こんにちは、unname代表取締役の宮脇啓輔です。
部下や後輩から相談を受けた時、あなたはまさか、自分の言葉だけで1から10まで説明しようとしていませんか?
もしそうなら、あなたは生真面目すぎます。車輪の再開発をしているとも言い換えられます。
ところが頭の回転が速い人は、相談を受けた時やフィードバックしたい時、瞬間的にこう返します。
「あ〜、それならこの記事のここを読んでおいて」
「この本の第3章に答えが書いてあるよ」
記事のURLや書籍名をポンと投げるだけ。所要時間は10秒です。
私はこれを「引用力」と呼んでいます。先人の言葉を借りて、うまくフィードバックを行う。これは上級者がマスターしたい、マネジメントの一つです。
目次
「巨人の肩」に乗って、フィードバックを楽をする
未来の説明コストをゼロにする
ブックマークは情報の墓場
「引用」するためのインプット術
「巨人の肩」に乗って、フィードバックを楽をする
ではなぜ、引用によるフィードバックが効果的なのか。時間効率以外にも理由は3つあります。
- 説得力が段違い(虎の威を借る)
あなたが一生懸命説くよりも、「業界の第一人者がこう言っている」と示した方が、相手の納得感は圧倒的に高まります。あの人も言っているのか、と素直に話を聞いてくれます。 - 学習効果が高い(具体と抽象の往復)
部下の悩み(具体)に対して、体系化された記事(抽象)を渡すことで、部下は「自分の悩みは一般化できるものなんだ」と気づき、視座が上がります。また、先人の書き残した記事や書籍に書いてある語彙の方が洗練されている可能性が高く、より内容を吸収しやすくなります。 - 「師匠」になれる(関係構築)
学習というのは、適切なタイミングで適切な情報を摂取することが何よりも重要です。タイミングさえ見極めれば、フィードバックの内容は引用された文献なので、あなたは苦労せずしてメンターポジションを得ることができます。そうなると職場に協力者が増えることになります。
自分で汗をかいて説明するよりも、すでに世の中にある「正解」を借りてくる。これは手抜きではなく、情報の「ハブ」としての価値発揮なのです。もちろん、引用元となる情報の摂取は日頃からしておく必要はあります。
未来の説明コストをゼロにする
引用力の真価は、何か起きた時の対処(PL的なアプローチ)だけではありません。 日頃から記事や本をチームに共有し続けること自体が、チームメンバーの「脳のOSをシンクロさせる」という巨大な資産(BS的なアプローチ)になります。
例えば、あなたが普段から「このマーケティング理論はうちの会社っぽいね」と記事を共有していたとします。すると、部下の脳内には「上司はこういう考え方が好きなんだ」という基準、つまりOSがインストールされます。
こうして思考がリンクされると、いざ業務の指示を出す時に、細かな説明がいらなくなります。 「例の記事の方針で進めて」 たった一言で、100の意図が伝わるようになるのです。
即効性はないが、複利のように説明コストは下がっていくのです
日々の情報共有は、ただのニュース配信でもなく、人のためでもありません。「私の判断基準」をチームに移植し、将来のコミュニケーションコストを極限まで下げるための先行投資なのです。
ブックマークは情報の墓場
では、どうすれば必要な時にサッと引用できるようになるのでしょうか。
多くの人が勘違いしていますが、「引用力」がある人は、相談された瞬間にググっているわけではありません。過去に触れた膨大な情報の中から、脳内の検索機能で瞬時に引っ張り出しているのです。
検索で引っ掛かるような、わかりやすいインデックスが必要になります
ここでやりがちな失敗が、EvernoteやNotionなどに「あとで読むリスト」や「記事ストック」を大量に作ってしまうことです。いわゆるブックマーク型のストックです。あえて断言しますが、感情が動かなかった情報は、いざという時に思い出せません。
ただURLを保存しただけのリストは、情報の墓場です。
ベストセラー『思考の整理学』(外山滋比古著)にも、「メモを取るな、忘れてしまうようなことは重要ではない」という趣旨の記述があります。 記憶に残すための唯一の方法は、「自分の感情や体験とセットで保存すること」です。
自分の感情を動かすような内容であれば、触れるだけで記憶に残ります。しかし、そうではない情報の場合、ブックマークするのでなく、インプットした後にしっかりその情報をアウトプットし、記憶に定着させる努力が必要になります。
「引用」するためのインプット術
引用力を鍛えるためのトレーニングはシンプルです。 記事や本を読む際、ただ「へー」と読むのではなく、「これは、いつか誰かに使う武器になるか?」という視点で読むのです。
そして、心が動いた箇所があれば、必ず「自分のコメント」を添えて社内のSlackやSNSにアウトプットしてください。
「この記事のこの部分は、先日のA社との商談の反省点と同じだ」
「この理論は、新人の〇〇さんが悩んでいる件に使える」
このように、抽象的な情報を自分事(具体)に結びつけてアウトプットした経験だけが、脳のインデックスに刻まれます。 一度自分の言葉で咀嚼した情報は、半年後に部下から相談された時、「あ、あれだ」と瞬時に引き出すことができます
AI時代では、個人の脳内にある知識の価値は暴落していきます。 重要なのは、知っていることではなく、必要なタイミングでシェアできることなのです。その情報を必要としている人に繋ぐ「ルーター」として機能していきましょう。
あなたが脳のリソースを使ってゼロから回答を生成する必要はありません。「答えはここに書いてある」と指し示す。それだけで、あなたは「頭の回転が速い上司」になれるのです。ぜひ自分のためにも、今日から「引用」を始めましょう。