#35:組織で目標を達成する
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皆さんから「コラムを毎回読んでいます」「楽しみにしています」という声をいただき、モチベーションアップにつながり、毎週楽しく書かせてもらっています。ある程度ネタのストックはあるので、それほど苦ではないのですが、忙しい時などは「間に合うのだろうか」「この文章構成でちゃんと伝わるのだろうか」と、プレッシャーと戦いながら書いていることもあります。
過去のコラムを参照してAIに書いてもらおうかな、と思ったことが何度かあります。これって不正でしょうか。
いつも考えているのは、厳しくしすぎると、不正に手を染めたり、事故を引き起こしたりする可能性が高まるということです。
思い返すのは、2023年に発覚した中古車販売買取会社の件です。車を故意に傷付けたり、本来必要ではない部品交換を行ったりするなど、数々の不適切行為により、修理費の水増し請求が大きな問題となりました。
その背景には、過剰なノルマと、それを達成できなければ許されないかのような、パワハラ的風土があったとされています。こうした環境が、このような事案を招いたと考えられます。いわば、必然的に起きた出来事とも言えるでしょう。
また、21年前の2005年には、福知山線で脱線事故が発生し、乗客と運転士合わせて107名が死亡、562名が負傷する惨事となりました。この背景にも、ミスをした運転士に対する懲罰的な「日勤教育」があったと報道されています。
当社は2021年から5年連続で増収を続けています。増収は会社の勢いを示すものです。一度あきらめてしまうと、そのモメンタムは下降してしまいます。そのため、厳しい年であっても、一致団結して目標を達成してきました。
しかしながら、一歩間違えれば、目標達成のために不正や事故を引き起こしかねません。そのためにはどうすべきなのか。自戒を込めて書きます。
まず大切なのは、パワハラの風土を作らないことです。さまざまな組織を見ていると、トップの高圧的な言動によって、組織全体がパワハラ体質になっていく傾向があると感じます。パワハラは、上から下へと伝染するのです。
だからこそ、上に立つ人間が「ハラスメントは絶対に起こさない」という強い意志を示し、日頃の行動で体現することが重要だと考えています。
私はパワハラが大嫌いですし、組織内では断固として許されるべきではないと考えています。
確かに、怒ったり怒鳴ったりすることで、恐怖心から行動が変わることもあるかもしれません。しかし、それを続けていくと、どこかで必ず歪みが生じます。それよりも、コーチングやモチベーション向上といった方法で対応すべきです。そのベースとなるコミュニケーションについては、「#22:ポジティブストローク」や「#23:ラポール」で書いた手法が参考になるでしょう。
また、個人や限定されたグループに対して過度に厳しい目標を課し、達成できなかった場合に懲罰的な扱いをするべきではありません。懲罰を避けるために、不正で乗り切ろうと考えやすくなるからです。
特に、対象となる範囲が狭いほど、「バレなければいい」という心理に陥りやすくなります。一方で、不正をせずに達成しようとすると、個人への重圧が過度に大きくなり、メンタル不調を引き起こしかねません。
「#22:ポジティブストローク」では、日経新聞に掲載された「メダル至上主義さらば」という記事を紹介しました。過度なプレッシャーがアスリートのメンタルヘルスに悪影響を及ぼすことから、メダル至上主義を見直す動きが出ているそうです。
目標を設定すること自体は良いことです。しかし、それを最終的に解決するのは組織全体です。
個人よりも課長、課長よりも部長、部長よりも本部長、本部長よりも社長。上位の人間ほど、権限や使えるリソースを多く持っています。その分、目標達成のための選択肢を引き出すことができます。本コラム第1回で説明した「Options」が増えるということです。
当社では、売上目標の達成が厳しいと予想された年には、年初から部長を集め、毎週会議を行ったことがありましたた。達成できていない部門を責めることではなく、他部門を含め、会社全体で達成できないかを検討することが目的でした。
この取り組みが功を奏したのか、部門間でのリソースの融通や、知恵の出し合いが進み、売上創出に関するさまざまなアイデアが生まれ、その年も目標を達成することができました。
リソースを融通し、知恵を出し合うことで目標を達成したイメージ
目標達成は重要です。しかし、不正や事故と引き換えに達成される目標に、意味はありません。
組織で目標を達成するとは、誰かに無理を強いることではなく、皆で知恵とリソースを持ち寄り、Optionsを増やしていくことだと思います。
これからも私は、プレッシャーではなく信頼と対話によって、組織が前に進んでいく会社でありたいと考えています。
※次号は6月1日(月)リリース予定です。