日本の音楽市場は、世界第2位という高い順位を長年維持し続けています。
本記事では、世界音楽市場ランキングをもとに、日本市場の独自性や成長の背景について詳しく探っていきます。
2023年 最新の世界音楽市場ランキング
2023年の世界音楽市場ランキングによると、アメリカが依然として首位をキープしており、日本が第2位に続いています。日本はここ10年以上、この2位の位置を維持しており、世界の中でも特異な存在感を放っています。
以下は、2023年のトップ10音楽市場ランキングです:
- アメリカ
- 日本
- イギリス
- ドイツ
- 中国
- フランス
- 韓国
- カナダ
- ブラジル
- オーストラリア
出典: IFPI GLOBAL MUSIC REPORT 2024
このランキングを見ると、日本がなぜこんなにも高い順位を長年保っているのか、不思議に思う方も多いかもしれません。アメリカやイギリスなどの国々はデジタルストリーミングが急成長している中で、日本は異なる独自の要因でその地位を築いています。次のセクションでは、その背景について詳しく見ていきます。
世界と日本の成長率を比較:ストリーミングの急成長とフィジカル市場の違い
ここ10年間で、世界の音楽市場は急激にストリーミングへとシフトし、特にコロナ禍での一時的な打撃からV字回復を遂げました。2023年のデータによると、世界全体の音楽収益の67.3%はストリーミングによるものであり、サブスクリプションや広告付きストリーミングが大きな割合を占めています。一方で、フィジカルメディア(CDやレコードなど)は17.8%を占めており、減少傾向にあります。(出典: IFPI GLOBAL MUSIC REPORT 2024 )
世界全体としては、デジタル音楽が主流となりつつありますが、日本の音楽市場はやや異なります。日本では、CDなどのフィジカルメディアが依然として市場の65.5%を占めており 、これは世界でも異例の高い割合となっています。2022年と比較してもわずか0.3%の減少に留まっており、依然としてフィジカルが強いことがわかります。(出典: Country Profile Japan 2024 )
RIAJの畑陽一郎氏は、「日本市場のデジタル成長の傾向は他の主要市場と似ているが、日本はフィジカルセールスがまだ約70%を占める唯一の市場である」と指摘しています。 この傾向は、特にアイドルファンダムや特典付き商品など、日本特有の要因によって支えられているとされています。
世界では、ストリーミングがコロナの影響を受けて一時的に停滞しましたが、特に2021年以降はV字回復を遂げ、今や市場の中心的な収益源となっています。これに対し、日本はフィジカルメディアの強さが顕著であり、デジタル音楽のシフトが他国よりも遅れている点が目立ちます。
日本人は国内音楽を好む傾向:海外の音楽への興味度が低い?
日本のリスナーは、他国のリスナーに比べて外国の音楽に対する興味が相対的に低いというデータが示されています。2023年のLuminateデータによれば、フィリピンでは95%のリスナーが海外の音楽に触れており、シンガポールでも74%が外国音楽を楽しんでいます。しかし一方で、日本ではその割合が57%に留まっており、他国と比べて日本のリスナーは主に国内の音楽を消費していることがわかります。
出典:Japan and Asia: 2023 Music Industry Trends
特に、Z世代においてはその傾向が強く、Z世代の日本のリスナーは他国の音楽を聴く可能性が日本の平均より27%低いという結果が示されています。
日本では、J-POPやアイドルグループの人気が非常に高く、これが国内消費の強さを支えています。特にアイドル文化が根強いこともあり、ファンダムが形成され、国内市場の大部分はこれらのコンテンツに依存しています。また、言語や文化の違いから、外国音楽を探して聴く必要性を感じないリスナーも多いことが、日本独特の音楽消費行動につながっています。
ストリーミングの成長と将来の課題:高齢化と人口減少の影響
日本の音楽市場ではストリーミングが急速に普及していますが、国内市場には成長の限界が見え始めています。2023年のデータによると、日本のストリーミング利用率は徐々に増加しており、音楽業界全体においてもストリーミングが重要な収益源となりつつあります。しかし、将来的な課題として、高齢化と人口減少が日本市場に大きな影響を与える可能性が高いです。
日本の人口は減少傾向にあり、2023年には出生数が前年から5.1%減少し、これで8年連続の減少となっています。さらに、65歳以上の高齢者が全人口の30%を超え、日本は世界で最も高齢化が進んでいる国の一つです。この人口動態の変化は、ストリーミングの成長にも影響を与える可能性があります。特に、高齢者の多くはデジタル音楽に慣れていないため、若年層のリスナーに依存しているストリーミング市場は、人口減少が進むにつれて頭打ちになる懸念があります。
このため、国内市場の成長を維持するためには、海外市場への進出が不可欠です。特に、近年の世界的なアニメ音楽の人気を活かし、若年層の海外リスナーをターゲットにしたグローバルなマーケティング戦略を展開することで、国内市場の限界を補うことが重要になってくるでしょう。
まとめ
日本は2023年も世界第2位の音楽市場を維持しており、フィジカルメディアの強さや独自の音楽消費文化がその背景にあります。
特に、依然として根強いアイドル文化により、ファンのCD購買意欲が売上を支えています。また、日本のリスナーは海外音楽への興味が比較的少なく、国内アーティストへの支持が強いことが、このポジションを維持する大きな要因となっています。
ストリーミングが徐々に重要な収入源となりつつあるものの、人口減少と高齢化が進む中で国内市場の成長には限界が見えています。そのため、今後はグローバルなリスナーをどのように取り込むかが、日本の音楽業界にとって最大の課題となるでしょう。