90株式会社、CEOのタカショーに創業秘話についてインタビューをしました。
〜経歴〜
・ドバイ出身
・英語が話せないまま日本に帰国
・元大手スポーツメーカーにて営業職
・退職後、起業。靴磨き事業と英語事業の立ち上げ
・現在90株式会社の代表取締役を務める
安泰と挑戦の天秤で揺れ動く日々
ー大手企業を退職しての起業。不安はありませんでしたか?
正直、とても不安でした。今でこそまっすぐにやりたいことを追い求められてますが、大手にいた時は何者でもなく、むしろ仕事に対してやりがいを見出せず悩むほどでした。
前職では仕事の「やらされている感」を強く感じていました。なので当然、結果も出ていません。今でこそ理解ができますが、当時は営業の大変さや重要な挨拶回りも「なんのためにやっているのか」と思っていました。
そのため、常に自分の中の天秤が揺れ動いてる状態でした。
大手に所属して安泰な道を進みつつも葛藤のある辛い日々を過ごすのか
退職して自分の好きなことに”挑戦”するか
悩んだ末に、自分の好きなことに”挑戦”することを”選択”しました。
理由は、昔から漠然と「自分は人の指示で動くよりも、自分でリーダーシップをとったほうがパフォーマンスが出るタイプの人間だろうな」と感じていたからです。
いつかは自分でビジネスをやりたいと思っていたので、遅かれ早かれいつかはやるのであれば、”今やろう”。そう考えた時、心が決まりました。ここまで自分で決心したように話していますが、実は決心するまでに背中を押してくれた人がいたんです。
ーなにがあったのですか?
姉から強烈な一言をかけてもらったんです。
私、実は退職前に休職していた時期があり、その時に会社常駐の看護師さんからの勧めで精神科を受診したことがあります。その精神科の予約の待ち時間が長かったので、ある時カフェに入って時間を潰していました。
そこでなぜか姉に泣きながら電話をしたんです。今思えばなかなか恥ずかしいことをしていますよね(笑)
姉は海外の会社で働いており、こんなことを言われました。
「せっかくあんなに”英語”がんばったのに、なぜ日本にこだわっているの?海外に来たらいい。」
その瞬間を今でも鮮明に覚えてます。不安が一気に解消され、心の中の雲がパーっと晴れていったんです。
”英語”に”本気”で向き合った過去の自分に命を救われた瞬間でもあったと思っています。
ーそこから振り切れたんですね。
そうですね。ただ、いざ退職が目前に迫ると、来月の生活費すら稼げないんじゃないか...と常に頭を抱えていました。
しかし、そんな”挑戦”を選びつつも不安と戦う自分の背中をさらに押してくれる出会いがありました。
それが朝活コミュニティ「朝渋」のメンバーとの出会いです。当時はまさに「起業しよう!」というムーブのど真ん中にあったコミュニティでした。
会社出勤前の早朝にカフェでそのメンバーとよく朝活をしていました。
当時はまだ退職前で会社に所属していたので、私は朝活が終わると会社に向かいます。しかし、他のメンバーは”自分が好きな場所”に行って、パソコン一台で仕事をしていました。
そこで初めて、フリーランスの働き方を目の当たりにしました。「同じ人間の彼らができるなら、会社を辞めてもなんとかなるかもしれない」と言い聞かせていると、楽観的な気持ちになっていきました。
ー実際独立して不安はなくなりましたか?
はい。自分でも驚きですが独立してすぐに不安を解消できました。少しだけ自慢なんですが、何者でもなかった私が初月に40万円稼げたんです。
イベントの運営リーダー、広告会社のマニュアル作成、長距離トラックの運転手。やれそうなことは全部やりました。
とにかく無我夢中でした。オファーがあった仕事には全て「YES」と回答し続けていると前職の倍の金額を稼ぐことができたんです。
あのときは胸を撫で下ろしました。同時に、挑戦してみたら意外とどうにかなると自分の成功体験になりました。
ただ、寝ずに仕事をしていたので身体はボロボロ。
「自分のスキルの切り売りではダメだ。事業として確立しなければいけない」そんな気持ちを強く持つようになりました。
事業化に向けた運命の出会い
ー当初から90 Englishという事業化の構想があったのですか?
退職してから数ヶ月後、本当にいろいろとやる中で靴磨きと英会話がフィットしてきたので、この2つを仕事の主軸に据えながら個人事業主として活動していました。
靴磨きをなぜ始めたかは、ぜひいつか直接聞いてください(笑)
今回は英会話を始めた経緯から。
初めは、学生時代の友人から「英語を教えてほしい」と言われ、カフェで週1回、英会話を教えるところからスタートしました。
ただ、週1回では英語力は期待しているほど伸ばせなかった。悔しかったですし、対価をいただいてるのに応えられないことが何よりも心に引っかかりました。
そこで、カフェで教えるスタイルから週5〜7回のレッスンをオンラインに変更しました。
レッスンの頻度や内容を試行錯誤していった中だったのですが
「レッスン以外の時間にも英語を勉強してもらわないと結局は学習が”習慣化”せず、”永続的に英語力を伸ばす”ことが難しい」
という結論に私の中では最後いきつきました。
ーそれは90 Englishというプロダクトにも活かされていますか?
はい、原体験なのでとても色濃く反映されています。週5〜7回のレッスンをしたり、週1回にしたりと色んな形を試した結果、レッスン以外の負担も考えると週3回が最適解であると考えています。レッスンの頻度が高すぎると生徒さんがインプットをする時間を作らなくなってしまうし、週1回だとサボりすぎてしまうんです。
英語というと語学技術の習得に重きを置かれがちですが、90 Englishは習慣化という視点の方がむしろ重要だと考えています。
そのため、90 Englishは英語教材の質はもちろんですが、”習慣化”、”定着”を意識したプロダクト設計がされています。そしてそれは日々アップデートし続けています。例えば英語コーチと別に習慣化コーチを設けるなども今は実験中です。
ー事業化のキッカケになるようなことはありましたか?
キッカケが実は靴磨きなんです。靴磨きをやっていた時に、友人の紹介でゆうたろう(現共同代表)と出会いました。
靴磨き中の雑談で私が英語を教えていると話したところ、「英語話せるようになりたい!」と熱いオファーをくれたのがキッカケでした。
後日フットサルをして、ランチへいきました。体験レッスンを実施した後、感動してくれてすぐに申し込んでくれました。
その後、週5でゆうたろうに英語を教えているうちに「これ、めちゃくちゃいいサービスだから一緒に事業化しませんか?」と誘ってくれたんです。
靴磨きに挑戦するたかしょー
ー誘われた時はどうでしたか?
正直、嬉しさ半分、不安半分でした。
ゆうたろうは大手企業で働きながら社内でベンチャー企業を創業している「ザ・エリート」に見えていて、ついていけるだろうかと思ってました。こんなエリートがそんなこと言うなんて、何か裏があるのではないか?!事業ごと乗っ取るんじゃないか…とまで思っていましたね(笑)
ですが、それは杞憂に終わることを確信しました。
食事に行き会話を重ねるうちに、ゆうたろうの人柄の良さや、お金じゃなく、ぼくと一緒に本気で事業を伸ばすことに興味を持っていることが伝わってきました。
最後は私から表参道のカフェに呼び出し、
「ゆうたろうと一緒に起業したい」
とラブコールをしました。
ー実際スタートしてみてどうでしたか?
スタートしてから2〜3ヶ月。金額設定やプロダクトのブラッシュアップ、マーケティング戦略などを2人で練って、週に数回は直接会って会議をしていました。
かなり時間を費やしてくれていたにも関わらず、ゆうたろうから報酬の話を一切してこなかったんですよ。
もしあのとき、最初からお金の提示をされていたらちょっぴりげんなりしていただろうなと思います。
事業立ち上げ当時から言ってくれていた「タカショーを応援したい!」という気持ちを今でもずっと感じています。
あのとき、ゆうたろうが誘ってくれなかったら今でも渋谷の路上で靴磨きをしていたかもしれないと思うと...つくづくゆうたろうには感謝ですね。
広がっていく熱
ー2人体制から更にチームになっていった経緯を教えてください。
当時、サービスの認知拡大に課題がありました。そのため、「インフルエンサー」を探し始めていたんです。その時に出会ったのが当時、ソフトボール選手として発信活動をしていたはるか(現エバンジェリスト)と出会うことになりました。
ゆうたろうと同じく、ギブ精神の高い女性で、自分たちの事業の話をしたときに自主的に頭をひねってくれる様子を見て、チームメンバーにしたいと思いました。
彼女は当時アスリートで、お肉が好きだという情報をつかんでいたので、胃袋から味方につけようと最後の最後は焼肉で口説きました。
焼肉に連れて行き、大好きなユッケを頼んでご満悦な当時のはるか
はるかが入ったことで「コンビ」から「チーム」に変わりました。
運営メンバーはすべてリファラル採用です。各々が自主的に仲間を増やすために動いてくれ、役員の一人であるしらとっちも、元々はぼくの友人なんです。
Alではなく、人にしかできないことがある
ー90株式会社のセンターピンはなんですか?
私が起業した頃(2019年)、世間では「AIに仕事をごっそり取られるぞ!!」という話がSNS上で飛び交っていました。
その様子を見て、私達はAIができない仕事をやっていこうと決意したんです。
AIは生徒さんの成長を見て「私も〇〇さんの成長が心から嬉しいです!」と感情をわかち合うことはできないし、察してお節介をできることも人間ならではです。
AIが普及すればするほど、リアルな人間が応援してくれるなどの情緒的なものへの価値は高まる。そこに確信がありました。だからこそ、プロダクトにも人と人との繋がりが実感できる仕組みを入れています。
馴れ合うというわけではないですが、今後どれだけ会社が成長しても、温かみを大切にしていきたいです。
ー90株式会社の温かみを感じたエピソードはありますか?
メンバーやコーチが主体的に動き、自分の人生を変え、やりがいを感じているところですかね。
実際にいま働いてくれているコーチの中にも、過去に大使館で働いていた方がいます。
大使館の仕事を退職した後も、その国に残ってリモートワークで90 Englishを軸に生計を立てて、自由に生活している彼女を見ると「世界中どこでも働ける仕組みを創れてよかったなぁ」と心から思います。
個人でやっていたときは、身近な人々の人生が変わればいいなぁと思っていましたが、
今では「もっと多くの人に届けなければならない」といった使命感に変わりました。
起業家の友人が増え、視座が上がったことにより「自分も日本を、そして世界を変えられる!」と心から思えるようになったんです。
夜な夜な仕事と向き合う様子
ー90 Englishをどんな人に届けたいですか?
ペルソナは「大学生のときの私」です。
もっと効率的に英語ができていれば、自分自身もアルバイトで一生懸命貯めた200万円の大金を無駄にせず、もっと効率的に英語を習得できていただろうなと思っています。
短期な成果に特化せず、長期の習慣化に重きを置いていれば同じお金でも違う効果だったと後悔しています。
今の英語教育の形は怒りさえ感じるほどに絶対におかしいと思っています。
もっと本質的な学習を「90 English」というプロダクトを通じて知って欲しいし、学習への考え方を変えていかなければならないんです。このような怒りや使命感は今でも原動力になっていますね。
目指す先
ー今後、どんな会社にしていきたいですか?
「インパクトを残せる会社」です。私たちのミッションは「やってみたい!」をあたりまえにすること。これを実現させるためには相当な時間がかかりますが、本気で取り組みたいと思っています。
90株式会社としても、現在は英語に特化をしていますが、今後はさらにAIができない「ヒト領域」を伸ばしていきたいですね。
強くて愛される会社、かつ売上/利益/キャッシュフローなどの財務面、ビジネスモデルも含めて誇れる会社を目指します。
会社の規模が大きくなると、どうしても働く人のビジョンや気持ちを無視してビジネスの最大化だけに注力している会社が増えていますが、それは望んでいないです。
これから何十年先も、多くの人から応援されて、温かく熱を帯びた会社であり続けられるようにしていきます...ぼく一人だとできないことなので、チームみんなと頑張っていきます!