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こんにちは。株式会社Another works共創事業責任者を務めている犛山創一(うしやま そういち)と申します。
私は2021年にAnother worksに入社し、複業したい個人と自治体をマッチングするプラットフォーム「複業クラウド for Public」を代表と二人三脚で立ち上げました。現在では全国累計250の自治体と連携し、複業を通じた地方創生の実現に挑戦しています。また、複業を広める当事者として、一般社団法人シェアリングエコノミー協会の事務局や、北海道厚真町の地域活性化起業人としても活動をし、東京と北海道の二地域居住を実践しています。
この記事では、私がなぜ地域にこだわるのか、なぜ複業というアプローチを選んだのか、そして私たち「複業クラウド for Public」を運営するチームがどんな未来を目指しているのかをお伝えします。地方創生に関心のある全ての方に、そして社会を変えたいと願う全てのビジネスパーソンに届いてほしいと願っています。
第1章 地方創生の現在地
東京一極集中が奪ったもの
日本の地方創生において、最大の課題は何でしょうか。
私は、人口減少そのものよりも、東京一極集中によって引き起こされている、地元や好きな地域に向けたポジティブな感情の喪失こそが本質的な課題であると考えています。
現在の地方創生政策では、「人口減少問題」「少子高齢問題」が前提に考えられることが多く、人口減少に歯止めをかけるために毎年のように何千億円もの予算が組まれ、全国各地で様々な政策が実行されています。その中心施策こそが移住定住政策です。
しかし、人口減少が全国的な状況であるため、それぞれの地域が「うちの町に移住してほしい」と声をかけても、結局はパイの奪い合いにしかなりません。地域資源が豊富なまち、潤沢な予算を持ち行政サービスが充実しているまち、PRが上手なまちが移住者獲得競争に勝利する。これは資本主義にふさわしい競争社会の現実ではありますが、多くの地域にとって希望を削ぐものでもあります。
さらに深刻なのは、この構造が人々の心から「地域への愛着」を奪っていることです。進学や就職で東京へ出る。それは素晴らしい挑戦です。しかし、一度出たら戻れない、戻る場所がない、関わる術がない。そうやって物理的な距離が離れるとともに、かつて育った場所への愛着も薄れ、時間の経過とともに心の距離も遠ざかっていく。この「感情の喪失」こそが、地方衰退の真因だと私は考えます。
地域を思う「地域愛の総和」
私が描く地方創生とは、地域を思う気持ちやシビックプライド、アイデンティティ等の「地域愛の総和」を最大化することです。
私は地方創生のイシューを、人口減少そのものではなく、それに伴う様々な“負の感情作用”だと捉えています。人口が減ることで、地場産業の人手不足が相次ぎ、シャッター街が増える。少子高齢化が進むことで、子供たちが少なくなり町から笑顔が減り活気がなくなる。するとそこは、かつてあった誇れる地域からは程遠いものになってしまう。
だからこそ、目指すべき指標は「地域愛の総和」なのです。これを数式で表すなら、以下のようになります。
"地域愛の総和"= "地域を愛する人の数" × "関わりの深度"
この総和を最大化することこそが、地方創生に挑戦する私が目指すべき理想です。移住政策や婚活政策にお金を使うことだけが地方創生ではありません。一人ひとりの市民が、あるいはその地域を愛する人々が、地域で積み重ねてきた「些細な幸福感」を認め、その場を誇りに思うこと。その地域愛の総量を増やしていくこと。これこそ地方創生が向かうべき方向性なのではないでしょうか。
第2章 「東京出身コンプレックス」~私が地域にこだわる理由~
何もないニュータウンに芽生えた「地域愛」
私がなぜここまで地域にこだわるのか。それは私自身の原体験にあります。
私にとっての地元は、東京都稲城市若葉台です。若葉台という町は、多摩ニュータウン事業の最終開発地として、山を切り開いてできた町です。私が生まれるわずか1年前に街びらきがあったばかりで、当時は何もないところに駅だけがあり、学校も住宅街もありませんでした。
この町の特徴は、ほぼ全員が移住者だったことです。古くからのしがらみがない代わりに、伝統も歴史もない。そんなゼロからのスタートだった町で、私は地域の人々の温かさに触れて育ちました。
地元のサッカーチームのコーチは、友達のお父さんがボランティアでやってくれました。「親父の会」という地域の有志団体が、毎年お祭りを企画してくれました。平日は都心で働き、土日は休みを惜しまず、この町の子どもたちのために、この町のためにと奮闘する大人たちの姿がありました。
「自分たちの町は自分たちでつくる」。そんな気概を持った大人たちに囲まれ、地域に愛されて育ったからこそ、私もいつか自分の子供ができたら、両親だけではなく地域に愛される環境で子育てがしたいと思うようになりました。
アイデンティティの毀損とミッションの誕生
しかし、成長するにつれてある違和感を覚えるようになりました。大学ではじめましての会話では、「どの出身なの?」と聞かれたとき、「東京だよ」と答えると、そこで会話が終わってしまうのです。「へえ、そうなんだ」で終わり。地方出身者のように「あそこのあれが美味しいよね」「あそこいいところだよね」という会話が生まれない。
自分の大好きな地元である東京都稲城市若葉台に興味関心が向けられない。これは私にとって、稲城市出身としてのアイデンティティの毀損でした。あんなに素晴らしい大人たちがいて、あんなに愛着のある町なのに、それを表現する場も、共感してくれる人もいない。
この悔しさが、私のミッションの原点です。
「地元愛を体現する機会を最大化する」
自分が地元から離れていても、自分の好きな地域に関われる。貢献できる。そんな選択肢を増やしたい。誰もが自分のアイデンティティである「地域」に対して、胸を張って愛を注げる社会をつくりたい。それが、私が民間企業の立場で社会に関わる揺るぎない動機です。
第3章 Public事業の歩み
複業という新しいアプローチ
自身のミッションの実現に向けて、私が選んだ手段は「複業」でした。ここでいう「複業」とは、お小遣い稼ぎやサブの仕事という意味が強い副業ではありません。金銭報酬だけでなく、感情報酬(感謝ややりがい)、経験報酬(スキルアップや成長)といった複数の目的を持った、すべてを主とする新しい働き方です。
なぜ「複業」なのか。それは、先ほど述べた「地域愛の総和」を増やすために、最も有効な手段だからです。
これまでの社会には、地域との関わり方に大きな課題がありました。それは、選択肢が極端に二分されていたことです。「住むか」、「住まないか」。この二択しか私にはありませんでした。
移住はハードルが高い。今すぐにはできないし、現実的ではない。一方で、ふるさと納税や観光では関わりが薄く地域貢献の手ごたえが感じづらい。もっと手触り感を持って、自分のスキルや経験を活かして地域に貢献したい。そう思っても、そのためのインフラが存在しなかったのです。
「複業」であれば、今の生活を大きく変えなくても、家族を守りながらでも、地域に深く貢献することができます。お世話になった地元に、自分のスキルで恩返しができる。これこそが、私たちが挑戦する地域の解です。
手弁当から始まった挑戦
2021年の事業立ち上げ当初は、まさに茨の道でした。「そもそも複業ってなに?」という黎明期です。「お金以外に仕事に価値を求める人なんて存在するの?」という懐疑的な声が多く向けられました。ボランティアやプロボノでの募集に対して、SNSで「やりがい搾取だ」と叩かれたこともありました。
それでも私は、かつて若葉台で見た、損得勘定抜きで地域のために汗をかく大人たちの姿を信じていました。そして何より、サービス開始直後に「これはお金を払ってでもやりたい」と言ってくれた自治体の方々、そして手を挙げてくれた複業タレントの皆様の言葉があったからこそ「複業」という新しい概念を信じ続けることができました。
最初の2年間は、売上がゼロ。
自治体の皆様には実証実験として無料で「複業クラウド for Public」を使っていただきました。売上よりも何よりも、まずは「複業」の社会的価値を証明したかったのです。二宮尊徳の「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言(戯言)である」という言葉を胸に将来的に社会性と経済性を両立した事業をつくるために、まずは社会性を証明することに全力を注ぎました。
250自治体と共に創る「複業成功」
その結果、多くの皆様に複業の概念と価値を信じていただき、2025年12月現在では累計250自治体で導入をいただくまでに事業成長しました。
私たちが「複業クラウド for Public」で特に大切にしているのは、単なるマッチングではありません。地域に「アウトカム(成果・変化)」をもたらすことです。
地域に関わった人の数だけでなく、関わった複業タレントが地域で何をしたのか。例えば、DXの専門家が入ることで職員の残業時間が減り、その分住民サービスに充てる時間が増えた。マーケティングのプロが入ることでふるさと納税の寄付額が上がり、住民に対して新しい施策ができるようになった。
大事なのは、地域のことを思う人の「地域愛の総和」であるからこそ、私たちは「採用成功」ではなく、複業タレントと地域の中長期的な関係を築くために必要な地域のアウトカムまで追求する「複業成功」を何より重要視しています。
第4章 "Publiclap"~人生応援~
人生の挑戦を称え合う文化
私たちPublicグループには、大切にしているチームの文化があります。それが"Publiclap(パブリックラップ)"です。
これは、"Public"という我々の組織のアイデンティティと"clap"(拍手)をあわせた造語です。「仕事だけでなく、仲間の人生、挑戦を拍手で讃えよう、応援しよう」。そんな想いが込められています。
一度きりの人生、有限な時間を今この瞬間共有する仲間として、Publicの仕事だけではなく、家族との時間、複業、起業など、人生のあらゆる挑戦を応援しようという文化です。
Publicには、正社員6名、インターン生4名の10名に加え、複業メンバーも在籍しています。年齢もキャリアも多様なメンバーが集まる組織だからこそ、それぞれのライフステージにおける有限な時間をPublicに投資している仲間の人生を応援したい。
「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」
Publiclapで仲間の人生を応援し合えるからこそ、私たちはより遠くにある大きな大義を実現することができるのです。
多様なバックグラウンドを持つPublicの仲間
集まっているメンバーのキャリアも実に多様です。
富山県庁から「公務員の働き方を変えたい」という熱い想いを持って入ってくれたメンバー。元消防士で地方創生事業の起業経験をもとに、「地方で関わる人を増やしたい」という想いから入社してくれたメンバー。人材業界出身者はもちろん、元ホテルマンや農業系の会社からの異業種転職で活躍しているメンバーもいます。
共通しているのは、全員が「社会軸のミッション」を持っていることです。そして、メンバー全員が複業を実践しています。起業して会社経営をしているメンバーもいれば、自治体で複業をしているメンバーもいます。子育て中のママもいますが、子育ても立派な仕事であり、複業です。(笑)
「複業が当たり前になったら、このような地域が増えてほしい」「こういう方が増えてほしい」「こういう社会になってほしい」。未来志向に語る時間は、私たちにとって至福の時間です。
仲間と地域の未来について語るPublic合宿
第5章 社会の当事者であれ
常に当事者であり続けること
私たちが社会課題に取り組む者として最も大切にしている姿勢、それは「社会の当事者であれ」ということです。
私自身、北海道厚真町で地域活性化起業人(副業型)として活動しています。自分の第二のふるさととも言える北海道に関わりたいという想いからはじめたのですが、もう一つの複業の目的は社会の主語を民間企業だけではなく、行政を主語にして活動するためでした。Another worksの描く社会が、机上の空論ではなく、本当に価値のあるものなのか自分の体をもって体験してみたかったからです。
厚真町では「二地域居住」の推進をミッションとして仕事をしていますが、住民の方々に”町が二地域居住者(ソトモノ)を受け入れるためにお金を使うこと”に納得していただくことは容易ではありませんでした。受益関係を正しく整理して町にとっての価値を伝える論理と、地域を主語に同じ想いをもつ仲間を集め、彼らとともに地域を動かす論理では説明できない力学があること、を学びました。
厚真町で自治会対抗の運動会に参加しました(^^)
地域社会はたとえ小さくても、そこには多くの関係者の感情が混在するからこそ非常に複雑で難解な問題が多く存在します。この感情の総量が多ければ地域はより強い力を発揮するポテンシャルを秘めていますが、正しく作用させるためには、泥臭い調整と対話が不可欠です。
これらの感情を正しく理解し、地域社会にとって必要なことを考え続けるためにも我々は地域の当事者であり続けます。
これからのPublic事業
私たちは今、Public事業をさらに成長させようとしています。まだまだ未熟な組織です。
現在は、地域社会における自治体という立場でしか地域挑戦の機会を提供できていませんが、今後は地域社会の多様な立場で「複業」できる機会をつくっていきます。
具体的には、公務員の複業機会の創出です。公務員は法律や社会通念的に複業が制限されており、複業したいという感情すら持ちにくい「潜在的挑戦者」です。この潜在層に対して、挑戦できる環境や機会を提供し、「地域を思う人の数」を増やしていきます。さらに、地方企業での複業機会の創出も進めます。自治体だけでなく、地域の中小企業、一次産業、スポーツチーム、伝統工芸など、地域社会のあらゆる場面で複業が当たり前になる世界を目指します。
この大きな挑戦を実現するために、私たちには仲間が必要です。
最後に
私たちは今、この大きな挑戦を共にする仲間を求めています。
スキルや経験ももちろん大切ですが、それ以上に「地域への想い」や「社会を変えたいという熱量」を持った方と出会いたいと思っています。
私たちの事業は、まだまだ道半ばです。あなたの原体験、あなたの情熱、あなたのスキルを、日本の地方創生のために、そして新しい働き方の創造のためにぶつけてみませんか。
一緒に“複業”で、地域の、社会の当事者になりましょう。