◯「やりがい」は自分では作れない。「ありがとう」と一緒に人からもらうギフトです
「やりがいのある仕事がしたい」
多くの人がそう願いますが、「やりがい」とは一体何なのでしょうか
私たちは、やりがいとは主観的な感情だと考えがちです。
しかし、実はその感情は、他者との関係性の中でしか生まれない、という逆説的な真実があります。
ちょっと考えてみてください。あなたが「やりがい」を感じるのは、どんな瞬間でしょうか?
それはおそらく、「自分の仕事が人の役に立った」「お客様に喜んでもらえた」「〇〇さんにお願いしたい、と選んでもらえた」「あなたと一緒に働けて嬉しい、と好意を伝えられた」といった瞬間ではないでしょうか。
つまり、「やりがい」という感情は、
• 人の役に立った
• 人に喜ばれた
• 人に好かれた
• 人に選ばれた という、他者からのポジティブなフィードバックを受け取った結果として、私たちの心の中に生まれてくるものなのです。
誰もいない無人島で一人で完璧な仕事をしても、なかなか「やりがい」は生まれ内容に思います。やりがいは、自分一人の努力で作るものではなく、『他者との関係性の中で、相手から与えられる「ギフト」』と考えてみましょう。
この視点に立つと、「いい会社」とは「やりがいを与えてくれる会社」ではなく、「社員同士が互いにやりがいというギフトを贈り合える会社」だと考えられないでしょうか。
◯ 「マイナスをゼロにする」仕事から、「プラスを生み出す」仕事へ
多くの職場では、「失敗しないこと」「問題を起こさないこと」が重視されます。
しかし、この「マイナスを避ける」という守りの姿勢は、知らず知らずのうちに、仕事の本当の喜びと成長の機会を奪ってしまっているのかもしれません。
仕事の価値を、-100点から+100点までの数直線で考えてみましょう。
• -100点: クレームが発生した、重大なミスを犯した状態。失敗。
• 0点: 何の問題もなく、当たり前のことが当たり前に行われた状態。普通の状態。
• +100点: お客様が喜んだり感動したり、期待を大きく超える驚きを提供できた状態。
「クレームを受けないようにしよう」「問題を起こさないようにしよう」という考え方は、-100点を避け、「0点」を目指す仕事です。もちろん、これはプロとして最低限必要な姿勢です。しかし、お客様は「0点」のサービスにお金を払っているのであり、それだけでは心は動きません。お客様が本当に求めているのは、「この店に来てよかった」「あなたに会えてよかった」と感じるような、心を揺さぶる「+100点」の体験です。そして、仕事の本当の喜びや「やりがい」というギフトも、このプラスの領域にこそ存在します。
まさにこの点に、社員の「自律性」を信頼する理由があります。ルールやマニュアルで徹底できるのは「0点」までです。本当の感動や驚きといった「+100点」の体験は、マニュアルを超えて、一人ひとりが自律的に考え、行動する自由の中からしか生まれないのです
。
◯ 接客も、工場の仕事も、事務も。実は全部同じ「チームスポーツ」と一緒!
「接客は好きだけど、工場の仕事はつまらなそう」「事務の仕事だけやりたい」。
私たちは職種によって仕事の本質が全く違うものだと考えがちです。しかし、タニクリでは、どんな仕事も根っこは同じ、ある一つのものに例えられると考えています。
それは「チームスポーツ」です。
例えば、工場の仕事をサッカーに例えてみましょう。
• ゴール: 製品を期日通りに、高い品質でお客様にお届けすること。(工場からの「出荷」がゴール)
• パス: 自分の工程を終えた製品を、次の工程の仲間(=お客様と考える)が作業しやすいように丁寧に渡すこと。これは、味方が受けやすいパスを出すのと同じです。
• チーム連携: 一人ではできない大きな目標(出荷)に向かって、仲間と協力し、トラブルがあれば話し合い、より良い結果を目指して改善を重ねていくこと。
このように見ると、工場の仕事は、個人技ではなく、チームで協力してゴールを目指すスポーツと全く同じ構造を持っていることがわかります。
これは接客業でも、経理事務でも同じです。
すべての仕事は、一人ではできない難しいことをチームで成し遂げ、「自分以外の人を喜ばせる」という共通のゴールを目指すチームプレイなのです。
この視点を持つと、どんな仕事もダイナミックで面白いものに見えてきませんか?
◯ なぜルールやマニュアルを極力作らないのか?
ルールやマニュアルは、組織の秩序を保ち、品質を均一化するために不可欠だと考えられています。しかし、私たちは、過剰なルールが、仕事の最も面白く、価値ある部分を従業員から奪ってしまう可能性があると懸念しています。
仕事の醍醐味とは何でしょうか。私たちは、予期せぬ問題に直面したとき、マニュアルにない状況に対応するときにこそ、仕事の本当の面白さがあると考えています。それは、
「どうすれば解決できるだろう?」と考え、 「こんなやり方はどうだろう?」と工夫し、 「力を貸してくれないか?」と仲間と協力する。
このプロセスそのものです。しかし、細かすぎるルールや網羅的なマニュアルは、この「考える・工夫する・協力する」という、人間ならではの創造的な活動の機会を奪ってしまいます。従業員はただルールに従うだけの存在になり、仕事は面白みを失ってしまうのです。
タニクリがルールやマニュアルを最小限にしているのは、この仕事の最も面白い部分を、社員一人ひとりから奪いたくないからです。私たちは、社員を「ルールがなければ何もできない子供」ではなく、「答えのない問題に対して、自律的に考え、行動できる大人」として信頼しています。その哲学を実践するためには、土台となる「幸せな人間関係」を自ら築くスキルが、私たち一人ひとりに求められるのです。