株式会社GEOTRA 公式note|note
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今日は、GEOTRA公式noteより、最新の記事をご紹介いたします。
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GEOTRAインターン生の百瀬です。
皆さんは、インドネシア・ジャカルタにどんなイメージをお持ちですか?
例えば熱帯気候やイスラム教建築を中心とした歴史的建造物が有名ですが、中でも交通渋滞は世界的にみてもかなり深刻な都市だと言われています。
GPSメーカーTomTomによる「2023年版交通渋滞指数」では、世界で30番目に渋滞がひどい都市とされており、ピーク時には、5kmの移動に1〜2時間かかることもあると言われています。
その大きな要因として、公共交通機関の利用率の低さが挙げられます。
公共交通機関の運行トラブル、公共交通機関間の接続の悪さなどにより、自動車やバイクを選ぶ人が多く、慢性的な渋滞を引き起こしています。
こうした状況に対し、ジャカルタでは公共交通機関の利用率をあげるために、以前から様々なデータ分析や施策が行われてきました。
その代表例が、2004年に運行が開始されたTransJakarta(トランスジャカルタ)です。
東南・南アジア初のBRT(バス高速輸送)で、現在では全長251.2km、13の主要路線、260のバス停を持つ世界最長規模のBRTシステムへと成長しています。
さらに、インドネシア政府はスマートシティ化政策の一環として、GPSや人流データなどを活用した交通改革にも取り組んでいます。
現状の公共交通分担率(※)は20-25%とされていますが、2029年に東京並みの60%への引き上げを目指して、様々な施策が進行中です。
本記事では、ジャカルタにおけるデータを用いた交通渋滞対策について、TransJakartaを中心にご紹介します。
(※)公共交通分担率:利用されている全ての交通手段の中で公共交通手段が占める率のこと。
2016年、インドネシア政府と国連の共同イニシアチブとして設立されたデータ研究機関「Pulse Lab Jakarta」は、公共バスTransJakartaの利便性を高めるため、リアルタイムのGPSデータとICカードのタッチデータを活用した共同プロジェクトを実施しました。
① GPSデータでボトルネックを可視化
バス車両にはGPSデバイスが搭載されており、5秒ごとに位置・速度を記録しています。2016年4月〜6月のデータを分析することで、スピードが落ちる区間や運行本数の不足している箇所を特定し、渋滞の発生箇所が明らかになりました。
GPSデータによるボトルネックの可視化
出典:”USING BIG DATA ANALYTICS FOR IMPROVED PUBLIC TRANSPORT ” Pulse Lab Jakarta 公開資料より
② タッチ情報で乗客の移動パターンを分析
乗車時のICカードのタッチ情報から、以下の傾向について分析が行われました。
出発地と目的地(OD)の推定
出典:”USING BIG DATA ANALYTICS FOR IMPROVED PUBLIC TRANSPORT ” Pulse Lab Jakarta 公開資料より
これらの分析結果は、路線の見直しや駅施設の拡張といった改善施策に活かされました。また、混雑エリアでは警官やバリケードを増設し、専用レーンへの一般車両の侵入を防ぐ対策も実施されました。
さらに2018年からは降車時のICカードタッチによる情報取得機能が追加され、より正確なODデータの取得が可能になりました。
2016〜2020年にかけて、TransJakartaの路線は大幅に拡張されました。
この路線拡大が人々の移動にどのような影響を与えたのかを分析したのが、ハーバード大学などによる研究です。
この研究では、スマートフォンのGPSデータを活用し、新路線開設の前後で利用者数や移動パターンの変化を比較しました。
また、移動時間以上に待ち時間に対して人々が2〜4倍敏感であること、つまり、「待ち時間が長い」という印象が利用を妨げる要因となっていることが明らかになりました。
この結果から、バスネットワークのカバー範囲と利便性のバランスを見直す重要性が示唆されています。
TransJakartaの路線拡大と乗客数の変化
出典:”Optimal Public Transportation Networks: Evidence from the World's Largest Bus Rapid Transit System in Jakarta ”より
公共交通機関の利用を促進するためには、利便性の向上が不可欠です。
そこで設立されたのが、複数の交通機関と民間事業者が連携するJakLingko(ジャックリンコ)です。
JakLingkoでは、公共交通機関での移動をより便利にするMaaS(※)アプリを提供しています。
このアプリは単なる時刻表検索機能だけではなく、以下のような機能を備えています。
JakLinkoアプリについて
出典:「インドネシア国・マルチテナント型の 統合交通決済プラットフォーム事業に係る調査事業」 国土交通省発表資料より
アプリから収集される乗降データ・決済履歴・検索行動や各交通機関が収集したデータなどは、運行計画の改善や収益性分析、接続性の最適化に活用されており、スマートシティ化の中核を担っています。
行動パターンの分析
出典:”DX for Sustainable Urban Mobility ” JASCA(Japan Association for Smart Cities in ASEAN)公開資料より
このようなアプリ活用の取り組みを一例として、JakLingkoでは次の三つの統合を進めることで、公共交通分担率60%の達成を目指しています。
今後もデータ・テクノロジー活用を進めていくことで、ジャカルタの交通渋滞が緩和することが期待されています。
(※)MaaS:Mobility as a Serviceの略。スマートフォンアプリなどを通じて、複数の交通手段を最適に組み合わせて検索、予約、決済を一括で行うサービス。交通以外のサービスなどとの連携により、移動の利便性向上や地域の課題解決への重要な手段となります。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
ジャカルタでは、深刻な交通渋滞という課題に対して、データとテクノロジーを活用したスマートな取り組みが進められています。
これらの事例は、都市の課題解決において「データを活かす力」がいかに重要かを示しています。
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