やっと今月から派遣システムでの本格運用ができるようになりました。
その裏側を公開します。
昨年11月、私たちの派遣事業は、ほとんどが紙とオフラインのExcelで運用されていました。
スタッフIDすら存在せず、契約書の作成も都度一から手作業。
派遣先も職務も就業場所も一人ひとり異なるため、同じものはひとつとしてなく、まるでオートクチュールのように作り込む必要がありました。
当時から「このままでは業務が回らない。汎用性と正確性を両立できる仕組みが必要だ」という危機感があり、DXを進める決断をしました。
2025年3月、いよいよ派遣システムを導入。
目標は「5月から契約書作成をシステム上で運用開始すること」。
しかし、取り掛かってすぐに現実の複雑さを思い知ることになりました。
派遣事業は、派遣先・派遣スタッフ・派遣元の三者関係に労働基準法と派遣法が重なる、非常に特殊な産業です。さらに場合によっては、請負先を含めた四者で業務を進めることもあります。
そのため、契約書は単なるフォーマットではなく、
- 賃金の明示
- 責任と役割の明確化
- 教育訓練の履歴管理
- 派遣先への情報開示と制限
といった多岐にわたる要件を、すべて正しく満たさなければなりません。
一見すると、「企業情報・スタッフ情報・求人情報をつなげばできるのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、実際には「請求情報・料金情報・責任者・組織単位・就業場所・苦情処理の指揮命令者情報」など、膨大な関連データが存在し、全てが契約ごとに変わるのです。
この「多様性の塊」を整備するため、ひとつずつルールを定義し、抽象化していきました。
作業を進めるうち、さらに問題が浮き彫りになりました。
調べていくと、給与形態だけでもなんと17パターンもありました。
長年、現場に合わせて個別最適化しすぎた結果、同じ会社の中に多数の例外が生まれていたのです。
「このままでは、経理にもシステムにも負担が大きすぎる。これを機に整理しよう」と覚悟を決め、全パターンを精査。
社内ルールを一本化し、契約書の標準化に踏み切りました。
同時に、「どこまで情報を開示し、どこまで開示しないのか」も徹底的に確認しました。
たとえば、年齢を派遣先台帳に記してはならない、など細かい規定も多くあります。
これを怠ると監査の際に重大な指摘を受けます。
結果、当初5月に開始予定だった運用は7月まで延びました。
でも、ここで拙速に進めていたら、現場に混乱を招いたと思います。
正確性を優先できたのは大きな成果でした。
ようやく、7月から契約書作成の新しい仕組みが動き出しました。
けれども、これはゴールではなく、本当の意味でのスタートです。
今後は、この仕組みを業務フローに定着させ、派遣先・派遣スタッフ双方にとってより透明性と安心感のある運用を目指します。
同時に、スタッフが安心して活躍できる環境を整えることが、最終的に派遣先企業の発展につながると信じています。
ハーツネクスト自身も人材不足は深刻で、産業構造の変革が避けられません。
人材・資本の再配置を進めるのは、日本の未来のためでもあり、私たち自身のためでもあります。
一人ひとりが経営マインドを持ち、当事者意識をもって運営することが、何よりの生命線です。
今回のDXを通じて、その覚悟を再確認しました。
引き続き、DXの最前線で挑戦を続けていきます。