準を満たしていない行動を是正する」という役割は、完全に切り離さなければなりません。
自分ができていないからといって指摘を放棄するのは、優しさでも謙虚さでもなく、単なる役割の放棄であり、より罪深いことなのです。
自分の未熟さは、一旦「棚上げ」する
だからこそ、フィードバックをする時は、「役割を全うするために自分の未熟さは一旦、棚に上げる」という力が必要になります。
「棚に上げる」というと無責任に聞こえるかもしれませんが、マネジメントにおいては必須のスキルです。
『宮脇啓輔』という個人としては言いづらいけれど、会社の代表取締役という『ポジション』の意志として言わなければいけないことがたくさんあります。個人に言われているのか、会社の代表に言われているのか相手も困惑することがあるので、「今は会社の代表としての意見なんですが」という枕詞をつけるようにしています。
役割が増えれば増えるほど、いろんな役を演じる必要がある
個人の感情や「自分もできてないしな」という自問自答は切り捨て、「私は今、指導するポジションとして、組織のためにこれを言わなければならない」と割り切るのです。「この人と会話するの面倒くさいな」といった個人の感情を優先して指摘を避けるのは、プロフェッショナルではありません。マネジメントの立場には一生近づくことはできいません。
完璧じゃなくても、気づいた人が、その役割を持った人が、言うしかないのです。しかし一方で、それができる人がたくさんいる組織は強いと思っています。
「自戒の念を込めて」
とはいえ、頭では「役割だから言わないと」とわかっていても、いざ面と向かって指摘しようとすると、言葉に詰まってしまうこともあると思います。
そんな時はこの2つの魔法の言葉を使いましょう。
一つ目は、「マネージャーという役割として言うけど」
二つ目は、「自戒の念を込めて言うけど」
この言葉を文頭につけるだけで、フィードバックの心理的ハードルは劇的に下がります。「自戒の念を込めて言うけど、ここ直した方がいいよ」と伝えることで、「私自身も完璧にできているわけじゃないし、気をつけなきゃいけないと思ってるんだけどね」というニュアンスを含ませることができます。
これは、相手に対する免罪符になるだけでなく、自分自身のブーメランに対する防具にもなります。 もちろん、免罪符を手に入れたからといって適当になっていいわけではありません。
「自戒の念を込めて」と口に出して相手に指摘することで、「自分も言った手前、ちゃんとやらなきゃな」という自分へのプレッシャーになり、結果的に自分自身を成長しやすい環境に追い込むことができるのです。
フィードバックは言うのは易し、でもいざ実行するのは心理的なハードルが高いものです。しかし、「言いづらい」という個人の感情を優先して言うべきことを言わなければ、最終的に困るのは組織であり、成長の機会を奪われた部下です。
「言うて自分もできてないしな」とためらってしまった時は、警察官の例えを思い出してください。自分の未熟さは一旦棚に上げ、「自戒の念を込めて」と前置きをして、あなたの役割を全うしましょう。
まずは明日からのコミュニケーションで、ぜひこの魔法の言葉を使ってみてください。